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58念願のソフトマジック
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翌日も早くから地域住民総出で木の乾燥作業だ。「朝早くからご苦労様です」っと心の中でヤクザ映画の子分がやる挨拶をした。
魔力が少ない人間でもやはり数が揃えば作業速度は格段に向上するもので、風を送って回復させてと飽きる作業を繰り返し、昼過ぎには切り出した木材がすべて乾燥させ終える。
しかしこの簡易乾燥法の欠点は乾燥させた後に待っているのだ。生の木と違い乾燥を終わった木材と言うものは総じて固くなる。一般的に薪は割ってから乾燥させる完全に生でなくても少しくらいの乾燥は許容内だが、簡易乾燥法を使ってまで乾かすと作業のやりづらさは一気に上がってしまうからだ。
「固ってえな」
「さすがにきついの」
「こりゃ刃がいかれちまうんじゃねえか」
案の定あちらこちらから水分が抜けて、密度が上がった木材に刃が立たない悲鳴が聞こえる。
「そうじゃ。誰かルヒノラの婆さま呼んで来い」
えっ、誰?ルヒノラ?記憶に御座いませんけど?
初めて聞く名前だ。その婆さん連れてきたら切れるの?斧にでも切れ味強化のエンチャントかけてくれる人なのかな?
この世界に来てからいわゆる生活魔法に類する魔法はいくつか見てきたが、いまだエンチャント系はお目にかかっていない。
一体どんな事をしてくれる人なのか全く持って不明なだけに興味は尽きない。
しばらくして若い衆が戸板を神輿のようにして一人の婆さまを連れてきた。見た目は百歳の双子で有名になった人のようだった。
「ルヒノラ婆さん。この木なんだが硬くてどうにもならんのだ、あれを頼めるかい?」
「こんバカタレ共が~。いきなり連れてこられて何事かと思えば、この年寄りを殺すつもりか」
うんわかる気がする、1本2本ならまだしもここには200を越える木がある訳で、どんな魔法を使うにしても絶対的な魔力量が足らんだろう。
「じゃから自分らでも出来るように覚えろと言うたに・・・・・・・・」
10代から50代くらいまでの男衆が、それこそ正座でもさせられそうな勢いでお小言をくらう光景は、ただただ滑稽なものでしかないが、俺としたら笑いをこらえる事に必死だ。
30分くらいのお小言がようやく終わった。会った事も無い俺は巻き込まれただけでは?
「わし一人では、一日朝からやって10から12本と言た所じゃな」
「婆さまなんとかならないか?俺達もやってみたんだわ。でも婆さまみたいには出来ないんじゃわ」
「甘ったれた事ぬかすで無いわ!!わしとて昨日の今日で出来るようになった訳ではないんじゃ、毎日練習せいとあれほど言うたに・・・」
あぁ。口答えなんかしたら余計に油に火を・・・じゃなかった、火に油をそそいじゃうじゃないか。
「ねえ、このおばあちゃんは何しに来たの?」
近くにいたおっちゃんに聞いてみた。現状無駄に説教が長いばあさんでしか無いのだ。
「エドは会ったこと無いのか?ルヒノラ婆さんは、硬いものを柔らかくする魔法が使えるんだ」
そ、ソフトキタ~~~~♪♪♪
お小言が終わったのか、おっちゃん達に担がれてルヒノラ婆さんは木材が積まれていた場所へと移動を始めてた。
俺?もちろん着いて行きますよ。教えてもらえたら一番ですけど、そうでなくとも呪文とか聞く事が出来たら儲け物ですし、この世界に来て使う事が目的の上位にある魔法が見られる。まさに千載一遇のチャンスなのですから。
「ああそれが良いね。それとそっちのヤツをやろうかね。ほらあんた達もちゃっちゃと枝落としちゃっとくれ」
軟化させる木を選ぶと邪魔なのだろうか枝を掃わせる。隣との重なりが無い木ばかりを選んでいる所を見ると重なっていると効率が悪いのか?はたまた魔法が通らないのか?もしそうなら枝払いながら全部動かすなら端からやった方が、作業効率は良さそうな気がするのは気のせいだろうか。
「ほぃ」
ルヒノラ婆さんが適当な木の枝を魔法使いの杖のように持ち、それを奇声と共に切り口に打ち据えた。
一瞬儀式かとも思ったが、杖を打ちつけらられた木はその形状は皿に移されたプリンのように、重力に負け体を地面にべたりと預けてしまった。
お次の木でも同じように一声の下に枝を打ち付けているだけ、これはルヒノラ婆さんが原理とか理屈を説明出来ない人だと、真似が出来ない失われた魔法化しそうな匂いがする。
そしてそのルヒノラ婆さんが、2本目でお疲れのため息をつき始める。自然発生レベルの魔法使いと言うか、生活でちょろっと魔法が使えるレベルの人の魔力なんておしなべてこの程度のモノなんだけど、本当にいつ見てもショボさしか感じられない。
某RPGの酒場で紹介して貰える魔法使いのおじいちゃんが、初級の火魔法しかつかえないのも、これを見ていれば納得がいくと言うものだ。あれとてこの世界ならかなり強力な魔法と言えるのだろうから。
ギャルっぽい女性の方は実は、アンチエイジングの方にばかり力を注いだ本当は80歳とかなら、画質の問題で小皺が見えなかったと笑えるのに。
そんな事を考えながら見ていると切り分けに入るようで、魔法がかかった木に斧を打ち下ろす。
するとどうだろう。先ほどあれだけ固い思いをしていた木が面白いようにザクザク切れていく、流石にプリンのようとはいかないが、少なくとも野菜を刻むレベルでは切れているのだ。
これは是非とも理屈を教えてもらわねば。そう思いルヒノラ婆さんに駆け寄った。
「おばあちゃん、僕この魔法覚えたいです」
ギョッとされてしまった。
「誰だいいくら柵の中って言っても、こんな小さな子をつれてくるのわ~」
「ウチの孫じゃよ」
俺が駆け寄ったのでも見えたのか、じいちゃんがそこに居た。
「おぉクライン坊かい。いくらお前さんや息子が強かろうと、その歳の孫がその強さな訳は無いじゃろ。こんな小さな子を連れて来よって危ないとは思わんのか~」
「婆様にとってはいつまでも坊のままかい。しかしウチの孫をそん所そこらの子と一緒にして欲しくは無いのぅ、それにこの伐採にしても言い出したのはウチの孫じゃしな」
「何を言っとるんじゃ」
「エド軟膏は持っとるか?」
「向こうに置いてあるから持って来る?」
祖父のうなずきに、取りに走った。
魔力が少ない人間でもやはり数が揃えば作業速度は格段に向上するもので、風を送って回復させてと飽きる作業を繰り返し、昼過ぎには切り出した木材がすべて乾燥させ終える。
しかしこの簡易乾燥法の欠点は乾燥させた後に待っているのだ。生の木と違い乾燥を終わった木材と言うものは総じて固くなる。一般的に薪は割ってから乾燥させる完全に生でなくても少しくらいの乾燥は許容内だが、簡易乾燥法を使ってまで乾かすと作業のやりづらさは一気に上がってしまうからだ。
「固ってえな」
「さすがにきついの」
「こりゃ刃がいかれちまうんじゃねえか」
案の定あちらこちらから水分が抜けて、密度が上がった木材に刃が立たない悲鳴が聞こえる。
「そうじゃ。誰かルヒノラの婆さま呼んで来い」
えっ、誰?ルヒノラ?記憶に御座いませんけど?
初めて聞く名前だ。その婆さん連れてきたら切れるの?斧にでも切れ味強化のエンチャントかけてくれる人なのかな?
この世界に来てからいわゆる生活魔法に類する魔法はいくつか見てきたが、いまだエンチャント系はお目にかかっていない。
一体どんな事をしてくれる人なのか全く持って不明なだけに興味は尽きない。
しばらくして若い衆が戸板を神輿のようにして一人の婆さまを連れてきた。見た目は百歳の双子で有名になった人のようだった。
「ルヒノラ婆さん。この木なんだが硬くてどうにもならんのだ、あれを頼めるかい?」
「こんバカタレ共が~。いきなり連れてこられて何事かと思えば、この年寄りを殺すつもりか」
うんわかる気がする、1本2本ならまだしもここには200を越える木がある訳で、どんな魔法を使うにしても絶対的な魔力量が足らんだろう。
「じゃから自分らでも出来るように覚えろと言うたに・・・・・・・・」
10代から50代くらいまでの男衆が、それこそ正座でもさせられそうな勢いでお小言をくらう光景は、ただただ滑稽なものでしかないが、俺としたら笑いをこらえる事に必死だ。
30分くらいのお小言がようやく終わった。会った事も無い俺は巻き込まれただけでは?
「わし一人では、一日朝からやって10から12本と言た所じゃな」
「婆さまなんとかならないか?俺達もやってみたんだわ。でも婆さまみたいには出来ないんじゃわ」
「甘ったれた事ぬかすで無いわ!!わしとて昨日の今日で出来るようになった訳ではないんじゃ、毎日練習せいとあれほど言うたに・・・」
あぁ。口答えなんかしたら余計に油に火を・・・じゃなかった、火に油をそそいじゃうじゃないか。
「ねえ、このおばあちゃんは何しに来たの?」
近くにいたおっちゃんに聞いてみた。現状無駄に説教が長いばあさんでしか無いのだ。
「エドは会ったこと無いのか?ルヒノラ婆さんは、硬いものを柔らかくする魔法が使えるんだ」
そ、ソフトキタ~~~~♪♪♪
お小言が終わったのか、おっちゃん達に担がれてルヒノラ婆さんは木材が積まれていた場所へと移動を始めてた。
俺?もちろん着いて行きますよ。教えてもらえたら一番ですけど、そうでなくとも呪文とか聞く事が出来たら儲け物ですし、この世界に来て使う事が目的の上位にある魔法が見られる。まさに千載一遇のチャンスなのですから。
「ああそれが良いね。それとそっちのヤツをやろうかね。ほらあんた達もちゃっちゃと枝落としちゃっとくれ」
軟化させる木を選ぶと邪魔なのだろうか枝を掃わせる。隣との重なりが無い木ばかりを選んでいる所を見ると重なっていると効率が悪いのか?はたまた魔法が通らないのか?もしそうなら枝払いながら全部動かすなら端からやった方が、作業効率は良さそうな気がするのは気のせいだろうか。
「ほぃ」
ルヒノラ婆さんが適当な木の枝を魔法使いの杖のように持ち、それを奇声と共に切り口に打ち据えた。
一瞬儀式かとも思ったが、杖を打ちつけらられた木はその形状は皿に移されたプリンのように、重力に負け体を地面にべたりと預けてしまった。
お次の木でも同じように一声の下に枝を打ち付けているだけ、これはルヒノラ婆さんが原理とか理屈を説明出来ない人だと、真似が出来ない失われた魔法化しそうな匂いがする。
そしてそのルヒノラ婆さんが、2本目でお疲れのため息をつき始める。自然発生レベルの魔法使いと言うか、生活でちょろっと魔法が使えるレベルの人の魔力なんておしなべてこの程度のモノなんだけど、本当にいつ見てもショボさしか感じられない。
某RPGの酒場で紹介して貰える魔法使いのおじいちゃんが、初級の火魔法しかつかえないのも、これを見ていれば納得がいくと言うものだ。あれとてこの世界ならかなり強力な魔法と言えるのだろうから。
ギャルっぽい女性の方は実は、アンチエイジングの方にばかり力を注いだ本当は80歳とかなら、画質の問題で小皺が見えなかったと笑えるのに。
そんな事を考えながら見ていると切り分けに入るようで、魔法がかかった木に斧を打ち下ろす。
するとどうだろう。先ほどあれだけ固い思いをしていた木が面白いようにザクザク切れていく、流石にプリンのようとはいかないが、少なくとも野菜を刻むレベルでは切れているのだ。
これは是非とも理屈を教えてもらわねば。そう思いルヒノラ婆さんに駆け寄った。
「おばあちゃん、僕この魔法覚えたいです」
ギョッとされてしまった。
「誰だいいくら柵の中って言っても、こんな小さな子をつれてくるのわ~」
「ウチの孫じゃよ」
俺が駆け寄ったのでも見えたのか、じいちゃんがそこに居た。
「おぉクライン坊かい。いくらお前さんや息子が強かろうと、その歳の孫がその強さな訳は無いじゃろ。こんな小さな子を連れて来よって危ないとは思わんのか~」
「婆様にとってはいつまでも坊のままかい。しかしウチの孫をそん所そこらの子と一緒にして欲しくは無いのぅ、それにこの伐採にしても言い出したのはウチの孫じゃしな」
「何を言っとるんじゃ」
「エド軟膏は持っとるか?」
「向こうに置いてあるから持って来る?」
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