異世界生活物語

花屋の息子

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48ジョーカーの回収案

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 この案は少なくともあの隊長さんが話に乗ってくれなければ、全く意味を成さないのだけど、傷を負う事が多い兵士職にいる人間なら、回復魔法によるデメリットはガチピンチの時用に取って置きたいだろうから、取引材料としては十分だと思う。
 この辺りは今はまだ完全に獲らぬ何とかの皮算用でしかないので、父経由ででも隊長さんに話をして貰って、プレゼンと言う運びになってくるだろう。
『しばらくは、余計な事は話さないけどね』
 クリームが2日しか持たないという事実。
 これは誰にも話していないし2日で湯煎して一度油に戻せば良いだけだが、3日置いて完全に固化してしまった油は二度とクリームには戻せない。俺も解決方法が無いのだから長期保存は出来ずない。
 確かに湯煎し直せば良いのだが、その辺りは面倒なので毎日使った分だけ補充でもして貰えば良いかもしれないし、そちらの製造法は好きに使って貰えれば問題ない。
 それよりも俺が推すのは、回復効果を少し上げる薬草が添加された優れモノなので、こちらをお買い上げいただければよい。
 100均と値段が上の商品があっても、そのプチ高級品が駆逐されないのと同じ原理で、やはり良い品の方が欲しいと言うニーズはそれなり以上にはあるものだ。ましてそれが命を左右するかも知れない品となればなおの事。
 それにこれは所謂ハンドクリームと同じなので、ベタベタ付ければ効果が上がるものでは無く塗り広げて使うものなので、余程の創傷患者が大量に出無ければ俺一人でも50人分だろうが100人分だろうが、それ様の鍋さえあれば一回に2日分は作る事が可能だ。
 製造法が広まるにつれて玉石混淆にはなってくるだろうが、効果があることが知れれば今回の女性陣の手荒れから擦り傷切り傷までと、先の長い良い商売が出来そうだ。
 ちなみにハイブランド品作りにはウェインを誘うつもりでいる。ゆくゆくは義理の兄になるのだから、姉さんの婿に俺からの早めの結婚祝いとして全権ごと贈れば、これに勝る結婚祝いは無いだろう。
 生産量だけならば500人分/一回を作る事が出来るようになる計算だが、単純にクリームだけ作っているのなら人手が要らない事だが、販売やその他までやるとなれば当然人手を入れなければ、俺はハンドクリーム屋さんを異世界で開く事になる。それは無いだろう?
 誘える人材はまず家族からだ。大阪で天下を取った人も弟を誘ったり甥などを取り立てて重臣とした。なので俺は義兄からだ。天下は取れなくても夢は大きいのだ。

「それでねじいちゃん。隊長さんとお話しできないかな」

 将来の姉夫妻商会立ち上げ構想にしても、領軍の協力と支援は何としても取り付けなければ始まらない。完全に御用商人制度を作ろうと言う訳だが。
 そもそも土器一つ作るだけで、何故こんなにも話がややこしい事になるのかと言われると、「いや~ま~ね~」としか言えないけれど仕方が無いじゃない?

「そうじゃの、朝食が済んだら行ってみるか?」
「うん」

 親父はこんな事に兵たちを駆って良いのか?って顔をしているけど、じいちゃんは女性陣達から詰め寄られる未来が見えているんだろう。
 それに流石の女性陣も男衆の命と手荒れを天秤かけるとまでなれば、あまりな事も言えないだろうからして、行ってみて交渉しましたという事実は重要だ。
 ダメならそこまで、良ければそれはそれと、やるだけの事はやったと言う既成事実で取り繕う腹のようだ。
 けどこれ頑張ったけどダメでしたで、納得してくれるかは別だと思うよじいちゃん。

「うんとね、準備したいものがあるから、昼食の後が良いんだけど」
「そうか。お前がする事じゃ。それで良いならそうすると良い」
「エド頑張ってくるのよ」

 聞けば聞くほどおかしな話だ。じいちゃんは交渉はお前に任せるって感じだし、母さんは俺が話すの前提で言ってくるし、四歳児に何させてるんだよ。
 そんな事も言えずに、朝食をとった俺は早々に肉屋まで走る事になった。
 相も変わらず裏のゴミ置き場に、捨てる部位といっしょにあるから持っていってかまわないと言われ、一人でせっせと小さめのズタ袋に脂身を詰める。
 今回は試供品分だけだから量は要らないので、1キロ分ほど詰めおっちゃんに礼だけ言ったら、道草を食いに寄り道。本当に食べる訳ではないが、道端の香草をいくつか摘んで持ち帰るのだ。
 ハーブなんて高尚な物じゃないが、モグサの様に使うものと良い香りのする草なのでクリームに混ぜ込むには丁度いいだろ?
 香りの合いそうな所を3種類摘めたので、早速納屋に駆け込んで作業を開始した。何度やっても脂身を潰す作業は悪くない。グチャグチャに潰し終えた所で抽出作業を行うのと平行して香草の脱水だ。
 送風回復送風回復と繰り返してカサカサになった物を砕いて粉末にしておく。
 片手間ならぬ右手間に灰汁をこまめに取り除いて、左手間に香草の粉末を調合していく。忙しい事この上ない。
 完全に灰汁を取ったら湯を変えて再度精製だけはしっかりとやっておく、利用法が見つからないスープは取りあえず余っている枡にでも。
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