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1章 葉月と樹
樹・・・告白される?
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「おいおい葉月…、そんな恨めしい顔で見るなよ。」
「だって…」
「熱海で母親と過ごすより、美味しい料理と酒に舌鼓を打ちたいんだよ。それに…」
「なんですか!それにって…」
「葉月が…あたふたするのを見れるし…からかえるしなぁ…イヒヒ…」
「理香さん~ひどい。」
「葉月をバカにできるのは、あたしの唯一の趣味なんだよ。だ・か・ら、他の奴らがお前をからかったり、笑ったりするのは我慢ならねぇの!あたしだけが葉月をからかって笑えるんだ。」
「えっ?…理香さん…私…嬉しい。」
ズズッズッ~
「鼻を啜るな…葉月。…おまえ、ぜったいMだ…なんで嬉しいってなるんだよ。」
「わかってますよ…理香さんは私を心配してるんですよね。」
「…あたしの言っていることが、おまえの頭の中でどう変換されてんだ?」
「えへへ…」
俺は…理香さんが大きく溜め息をつき、うな垂れながら…口元が綻んで行くのを見た。ほんとに…可愛くてしかたなんだ、葉月ちゃんが…
だからだ…
理香さんは企業法務専門なら…おそらく俺の立場を知っている。
内輪でやるパーティだが、俺が女性を連れてゆくことが、まわりにどう見られるか…
彼女を守るために…行くんだ。
俺と理香さんの眼があった。理香さんはフッと笑うと
「はい、はい…今日はそういうことにしておいてやるよ。葉月…そう言えば、所長が葉月に○○ランドのお土産を買ってきているから、部屋に寄れって言ってたぞ。しかし…葉月、よくあのゴリラのような猛獣所長を手懐けたもんだなぁ。」
「猛獣?…所長さんがですか?すっごく優しい方じゃないですか。」
「21歳のおまえに言うのもなんだが…お菓子をやるって言われたら、人について行きそうだなぁ。気をつけろよ。まぁ所長だから良いけど…おいおいもう12時過ぎてるじゃんか、13時に所長のところに客が来る予定だから、その前に貰って来い。」
「もう、理香さんたら…じゃぁ、行きましょうか、久住さん。」
「久住…ちょっと待て。」
「は、はい。」
葉月ちゃんと一緒に出ようとした俺に、理香さんそう言って呼び止め。
キョトンとして、俺や理香さんを見ている葉月ちゃんには
「久住に金曜日のことで、聞いておきたいことがあるから、その間におまえは、所長のところに行って来い。」
「あっ!高価なお酒を出せとか言っちゃダメですからね。」
「…あたしにそんな口を利くのか…葉月…」
「い、いってきます!!」
バタンとドアが閉まり、振り向いた理香さんの顔には表情がなかった。
「…すみません。巻き込んでしまって…」
「大方、葉月から言い出したんだろう。想像はつく。」
「俺が…久住家の…「あぁ…知っている。もっとも公園で倒れていた時は、ただの兄ちゃんだと思っていたけどね。だが、名前を聞いてピンときたよ。」」
俺の言葉に被るように言うと…
「だが、まさか厄介ごとを持ってくるとまでは読めなかった。」
そう言って…理香さんはタバコを掲げ…「良いか?」と聞いてきた、俺が頷くと…タバコに火をつけ
「葉月は…いろいろと問題を抱えている。」
「えっ?」
「お前同様に…いろいろとなぁ…今回の件で…葉月は、お前と付き合っていると思われるだろうなぁ。だが、それは出来れば避けたい…」
「俺も…それが心配です。どうやったら、ただの友人として、彼女を紹介できるかと…考えていました。」
「あの…ばあさんにどんなカードを見せたら、安心するか…だ。」
「そう簡単なカードでは、納得しないですよ。」
「だろうなぁ…。おまえが出すカードはすべて疑うだろうし…。なんたって10年前…17歳のガキのおまえが、ばあさんの大事なカードの桐谷由梨奈にちょっかいをだし…計画をおじゃんにするところだったんだ。そんなガキが、10年経って…男になってアメリカから帰ってきた。…ばあさん、恐くてしょうがないだろうよ。」
「…会長は俺なんか、恐れていませんよ。」
「いや…恐れているから、平日の昼間から、こんなところで油を売るような羽目になってんじゃないのか?…聞いているよ。お前を神輿に上げようとする…重鎮らがいるらしいなぁ。だから、あの…ばあさんは葉月を見て思ったんだろうよ。公におまえには女がいる、それもコンビニにバイトをしている、ごく平凡な女が…と公表すれば、お前を神輿に上げようとする輩の中には、動揺する奴もでるだろうと…。」
タバコを灰皿に押し付け、大きく息を吐き
「だが…葉月はダメだ。」
「理香さん…?」
理香さんの顔は青褪めて
「あいつがお前の相手だと思われたら…余計…面倒な事になる。」
「余計…面倒って…どういう意味なんですか?」
「悪いが…それはこっちの話だ。聞くな。それより…あのばあさんから直接招待され、それを葉月が受けた以上、逃げるわけにはいかない。葉月がお前の彼女という形で紹介されないように…あたしと大吾が出張る。出張ることで…それで…」
と言って…理香さんは…俺を見ると…
「……樹。おまえは、あたしと付き合っていることにしろ。」
「えっ?」
コンコンとノックが部屋に響いたが…理香さんは気が付かないのか…俺を見つめ、小さな声で「それが…一番良い。」と呟くように言ったと同時にドアが開き…
キャラクターの付いたお菓子を抱え込んだ、葉月ちゃんの前で理香さんは…
「樹。あたしの彼氏になれ。」と言った。
「だって…」
「熱海で母親と過ごすより、美味しい料理と酒に舌鼓を打ちたいんだよ。それに…」
「なんですか!それにって…」
「葉月が…あたふたするのを見れるし…からかえるしなぁ…イヒヒ…」
「理香さん~ひどい。」
「葉月をバカにできるのは、あたしの唯一の趣味なんだよ。だ・か・ら、他の奴らがお前をからかったり、笑ったりするのは我慢ならねぇの!あたしだけが葉月をからかって笑えるんだ。」
「えっ?…理香さん…私…嬉しい。」
ズズッズッ~
「鼻を啜るな…葉月。…おまえ、ぜったいMだ…なんで嬉しいってなるんだよ。」
「わかってますよ…理香さんは私を心配してるんですよね。」
「…あたしの言っていることが、おまえの頭の中でどう変換されてんだ?」
「えへへ…」
俺は…理香さんが大きく溜め息をつき、うな垂れながら…口元が綻んで行くのを見た。ほんとに…可愛くてしかたなんだ、葉月ちゃんが…
だからだ…
理香さんは企業法務専門なら…おそらく俺の立場を知っている。
内輪でやるパーティだが、俺が女性を連れてゆくことが、まわりにどう見られるか…
彼女を守るために…行くんだ。
俺と理香さんの眼があった。理香さんはフッと笑うと
「はい、はい…今日はそういうことにしておいてやるよ。葉月…そう言えば、所長が葉月に○○ランドのお土産を買ってきているから、部屋に寄れって言ってたぞ。しかし…葉月、よくあのゴリラのような猛獣所長を手懐けたもんだなぁ。」
「猛獣?…所長さんがですか?すっごく優しい方じゃないですか。」
「21歳のおまえに言うのもなんだが…お菓子をやるって言われたら、人について行きそうだなぁ。気をつけろよ。まぁ所長だから良いけど…おいおいもう12時過ぎてるじゃんか、13時に所長のところに客が来る予定だから、その前に貰って来い。」
「もう、理香さんたら…じゃぁ、行きましょうか、久住さん。」
「久住…ちょっと待て。」
「は、はい。」
葉月ちゃんと一緒に出ようとした俺に、理香さんそう言って呼び止め。
キョトンとして、俺や理香さんを見ている葉月ちゃんには
「久住に金曜日のことで、聞いておきたいことがあるから、その間におまえは、所長のところに行って来い。」
「あっ!高価なお酒を出せとか言っちゃダメですからね。」
「…あたしにそんな口を利くのか…葉月…」
「い、いってきます!!」
バタンとドアが閉まり、振り向いた理香さんの顔には表情がなかった。
「…すみません。巻き込んでしまって…」
「大方、葉月から言い出したんだろう。想像はつく。」
「俺が…久住家の…「あぁ…知っている。もっとも公園で倒れていた時は、ただの兄ちゃんだと思っていたけどね。だが、名前を聞いてピンときたよ。」」
俺の言葉に被るように言うと…
「だが、まさか厄介ごとを持ってくるとまでは読めなかった。」
そう言って…理香さんはタバコを掲げ…「良いか?」と聞いてきた、俺が頷くと…タバコに火をつけ
「葉月は…いろいろと問題を抱えている。」
「えっ?」
「お前同様に…いろいろとなぁ…今回の件で…葉月は、お前と付き合っていると思われるだろうなぁ。だが、それは出来れば避けたい…」
「俺も…それが心配です。どうやったら、ただの友人として、彼女を紹介できるかと…考えていました。」
「あの…ばあさんにどんなカードを見せたら、安心するか…だ。」
「そう簡単なカードでは、納得しないですよ。」
「だろうなぁ…。おまえが出すカードはすべて疑うだろうし…。なんたって10年前…17歳のガキのおまえが、ばあさんの大事なカードの桐谷由梨奈にちょっかいをだし…計画をおじゃんにするところだったんだ。そんなガキが、10年経って…男になってアメリカから帰ってきた。…ばあさん、恐くてしょうがないだろうよ。」
「…会長は俺なんか、恐れていませんよ。」
「いや…恐れているから、平日の昼間から、こんなところで油を売るような羽目になってんじゃないのか?…聞いているよ。お前を神輿に上げようとする…重鎮らがいるらしいなぁ。だから、あの…ばあさんは葉月を見て思ったんだろうよ。公におまえには女がいる、それもコンビニにバイトをしている、ごく平凡な女が…と公表すれば、お前を神輿に上げようとする輩の中には、動揺する奴もでるだろうと…。」
タバコを灰皿に押し付け、大きく息を吐き
「だが…葉月はダメだ。」
「理香さん…?」
理香さんの顔は青褪めて
「あいつがお前の相手だと思われたら…余計…面倒な事になる。」
「余計…面倒って…どういう意味なんですか?」
「悪いが…それはこっちの話だ。聞くな。それより…あのばあさんから直接招待され、それを葉月が受けた以上、逃げるわけにはいかない。葉月がお前の彼女という形で紹介されないように…あたしと大吾が出張る。出張ることで…それで…」
と言って…理香さんは…俺を見ると…
「……樹。おまえは、あたしと付き合っていることにしろ。」
「えっ?」
コンコンとノックが部屋に響いたが…理香さんは気が付かないのか…俺を見つめ、小さな声で「それが…一番良い。」と呟くように言ったと同時にドアが開き…
キャラクターの付いたお菓子を抱え込んだ、葉月ちゃんの前で理香さんは…
「樹。あたしの彼氏になれ。」と言った。
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