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41道具って偉大だな
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ガッガッと斧を振るうオヤジの背中。バキッバキッと音を立てて木が木端に変わっていく。「は~」俺も斧が一人で振るえるようになれば、ちょっとはカッコいいのかな?。
木は斧で伐採しているので、時代劇に出てくるような切り株くらいの丸太の上で直立している訳ではない。薪割等もある程度の長さに切られて地面に寝ている物を、これまた斧で割っていくのだ。
やっぱり斧を使うのは非効率すぎる。いくら上手に斧を振るっても同じ所に当て続ける事など出来はしない。必ずズレが生じて、本来であれば傷つけるべきでないところに振るった刃を落としてしまうのだから。
これがノコギリだったらどうだろうか?一度当てて前後させるだけで木が切れていく。それも寸分違わぬ溝が切断されるまでだ。さらに言えば俺のような子供であろうと大人であろうと、人を選ばずに使うことが出来ると言うのも、大きなメリットと言えるであろう。
「エド、このくらいで良いのか?」
父が斧で指した先には、軽く枡を50個は作れるであろう木の端材が小山を築いていた。
「う、うん多すぎるくらい・・・」
「俺も使うことがあるから、多いくらいは気にしなくても良い」
ここからさらに製材するんだから、俺がやるのはせいぜい20数個と言ったところだ。それ以上は100パー飽きる。中学の頃木工の授業でリンゴのオブジェを作った事を思い出してしまった。
あの時は、出来の良いものをひとつ提出するという事で、三個同時進行で製作して結果二つは未完成、何とか仕上げた一つを提出するという、何ともお粗末な事をしたのも今となっては良い思い出だ。
しかし今回の枡は途中であきらめる訳には行かない縛りプレイで、これの成否いかんで今後俺の発言力が大きく変るのだから頑張るしかない・・・頑張りますよ・・多分・・きっと。は~。
まあ何も今日明日に仕上げる必要は無いので、取りあえずは骨用とスープ用と併用のための3個でよい。後は毎日作っては植え、作っては植えを繰り返せばよいのだ・・・スープ腐らないかな?まあ腐っても豚糞液肥くらいに思えば良いじゃない。
何はともあれ、一日3個、これが今日からのノルマとして、チビチビ進めていこう。
鉈をコンコンと当てながら表面をならして、厚手のナイフを彫刻刀のように使いながら小口に溝を刻んで、表面はざっくりとした仕上げで問題ないが小口の溝はそういかない。しっかりとはまって抜けないようにしなければ枡とは呼べない訳で、ひたすらコンコンカリカリ・・・地味すぎる。
いまだに赤金虫は金属加工に回っていないので、使用時には是非意見を言わせて貰いたい。
ノコギリと鑿、本当はカンナも欲しい所だが、最低限ノコギリだけでも作って下さいな。
二時間ほど掛けて、ようやく3個の枡を仕上げることが出来た。「時間」? もちろん体感ですよ。作るには作った獣脂ロウソクの試験にはいまだ移れていないのですから。
前世がそうだった様に、どうにも脇道に逸れて大幅に脱線する性格は、そう簡単には直らないようだ。
魔法があるのならスキルとかジョブとかあったって良いだろうと思うが、その辺りの補正なしのパンピーには……いやレベルが金利程度の魔法使いには、知識はあれど木工仕事がはかどる余地は無いのだ。
「しっかしさ。これにこんなに時間がかかるとは・・・明日から一週間は早起き決定だな」
せっかく子供に生まれたからには、遊びも重要な事だろ?仕事漬けの生活なんて大人になってからで十分だ。まあこっちの世界は日本のサラリーマンほどは働かないけどな。それでも子供の内に思いっきり遊ばなくてどうするよ?
外に出るとまだ明るく沈むには早い時間だったので、畑に行き今日分のカイバクを取ってくる事にした。
「パパ、土とカイバク貰って行くね~」
「その隅に生えてるやつなら持っていても良い。その代わりしっかりやれよ」
畑の隅には種籾を撒いた物ではなく、収穫の時か何かにこぼれたのだろう、何本ものカイバクが不規則に生えていた。
正規栽培で無いから、このまま雑草といっしょに刈られてしまう運命のカイバクに、俺の実験という高尚な目的に付き合って貰う事になった。
土と共に掘り起こしては枡の方に鉢上げをして、二時間かかった枡作りに対して、植え替え作業はたったの数分。なにやら心が折れそうです。
三個いっぺんには持てないので、一つ一つ運んでは庭先の日当たりの良いところに並べていく。これで棚でも作ったら盆栽にでも見えるかな?
早速納屋にある骨のペーストと黒スープを、少量づつ試験区ごと施用していく。後は毎日これの繰り返しだ。
納屋の棚にペーストは収納するとして、黒スープは下屋の下に放置かな? 間違って捨てられないように隠しておかなくっちゃ。
納屋に片付けに戻ると、父と祖父二人の斧が立てかかっているのが目に付いた。地球の実物の斧というよりはゲームのドワーフ用バトルアックスに、長めの柄を付けた見たいなスタイルの物で、厚手幅広と俺の知っている物の真逆を行く。
一番最初のものは家庭を築くと親より貰う風習だそうだが、さすがに刃が磨り減ったりして壊れたら泣く泣く交換するしかないが、金属資源が地球サイズの黄金虫なので簡単に確保できないから本当に泣く泣く何だろうな。
この斧には重大な欠陥がある。身体強化でゴリマッチョが大木をまるで鉈で小木をたたくかのようにフルスイングするには良いのだが、普通の斧のように使う分としては非常に使いづらそうな一品という事だ。
真剣に身体強化を使えるようにならないと、親父から贈って貰えなさそうだな。
木は斧で伐採しているので、時代劇に出てくるような切り株くらいの丸太の上で直立している訳ではない。薪割等もある程度の長さに切られて地面に寝ている物を、これまた斧で割っていくのだ。
やっぱり斧を使うのは非効率すぎる。いくら上手に斧を振るっても同じ所に当て続ける事など出来はしない。必ずズレが生じて、本来であれば傷つけるべきでないところに振るった刃を落としてしまうのだから。
これがノコギリだったらどうだろうか?一度当てて前後させるだけで木が切れていく。それも寸分違わぬ溝が切断されるまでだ。さらに言えば俺のような子供であろうと大人であろうと、人を選ばずに使うことが出来ると言うのも、大きなメリットと言えるであろう。
「エド、このくらいで良いのか?」
父が斧で指した先には、軽く枡を50個は作れるであろう木の端材が小山を築いていた。
「う、うん多すぎるくらい・・・」
「俺も使うことがあるから、多いくらいは気にしなくても良い」
ここからさらに製材するんだから、俺がやるのはせいぜい20数個と言ったところだ。それ以上は100パー飽きる。中学の頃木工の授業でリンゴのオブジェを作った事を思い出してしまった。
あの時は、出来の良いものをひとつ提出するという事で、三個同時進行で製作して結果二つは未完成、何とか仕上げた一つを提出するという、何ともお粗末な事をしたのも今となっては良い思い出だ。
しかし今回の枡は途中であきらめる訳には行かない縛りプレイで、これの成否いかんで今後俺の発言力が大きく変るのだから頑張るしかない・・・頑張りますよ・・多分・・きっと。は~。
まあ何も今日明日に仕上げる必要は無いので、取りあえずは骨用とスープ用と併用のための3個でよい。後は毎日作っては植え、作っては植えを繰り返せばよいのだ・・・スープ腐らないかな?まあ腐っても豚糞液肥くらいに思えば良いじゃない。
何はともあれ、一日3個、これが今日からのノルマとして、チビチビ進めていこう。
鉈をコンコンと当てながら表面をならして、厚手のナイフを彫刻刀のように使いながら小口に溝を刻んで、表面はざっくりとした仕上げで問題ないが小口の溝はそういかない。しっかりとはまって抜けないようにしなければ枡とは呼べない訳で、ひたすらコンコンカリカリ・・・地味すぎる。
いまだに赤金虫は金属加工に回っていないので、使用時には是非意見を言わせて貰いたい。
ノコギリと鑿、本当はカンナも欲しい所だが、最低限ノコギリだけでも作って下さいな。
二時間ほど掛けて、ようやく3個の枡を仕上げることが出来た。「時間」? もちろん体感ですよ。作るには作った獣脂ロウソクの試験にはいまだ移れていないのですから。
前世がそうだった様に、どうにも脇道に逸れて大幅に脱線する性格は、そう簡単には直らないようだ。
魔法があるのならスキルとかジョブとかあったって良いだろうと思うが、その辺りの補正なしのパンピーには……いやレベルが金利程度の魔法使いには、知識はあれど木工仕事がはかどる余地は無いのだ。
「しっかしさ。これにこんなに時間がかかるとは・・・明日から一週間は早起き決定だな」
せっかく子供に生まれたからには、遊びも重要な事だろ?仕事漬けの生活なんて大人になってからで十分だ。まあこっちの世界は日本のサラリーマンほどは働かないけどな。それでも子供の内に思いっきり遊ばなくてどうするよ?
外に出るとまだ明るく沈むには早い時間だったので、畑に行き今日分のカイバクを取ってくる事にした。
「パパ、土とカイバク貰って行くね~」
「その隅に生えてるやつなら持っていても良い。その代わりしっかりやれよ」
畑の隅には種籾を撒いた物ではなく、収穫の時か何かにこぼれたのだろう、何本ものカイバクが不規則に生えていた。
正規栽培で無いから、このまま雑草といっしょに刈られてしまう運命のカイバクに、俺の実験という高尚な目的に付き合って貰う事になった。
土と共に掘り起こしては枡の方に鉢上げをして、二時間かかった枡作りに対して、植え替え作業はたったの数分。なにやら心が折れそうです。
三個いっぺんには持てないので、一つ一つ運んでは庭先の日当たりの良いところに並べていく。これで棚でも作ったら盆栽にでも見えるかな?
早速納屋にある骨のペーストと黒スープを、少量づつ試験区ごと施用していく。後は毎日これの繰り返しだ。
納屋の棚にペーストは収納するとして、黒スープは下屋の下に放置かな? 間違って捨てられないように隠しておかなくっちゃ。
納屋に片付けに戻ると、父と祖父二人の斧が立てかかっているのが目に付いた。地球の実物の斧というよりはゲームのドワーフ用バトルアックスに、長めの柄を付けた見たいなスタイルの物で、厚手幅広と俺の知っている物の真逆を行く。
一番最初のものは家庭を築くと親より貰う風習だそうだが、さすがに刃が磨り減ったりして壊れたら泣く泣く交換するしかないが、金属資源が地球サイズの黄金虫なので簡単に確保できないから本当に泣く泣く何だろうな。
この斧には重大な欠陥がある。身体強化でゴリマッチョが大木をまるで鉈で小木をたたくかのようにフルスイングするには良いのだが、普通の斧のように使う分としては非常に使いづらそうな一品という事だ。
真剣に身体強化を使えるようにならないと、親父から贈って貰えなさそうだな。
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