異世界生活物語

花屋の息子

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80助けられるものは、利用できるものは

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 高校生が保育園児に命令され従わなくてはならないと考えれば確かにイヤだろう。しかしそれが命に関わるなら俺であれば首を縦に振る。俺の持っているプライドなどその程度だ。
 モーガンにもそうであって欲しいと思っている。一度でも言葉を交わしている人間に死刑宣告を出すのは俺にはできない事だ。甘ちゃんだからな。
 自分の知らない処であればどうなったとしても・・・それこそ世界のどこかでは今この時にも亡くなる人がいて、葬儀を挙げている人が居る。
 しかしそれを悲しむのは関係する人だけで、見ず知らず人の死には関心を寄せる事はない。もしそんな事をするならば24時間365日嘆き悲しみ続けなくてはいけないからだ。
 それがモーガンのようにどうしようもないヤツだとしても、縁とも呼べない袖擦りあう程度だとしても、見知ってしまった者には死んで欲しくはない訳だ。

 俺がそんな事を思っている中、兵士さんとファリアさんは何やらゴニョゴニョと話しているが、そこまで特別な事は言っていな・・・。あ~。集団密集戦の概念が無いんだった。
 5人程度のチーム戦がメインで、数十人規模の集団戦はモンスター相手には発展しなかったようだ。一人や1チームの英雄を出すより、農民上がりの沢山の兵隊の方がコスパが良いんだよ。

「それにしても軍でも戦士団でも食いつくほどの事を君は良く思いつくものだ」
「思いついちゃうんですもん♪」
「これほどの事を思いつくエドワード君の下で手となり足となって働くのが良いと思うわよ。それが故郷のためにもなると思うわ」

 モーガンの中で「故郷のため」と言うのは一番琴線に触れるものがあったのは間違いないだろう。しかしあまりにも幼い子供に使われる事が納得も出来ない。これを天秤を悪戯に揺らす心境とでも言うのだろう。

「モーガンさん。戦士として強くなりたいなら僕のところに来るのは悪くないですよ。仕事の手が空いた時には僕の祖父や父に剣を習う事もできると思いますから」
「お前の父?」
「え。エドワード君それは君が決めて良い事なのかな?」
「大丈夫です。そのくらいの”お手伝い”はしていますから」
「「それで良いのか?」」

 一般的な子供のお手伝いとは訳が違うレベルでの家庭収益増を叩き出しているのだから、少しくらいは問題にならないし、もう数年もしたら父が仕事を止めても食べていけるレベルだと思う。すっかり会話に混じった二人だが、モーガンは親父たちを知らないようだ。と言うより俺と親父が繋がらないだけだろうけど。

「クラインとグラハムって聞いた事が無いですか?」
「!!!」

 モーガンの表情が大きく変わった。俺の中ではただの祖父と父なのだが、軍属に居る人間には、それなりに有名そうだったので行けると思ったのだが、その効果は大きかったようだ。

「クラインとグラハムって、あの・・・」
「無礼者が~」

 ファリアさんの横殴りの拳骨がモーガンを吹き飛ばしている。祖父と父の名を言っただけで反応するってどうなのよ。へんな所でスイッチ入っちゃうんだよなこの人。

「お二方を呼び捨てるとは何事か!」
「ファリアさん落ち着いて下さい」

 呼び捨てにするくらい気にしないよ。それくらいなら俺の事を「ガキ」と呼んだ事に反応してくれた方が有難いくらいだよ。

「しかしお二方ににそれほどの迷惑を掛けるのは、軍としても戦士団としても気が引けるのだが」
「今のままで僕のやっている事を手伝って貰うよりはマシですよ」

 それにこれからもっと忙しくなると思いますから、父にも軍を辞めてもらう事にもなるかもしれません。父を軍に残すのが良いのかそれとも・・・まで言えれば楽なのだろうな。

「僕に従う事、仕事を手伝う事、僕からは以上です。どうしますか?モーガンさん、これを受け入れてくれるなら先に言った父達に鍛えてもらう事、あなたの故郷に対策案を伝える事ができます。イヤならこれまでです」

 二人の興味をこれ以上引いていたのでは時間ばかりが掛かってしまうし、これ以上提案できる事もすぐには無いので、これでダメなら本当にこれまでだ。意地を張らないで貰いたいがどうかな?

「解った。おま・・君に従う事にする」
「そうですか。良かった」
「もしエドワード君に逆らうなら、その時は覚悟を決めて措きなさい。私が首を刎ねてあげるわ」
「今までお世話になりました」

 ファリアとモーガンのやり取りはギクシャクしたものだったが、親子関係の解消ってこんな感じなのかな?、取り敢えずは5人とも確保出来て良かったよ。
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