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結婚(ライドとフランシス)2
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亡くなったお母様は、私によく言っていた。
「フランシスは、どんな人と結婚するのかしら」…と
あの時…私は…
「すっごく!やさしい人!!」と言ったと思う。
好きになった人は…本当にすごく…すごくやさしい人だった
でも私は、あの人の花嫁にはなれない。この体で…あの方の妻としてはやっていけるはずがない。
わかっていたし、妹のように接していければ良いとそう思っていた。でも…杖を使ってだが、歩けるようになった私は、愚かにも欲を持ってしまった、時期に杖無しで歩けるようになるのではないかと、そうしたら貴族の妻として、やっていけるのではないかと…。
ライド様は、私の歩く練習を自ら手伝うと仰ったのだ…嫌われてはいないはず…少しは好きでいてくださるのではと……
だが小鳥の囀さえずる声に、誘われ思わす窓辺によって私は…見てしまった。
ライド様が…私の部屋を見つめ、溜め息をつかれているのを、そして背を向けて歩いて行かれるのを見てしまった。
あのお顔は…お辛そうだった。もしかして私の気持ちに気がつかれたのかも‥‥妹のように思っていた女性から、好意を抱かれていることに気づき‥‥どうしたらいいのか困っているのでは‥‥そんな考えが浮かんで消えなかった。
フランシスは、零れ落ちる涙を拭うと、ひとりで庭に出て練習の為に歩き出した。
ーでも…私は歩かなければ、お兄様やエリザベス様のお荷物になってはいけない。
初めからなにも望んでいなかったことじゃない、ライド様から好意を口にしてもらったわけじゃない、最初から何もなかった…そう何もなかった。
「明日は…いつもの私らしくしていなくては、妹のように接しなくては…、」そう何度も口にしていたが、口にしたその言葉は、心の中までは届かず、唇の上を滑っていっただけだった。
でも反対に、次々と流れる涙は真実を告げていた。でも好きなのと、あの方の妻になりたいと涙は……告げていた。
*
ライドは、一度屋敷に戻ろうかと思ったが、結局馬の手綱たづなを握ったまま動くことが出来なかった。
「やっぱり、顔を見たい…」そう独り言のように言うと、馬から降り、また来た道を引き返している時だった。フランシスが杖をついて歩いているのが見えたが…突然、フランシスが杖を離した、カタン、と軽い音をたて地面に転がり、その杖の横を一歩、また一歩と足を進める白く細い足があった。
ライドは、息を飲んだ…ここまで歩ける様になっていたことに…喜びとそして焦り感じた。
歩けるようになったら、彼女には求婚者がたくさん出てくる…俺は…。
その時、フランシスがバランスを崩し、楠くすのきの近くで倒れたしまった、ライドは顔色をなくし、冷静でいられなかったのだろう。
「フランシス!大丈夫か!」と大きな声でフランシスの名を呼び走ってきた。
「ライド様…どうしてここに…」
ライドは青い顔のまま手をフランシスに差し伸べた。
フランシスは、その手に気がつきながらも「大丈夫です。」と言って、楠に手を置いてもたれるようにして立ち上がった。ライドの顔が唖然としていた、そんなライドの顔を見ず、フランシスは立ち上がると
「私は、お兄様にも、エリザベス様にもそして…」そう言って、フランシスはようやくライドの顔を見た、真っ青な顔を見て、私と会うことがやっぱり辛いのだ…と思ったら一瞬口ごもったが…
「ライド様にもご迷惑をおかけしないように、一日でも早く自立したいと考えています。」
ライドの唇が動いた。
「俺に…迷惑をかけたくない…自立…」
フランシスは頷き、そしてまた…ゆっくりとだが杖無しで歩き始めた。
ライドの手は…先程のフランシスに差し伸べたまま、固まったようになっていた。
そんなライドの横を、フランシスは一歩ずつ足を動かした。すれ違う瞬間…!ライドの手が、フランシスを手を握った。「だめだ。」とライドの声が、聞こえた。その声はいつも軽口を叩くライドとは思えなかった。
フランシスにはそれが、妹を嗜たしなめる言葉のように思えた。
もう妹のような優しさだけでは、もう満足できない自分に気がついたから、そんな言い方はやめて欲しかった。もう嫌、妹のように嗜めないで…!、
「ライド様…、もう嫌!嫌なんです!」
「嫌?俺が君に会いにくることがか!、それともこうやって手に触れることがか!」
そう言って、ライドは…フランシスの手を引いて自分の腕のなかに…
「無理だ。…もう無理だ。…君がこのまま歩けるようになったら、違う男に君を攫われてしまう。…」
「嘘…嘘よ。だって、だって、さっきまで辛そうな顔をして、溜め息をついていらしたじゃない!!」
そう言って、ライドの腕の中でフランシスは、もがいた。
「ひどい‥‥ライド様、ひどいです。」
「フランシス!何故‥‥信じてくれない。」
「見て!私を見て!この足を見て下さい。こんな体で、夢を見ている、私を哀れんでいるのでしょう。」
フランシスの語尾は、掠れていた。
もう、言葉は紡げないくらいに震え、涙が次々と溢れていた。
ライドは、フランシスの両頬に手をやり
「哀れんで女に時間を取られるほど、俺は暇じゃない。」
そう言って、フランシスに顔を寄せ「俺を‥‥見くびるな。」と言って、フランシスの唇に、思いを込め口づけた。
「フランシスは、どんな人と結婚するのかしら」…と
あの時…私は…
「すっごく!やさしい人!!」と言ったと思う。
好きになった人は…本当にすごく…すごくやさしい人だった
でも私は、あの人の花嫁にはなれない。この体で…あの方の妻としてはやっていけるはずがない。
わかっていたし、妹のように接していければ良いとそう思っていた。でも…杖を使ってだが、歩けるようになった私は、愚かにも欲を持ってしまった、時期に杖無しで歩けるようになるのではないかと、そうしたら貴族の妻として、やっていけるのではないかと…。
ライド様は、私の歩く練習を自ら手伝うと仰ったのだ…嫌われてはいないはず…少しは好きでいてくださるのではと……
だが小鳥の囀さえずる声に、誘われ思わす窓辺によって私は…見てしまった。
ライド様が…私の部屋を見つめ、溜め息をつかれているのを、そして背を向けて歩いて行かれるのを見てしまった。
あのお顔は…お辛そうだった。もしかして私の気持ちに気がつかれたのかも‥‥妹のように思っていた女性から、好意を抱かれていることに気づき‥‥どうしたらいいのか困っているのでは‥‥そんな考えが浮かんで消えなかった。
フランシスは、零れ落ちる涙を拭うと、ひとりで庭に出て練習の為に歩き出した。
ーでも…私は歩かなければ、お兄様やエリザベス様のお荷物になってはいけない。
初めからなにも望んでいなかったことじゃない、ライド様から好意を口にしてもらったわけじゃない、最初から何もなかった…そう何もなかった。
「明日は…いつもの私らしくしていなくては、妹のように接しなくては…、」そう何度も口にしていたが、口にしたその言葉は、心の中までは届かず、唇の上を滑っていっただけだった。
でも反対に、次々と流れる涙は真実を告げていた。でも好きなのと、あの方の妻になりたいと涙は……告げていた。
*
ライドは、一度屋敷に戻ろうかと思ったが、結局馬の手綱たづなを握ったまま動くことが出来なかった。
「やっぱり、顔を見たい…」そう独り言のように言うと、馬から降り、また来た道を引き返している時だった。フランシスが杖をついて歩いているのが見えたが…突然、フランシスが杖を離した、カタン、と軽い音をたて地面に転がり、その杖の横を一歩、また一歩と足を進める白く細い足があった。
ライドは、息を飲んだ…ここまで歩ける様になっていたことに…喜びとそして焦り感じた。
歩けるようになったら、彼女には求婚者がたくさん出てくる…俺は…。
その時、フランシスがバランスを崩し、楠くすのきの近くで倒れたしまった、ライドは顔色をなくし、冷静でいられなかったのだろう。
「フランシス!大丈夫か!」と大きな声でフランシスの名を呼び走ってきた。
「ライド様…どうしてここに…」
ライドは青い顔のまま手をフランシスに差し伸べた。
フランシスは、その手に気がつきながらも「大丈夫です。」と言って、楠に手を置いてもたれるようにして立ち上がった。ライドの顔が唖然としていた、そんなライドの顔を見ず、フランシスは立ち上がると
「私は、お兄様にも、エリザベス様にもそして…」そう言って、フランシスはようやくライドの顔を見た、真っ青な顔を見て、私と会うことがやっぱり辛いのだ…と思ったら一瞬口ごもったが…
「ライド様にもご迷惑をおかけしないように、一日でも早く自立したいと考えています。」
ライドの唇が動いた。
「俺に…迷惑をかけたくない…自立…」
フランシスは頷き、そしてまた…ゆっくりとだが杖無しで歩き始めた。
ライドの手は…先程のフランシスに差し伸べたまま、固まったようになっていた。
そんなライドの横を、フランシスは一歩ずつ足を動かした。すれ違う瞬間…!ライドの手が、フランシスを手を握った。「だめだ。」とライドの声が、聞こえた。その声はいつも軽口を叩くライドとは思えなかった。
フランシスにはそれが、妹を嗜たしなめる言葉のように思えた。
もう妹のような優しさだけでは、もう満足できない自分に気がついたから、そんな言い方はやめて欲しかった。もう嫌、妹のように嗜めないで…!、
「ライド様…、もう嫌!嫌なんです!」
「嫌?俺が君に会いにくることがか!、それともこうやって手に触れることがか!」
そう言って、ライドは…フランシスの手を引いて自分の腕のなかに…
「無理だ。…もう無理だ。…君がこのまま歩けるようになったら、違う男に君を攫われてしまう。…」
「嘘…嘘よ。だって、だって、さっきまで辛そうな顔をして、溜め息をついていらしたじゃない!!」
そう言って、ライドの腕の中でフランシスは、もがいた。
「ひどい‥‥ライド様、ひどいです。」
「フランシス!何故‥‥信じてくれない。」
「見て!私を見て!この足を見て下さい。こんな体で、夢を見ている、私を哀れんでいるのでしょう。」
フランシスの語尾は、掠れていた。
もう、言葉は紡げないくらいに震え、涙が次々と溢れていた。
ライドは、フランシスの両頬に手をやり
「哀れんで女に時間を取られるほど、俺は暇じゃない。」
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