25 / 78
24
しおりを挟む
ミーナが公爵家にバックひとつで、現れたことを執事エパードから、騎士団の詰所にいた俺に連絡がきたのは、昼頃だった。
ーなぜなんだ、なぜ、俺がコンウォール家に行くのを待てない。
公爵家の婚約者がひとりで、バックひとつでやって来るなんて…ましてや、公爵家にはパメラがいるのだ。
なぜ、俺に頼らない!
そう思うと、無性に彼女に対して腹が立ち
「屋敷に戻るから、アーガイル副団長に伝えるように」と告げ俺は団長室を飛び出した。
急いで馬を走らせ、公爵家が見えた頃だった。
俺の頭をふとある思い過ぎった……。
ー偽りの結婚だから、彼女はどうでもいいと思っているのか?
俺は頼るべき男ではない…そういうことなのか?だから、軽装でひとりで来たのか?
そう思ったら、騎士団の詰所を出た勢いは、無くなっていた。
門の前で立尽くす俺の前に、使用人の誰かが知らせたのだろう、
エパードが驚いて現れたが、すぐに落ち着いたいつもの態度で
「旦那様、昨日からパメラ様は王妃様のお召しで王宮に行かれて、まだお戻りになられておりません…ご安心を。ミーナ様にもそのように申しますと、それならとフランシス様に先にご挨拶をと言われ、 今おふたりでお庭のほうにいらっしゃいます。」
「庭…?」
―庭?フランシスが?部屋を出ているのか?
俺は馬をエパードに預けると、庭へと歩き出した。
小鳥の声がする木々を見上げると、木々の間から零れる日差しが、キラキラと光の粒を撒いていた。 足元に咲く花が、俺のブーツに体を寄せながら、(どうしたの?)と言ってくる。
高い木々の間から顔を覗かせた白い花達が、久しぶりに庭をゆっくり歩く俺に、まるで(元気だった?)と懐かしげに声をかけて来るかのように、次々を舞い降りてきた。
自然と俺の口元に笑みが零れた…。
時間がここだけは、ゆっくりと流れているようだった。母上が、そして父上が亡くなってから、俺はずっと走っていたのだろうな。こんなに心が休まる場所があることを知っていたのに…忘れてしまうくらい俺は追い込まれていたんだ。
庭園内につくられた装飾的なこの小さな建物ガゼボの支柱に体を預け、眼の前で風に揺れる黄色い花に眼をやった。
母が生きていた頃、公爵家の庭園は四季折々の花が咲き乱れていた。
今も、エパード達が手入れをしていてくれるが、やはりあの頃とは違って華やかさは、少し翳ったかもしれない。だが、やはり…我が家の庭は美しかった。
風に乗って、女性たちのにぎやかな笑い声が聞こえた。
ふと、懐かしい思い出が過ぎった。
ノーフォーク王妃、マールバラ王妃、そして母上…幼馴染三人のお茶会…あの頃の庭園…。
幸せだった日々を振り返るのが辛くて、フランシスと同様、俺もこの庭には足を踏み入れることがなかなか出来なかった。
母が愛した庭だった、至る所に母の思い出があった。
このガゼボにも…。あの楠にも…。あの…花壇に溢れように植えられた花達の中にも…。この庭を愛した母の愛が、そして優しさがあった。
周りをぐるりと見渡す俺に、暖かい風が…頬を撫でていった。
「母上…長い間、独りぼっちにさせてすみません。」と自然とそんな言葉を口にしていた。
大きな楠を側を通る時、フランシスの後姿が見えた。あれほど外を嫌がっていたのに、ましてやこの庭は母が階段から落ちるきっかけとなった場所、その場所で妹が…そしてミーナが笑っている。
今はフランシスとミーナで、女性たちは変わったが、やはりこの庭園は女性たちの笑い声がよく似合う。 一際大きな笑い声が聞こえた、フランシスの声だ。そのフランシスの前で、身振り手振りを交えて話す……彼女が見えた。
時には男達を圧倒する厳しさと威厳を持ち、そしてある時は子供のような純真さと無邪気さを持つミーナ=コンウォール男爵令嬢。
彼女の姿を見て、また心がざわついた。
彼女への思いを恋だとまだ認めたくない複雑な気持ちと、彼女が俺に言えない秘密がなんなのかと…胸の中で渦巻く。
じっと見つめていた俺にいち早く気づいた彼女は、やさしく微笑んだ。
「お兄様?!」フランシスは突然現れた俺に驚いたようだったが、明るい笑顔で手を振ってきた。
フランシスは、俺に早く話したかったのか、俺の顔を見るなり早口で
「ミーナ様がお庭に行こうって…本当はすごく怖かったの、でもね、ミーナ様が‥‥」
と言ったフランシスの目にうっすらと涙が浮かんだが、ぱちぱちと瞬きをして堪えたかと思ったら、にっこり笑って、でも少し震える声で
「ミーナ様が、あのコスモスはもう咲いていないけど、ここでお母様とコスモスを植えた思い出は、ずっと残っていますよ。だから、ここでお母様に私を紹介してくださいって言ってくださったの。嬉しかった…。」
そうか…彼女も、感じてくれたんだ。この庭にある母の息吹を…。
俺は頷きながらフランシスから、ミーナに視線を移した。
フランシスの言葉にミーナの眼は潤み、そして…「…フランシス様…」と言った声は震えていた。
フランシスは、泣いたことが恥ずかしかったのか、少し下を向いて照れたように
「ミーナ様は、ほんとに素敵な方、さすがお兄様が選ばれた方ですね。」
真っ赤になった彼女の視線が、(恥しいです。助けてください。)と言って俺に向いた。
彼女の眼が…緑色の瞳が…俺を見ていた。だが一言も話さない俺に戸惑っているのだろう。彼女の緑色の瞳は、不安そうに揺れだした。
その緑の瞳に俺はどう映っているのだろう。
彼女はこの結婚は国の為にと言った。俺もそう言って約束した。
これは偽装結婚。偽りの愛。
だが…揺れている緑の瞳が愛おしいと思う。
この震える唇からたとえ偽りであったも、愛の言葉を聞きたいと思う。
…もう、認めるしかないな。彼女が隠すものが俺の心を切り裂くものであっても、俺は…
「ミーナ…」と呼んでそっと手を引き、抱き寄せると、俺の胸に飛び込んできたような形になった彼女は、とっさに俺の胸元の服をつかみ、驚いて眼を丸くしながら俺の顔を見上げた。
俺はずるい。フランシスがいるこの場なら、彼女は拒めないとわかっている。
これはお芝居だと彼女は思っているから、だから彼女の気持ちはここにはない。
それでも俺は今言っておきたい。俺の大事な母と妹の前で、この人が俺の好きな人だと。
震えている華奢な体をより強く抱きしめ…彼女の耳元に唇をよせた。
これも偽造結婚の為のお芝居だと思っている君には届かないだろう、でも言わせてくれ。
「愛してる…。」
俺は…。
何れ女王として立つエリザベスを命を懸けて守れる男になりたかった。
だが俺は何もできないままエリザベスを逝かせてしまった。そのことがずっと俺の心にあった。だからもう大切な人を作ってはいけないと思った。それがエリザベスへの贖罪だと思ったんだ。
いいだろうか…エリザベス。
君を守るために使うと誓った俺の命、他の女性のために使うことを、君は許してくれるか?
赤い髪が風に揺れ、そして俺の頬を通りすぎる時
「アークのその生真面目さは相変わらずね。」と笑うエリザベスの声が聞こえた気がした。
「お兄様が!お兄様が…驚いたわ。」
と言って騒いでいるフランシスの声を聴きながら、俺は目を瞑った。
彼女を見る勇気がなかった。
俺の言葉をどう思ったのか恐くて見れなかった。
だから、気づかなかった。
彼女が、俺の腕の中で青ざめていたことに… 。
ーなぜなんだ、なぜ、俺がコンウォール家に行くのを待てない。
公爵家の婚約者がひとりで、バックひとつでやって来るなんて…ましてや、公爵家にはパメラがいるのだ。
なぜ、俺に頼らない!
そう思うと、無性に彼女に対して腹が立ち
「屋敷に戻るから、アーガイル副団長に伝えるように」と告げ俺は団長室を飛び出した。
急いで馬を走らせ、公爵家が見えた頃だった。
俺の頭をふとある思い過ぎった……。
ー偽りの結婚だから、彼女はどうでもいいと思っているのか?
俺は頼るべき男ではない…そういうことなのか?だから、軽装でひとりで来たのか?
そう思ったら、騎士団の詰所を出た勢いは、無くなっていた。
門の前で立尽くす俺の前に、使用人の誰かが知らせたのだろう、
エパードが驚いて現れたが、すぐに落ち着いたいつもの態度で
「旦那様、昨日からパメラ様は王妃様のお召しで王宮に行かれて、まだお戻りになられておりません…ご安心を。ミーナ様にもそのように申しますと、それならとフランシス様に先にご挨拶をと言われ、 今おふたりでお庭のほうにいらっしゃいます。」
「庭…?」
―庭?フランシスが?部屋を出ているのか?
俺は馬をエパードに預けると、庭へと歩き出した。
小鳥の声がする木々を見上げると、木々の間から零れる日差しが、キラキラと光の粒を撒いていた。 足元に咲く花が、俺のブーツに体を寄せながら、(どうしたの?)と言ってくる。
高い木々の間から顔を覗かせた白い花達が、久しぶりに庭をゆっくり歩く俺に、まるで(元気だった?)と懐かしげに声をかけて来るかのように、次々を舞い降りてきた。
自然と俺の口元に笑みが零れた…。
時間がここだけは、ゆっくりと流れているようだった。母上が、そして父上が亡くなってから、俺はずっと走っていたのだろうな。こんなに心が休まる場所があることを知っていたのに…忘れてしまうくらい俺は追い込まれていたんだ。
庭園内につくられた装飾的なこの小さな建物ガゼボの支柱に体を預け、眼の前で風に揺れる黄色い花に眼をやった。
母が生きていた頃、公爵家の庭園は四季折々の花が咲き乱れていた。
今も、エパード達が手入れをしていてくれるが、やはりあの頃とは違って華やかさは、少し翳ったかもしれない。だが、やはり…我が家の庭は美しかった。
風に乗って、女性たちのにぎやかな笑い声が聞こえた。
ふと、懐かしい思い出が過ぎった。
ノーフォーク王妃、マールバラ王妃、そして母上…幼馴染三人のお茶会…あの頃の庭園…。
幸せだった日々を振り返るのが辛くて、フランシスと同様、俺もこの庭には足を踏み入れることがなかなか出来なかった。
母が愛した庭だった、至る所に母の思い出があった。
このガゼボにも…。あの楠にも…。あの…花壇に溢れように植えられた花達の中にも…。この庭を愛した母の愛が、そして優しさがあった。
周りをぐるりと見渡す俺に、暖かい風が…頬を撫でていった。
「母上…長い間、独りぼっちにさせてすみません。」と自然とそんな言葉を口にしていた。
大きな楠を側を通る時、フランシスの後姿が見えた。あれほど外を嫌がっていたのに、ましてやこの庭は母が階段から落ちるきっかけとなった場所、その場所で妹が…そしてミーナが笑っている。
今はフランシスとミーナで、女性たちは変わったが、やはりこの庭園は女性たちの笑い声がよく似合う。 一際大きな笑い声が聞こえた、フランシスの声だ。そのフランシスの前で、身振り手振りを交えて話す……彼女が見えた。
時には男達を圧倒する厳しさと威厳を持ち、そしてある時は子供のような純真さと無邪気さを持つミーナ=コンウォール男爵令嬢。
彼女の姿を見て、また心がざわついた。
彼女への思いを恋だとまだ認めたくない複雑な気持ちと、彼女が俺に言えない秘密がなんなのかと…胸の中で渦巻く。
じっと見つめていた俺にいち早く気づいた彼女は、やさしく微笑んだ。
「お兄様?!」フランシスは突然現れた俺に驚いたようだったが、明るい笑顔で手を振ってきた。
フランシスは、俺に早く話したかったのか、俺の顔を見るなり早口で
「ミーナ様がお庭に行こうって…本当はすごく怖かったの、でもね、ミーナ様が‥‥」
と言ったフランシスの目にうっすらと涙が浮かんだが、ぱちぱちと瞬きをして堪えたかと思ったら、にっこり笑って、でも少し震える声で
「ミーナ様が、あのコスモスはもう咲いていないけど、ここでお母様とコスモスを植えた思い出は、ずっと残っていますよ。だから、ここでお母様に私を紹介してくださいって言ってくださったの。嬉しかった…。」
そうか…彼女も、感じてくれたんだ。この庭にある母の息吹を…。
俺は頷きながらフランシスから、ミーナに視線を移した。
フランシスの言葉にミーナの眼は潤み、そして…「…フランシス様…」と言った声は震えていた。
フランシスは、泣いたことが恥ずかしかったのか、少し下を向いて照れたように
「ミーナ様は、ほんとに素敵な方、さすがお兄様が選ばれた方ですね。」
真っ赤になった彼女の視線が、(恥しいです。助けてください。)と言って俺に向いた。
彼女の眼が…緑色の瞳が…俺を見ていた。だが一言も話さない俺に戸惑っているのだろう。彼女の緑色の瞳は、不安そうに揺れだした。
その緑の瞳に俺はどう映っているのだろう。
彼女はこの結婚は国の為にと言った。俺もそう言って約束した。
これは偽装結婚。偽りの愛。
だが…揺れている緑の瞳が愛おしいと思う。
この震える唇からたとえ偽りであったも、愛の言葉を聞きたいと思う。
…もう、認めるしかないな。彼女が隠すものが俺の心を切り裂くものであっても、俺は…
「ミーナ…」と呼んでそっと手を引き、抱き寄せると、俺の胸に飛び込んできたような形になった彼女は、とっさに俺の胸元の服をつかみ、驚いて眼を丸くしながら俺の顔を見上げた。
俺はずるい。フランシスがいるこの場なら、彼女は拒めないとわかっている。
これはお芝居だと彼女は思っているから、だから彼女の気持ちはここにはない。
それでも俺は今言っておきたい。俺の大事な母と妹の前で、この人が俺の好きな人だと。
震えている華奢な体をより強く抱きしめ…彼女の耳元に唇をよせた。
これも偽造結婚の為のお芝居だと思っている君には届かないだろう、でも言わせてくれ。
「愛してる…。」
俺は…。
何れ女王として立つエリザベスを命を懸けて守れる男になりたかった。
だが俺は何もできないままエリザベスを逝かせてしまった。そのことがずっと俺の心にあった。だからもう大切な人を作ってはいけないと思った。それがエリザベスへの贖罪だと思ったんだ。
いいだろうか…エリザベス。
君を守るために使うと誓った俺の命、他の女性のために使うことを、君は許してくれるか?
赤い髪が風に揺れ、そして俺の頬を通りすぎる時
「アークのその生真面目さは相変わらずね。」と笑うエリザベスの声が聞こえた気がした。
「お兄様が!お兄様が…驚いたわ。」
と言って騒いでいるフランシスの声を聴きながら、俺は目を瞑った。
彼女を見る勇気がなかった。
俺の言葉をどう思ったのか恐くて見れなかった。
だから、気づかなかった。
彼女が、俺の腕の中で青ざめていたことに… 。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる