94 / 121
94領主
しおりを挟む
ロウソクを詰めた箱も包んだし、俺お手製のまげわっぱに入れた軟膏も追加献上品として作り、ロウソクは無香と甘系さわやか系の三種。軟膏は無香とミント系の二種類を用意してある。
準備万端整えての足取りは軽いもので、口笛などを鳴らしてみたりも出来るほどだ。
祖父の顔が若干呆れ顔だったのは言うまでも無いが、領主館の中に入れる見れる。前世で博物館でしか見る事が出来なかったようなモノが、リアルな生活感とともに見れるとなれば、西洋の歴史好きにはウキウキ感の方が優先度が高い訳で、御貴族様の服とはいかなるものか?城内の造りは?今後の糧とするために見れる限り見せて頂こう。
領主館は相も変わらずガッチリとした構えをしている。二階建ての家などもそれほど見る事もないので、この館が際立って見えるのだった。
「エドワード殿、クライン殿。ようこそ」
「通らせてもらうぞ」
守衛は今日来る客の事は聞かされているのが当たり前とは言え、俺の様な子供相手にまで敬意を払うなんて教育が行き届いているなと感心させられる。
軽く会釈をして玄関を開けてもらうと、良さげな服を着た男が出迎えてくれた。
「ようこそお出でくださいました。主がお待ちでございます。こちらへどうぞ」
もう少し歳を重ねバトラースーツを着れば立派な執事と言えたかもしれないが、庶民よりは上等な程度の服を着た祖父くらいの歳では、執事としては今一歩足りない感じがしてしまう。その物腰が執事そのものだっただけに、似合いのスーツの一着も着せてみたいななどと思ってしまうのだ。
でも服飾は門外漢なんだよな~
執事さんに案内されるままロビーを進むが、迎賓館のような大階段は見当たらない事から、二階はプライベートスペースなのかもしれない。
そしてここも旧館と同じく絨毯などは敷かれていなかった。敷かれていればかっこいいのにと思うし、やはり領主の館としてはそう言った装飾が無ければ少し物足りなさを感じてしまう。
内壁の造りは隙間の無い板壁。この辺りからして庶民の家とは造りが違うことが実感でき、家造りはこうで無ければなと思う所でもある。
しかし唯一見習いたくないのはロビーの暗さであろうか。
中央に廊下が配されている作りなので窓が作れ無いため、入り口を閉めると全体的に薄暗い。壁掛けの灯明がこのように朝から焚かれていたのでは「玄関扉を開けっ放しにしたら」と言いたくなる。
暗い事と祖父に前を歩いて貰っているおかげでキョロキョロと目線を泳がす事ができるが、これが逆だったら間違いなく怒られている事だろう。
ロビーから伸びる廊下の突き当りの部屋は観音開きの大きな扉だった。
その大きな観音扉を執事さんが開けてくれる。そこはエリザさんの家を改良したような応接間で、そこには3名の男性が腰を下ろしていた。
皮張りのベンチと大きな一枚板から作られたテーブル、棚には見た事が無い像やら鉱物が置かれ、最奥に座る領主の後ろにある大きな角?は、魔物のハンティングトロフィーと言ったところだろうか。
領主さんの第一印象は冴えないおじいと言った感じで「よく来た」などと言って立ち上がり迎えてくれた。
これでは右側に座ったままのレオポルドさんの方が余程領主に見えてしまう。ついでに左側には団長が腰を下ろしている。あんたは立てよ。
「こちらにどうぞ」
執事さんに促しを受けベンチに腰を下ろすと、その座り心地の良さはエリザさんのところのモノより上だと分かるフンワリ感を出していた。
領主さんはウチの祖父と同じくらい言った所だろうか。下がった目と深い皺が刻まれた目尻から優しそうなおじいちゃんの印象を受ける。
「久しいなクライン。息子に職を譲ってから5年になるか?」
「はい。ご無沙汰をしてしまいました」
「そなたの息子も良く勤めていると聞く、うれしく思っているぞ」
「愚息ですので至らぬ事も多いかもしれませんが、ご容赦願います」
「しかし、そなたの孫は父や祖父の功に勝るとも劣らぬ働きで兵たちを助けて居ると聞く、その歳でその働き見事だ」
「勿体無い事ですが子供の思いつきにございます」
いつもは飾らないお爺なしゃべり方しかしない祖父が、こんな改まった話し方も出来るんだなと思いながら、話を振られている訳でも無いので目線を泳がせ部屋を観察する。
着ている物は一見普通に見えるが俺達が着ている物とはキメが違う。繊維感のある粗い織りで作られる村人の服とデザインが同じなだけに見分けづらいが、艶を消した絹織りのような滑らかな布地が使われたトップスに、最初に立った時だけしか見る事ができなかったが、レザーパンツは柔らかくなめされているのかシルクのズボンのようにふんわりとしていた。
ゴテゴテしていないので解り辛いが、判らないならそれで良いと言われているような感じを受ける。
着ている物を褒めるのは社交辞令の初歩だと聞いたような聞かないような、それならば上物のトップスを褒めた方が良いのか、チラ見せしたパンツを褒めた方が良いのか、はたまた後ろにあるハンタートロフィーを馬鹿正直に褒めるか。
俺が聞いた範囲では人をコケにするような者は居ないと言う話だが、少なくとも眼力と言うか見る目を試す人はいる訳で、今回の場合ハンタートロフィーが最下位だと思う。パンツが次点でトップスが最高点なのだと思うのだ。
これ以上の伏兵が隠れているのかもしれないし、実は後ろのハンタートロフィーが竜の牙か角であり、もっとも高価な可能性も捨てきれない。かと言って全て褒めるのは節操無しのお馬鹿さんですと言っているようなものなのだから、様子見でジャブを打つ事もできない中、的確な右ストレートを相手にぶち当てる離れ業が要求されているのだ。
無理ゲーかよ!
準備万端整えての足取りは軽いもので、口笛などを鳴らしてみたりも出来るほどだ。
祖父の顔が若干呆れ顔だったのは言うまでも無いが、領主館の中に入れる見れる。前世で博物館でしか見る事が出来なかったようなモノが、リアルな生活感とともに見れるとなれば、西洋の歴史好きにはウキウキ感の方が優先度が高い訳で、御貴族様の服とはいかなるものか?城内の造りは?今後の糧とするために見れる限り見せて頂こう。
領主館は相も変わらずガッチリとした構えをしている。二階建ての家などもそれほど見る事もないので、この館が際立って見えるのだった。
「エドワード殿、クライン殿。ようこそ」
「通らせてもらうぞ」
守衛は今日来る客の事は聞かされているのが当たり前とは言え、俺の様な子供相手にまで敬意を払うなんて教育が行き届いているなと感心させられる。
軽く会釈をして玄関を開けてもらうと、良さげな服を着た男が出迎えてくれた。
「ようこそお出でくださいました。主がお待ちでございます。こちらへどうぞ」
もう少し歳を重ねバトラースーツを着れば立派な執事と言えたかもしれないが、庶民よりは上等な程度の服を着た祖父くらいの歳では、執事としては今一歩足りない感じがしてしまう。その物腰が執事そのものだっただけに、似合いのスーツの一着も着せてみたいななどと思ってしまうのだ。
でも服飾は門外漢なんだよな~
執事さんに案内されるままロビーを進むが、迎賓館のような大階段は見当たらない事から、二階はプライベートスペースなのかもしれない。
そしてここも旧館と同じく絨毯などは敷かれていなかった。敷かれていればかっこいいのにと思うし、やはり領主の館としてはそう言った装飾が無ければ少し物足りなさを感じてしまう。
内壁の造りは隙間の無い板壁。この辺りからして庶民の家とは造りが違うことが実感でき、家造りはこうで無ければなと思う所でもある。
しかし唯一見習いたくないのはロビーの暗さであろうか。
中央に廊下が配されている作りなので窓が作れ無いため、入り口を閉めると全体的に薄暗い。壁掛けの灯明がこのように朝から焚かれていたのでは「玄関扉を開けっ放しにしたら」と言いたくなる。
暗い事と祖父に前を歩いて貰っているおかげでキョロキョロと目線を泳がす事ができるが、これが逆だったら間違いなく怒られている事だろう。
ロビーから伸びる廊下の突き当りの部屋は観音開きの大きな扉だった。
その大きな観音扉を執事さんが開けてくれる。そこはエリザさんの家を改良したような応接間で、そこには3名の男性が腰を下ろしていた。
皮張りのベンチと大きな一枚板から作られたテーブル、棚には見た事が無い像やら鉱物が置かれ、最奥に座る領主の後ろにある大きな角?は、魔物のハンティングトロフィーと言ったところだろうか。
領主さんの第一印象は冴えないおじいと言った感じで「よく来た」などと言って立ち上がり迎えてくれた。
これでは右側に座ったままのレオポルドさんの方が余程領主に見えてしまう。ついでに左側には団長が腰を下ろしている。あんたは立てよ。
「こちらにどうぞ」
執事さんに促しを受けベンチに腰を下ろすと、その座り心地の良さはエリザさんのところのモノより上だと分かるフンワリ感を出していた。
領主さんはウチの祖父と同じくらい言った所だろうか。下がった目と深い皺が刻まれた目尻から優しそうなおじいちゃんの印象を受ける。
「久しいなクライン。息子に職を譲ってから5年になるか?」
「はい。ご無沙汰をしてしまいました」
「そなたの息子も良く勤めていると聞く、うれしく思っているぞ」
「愚息ですので至らぬ事も多いかもしれませんが、ご容赦願います」
「しかし、そなたの孫は父や祖父の功に勝るとも劣らぬ働きで兵たちを助けて居ると聞く、その歳でその働き見事だ」
「勿体無い事ですが子供の思いつきにございます」
いつもは飾らないお爺なしゃべり方しかしない祖父が、こんな改まった話し方も出来るんだなと思いながら、話を振られている訳でも無いので目線を泳がせ部屋を観察する。
着ている物は一見普通に見えるが俺達が着ている物とはキメが違う。繊維感のある粗い織りで作られる村人の服とデザインが同じなだけに見分けづらいが、艶を消した絹織りのような滑らかな布地が使われたトップスに、最初に立った時だけしか見る事ができなかったが、レザーパンツは柔らかくなめされているのかシルクのズボンのようにふんわりとしていた。
ゴテゴテしていないので解り辛いが、判らないならそれで良いと言われているような感じを受ける。
着ている物を褒めるのは社交辞令の初歩だと聞いたような聞かないような、それならば上物のトップスを褒めた方が良いのか、チラ見せしたパンツを褒めた方が良いのか、はたまた後ろにあるハンタートロフィーを馬鹿正直に褒めるか。
俺が聞いた範囲では人をコケにするような者は居ないと言う話だが、少なくとも眼力と言うか見る目を試す人はいる訳で、今回の場合ハンタートロフィーが最下位だと思う。パンツが次点でトップスが最高点なのだと思うのだ。
これ以上の伏兵が隠れているのかもしれないし、実は後ろのハンタートロフィーが竜の牙か角であり、もっとも高価な可能性も捨てきれない。かと言って全て褒めるのは節操無しのお馬鹿さんですと言っているようなものなのだから、様子見でジャブを打つ事もできない中、的確な右ストレートを相手にぶち当てる離れ業が要求されているのだ。
無理ゲーかよ!
15
お気に入りに追加
1,419
あなたにおすすめの小説
出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-
はまち
恋愛
出勤したら代替わりをした親方に解雇と言われた宝石加工職人のミカエラは独り立ちを選んだ。
次こそ自分のペースで好きなことをしてお金を稼ぐ。
労働には正当な報酬を休暇を!!!低賃金では二度と働かない!!!
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
異世界で「出会い掲示板」はじめました。
佐々木さざめき
ファンタジー
ある日突然、ファンタジーな世界に転移してしまった!
噂のチートも何もない!
だから俺は出来る事をはじめたんだ。
それが、出会い掲示板!
俺は普通に運営してるだけなのに、ポイントシステムの導入や、郵便システムなんかで、どうやら革命を起こしてるらしい。
あんたも異世界で出会いを見つけてみないか?
なに。近くの酒場に行って探してみればいい。
出会い掲示板【ファインド・ラブ】
それが異世界出会い掲示板の名前さ!
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。
異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!
マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です
病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。
ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。
「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」
異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。
「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」
―――異世界と健康への不安が募りつつ
憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか?
魔法に魔物、お貴族様。
夢と現実の狭間のような日々の中で、
転生者サラが自身の夢を叶えるために
新ニコルとして我が道をつきすすむ!
『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』
※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。
※非現実色強めな内容です。
※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる