異世界生活物語

花屋の息子

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57モンスターの生態?

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 マリオネルさんが血相を変えて報告にあった土製の底抜け樽を確認しに走っていった。あの隊長をあそこまで動揺させられる土の樽は、それなり以上に危険な物なのかもしれない。
 確認作業はそれだけの騒動にもかかわらず、早々に片がついたようで、先ほどとは打って変わったかのような、マリオネルさんの軽い笑みがそれを物語っていた。

「マリオネルさん、何かあったんですか?」
「さっきものすごい顔で走って行かれたので、皆心配して居ったのですが」

 近くの伐採組みがその光景を見ていたため、隊長を走らせるほど危機が起こったのでは?と、皆が一様に心配していたのだ。

「いや心配をかけてすまない。まだ新しいスケールボアの抜け殻が見つかったと言うのでので慌てたが、先日討ち果たしたものが脱いだもののようだ。念のために周囲の哨戒に出しているが、数から言って間違いは無いだろうから、スケールボアの危険は無いと思って作業に戻って貰いたい」

 ああ、俺が始めて治療薬の試験をした日のやつか、それより抜け殻って?ボアって言うくらいだからイノシシだよね。イノシシって脱皮するの?哺乳類は脱皮するの?少なくとも俺の知ってるイノシシは脱皮などしない。
 それともヌタの上位互換ってやつで、体を土で完全に包んで寄生虫や何かを脱ぎ捨てているのだろうか?流石は異世界なだけはある。
 これが2000~3000年後なら、テレビとかの野生動物特集ドキュメンタリーで、脱皮の瞬間とか見られたんだろうな、安全なテレビの前でお茶でも飲みながら。
 未来の人類よ、ご先祖様はそんなのと戦いながら生きてたんだよ~なんちって。
 取り合えずの危機は去った。打ち洩らしが居たところで哨戒チームの夕飯にしかならないだろう、救護班なんて暇が一番だもん。たぶん。
 哨戒班が戻ってきたのはそれからまもなくだった。

「隊長~問題ないですね。打ち洩らしが残っていそうな感じはありませんでしたし、蟻もいないところからまず問題ないかと思われます」
「ご苦労、通常警戒に戻るように皆に伝えてくれ、皆さんにもお騒がせして申し訳ない」

 ?蟻?何か関係あるのか?蟻とイノシシが仲良しって事か?ゲームなら異種族モンスターが一緒にエンカウントするのは、それほど珍しい事でもないがデカイ蟻と仲良くできる生物がいるとは思えないのだが、聞いてみるか?

「隊長さん、蟻って何ですか?」
「エド君か、先ほど話していた土の殻は、スケールボアが脱ぎ捨てた物なんだが、新しい物ほど危険があるんだ、スケールボアは何度も土でできた外皮を脱ぎ捨てるのだけど、殻に入っている時は当然動く事ができないのだ。蟻はその隙に殻に穴を開けて中にいるボアに卵を産み付けるんだが、次の脱皮時に外皮ごと別の場所で脱ぎ捨てられる。その頃には蟻も卵から出て来れるくらいになっているからそこで増えるんだよ。土の殻が見つかるとボアより蟻の方が恐ろしいのだ」

 これは寄生ってヤツだな、ボアが気の毒になってきた。ちょっとのドタバタはあったが必要量の倍近い木が伐採できたのだから大成功だろう。
 問題はこの大量の伐採木を乾燥させなければならない事で、一体何日掛かるのやら、ネックになるのはやはり乾燥に使う風魔法だ。
 回復魔法はそのイメージさえ出来れば、そもそもの魔力消費自体は高くないので、回復役の人には青っ々とした木を見て貰って、萎れたらお手本にするよう頼んである。
 最初は俺がそのまま説明しようかとも思ったが、やはりこう言う時は親に頼むのが一番だなと思い直して、父に概要説明をしてもらった。
 あまり前に前に出て小賢者扱いになっても俺の頭じゃ処理なんて出来ない。
 おっと話がずれたが、それで回復は何とかなっても風はイメ-ジが固まろうがどうしようが、風を吹かせるという動力的エネルギーを発生させるので割と燃費が悪い。こればかりは解決案が無いので日を分けながらやるしか無いだろう。
 集積地では風が吹く音のみが聞こえる。回復魔法にキラリンッとかのエフェクト音があるわけでも無いので、それは当たり前と言えば当たり前なのだが、皆もくもくと作業をしてくれている。
 俺も軟膏の番から開放されて回復魔法班に回っている、と言うか回復魔法班しか行く所がなかったと言うべきか。乾燥班の方には同じ地区でもあまり付き合いの無い人たちもいるので、気を使ったと言った方が正しい。
 目測と言うか感覚で俺の魔力は並の大人と大して変わらない処まできていると思うし、さらには理科のお勉強が役に立っているのか、運用効率は平均消費の20~25パーセント減。
 これは大人たちが頑張って4~5本に風を当ててへばる所でも俺は6本まで出来てしまう。子供が涼しい顔で大人が必死ではね、いろいろと・・・。
 その日は夕方までやって何とか全体の30パーセントほどまで乾燥を終える事ができた。また明日頑張って下さい。
 今日やって思った事は、腐葉土を作らなくてはモッタイナイって事だ。生木を持ち込んでいる事もあって、乾燥後にはとんでもない量の落ち葉が貯まる。細枝クラスまでは焚付けとして使うので用途があるが、よくよく先端の小枝や落ち葉に関しては、今までなら森で廃棄してしまうために、集落内で利用される事はなかったため、このままではゴミ扱いで燃やされるか森にまとめて捨てられてしまう運命にしかならない。
 落ち葉のみの腐葉土なら1年、砕いた小枝は2年もまとめて積んで置けば、畑に漉き込める良い堆肥に変わってくれるのだから、これを利用し無い手は無いだろう。
 森がこれだけ潤沢に使えるのに、何故落ち葉の利用がされなかったかって、モンスターが怖かったからでしょ、土壌における有機物施用なんて学術的な事を知ってる訳無いですし。
 木製堆肥って一年じゃ土に還らないから年単位のC/N比とかちょっといろいろあるけど、大量じゃなければさほど問題にはならないし、土に還らないので気相確保するためにはかなり有効だったりするんだよね。
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