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69性質に違いはあるか?
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朝食を摂り終えると納屋に戻っての作業再開だ。土を叩き上げて掘るだけの簡易カマドは水を使わないのですぐ使い始める事が出来る。金剛力士像のような男がバシバシ固めた物は 水など使わなくても使う分には支障ない出来のモノが完成するのだ。
「大きい鍋から使えるように作っておいたぞ。これからで良いのだろ?」
鍋の使用順に関しては話していなかったが、そりゃでかい方から作るわな。
別段「壁に目が」などと言うつもりは無いが、キッチンの方からモワモワっとした気配と言うかが漂ってくる。明らかに母と祖母の発する気だろう。そしてこれが父達が働く原動力でもあるのだろうが。
「ありがとう、僕の方も準備始めちゃうね」
仕上げを残すだけになっているカマドは、俺がやる事は無いので獣脂の準備をする事にした。
細かな肉クズや血管を取り除いて、硬質な部位と軟質部位とを選別してみた。
前回にはゴミ以外はごちゃ混ぜで作ったが、鎧化している部位とノーマルな脂身とではやはり出来上がった物にも違いが出来そうだったからだ。
選別が終わった物を川で予洗いして残った血やゴミを洗い流すと、ぷるんっとした脂身は何だか美味しそうに見えてしまう。
天秤棒も身体強化を上手く使えるようになってからは、大人用の桶でも問題なく満タンの水を運べるようになっていたが、吊るす綱が恐ろしく短いのはこの子供の体のせいなのだからお笑いに見える。
納屋の横には焼き上げの裏で父に運び込んでもらった切り株が転がっているが、これこそ今回の秘密兵器、臼(加工前)だ。
それにちょんと触れながら軟化をかけて、中をナイフでくりぬいていく。ハッキリ言って雑にもほどがあるやり方だが、餅をつく訳ではないので中もギザギザのまま。そこに脂身を入れるといっしょに作った杵で突き上げていく。ナイフや包丁で細切れにするよりも、力任せに潰した方がてっとり早いかと思ったのがこのやり方だったのだ。
軟質な脂身が潰れるさまは、鮟鱇の肝を潰して作るどぶ汁を思い浮かべてしまう。硬質の方は流石にペースト状とはいかないが、ギザギザな臼に杵で擦り付ける事で柔らかくは出来た。
「カマドの方は良いと思うが、使ってみるか?」
「お昼食べてからかな。水だけ入れておくよ」
鍋をカマドにかけて水を入れるがびくともしない。金属製の鍋から焼き物に変わった事で容積が増えた事と、その重量も比例して増えていたので、もしかしたらと思っていたのだが全く問題はなかった。
ふたりともありがと。
火にかけた鍋は何の問題もなく鍋として使えている。グツグツと煮立たせるが、ただの金鍋を使った前回に比べても、容積に違いがあるにもかかわらずこちらの方が少し遅い程度で沸騰するあたり、熱伝導率はこちらの方が圧倒的に良いようだ。
単純に手間がかかりすぎる事を除けば、材料の入手難度から見ても性能上でも焼き物の方が上。この辺りは地球とは大きく違う。
沸騰した湯に獣脂を投入すると、ペースト状に練れた方はフワッと溶けていったのに対し、半固形の硬質タイプは一度底に沈んで溶けながら油分が浮かび上がって来る。透明な分違いがあるが、海底原油のように見えて見ていて飽きないものだ。
とは言っても余分な成分を溶かし出さなければいけないのでそう悠長に見守っている訳にもいかずに、枝で作った棒・・・皮を剥いただけの手抜きですいません、を使ってかき混ぜるのだった。
こんな事なら長柄の杓文字?箆でも作って置けば良かったのだが気が回らなかったのだから仕方が無い、と言う事にしておいて欲しい。
この辺りが主人公補正無しのパンピーと言う事なのだろう。
軟質の方は油層の中にゴミが混じっているので、飛び散らない程度の乱暴さで攪拌する。脂から離れて湯に当たるとゴミは親水性なのか、鍋底へと沈んでいくので処理は簡単で良い♪
問題は硬質タイプの方だ。中々油が抜け切らないので今だに沈んでいる物からは、プクプクと油が溶けては浮き上がってきている。どこでこれが抜けきるのかある程度で諦めるのか、判断など出来るか~っと塊になっている沈殿物に攪拌棒を突き立てると、勢い良く油が抜け出てきた。
しかし油が抜けた穴からはその後濁ったモノが抜け出てしまったので、短気を起こした事を後悔するハメとなった。
薄灰色の湯になってしまったため、油が溶け出ているのかが判断しにくい。これでは諦める他無いだろう。ツクヅク仕事を増やしてしまった事が悔やまれるのだった。
「それにしてもこの違いって何なんだろうな?」
それは軟質の方は水の濁りはほぼ無いと言う事だ。
細かなゴミは仕方が無いとしても、塊から出てきたような濁りはこちらには感じられない。別段澄んでいるとまでは言わないが、あの薄灰色をした濁りは感じられないので、脂身の質なのか部位なのかは解からないが、その差は間違いなくあるだろう。
「混ぜたらどうなるんだろう?別々での方が良いのかな?製品の出来に差が出ないと良いけどな」
カマドから燃えカスを取り出して放置冷却している間に、小売用と納品用の入れ物でも作るとしますかね。
「大きい鍋から使えるように作っておいたぞ。これからで良いのだろ?」
鍋の使用順に関しては話していなかったが、そりゃでかい方から作るわな。
別段「壁に目が」などと言うつもりは無いが、キッチンの方からモワモワっとした気配と言うかが漂ってくる。明らかに母と祖母の発する気だろう。そしてこれが父達が働く原動力でもあるのだろうが。
「ありがとう、僕の方も準備始めちゃうね」
仕上げを残すだけになっているカマドは、俺がやる事は無いので獣脂の準備をする事にした。
細かな肉クズや血管を取り除いて、硬質な部位と軟質部位とを選別してみた。
前回にはゴミ以外はごちゃ混ぜで作ったが、鎧化している部位とノーマルな脂身とではやはり出来上がった物にも違いが出来そうだったからだ。
選別が終わった物を川で予洗いして残った血やゴミを洗い流すと、ぷるんっとした脂身は何だか美味しそうに見えてしまう。
天秤棒も身体強化を上手く使えるようになってからは、大人用の桶でも問題なく満タンの水を運べるようになっていたが、吊るす綱が恐ろしく短いのはこの子供の体のせいなのだからお笑いに見える。
納屋の横には焼き上げの裏で父に運び込んでもらった切り株が転がっているが、これこそ今回の秘密兵器、臼(加工前)だ。
それにちょんと触れながら軟化をかけて、中をナイフでくりぬいていく。ハッキリ言って雑にもほどがあるやり方だが、餅をつく訳ではないので中もギザギザのまま。そこに脂身を入れるといっしょに作った杵で突き上げていく。ナイフや包丁で細切れにするよりも、力任せに潰した方がてっとり早いかと思ったのがこのやり方だったのだ。
軟質な脂身が潰れるさまは、鮟鱇の肝を潰して作るどぶ汁を思い浮かべてしまう。硬質の方は流石にペースト状とはいかないが、ギザギザな臼に杵で擦り付ける事で柔らかくは出来た。
「カマドの方は良いと思うが、使ってみるか?」
「お昼食べてからかな。水だけ入れておくよ」
鍋をカマドにかけて水を入れるがびくともしない。金属製の鍋から焼き物に変わった事で容積が増えた事と、その重量も比例して増えていたので、もしかしたらと思っていたのだが全く問題はなかった。
ふたりともありがと。
火にかけた鍋は何の問題もなく鍋として使えている。グツグツと煮立たせるが、ただの金鍋を使った前回に比べても、容積に違いがあるにもかかわらずこちらの方が少し遅い程度で沸騰するあたり、熱伝導率はこちらの方が圧倒的に良いようだ。
単純に手間がかかりすぎる事を除けば、材料の入手難度から見ても性能上でも焼き物の方が上。この辺りは地球とは大きく違う。
沸騰した湯に獣脂を投入すると、ペースト状に練れた方はフワッと溶けていったのに対し、半固形の硬質タイプは一度底に沈んで溶けながら油分が浮かび上がって来る。透明な分違いがあるが、海底原油のように見えて見ていて飽きないものだ。
とは言っても余分な成分を溶かし出さなければいけないのでそう悠長に見守っている訳にもいかずに、枝で作った棒・・・皮を剥いただけの手抜きですいません、を使ってかき混ぜるのだった。
こんな事なら長柄の杓文字?箆でも作って置けば良かったのだが気が回らなかったのだから仕方が無い、と言う事にしておいて欲しい。
この辺りが主人公補正無しのパンピーと言う事なのだろう。
軟質の方は油層の中にゴミが混じっているので、飛び散らない程度の乱暴さで攪拌する。脂から離れて湯に当たるとゴミは親水性なのか、鍋底へと沈んでいくので処理は簡単で良い♪
問題は硬質タイプの方だ。中々油が抜け切らないので今だに沈んでいる物からは、プクプクと油が溶けては浮き上がってきている。どこでこれが抜けきるのかある程度で諦めるのか、判断など出来るか~っと塊になっている沈殿物に攪拌棒を突き立てると、勢い良く油が抜け出てきた。
しかし油が抜けた穴からはその後濁ったモノが抜け出てしまったので、短気を起こした事を後悔するハメとなった。
薄灰色の湯になってしまったため、油が溶け出ているのかが判断しにくい。これでは諦める他無いだろう。ツクヅク仕事を増やしてしまった事が悔やまれるのだった。
「それにしてもこの違いって何なんだろうな?」
それは軟質の方は水の濁りはほぼ無いと言う事だ。
細かなゴミは仕方が無いとしても、塊から出てきたような濁りはこちらには感じられない。別段澄んでいるとまでは言わないが、あの薄灰色をした濁りは感じられないので、脂身の質なのか部位なのかは解からないが、その差は間違いなくあるだろう。
「混ぜたらどうなるんだろう?別々での方が良いのかな?製品の出来に差が出ないと良いけどな」
カマドから燃えカスを取り出して放置冷却している間に、小売用と納品用の入れ物でも作るとしますかね。
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