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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
2日目⑦
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気分は重かった。
あの冷え切った目と、誰も寄せ付けようとはしない背中を見てしまったら、私なんかが、何を言おうが、何をしようが、ナダルの心を開くことなどできやしないと、打ちのめされたからだった。
まだ、ナダルが【あの方】と呼ぶ人物がわからない以上、簡単に動けないな。
フゥ~と息を吐き。
ナダルが出て行った扉を見た。
コンコン…
えっ?
扉を叩く音と、か細い声が聞こえ、その声に慌てて扉を開けると、心配そうな顔が私を見ていた。
「あ、あの…大丈夫?」
「えっと…何がですか?ジャスミン。」
「お兄ちゃんが、すごい顔でここを出て行ったのが見えての。もしかして、ルチアーノにイライラをぶつけちゃったんじゃないかと気になって…大丈夫?この町に戻ってから、ちょっとした事で、お兄ちゃん感情的になっちゃってるのよ。ごめんね。」
うまくジャスミンに、話せそうもなかったので、微笑んで見せると、ジャスミンは安心したように息をつき
「私は小さかったからかなぁ。怖いところは、あまり覚えていないんだけど、きっとこの町は、お兄ちゃんにとっては鬼門なんだと思う。」
確かにナダルにとっては、辛い思い出だけの町だが、それだけではないと思う。
ロイとの再会が、ナダルを必要以上に、神経質にさせているのではないだろうか。
「でもね。ロイを助けてくれた人が、ここで準備を整えようと言ったらしいの。地図にも載っていないところだから、いいのかもね。」
ロイを助けてくれた人とは…
ナダルが呼ぶ【あの方】か。
もともと人を隠す為に作られた町だから、地図にも載っていない町。
15年前、町の住民が惨殺された町。
15年間、誰も住んでいなかった町。
その町をまた、整備できる金と力を持ち。
限られた者しか、知ることはなかったこの町を15年前から知っていた人物。
その人物がナダルを唆し、利を得ようとしている。
利を得る事が出来る人物。
やはり…ローラン国の王家の人間。
ルシアン殿下が、ローラン王になる事に、意を唱える方々か…参った。
ようやく、反乱分子を抑えたという話だったが…一回抜いた剣をそうは簡単に収めるはずはないか…。
厄介だ。
私ひとりでは、難しい。
そう思った私の顔は、歪んでいたと思う。
だが、俯いていたジャスミンは気付かなかったのだろう。
大きな声で
「ルチアーノ!」
「ぁ、は、はい!」
大きな声で、私を呼んだが…次に出てくる声は、震えながら
「ねぇ…ルチアーノ。本当は…ね。」
「はい?」
「本当は…少し相談したい事があって来たの。」
「ナダルや、ロイには言えない事なんですか?」
ジャスミンは俯き、ゆっくりと頭を縦に振ると
「…ロイが7歳の時に別れて以来、15年振りに会った時は、体は大きくなっても…全然違和感なかったの。年下の私から泣かされてしまうような、ちょっと頼りないところも変わらなくて…。」
ここで話を一旦止めたジャスミンは、何度も口を開こうとしては唇を噛み。
その様子が、これからの話そうとする事が、どんなに需要なのか思わせた。
しばらく、迷っていたようだったジャスミンだったが、意を決したように、両手を握ると
「私とナダルがロイと15年振りに再会して、1年たった頃だったわ。ロイの部屋近くから、火が出て…ロイは瀕死の重傷を負い、王都の病院に運ばれの。それから…2ヶ月後。再会したのは、顔の火傷で仮面を被り、喉を熱でやられて声が出せないロイだったの。
ナダルは…瀕死の重傷を負ったんだ、心だっで、傷ついているから、雰囲気が違うように感じるだろうが、あの優しいところは、間違いなくロイだ。…って言うの。
確か、優しいわ。優しいんだけど…なんかロイとは違うの。私から泣かされていた、あのどこか頼りないロイは違うの。」
ロイが…違う?!
一体…誰だと?
私はジャスミンの顔を見た。
あの冷え切った目と、誰も寄せ付けようとはしない背中を見てしまったら、私なんかが、何を言おうが、何をしようが、ナダルの心を開くことなどできやしないと、打ちのめされたからだった。
まだ、ナダルが【あの方】と呼ぶ人物がわからない以上、簡単に動けないな。
フゥ~と息を吐き。
ナダルが出て行った扉を見た。
コンコン…
えっ?
扉を叩く音と、か細い声が聞こえ、その声に慌てて扉を開けると、心配そうな顔が私を見ていた。
「あ、あの…大丈夫?」
「えっと…何がですか?ジャスミン。」
「お兄ちゃんが、すごい顔でここを出て行ったのが見えての。もしかして、ルチアーノにイライラをぶつけちゃったんじゃないかと気になって…大丈夫?この町に戻ってから、ちょっとした事で、お兄ちゃん感情的になっちゃってるのよ。ごめんね。」
うまくジャスミンに、話せそうもなかったので、微笑んで見せると、ジャスミンは安心したように息をつき
「私は小さかったからかなぁ。怖いところは、あまり覚えていないんだけど、きっとこの町は、お兄ちゃんにとっては鬼門なんだと思う。」
確かにナダルにとっては、辛い思い出だけの町だが、それだけではないと思う。
ロイとの再会が、ナダルを必要以上に、神経質にさせているのではないだろうか。
「でもね。ロイを助けてくれた人が、ここで準備を整えようと言ったらしいの。地図にも載っていないところだから、いいのかもね。」
ロイを助けてくれた人とは…
ナダルが呼ぶ【あの方】か。
もともと人を隠す為に作られた町だから、地図にも載っていない町。
15年前、町の住民が惨殺された町。
15年間、誰も住んでいなかった町。
その町をまた、整備できる金と力を持ち。
限られた者しか、知ることはなかったこの町を15年前から知っていた人物。
その人物がナダルを唆し、利を得ようとしている。
利を得る事が出来る人物。
やはり…ローラン国の王家の人間。
ルシアン殿下が、ローラン王になる事に、意を唱える方々か…参った。
ようやく、反乱分子を抑えたという話だったが…一回抜いた剣をそうは簡単に収めるはずはないか…。
厄介だ。
私ひとりでは、難しい。
そう思った私の顔は、歪んでいたと思う。
だが、俯いていたジャスミンは気付かなかったのだろう。
大きな声で
「ルチアーノ!」
「ぁ、は、はい!」
大きな声で、私を呼んだが…次に出てくる声は、震えながら
「ねぇ…ルチアーノ。本当は…ね。」
「はい?」
「本当は…少し相談したい事があって来たの。」
「ナダルや、ロイには言えない事なんですか?」
ジャスミンは俯き、ゆっくりと頭を縦に振ると
「…ロイが7歳の時に別れて以来、15年振りに会った時は、体は大きくなっても…全然違和感なかったの。年下の私から泣かされてしまうような、ちょっと頼りないところも変わらなくて…。」
ここで話を一旦止めたジャスミンは、何度も口を開こうとしては唇を噛み。
その様子が、これからの話そうとする事が、どんなに需要なのか思わせた。
しばらく、迷っていたようだったジャスミンだったが、意を決したように、両手を握ると
「私とナダルがロイと15年振りに再会して、1年たった頃だったわ。ロイの部屋近くから、火が出て…ロイは瀕死の重傷を負い、王都の病院に運ばれの。それから…2ヶ月後。再会したのは、顔の火傷で仮面を被り、喉を熱でやられて声が出せないロイだったの。
ナダルは…瀕死の重傷を負ったんだ、心だっで、傷ついているから、雰囲気が違うように感じるだろうが、あの優しいところは、間違いなくロイだ。…って言うの。
確か、優しいわ。優しいんだけど…なんかロイとは違うの。私から泣かされていた、あのどこか頼りないロイは違うの。」
ロイが…違う?!
一体…誰だと?
私はジャスミンの顔を見た。
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