紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 

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女はまた覆い被さってこようとする男を赤い瞳で睨んで



「もういいでしょう、どいて…」と男の肩を押した。



 男は女の白い胸の先端を軽くはじき

「おいおい、上手くいかないからって、俺にあたるよ。」
と言いながら女の上から、その隣へと体を移せば、女は早く男から離れたいのか、ベットから起き上がり、気の強い赤い瞳を男に向け



「あたってなんかいないわよ。」
と掠れた声でぶっきらぼうに答え、もう男の顔を見たくなかったのか、勢いよく背を向けると、すべてを拒絶するその背中に銀色の髪が踊った。男はその背中を見ながら…フンと鼻で笑い,口元だけ笑みを浮かべ



「お前に落ちないってことは、アークフリードにバレてるんじゃぁないのか…一見20代に見えるおまえが…本当は俺のお袋と同じぐらいの年齢だと…。」



女は振り向くと、その赤い瞳が細め…小さく呟くと あたり一面に青白い光が稲妻のように現れ、パン!!!パン!!!と部屋中に破裂音が響かせた。



男は少しも怖がっている素振りはないのに、「おお、怖い怖い」などと言いながらニヤリと笑い、
「元マールバラ王国の魔女殿は、体を張ってでも…【王華】が欲しいんだ。それ程までして本当に【王華】が欲しいのか?……本当に欲しいのはなんだ?」

女は疎ましそうに
「あなたはノーフォーク国が欲しい、 私は…アークフリードが…アークフリードの体の中に封印された【王華】が欲しいだけよ。利害が一致しただけで手を結んだ…それだけの関係だから、妙な詮索はしないで!」


男は己の左目の下から、唇にかけてある傷を触りながら…小さく笑うと女の腕を引っ張り、ベットに組み敷くと…女の赤い唇に、自分の唇を寄せ


「いや、それだけじゃなくて…それと…だろう。それとベットでのご奉仕…だろう?」



クセの笑みを浮かべ唇を重ねてきた。口付けはだんだん深くなり、男の手が…女の胸へと動き出したときだった、女は男のその手を抑えると 、口角を少し上げ口元に笑みらしきものを浮かべて、



「…どいてって言ったでしょう。」と言ってベットから立ち上がると、艶やかしい全裸を男に魅せつけるように、腰をひねって湯殿に向かった。



「おいおい、こんな状態で放置されるのかよ。」とその背中に言ったが、女は振り向かず部屋を出て行った。だがカタンと扉が閉まった音で、男の表情は一変した。



男は女が出て行った扉に向かって

「パメラ、今更…【王華】を手に入れてどうするんだ。守るべき国はおまえが滅ぼしたくせに…。長い年月をかけて、計画を立てたんだ。おまえの感情だけでは計画は決行しないぜ。決めるは俺だ。見極めは俺が決める。さぁて…どうするかなぁ。」



そう呟くとベットから立ち上がり、パメラが出て行った扉とは反対の扉を開けた。30代半ばの男の体は、戦士のような体つきで、男の精悍さが伺えた。だがそれ以上に男を精悍に見せたのは、顔の傷や全身至る所にある傷だろう。



「パメラに勝手に動かれてせっかく温めた計画をおじゃんにされたくないなぁ。では…オードブルだけでも ご披露するか…。」と言って押し殺した笑い声をあげ、扉の向こうにいた兵士に命じた。



「ノーフォーク王に親書を出せ。 貴国に嫁いだわが娘の懐妊祝いに伺いたいと」



そう言うとバクルー王は、大きく伸びをした。



大胸筋や腹筋が伸び…背中の筋肉の背筋や脊柱起立筋を収縮させるその姿は…まるで猫科の大型肉食獣のようでもあった。 
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