紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 

文字の大きさ
上 下
10 / 78

⁂9 

しおりを挟む
女はまた覆い被さってこようとする男を赤い瞳で睨んで



「もういいでしょう、どいて…」と男の肩を押した。



 男は女の白い胸の先端を軽くはじき

「おいおい、上手くいかないからって、俺にあたるよ。」
と言いながら女の上から、その隣へと体を移せば、女は早く男から離れたいのか、ベットから起き上がり、気の強い赤い瞳を男に向け



「あたってなんかいないわよ。」
と掠れた声でぶっきらぼうに答え、もう男の顔を見たくなかったのか、勢いよく背を向けると、すべてを拒絶するその背中に銀色の髪が踊った。男はその背中を見ながら…フンと鼻で笑い,口元だけ笑みを浮かべ



「お前に落ちないってことは、アークフリードにバレてるんじゃぁないのか…一見20代に見えるおまえが…本当は俺のお袋と同じぐらいの年齢だと…。」



女は振り向くと、その赤い瞳が細め…小さく呟くと あたり一面に青白い光が稲妻のように現れ、パン!!!パン!!!と部屋中に破裂音が響かせた。



男は少しも怖がっている素振りはないのに、「おお、怖い怖い」などと言いながらニヤリと笑い、
「元マールバラ王国の魔女殿は、体を張ってでも…【王華】が欲しいんだ。それ程までして本当に【王華】が欲しいのか?……本当に欲しいのはなんだ?」

女は疎ましそうに
「あなたはノーフォーク国が欲しい、 私は…アークフリードが…アークフリードの体の中に封印された【王華】が欲しいだけよ。利害が一致しただけで手を結んだ…それだけの関係だから、妙な詮索はしないで!」


男は己の左目の下から、唇にかけてある傷を触りながら…小さく笑うと女の腕を引っ張り、ベットに組み敷くと…女の赤い唇に、自分の唇を寄せ


「いや、それだけじゃなくて…それと…だろう。それとベットでのご奉仕…だろう?」



クセの笑みを浮かべ唇を重ねてきた。口付けはだんだん深くなり、男の手が…女の胸へと動き出したときだった、女は男のその手を抑えると 、口角を少し上げ口元に笑みらしきものを浮かべて、



「…どいてって言ったでしょう。」と言ってベットから立ち上がると、艶やかしい全裸を男に魅せつけるように、腰をひねって湯殿に向かった。



「おいおい、こんな状態で放置されるのかよ。」とその背中に言ったが、女は振り向かず部屋を出て行った。だがカタンと扉が閉まった音で、男の表情は一変した。



男は女が出て行った扉に向かって

「パメラ、今更…【王華】を手に入れてどうするんだ。守るべき国はおまえが滅ぼしたくせに…。長い年月をかけて、計画を立てたんだ。おまえの感情だけでは計画は決行しないぜ。決めるは俺だ。見極めは俺が決める。さぁて…どうするかなぁ。」



そう呟くとベットから立ち上がり、パメラが出て行った扉とは反対の扉を開けた。30代半ばの男の体は、戦士のような体つきで、男の精悍さが伺えた。だがそれ以上に男を精悍に見せたのは、顔の傷や全身至る所にある傷だろう。



「パメラに勝手に動かれてせっかく温めた計画をおじゃんにされたくないなぁ。では…オードブルだけでも ご披露するか…。」と言って押し殺した笑い声をあげ、扉の向こうにいた兵士に命じた。



「ノーフォーク王に親書を出せ。 貴国に嫁いだわが娘の懐妊祝いに伺いたいと」



そう言うとバクルー王は、大きく伸びをした。



大胸筋や腹筋が伸び…背中の筋肉の背筋や脊柱起立筋を収縮させるその姿は…まるで猫科の大型肉食獣のようでもあった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ホストな彼と別れようとしたお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。 あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。 小説家になろう様でも投稿しています。

秋色のおくりもの

藤谷 郁
恋愛
私が恋した透さんは、ご近所のお兄さん。ある日、彼に見合い話が持ち上がって―― ※エブリスタさまにも投稿します

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

処理中です...