異世界生活物語

花屋の息子

文字の大きさ
上 下
12 / 121

12材木の調達、この世界?の結婚事情

しおりを挟む
 多分6時頃だろう。人と大八車が揃ったので出発だ。流石に俺の足では邪魔になるので父が轢く大八車にちょこんと乗って積荷の斧を押さえる役だ。俺を含めてお荷物と言うんだけどな。
 土引きの道は荷車に乗るとデコボコがよく分かる。乗り心地は最悪で常に突き上げる衝撃が尻を打ち付けてくれる。                       
 2キロほどの道のりを行くと、町を囲う柵にお義理程度の門が付いた関所のような場所に着いた。
 柵の外はわずかに伐採がされているが200メートル無い程度で、その先は森森森。木が密集しているといった話ではなく、なぜここが安全な森なのか理解が出来ないほどに薄暗い密林が広がっていた。
 その口元にある切り株からは新芽が30㎝ほど吹き俺の心を和ませてくれる。森はこうやって再生していくんだね。

「エド。ここから先はどこに魔物がいるか解らない。気を抜くな」

 父の忠告が何時もの優しい口調から厳しい者に変わって、和んだ気持ちをどこかへ吹き飛ばしてしまった。

「切り株の新芽は魔物が近い印だ。木は魔物が出す魔力で勢い良く伸びるからな。この芽も前の伐採に入った地区のヤツラが刈ったはずだが、もうこんなにも伸びてしまっている」

 地球なら切り株から生えた新芽は木の世代交代のために大事にするが、この町が東を除いて森に囲まれているのは、この世界では森林破壊など起こり得ないからだった。
 切り株を見た時に衝撃を受けた。木を切ったら何十年も元に戻らない地球と違い、この世界では魔力での成長が存在する。それも年輪が見た事の無い幅で刻まれていたのだ。
 地球なら成長の良い木でも1㎝幅で、一般的にみれば5㎜程度だろう。それが直径40㎝の木に5本しか刻まれていない。脅威的なでは無く事実脅威なのだ。放置すれば簡単に町など飲み込まれる。

「エド。鉈はもう持てるな、皆が木を切って居る間、この辺りの芽を落としておいてくれ」

 普段は作業の終わりぐらいに芽を落とすらしいが、伐採作業に参加しない俺が居る今回は、ウロチョロさせない為にもちょうど良いと芽止めを仰せつかった?
 早速大人達は斧を打ち付け木の伐採に掛かるが、成長が良い割にしっかりしている木は簡単には切れず難儀している。まあチェーンソーじゃないしこの位は仕方ないかな、肉体強化系の魔法を常時使えれば難は無いのだが、それをやるといざという時に戦う体力が無くなるので魔法は使わないのが普通みたいだ。
 効率世界を知っているともどかしくて仕方が無い。
 俺の方は鉈の使い方に関しては山間部育ちの前世の記憶で問題無いが、そもそもの体力の問題でへばりそうだよ。
 それでも昼頃には、百程の切り株を処理して大人達に褒められた。代償にてはマメが出来たけどね。

「坊主良く泣き事も言わないで頑張ったな。エラいぞ。それに比べてお前らの情けね~事、疲れただなんだ言ってね~で、しっかりやれバカたれが」

 初心者組の青年達がおっちゃんAにボロクソに怒られながらの昼休憩となる。確かに作業中ちょいちょい後から「疲れた休憩」なんて聞こえてきたのだから、まだまだ一人前と認められるには時間がかかりそうだ。

「ウェイン、坊主の手を見てやれ」

 おっちゃんBに呼ばれた兄ちゃん。ウチの三軒向こうに住むウェイン君だ。コツコツ形の面倒見が良いお兄ちゃん的な頼りがいのある男である。

「あ~あこんなにして、エドワード頑張るのは良いけど頑張り過ぎるなよ。初めての奴らが怒られちゃうからな」
「へ~い、ってか結構痛いから早めに回復宜しくです」
「まあいいや。あいつらも何時までも大人に頼ってばかり居られないから、良い薬になるだろし」

 そんな事を言いながら俺の手に回復魔法を掛けてくれた。青年達には自活精神の強制植えつけとしか思えないが、甘ったれて居られるのは10歳を越えた辺りまでで、15歳前後には結婚する事を考えれば向こうで説教されている兄ちゃん達も、いい加減その自覚を持たなくてはいけない年ではあるのだ。
 ちなみにウェインはウチの父が娘婿にと狙っている男で、姉とは少しばかり歳が離れているが、ウチの場合は二代に渡って似た歳で結婚しているだけで、五つくらい男の方が上と言うのが世間的には多いらしい。

「いや~、次男で嫁が決まってる男は働きが違うもんな」っと取りあえず茶化せば、「まだ先の話だよ。畑もまだ一枚目だしな。あと五年くらいはかかるよ」とまじめ回答が帰ってきたりする。

 小学生の半ば辺りでもう将来の事を考えなければならないのも中学生辺りで結婚するのも、現代日本を知っている俺からすると何だか複雑な感じでしかないが、パラサイトしているおっさんおばさんよりまだましかな。
 俺の手が良く成ったところで昼メシになった。午後大人達は交代で各自の家まで丸太を運搬だ。
 俺は引き続き新芽刈になるのだが、当然魔物の影響を余り受けない街よりの切り株は、森からはなれた分伸びが悪いので、午前中より楽に作業を進められそうだ。
 昼メシはカイ麦製の分厚いクッキー?と肉の燻製にヒトア「ミニたまねぎ」を丸かじり、まあ外に持ち歩く弁当何てこんなもんさ。贅沢は言えないよ。
 でもね思ったよ。から揚げ弁当が食べたいって。良いじゃないか転生者だもの。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

異世界で「出会い掲示板」はじめました。

佐々木さざめき
ファンタジー
 ある日突然、ファンタジーな世界に転移してしまった!  噂のチートも何もない!  だから俺は出来る事をはじめたんだ。  それが、出会い掲示板!  俺は普通に運営してるだけなのに、ポイントシステムの導入や、郵便システムなんかで、どうやら革命を起こしてるらしい。  あんたも異世界で出会いを見つけてみないか?  なに。近くの酒場に行って探してみればいい。  出会い掲示板【ファインド・ラブ】  それが異世界出会い掲示板の名前さ!

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち
恋愛
出勤したら代替わりをした親方に解雇と言われた宝石加工職人のミカエラは独り立ちを選んだ。 次こそ自分のペースで好きなことをしてお金を稼ぐ。 労働には正当な報酬を休暇を!!!低賃金では二度と働かない!!!

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

処理中です...