異世界生活物語

花屋の息子

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71販売用の軟膏完成

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 香草の配分を決めたら乾燥を魔法で済ましてしまう。木の乾燥とは違いズタ袋に詰めて行なわないと吹き飛んでしまうかもしれないので、袋の中で均一に乾燥できてきるのか確認が取りづらいのが難点になる。

「ズタ袋で香りが飛ばない保障は無いんだけど、やらないよりマシだよね。おっとこのくらいかな?」

 袋を振ってカサカサと乾いた音がするので乾燥はできているだろう。小さな袋でも作れたら良いのだが、大きなズタ袋に入れた香草をいちいち確認して乾燥させるのは効率が悪い。

「こっちは良いけど、やっぱりあったか」

 少しだけ太い茎をした草は、完全に乾燥しきれていなかった。
 均一乾燥させるためには、この辺りも揃えなければならないみたいで、次には太さ毎に分けた方が良さそうだ。
 再度乾燥をさせると次は葉だけを取り、手で粉々に砕いていく。粉になった物を更に揉み込んで、完全な微粉末にまで細かくしたら香料は完成となる。

「こっちは固まっていないな」

 チョンと触ってももう熱さは感じられないので、油だけを別の鍋に移す事とする。ここに香料を加えて攪拌するためだ。
 香草を加えて練ると途端に香りが立ち上り、納屋にアップルパインの香りがふんわりと広がった。
 人工香とは違い嫌らしさの無い自然な香りなので、香料が嫌いの人でも良い香りと思って貰える事だろう。天然香は良い香りの中にそれを引き立てるような、くすんだ嫌なニオイが混じっている。
 このニオイ成分のお陰で良い香が際立つのだが、これを無くしてしまうと途端に香水ベタ付けのスメラーに落ちてしまうのだから香は奥が深いモノだと思う。
 これをウェインなど後進に譲る時にも『スメラーにはなるな』、と念を押す事を忘れないようにしよう。

「スメラーって何って言われそうだけど」

 脂が固まってクリーム化する前に、空気を含ませるようにかき混ぜる。細かい気泡の中に香りが充満して良いかな?と思いついた方法だ。
 軟質の方は白く固まって軟膏として良い状態となったので、次に硬質だった方に取り掛かる。油脂化した後はどちらも違いは認められなかったのは幸いだが、分けたのでこちらは薄いミント風の香りだ。
 こちらも粉末化した香草を入れてクリームに練りあげる。

「硬くなった脂は性質が変わると思っていたけど、特に変わりは無さそうだな」

 自分の二の腕でパッチテストをしてみたが変化は見られない。変化が無いのは喜ばしい事だ。
 練り上げたクリームはそのままにして、夜まで枡とまげわっぱを増産しつづけて今日の仕事を終える。労力的には大した事は無いが、面倒な作業のため飽きるのが問題なところだが。
 そうして夕食を取ると飽きによる精神ダメージの回復のため、さっさと眠りについた。

「疲れていたのかしら?」
「朝早くから頑張っていたからな。それにしても良くやるものだ」

 父と母が納屋に積みあがった木工作品の山を見ながら、我が子を心配する夫婦の会話をしていた事など知らぬうちに。
 さあ、明日からは頑張って売るぞ~
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