異世界生活物語

14金属は貴重品、代替案は・・・無理だ

　前回も少し入れましたが話の中に出てくる「金」とは、ゴールドやマネーでは無く金属の事とご理解いただければと思います。



「ウェインは、これからどの位の金が取れるか知ってるん？」

　量くらいは知りたい。ある程度まとまった量が採れるなら”おこぼれ”を貰いたいし、採れないなら金属以外の材料を使って、いろいろと作る方向で今後を決めなければならない。
　どちらにせよ今後の道具開発には重要な話になる訳で、それならば多いと嬉しいな～などと思う。

「そうだな。両方で８ケムくらいはあるだろうから、まあ７ケムくらいは採れるんじゃないか」

　何かおかしくないか？、８５パーセントオーバーの回収率だと？なぜそんなに取れるのに、金属文明の発達が進まないのだ？

「そんなに取れるのに、あんまり使われてないの？」
「エドも以外と知らないんだな。赤金虫だって夏のこの時期しか取れないんだぞ。それにこいつを全員で分けたら、一軒で１ケムも貰えないじゃないか」

　そこはファンタジーじゃ無いのかよ。ゲームの虫なんて雪原にも居たりするのに、春でも秋でも年がら年中採れると思ってました。

「ほら夏の間に何度か取りに来るとかさ」
「そんな事したら他の地区の人たちが取れないだろ。それに今回はお前が赤金虫を取っていたお陰で去年の取り分よりは多そうだし、大人たちは伐採に集中できたって喜んでたんだぞ」

　１キロに満たない量の金属源で喜べるって、その前に伐採後回しにしても金属確保した方が・・・駄目だ。農繁期になった今の時期、ホイホイ木を切りに来てもいられない「うおお～」思っていたよりもこの世界の金属事情は深刻なようですお母さんってヤツか？
　冗談抜きでおこぼれなんて言えないぞ。かたや生活が掛かっているんだ。実証実験もしていない子供のお遊びに、ホイホイと貴重な物を使わせてもらう訳にも行かないし、これは最低限の実績は上げないと金属使用の許可は出ないなトホホ。
　それにしても、この世界には鉄鉱石とかの金属源は存在しない物なのだろうか？発見されていないだけで存在はしているのだろうか？確認はしたいが変な事を聞くのもまずいし、どうしたものか・・・・・。

「赤金虫以外に金の元になる物はないん？」

　この聞き方なら違和感無く聞けるかな？

「聞いた事無いな。そんな物があるなら虫捕まえる何てして無いんじゃないか？」
「何だウェイン知らんのか？北の森には金の毛で覆われたネズミがおるでよ」

　話が聞こえたのだろう、近くに居たおっちゃんが面白い話を振ってくれた。なんでも逆立った金属の毛が生えたネズミが居るらしいのだ。それってハリネズミですか？

「コイツが動きは鈍いんだが金の毛が硬くてな。剣の刃が欠けちまうし襲って来る事も無いから、わざわざ狩りをせんのだ」

　これは完全にハリネズミですね。感じからいくとクギくらいの毛が生えてるのかな？それにハリネズミなら生え変わりの毛を拾えるかもしれないし、これはいい金属源として使えそうだ。

「小坊主間違ってもネズミ狩りなんて考えるんじゃねえぞ。お前の親父は討伐隊で行くだろうが、場所は北の森だ命がいくつあっても足りやしねえ。そんなのにかまってついででやれるほど甘い場所じゃねえんだ」

　北の森の危険性まで考えていませんでした。反省します。流石に父の命と引き換えにしてまでと言うのは、素材ごときでは割に合わない。金属はお手上げかな。

「おっちゃん他には何かないの？もっと安全に取れるヤツ」
「そうさな。危ねえのならいくつか知ってんだが、安全なのはあんまり無んだわ。まあそんなのがゴロゴロしてたらみんな取ってるじゃろうし」

　結局それかよ。この世界には鉱石とかは存在せんのかい？これだけファンタジーなら、ドワーフとかノームとかいたって良いじゃないか、神様どうか潤沢な金属源をボクに下さい。そう祈りたい気持ちでいっぱいだ。
　なんて事をやっている後ろでピーーっと指笛が鳴り響いた。

「さがれ、さがれ」

大声とともに荷車の方にいた大人たちが一斉にこちらに走ってきた。

「ウェイン、エドを連れて町まで走るんだ、大アリが出やがった」

　森の方に目を移すと茂みがガサガサとうごめき、数匹の巨大なアリがこちらを伺っている。その中の一匹が茂みから這い出してきたが、それはもう蟻とは呼べるものでは無かった。柴犬ほどもある蟻なんて気持ち悪い以外に現しようが無い。
　俺はウェインと共に町まで全力で走り出した。その横を必死の形相で大人たちと一緒にいた兄ちゃんたちが、全力で俺を追い抜いて逃げていく光景は何とも言えないものだ。

「年少者を庇うとかしろよ」

　まあかく言う俺も全力で逃げてはいるのだからあまり大きなことは言えないが、地球にいる様な小さな蟻に噛まれただけでも痛いのだから、あんなのに噛み付かれた日には胴体が真っ二つになってしまう。

「余計な事言って無いで走れ」

　ウェインに怒られながらも何とか柵の所までたどり着くと、大人たちが一塊になりながら撤退戦を行っているのが見えた。誰が教えたのか生活の知恵なのか、戦国時代の槍衾よろしく剣を正眼に構えてじりじりと後退して来る。三十匹ほどの蟻もいきなり襲い掛かるでもなく、やつらなりの陣形があるのか川の字型の陣形で迫ってきていた。

「大丈夫だ。お前の父さんはいつも北の森に出る化け物と戦っているんだ。あいつ等位ならどうって事ないさ」

　ウェインはそう言って励ましてくれたが、相手は数で勝っているし人間とは体格差がある。某有名なＲＰＧのスライム並みだと言うなら安心もできるが、どう見てもあの大顎は足元を狙われたら不利な戦いになるだろう。