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67苦悩?と巻き込み決定
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格好の良い事を言ってはみたがみんなの笑顔をと願った結果、軍事転用されて悲運に見舞われた研究者は星の数ほどいるだろう。
先の不幸など何処まで行っても無くなりはしないし、現状では平和利用されているものですら、見方を変えた研究者が意図しない利用方法を見つけ出してしまう事など枚挙にいとまが無いのだ。
今回の軟膏にしたところで遠い未来なのか、はたまた近い将来なのかは解からないが、含まれていた危険物が発見されてテロ利用される事があるかもしれないし、鋤から将来トラクターが開発されたら、それが戦車の発明に利用されるなど、先の不幸は必ず先の人に責任があるのだから、そもそも大本の危険物を世の中に送り出さない限りは、俺自身は何一つ後ろめたい事など無いので、それで良いのだと一人納得するしかない。
「そう言う訳だから、軟膏の将来はウェイン義兄さんに託します。まだまだ俺もやるけど結婚したら姉ちゃんと二人で頑張って下さい。お願いします」
「まだ返事して無いんだけど」
「大丈夫。後3年くらい経ったらウェインが作るようになって、俺は軟膏を作らないって後でみんなに伝えるから、絶対作りたいって思えるようになるよ」
「それは作りたいじゃないだろ。作らなきゃいけなくなるだけの話だぞ。ったく、何とか食ってけそうな話しだし、しばらくはお前もやるって言うんだからやってやるよ。その代わり食うに困るとか売れないとかだったら、畑広げるのが遅れた分だけお前が手伝って広げるんだからな」
ベンチャー企業の立ち上げに巻き込んで潰れたじゃ、この世界は即食い詰めになる訳なのだから、そのくらいは覚悟している。
そもそもちゃんとした効果を結果的にだが試験までしたのだから、暴利貪る事にさえならないように気を付けていれば良いだけ。絶対は無いけれど大丈夫じゃないかな。
「任せてよ。あぁ目を閉じたら10人の子供に囲まれて幸せいっぱいの姉ちゃんが俺には見えるよ」
言葉にしなかったが、その横でお客に催促されながら必死で働くヤツレ顔の義兄の顔も浮かんだのは、ご愛嬌ご愛嬌。
「それ俺はどうなんだよ」
「うん幸せそうだよ」
子供が10人もできた時点で幸せだろうよ。大家族の父ちゃんは一部を除いて、大概は過労を鼻で笑えるのだ。
ともあれ宴が終焉を迎える頃合には、何となくその気にさせられたウェインとおじさん達に、これからの事の話をしておかなければなと考える俺。明日からクリームは買えるのかしらとウキウキ顔の奥様達と、なかなかカオスな宴会場となっていた。
朝から押しかけられたらどう対処すればいいんだろう?
うん肉屋に走ろう。そう心に決めたエドワードだった。
翌朝早くに、俺は肉屋を訪ねた。
「おじちゃん、おはようございます」
「うぉ、驚いた。どうしたんだいこんなに早く」
驚かれるのも無理はないだろう。日本時間で言ったら朝の5時くらいに後ろから声をかけられたのだから。宴会の翌日にも係わらずこの時間に起きられた事を若さに感謝しようと思ったくらいの時間だ。
「脂身を貰いに来たんだ」
「な、何か面白い事やってるって聞いたよ。おじさんには教えてくれないのかな?」
「うん、ごめんなさい。その代わりに今度からはタダじゃなくて、少しお金払えるから」
「はははっ、い、良いよ。どうせ捨てる物なんだから今までと一緒でタダであげるよ」
「えー、それじゃおじちゃんが損しちゃうじゃんない?」
「こ、この間も言っただろ?何か面白い事が見つかったら、今度は教えておくれよ。君は面白い事を見つける名人みたいだからね、それで良いよ」
「でも今度からは毎日貰いに来なきゃいけないんだよ」
「え、遠慮なんかしなくても良いんだよ。おじさんは君にあげないなら毎日捨てなきゃいけないんだからね」
人の良いおじさんと見るか、損して得取れの精神なら商売人としては優秀な人だと思う。どちらにしても何かしらの返礼は考えなければいけないな。
面白い商売につながりそうな話と言えば、そんな括りでパッと思いつくところは獣脂と一緒に持っていった骨の話だろう。除草剤みたいなモドキ効果をもたらす骨の煮汁は、非農地用としてであれば効果はある。
現代のように荒地や舗装の脇に撒くのならいざ知らず、この世界で需要が見込めるかは責任が持てないところが申し訳ない点ではあるけれど。
「前に貰った骨なら変な事が起きたよ」
おっちゃんの表情はワクワク顔をしていた。
あぁ勘ぐってごめんなさい、これは本当に商売抜きの面白い事を求めている人の顔だ。
そちらに繋がれば越した事はないのだろうが、それ以上に好奇心に寄るところが大きい人なのだろう。
「骨かい?」
「そう。貰って行った骨を煮てみたんだ。そうしたら真っ黒くなって草とかを枯らす黒スープになっちゃうんだよ。最初はカイバクに少しかけて見たんだけど枯れちゃって、庭の草にかけても枯れちゃうんだ」
「そんなに何でも枯らしちゃうのかい?」
「全部の草にかけた訳じゃないよ。でもいろいろな草にかけたらみんな枯れちゃって、これって何かに使えるかな?」
軟膏に忙しい所に持ってきて除草剤までとなると、需要の問題と人手の問題で手が回せない。これからのお付き合いを考えたら、このくらいの情報開示はしても問題ないんじゃないかな?
先の不幸など何処まで行っても無くなりはしないし、現状では平和利用されているものですら、見方を変えた研究者が意図しない利用方法を見つけ出してしまう事など枚挙にいとまが無いのだ。
今回の軟膏にしたところで遠い未来なのか、はたまた近い将来なのかは解からないが、含まれていた危険物が発見されてテロ利用される事があるかもしれないし、鋤から将来トラクターが開発されたら、それが戦車の発明に利用されるなど、先の不幸は必ず先の人に責任があるのだから、そもそも大本の危険物を世の中に送り出さない限りは、俺自身は何一つ後ろめたい事など無いので、それで良いのだと一人納得するしかない。
「そう言う訳だから、軟膏の将来はウェイン義兄さんに託します。まだまだ俺もやるけど結婚したら姉ちゃんと二人で頑張って下さい。お願いします」
「まだ返事して無いんだけど」
「大丈夫。後3年くらい経ったらウェインが作るようになって、俺は軟膏を作らないって後でみんなに伝えるから、絶対作りたいって思えるようになるよ」
「それは作りたいじゃないだろ。作らなきゃいけなくなるだけの話だぞ。ったく、何とか食ってけそうな話しだし、しばらくはお前もやるって言うんだからやってやるよ。その代わり食うに困るとか売れないとかだったら、畑広げるのが遅れた分だけお前が手伝って広げるんだからな」
ベンチャー企業の立ち上げに巻き込んで潰れたじゃ、この世界は即食い詰めになる訳なのだから、そのくらいは覚悟している。
そもそもちゃんとした効果を結果的にだが試験までしたのだから、暴利貪る事にさえならないように気を付けていれば良いだけ。絶対は無いけれど大丈夫じゃないかな。
「任せてよ。あぁ目を閉じたら10人の子供に囲まれて幸せいっぱいの姉ちゃんが俺には見えるよ」
言葉にしなかったが、その横でお客に催促されながら必死で働くヤツレ顔の義兄の顔も浮かんだのは、ご愛嬌ご愛嬌。
「それ俺はどうなんだよ」
「うん幸せそうだよ」
子供が10人もできた時点で幸せだろうよ。大家族の父ちゃんは一部を除いて、大概は過労を鼻で笑えるのだ。
ともあれ宴が終焉を迎える頃合には、何となくその気にさせられたウェインとおじさん達に、これからの事の話をしておかなければなと考える俺。明日からクリームは買えるのかしらとウキウキ顔の奥様達と、なかなかカオスな宴会場となっていた。
朝から押しかけられたらどう対処すればいいんだろう?
うん肉屋に走ろう。そう心に決めたエドワードだった。
翌朝早くに、俺は肉屋を訪ねた。
「おじちゃん、おはようございます」
「うぉ、驚いた。どうしたんだいこんなに早く」
驚かれるのも無理はないだろう。日本時間で言ったら朝の5時くらいに後ろから声をかけられたのだから。宴会の翌日にも係わらずこの時間に起きられた事を若さに感謝しようと思ったくらいの時間だ。
「脂身を貰いに来たんだ」
「な、何か面白い事やってるって聞いたよ。おじさんには教えてくれないのかな?」
「うん、ごめんなさい。その代わりに今度からはタダじゃなくて、少しお金払えるから」
「はははっ、い、良いよ。どうせ捨てる物なんだから今までと一緒でタダであげるよ」
「えー、それじゃおじちゃんが損しちゃうじゃんない?」
「こ、この間も言っただろ?何か面白い事が見つかったら、今度は教えておくれよ。君は面白い事を見つける名人みたいだからね、それで良いよ」
「でも今度からは毎日貰いに来なきゃいけないんだよ」
「え、遠慮なんかしなくても良いんだよ。おじさんは君にあげないなら毎日捨てなきゃいけないんだからね」
人の良いおじさんと見るか、損して得取れの精神なら商売人としては優秀な人だと思う。どちらにしても何かしらの返礼は考えなければいけないな。
面白い商売につながりそうな話と言えば、そんな括りでパッと思いつくところは獣脂と一緒に持っていった骨の話だろう。除草剤みたいなモドキ効果をもたらす骨の煮汁は、非農地用としてであれば効果はある。
現代のように荒地や舗装の脇に撒くのならいざ知らず、この世界で需要が見込めるかは責任が持てないところが申し訳ない点ではあるけれど。
「前に貰った骨なら変な事が起きたよ」
おっちゃんの表情はワクワク顔をしていた。
あぁ勘ぐってごめんなさい、これは本当に商売抜きの面白い事を求めている人の顔だ。
そちらに繋がれば越した事はないのだろうが、それ以上に好奇心に寄るところが大きい人なのだろう。
「骨かい?」
「そう。貰って行った骨を煮てみたんだ。そうしたら真っ黒くなって草とかを枯らす黒スープになっちゃうんだよ。最初はカイバクに少しかけて見たんだけど枯れちゃって、庭の草にかけても枯れちゃうんだ」
「そんなに何でも枯らしちゃうのかい?」
「全部の草にかけた訳じゃないよ。でもいろいろな草にかけたらみんな枯れちゃって、これって何かに使えるかな?」
軟膏に忙しい所に持ってきて除草剤までとなると、需要の問題と人手の問題で手が回せない。これからのお付き合いを考えたら、このくらいの情報開示はしても問題ないんじゃないかな?
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