異世界生活物語

花屋の息子

文字の大きさ
上 下
67 / 121

67苦悩?と巻き込み決定

しおりを挟む
 格好の良い事を言ってはみたがみんなの笑顔をと願った結果、軍事転用されて悲運に見舞われた研究者は星の数ほどいるだろう。
 先の不幸など何処まで行っても無くなりはしないし、現状では平和利用されているものですら、見方を変えた研究者が意図しない利用方法を見つけ出してしまう事など枚挙にいとまが無いのだ。
 今回の軟膏にしたところで遠い未来なのか、はたまた近い将来なのかは解からないが、含まれていた危険物が発見されてテロ利用される事があるかもしれないし、鋤から将来トラクターが開発されたら、それが戦車の発明に利用されるなど、先の不幸は必ず先の人に責任があるのだから、そもそも大本の危険物を世の中に送り出さない限りは、俺自身は何一つ後ろめたい事など無いので、それで良いのだと一人納得するしかない。

「そう言う訳だから、軟膏の将来はウェイン義兄さんに託します。まだまだ俺もやるけど結婚したら姉ちゃんと二人で頑張って下さい。お願いします」
「まだ返事して無いんだけど」
「大丈夫。後3年くらい経ったらウェインが作るようになって、俺は軟膏を作らないって後でみんなに伝えるから、絶対作りたいって思えるようになるよ」
「それは作りたいじゃないだろ。作らなきゃいけなくなるだけの話だぞ。ったく、何とか食ってけそうな話しだし、しばらくはお前もやるって言うんだからやってやるよ。その代わり食うに困るとか売れないとかだったら、畑広げるのが遅れた分だけお前が手伝って広げるんだからな」

 ベンチャー企業の立ち上げに巻き込んで潰れたじゃ、この世界は即食い詰めになる訳なのだから、そのくらいは覚悟している。
 そもそもちゃんとした効果を結果的にだが試験までしたのだから、暴利貪る事にさえならないように気を付けていれば良いだけ。絶対は無いけれど大丈夫じゃないかな。

「任せてよ。あぁ目を閉じたら10人の子供に囲まれて幸せいっぱいの姉ちゃんが俺には見えるよ」

 言葉にしなかったが、その横でお客に催促されながら必死で働くヤツレ顔の義兄の顔も浮かんだのは、ご愛嬌ご愛嬌。

「それ俺はどうなんだよ」
「うん幸せそうだよ」

 子供が10人もできた時点で幸せだろうよ。大家族の父ちゃんは一部を除いて、大概は過労を鼻で笑えるのだ。
 ともあれ宴が終焉を迎える頃合には、何となくその気にさせられたウェインとおじさん達に、これからの事の話をしておかなければなと考える俺。明日からクリームは買えるのかしらとウキウキ顔の奥様達と、なかなかカオスな宴会場となっていた。
 朝から押しかけられたらどう対処すればいいんだろう?
 うん肉屋に走ろう。そう心に決めたエドワードだった。


翌朝早くに、俺は肉屋を訪ねた。

「おじちゃん、おはようございます」
「うぉ、驚いた。どうしたんだいこんなに早く」

 驚かれるのも無理はないだろう。日本時間で言ったら朝の5時くらいに後ろから声をかけられたのだから。宴会の翌日にも係わらずこの時間に起きられた事を若さに感謝しようと思ったくらいの時間だ。

「脂身を貰いに来たんだ」
「な、何か面白い事やってるって聞いたよ。おじさんには教えてくれないのかな?」
「うん、ごめんなさい。その代わりに今度からはタダじゃなくて、少しお金払えるから」
「はははっ、い、良いよ。どうせ捨てる物なんだから今までと一緒でタダであげるよ」
「えー、それじゃおじちゃんが損しちゃうじゃんない?」
「こ、この間も言っただろ?何か面白い事が見つかったら、今度は教えておくれよ。君は面白い事を見つける名人みたいだからね、それで良いよ」
「でも今度からは毎日貰いに来なきゃいけないんだよ」
「え、遠慮なんかしなくても良いんだよ。おじさんは君にあげないなら毎日捨てなきゃいけないんだからね」

 人の良いおじさんと見るか、損して得取れの精神なら商売人としては優秀な人だと思う。どちらにしても何かしらの返礼は考えなければいけないな。
 面白い商売につながりそうな話と言えば、そんな括りでパッと思いつくところは獣脂と一緒に持っていった骨の話だろう。除草剤みたいなモドキ効果をもたらす骨の煮汁は、非農地用としてであれば効果はある。
 現代のように荒地や舗装の脇に撒くのならいざ知らず、この世界で需要が見込めるかは責任が持てないところが申し訳ない点ではあるけれど。

「前に貰った骨なら変な事が起きたよ」

 おっちゃんの表情はワクワク顔をしていた。
 あぁ勘ぐってごめんなさい、これは本当に商売抜きの面白い事を求めている人の顔だ。
 そちらに繋がれば越した事はないのだろうが、それ以上に好奇心に寄るところが大きい人なのだろう。

「骨かい?」
「そう。貰って行った骨を煮てみたんだ。そうしたら真っ黒くなって草とかを枯らす黒スープになっちゃうんだよ。最初はカイバクに少しかけて見たんだけど枯れちゃって、庭の草にかけても枯れちゃうんだ」
「そんなに何でも枯らしちゃうのかい?」
「全部の草にかけた訳じゃないよ。でもいろいろな草にかけたらみんな枯れちゃって、これって何かに使えるかな?」

 軟膏に忙しい所に持ってきて除草剤までとなると、需要の問題と人手の問題で手が回せない。これからのお付き合いを考えたら、このくらいの情報開示はしても問題ないんじゃないかな?
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

異世界で「出会い掲示板」はじめました。

佐々木さざめき
ファンタジー
 ある日突然、ファンタジーな世界に転移してしまった!  噂のチートも何もない!  だから俺は出来る事をはじめたんだ。  それが、出会い掲示板!  俺は普通に運営してるだけなのに、ポイントシステムの導入や、郵便システムなんかで、どうやら革命を起こしてるらしい。  あんたも異世界で出会いを見つけてみないか?  なに。近くの酒場に行って探してみればいい。  出会い掲示板【ファインド・ラブ】  それが異世界出会い掲示板の名前さ!

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち
恋愛
出勤したら代替わりをした親方に解雇と言われた宝石加工職人のミカエラは独り立ちを選んだ。 次こそ自分のペースで好きなことをしてお金を稼ぐ。 労働には正当な報酬を休暇を!!!低賃金では二度と働かない!!!

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...