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15森の番人はじいちゃんの知り合い?
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そう思いながらやっとの思いで町までたどり着いた俺を、少しだけ安堵させる光景が飛び込んできた。
最初に走りこんだヘタレ兄ちゃんたちを見て、詰め所にいた兵士たちが父たちの援軍に出てくれたのだ。脛当ての上から太股に至るまでしっかりと革を巻いて、大顎対策も万全の兵士10人が槍を持って駆け出していく。
「坊主。怖くなかったか?あれで泣かないとは見所があるな」
装備自体は兵士の物と変わらない革鎧に見えるが、よくよく見ると所々金属補強がされ少し物の良い装備という事が分かる、年は30歳くらいな男が声を掛けてきた。
「グラハムの息子ですから、このくらい平気です。父たちを助けに行ってくれてありがとうございます」
たぶんお偉いさんなのだろう。ここは父や祖父の為にもきちっと挨拶をしておかなければな。
「グラハムと言えば・・・そうかクライン殿の孫であったか。心配はいらぬよ。お前の祖父や父たちは、我等の助けなど無くても蟻ごときに遅れを取ったりせん」
あれ?父たちをご存知でしたか?失礼な態度を取らなくて良かった~。相手さんも年の割りにしっかりとした態度の俺に驚いた感じだったし、印象的には上々の感は出たと思う。
「マリオネル隊長。第二隊準備完了しました」
「他の魔物が出てこないか柵を見て回れ。必ず三人一組で異変があれば即座に報告せよ。行け」
「はっ」
何も森に人がいたから襲ってきたとは限らない。森は魔物たちの巣窟なのだ。一箇所で沸いたと言う事は、他でも湧き出る可能性があると言う事なのだろう。
マリオネルと呼ばれた隊長さんは、その可能性を潰す為に第二隊を編成して居たんだと思う。聞いただけの領主さんとこの人しか知らないけど、お偉いさんがこんなにもまともな世界と言うものもあるんだなと、変な所に感心したくなる。
ふんぞり返った貴族とかが治める国とかだと、この理不尽な世界よりも我慢が出来そうに無いから、俺にとっては不幸中の幸いと言うか何と言うかだけど。
その間にも蟻は増援によって数の優位さを埋められた為か、はたまた父たちでもどうにかなるほどの敵だったのか、その数を大きく減らして大半が討ち取られて残り数匹を残すまでになっていた。
蟻の外皮はなかなかに硬いようで、皆一様に頭への集中攻撃で倒している。頭を集中的に攻撃して、脳震盪でも起こしていると思われるへたり込んだ蟻を、すかさず斧でのギロチン攻撃で仕留めていく戦法に見えた。
最後の一匹を仕留めた。
父の周りに居たおっさんズたちは、その場にへたりこんで兵士達は周囲に敵が居ないかの警戒を行っている。
それにしても何と丈夫な蟻な事か、あれだけ槍と剣での攻撃受けてスタンに持ち込むことでしか倒せないとは、魔物の恐るべき防御力に対抗策で頭を痛めそうだ。
自分でなら兜を被って同じ事をやれと言われたら、一発二発でノックアウトできる自信がある。
「時にグラハム殿の孫よ。名を何と言う?」
俺の後にいたマリオネルさんにそう声をかけられた。「このタイミングかよ」「もっと聞くタイミングはあっただろ」とは思ったが、まあそんな意地悪な事は言わないで措こう。名乗らなかったのは俺なのだから。ちょっと反省。
「エドワードと言います、今年で四歳になりました」
マリオネルほど精神的に老け込んでいた訳ではないが、まあ生前の俺は似たような歳だった訳で。名前を聞いたら年齢を聞くなんて、大体この年代の流れみたいなものだから歳もついでに答えておいた。
「四つの子供には思えん位だな。先の受け答えもそうだが、なかなか面白き子だ」
よく言われるよ。中身おっさん入ってるんで勘弁して下さい。
「隊長。報告します。南側全域に異常ありませんでした」
駆け足で報告に来た兵士の報告を聞いて連戦にならなくて心底良かったと思う。軍兵訓練を受けていない普通の農民が混じった前線がいる以上、ここでの敵の第二波なんかあった日には確実に怪我ではすまない被害になる事は、いまだにへたっているおっちゃんたちを見ればあきらかだろう。
流石に追撃があったら立たせてでも逃がすのだろうが、兵士たちは警戒をしたままおっちゃんたちの体力の回復を待っている。
その後も5分程度立ち上がる者は無く。痺れを切らした兵に「休むなら柵まで戻れ」と肩を叩かれて、やっと重い腰を上げたのだった。
「クライン殿、久しぶりですな」
マリオネルが祖父を見つけてそう挨拶をする。本来なら祖父の方が礼を言うのが正しいのだろうが、それ程の旧知と言う事なのだろう。
「マリオネルか。世話をかけたな。礼を言う。流石に軍団蟻には手を焼いておった所じゃった」
「ご冗談を、北の壁と呼ばれたクライン殿には羽虫も蟻も大差ありますまい」
そう言うとマリオネルは、大きく笑った。
「隊長さん、北の壁って?」
「何じゃ?聞いた事が無かったのか?」
「マリオネル、古い話はよせ」
えー、じいちゃん気になるよ。
エド「ウチはびっくり人間の集まりかよ」
作者「そんな事は無いと思うよ…たぶん」
最初に走りこんだヘタレ兄ちゃんたちを見て、詰め所にいた兵士たちが父たちの援軍に出てくれたのだ。脛当ての上から太股に至るまでしっかりと革を巻いて、大顎対策も万全の兵士10人が槍を持って駆け出していく。
「坊主。怖くなかったか?あれで泣かないとは見所があるな」
装備自体は兵士の物と変わらない革鎧に見えるが、よくよく見ると所々金属補強がされ少し物の良い装備という事が分かる、年は30歳くらいな男が声を掛けてきた。
「グラハムの息子ですから、このくらい平気です。父たちを助けに行ってくれてありがとうございます」
たぶんお偉いさんなのだろう。ここは父や祖父の為にもきちっと挨拶をしておかなければな。
「グラハムと言えば・・・そうかクライン殿の孫であったか。心配はいらぬよ。お前の祖父や父たちは、我等の助けなど無くても蟻ごときに遅れを取ったりせん」
あれ?父たちをご存知でしたか?失礼な態度を取らなくて良かった~。相手さんも年の割りにしっかりとした態度の俺に驚いた感じだったし、印象的には上々の感は出たと思う。
「マリオネル隊長。第二隊準備完了しました」
「他の魔物が出てこないか柵を見て回れ。必ず三人一組で異変があれば即座に報告せよ。行け」
「はっ」
何も森に人がいたから襲ってきたとは限らない。森は魔物たちの巣窟なのだ。一箇所で沸いたと言う事は、他でも湧き出る可能性があると言う事なのだろう。
マリオネルと呼ばれた隊長さんは、その可能性を潰す為に第二隊を編成して居たんだと思う。聞いただけの領主さんとこの人しか知らないけど、お偉いさんがこんなにもまともな世界と言うものもあるんだなと、変な所に感心したくなる。
ふんぞり返った貴族とかが治める国とかだと、この理不尽な世界よりも我慢が出来そうに無いから、俺にとっては不幸中の幸いと言うか何と言うかだけど。
その間にも蟻は増援によって数の優位さを埋められた為か、はたまた父たちでもどうにかなるほどの敵だったのか、その数を大きく減らして大半が討ち取られて残り数匹を残すまでになっていた。
蟻の外皮はなかなかに硬いようで、皆一様に頭への集中攻撃で倒している。頭を集中的に攻撃して、脳震盪でも起こしていると思われるへたり込んだ蟻を、すかさず斧でのギロチン攻撃で仕留めていく戦法に見えた。
最後の一匹を仕留めた。
父の周りに居たおっさんズたちは、その場にへたりこんで兵士達は周囲に敵が居ないかの警戒を行っている。
それにしても何と丈夫な蟻な事か、あれだけ槍と剣での攻撃受けてスタンに持ち込むことでしか倒せないとは、魔物の恐るべき防御力に対抗策で頭を痛めそうだ。
自分でなら兜を被って同じ事をやれと言われたら、一発二発でノックアウトできる自信がある。
「時にグラハム殿の孫よ。名を何と言う?」
俺の後にいたマリオネルさんにそう声をかけられた。「このタイミングかよ」「もっと聞くタイミングはあっただろ」とは思ったが、まあそんな意地悪な事は言わないで措こう。名乗らなかったのは俺なのだから。ちょっと反省。
「エドワードと言います、今年で四歳になりました」
マリオネルほど精神的に老け込んでいた訳ではないが、まあ生前の俺は似たような歳だった訳で。名前を聞いたら年齢を聞くなんて、大体この年代の流れみたいなものだから歳もついでに答えておいた。
「四つの子供には思えん位だな。先の受け答えもそうだが、なかなか面白き子だ」
よく言われるよ。中身おっさん入ってるんで勘弁して下さい。
「隊長。報告します。南側全域に異常ありませんでした」
駆け足で報告に来た兵士の報告を聞いて連戦にならなくて心底良かったと思う。軍兵訓練を受けていない普通の農民が混じった前線がいる以上、ここでの敵の第二波なんかあった日には確実に怪我ではすまない被害になる事は、いまだにへたっているおっちゃんたちを見ればあきらかだろう。
流石に追撃があったら立たせてでも逃がすのだろうが、兵士たちは警戒をしたままおっちゃんたちの体力の回復を待っている。
その後も5分程度立ち上がる者は無く。痺れを切らした兵に「休むなら柵まで戻れ」と肩を叩かれて、やっと重い腰を上げたのだった。
「クライン殿、久しぶりですな」
マリオネルが祖父を見つけてそう挨拶をする。本来なら祖父の方が礼を言うのが正しいのだろうが、それ程の旧知と言う事なのだろう。
「マリオネルか。世話をかけたな。礼を言う。流石に軍団蟻には手を焼いておった所じゃった」
「ご冗談を、北の壁と呼ばれたクライン殿には羽虫も蟻も大差ありますまい」
そう言うとマリオネルは、大きく笑った。
「隊長さん、北の壁って?」
「何じゃ?聞いた事が無かったのか?」
「マリオネル、古い話はよせ」
えー、じいちゃん気になるよ。
エド「ウチはびっくり人間の集まりかよ」
作者「そんな事は無いと思うよ…たぶん」
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