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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie

1日目③

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「ロザリーって、あなたの恋人?」

「えっ…?」

「いい加減にしろよ。ジャスミン。
女が男の持ち物に、刺繍をして送るという意味は、お前だって女なんだから、わかってんだろう。野暮なことを聞くな。」

何とも言えない空気の中、
男はジャスミンの頭をポンと叩き

「まぁ、ジャスミンの気持ちもわかる。確かに、ルチアーノのあの身のこなしに、心を奪われるだろうな。だが、やめとけ、ルチアーノは、どう見たって育ちの良いボンボンだ。惚れたって、どうにもならんぞ、」

「…お兄ちゃん。」

ジャスミンの泣きそうな声に、クスリと笑った男は

「なぁ、ルチアーノ。あの身のこなしなら、剣の腕前もかなりなんだろうな。だが、実戦で使える剣なのか?どうなんだ?  」

そう言って私を見ながら…ポツリと、
「見たいな。おまえが人を切る時の顔を…そりゃ…綺麗だろうな。」



…殺気!

この男…何者だ。


男はクスクスと笑い
「なーんてな。冗談!」

何が…冗談だ。

殺気をこんなに出しながら、よく言える。

でもこの男…いったいなぜ、こんなところで殺気を出してくる。

それもわざとらしく…

私を挑発している?でもなぜ?

なぜ?!

「…冗談ならば、殺気は出さないでください。」

「えっ?」

「その殺気に、思わず剣をぬきそうになるので…」

そう言った私を驚いたように、見ていた男はクスクスと笑うと
「一流の腕を持つ者は感が鋭いなぁ。悪かった。挑発するような事を言って。やっぱりおまえも最強剣士トーナメント戦に出るつもりなのか?」

「…そのつもりです。」

「金か?」

「えっ?」

「おおかた、良いところのボンボンのおまえが、その刺繍をした貧乏なロザリーという女と一緒になるために、金が欲しいんだろう?」

…はぁ?
なにを言ってんだ。

呆れた顔で男を見た。

「俺が賞金の倍を出そう。だから俺と手を組まないか?」

…いったい。何が目的なんだ。

えっ?!

一瞬、男の体を闇が包んだような気がした。

先ほど感じた殺気どころではない。
深い闇を…ドロドロとした闇を…感じた。

この男……なにかある。


「…お金がほしくないわけじゃない。でもそれよりも強い相手と剣を交えたい。」


男は大きな声で笑いだすと

「なら最強剣士トーナメント戦に出るより、もっと強い奴と戦えるぞと言ったらどうだ?」

「強い男?」

「あぁ最強だ。今までに何度かその男を狙ったが…その男に近づくことさえできなかった。その男の前に、もうひとり老騎士がいてな。それがまた強い。みんなその老騎士の前でやられる。」


なんだか嫌な予感がする。



「老騎士とは…まさか…ウィンスレット侯爵。」

男は口元を緩めると

「あはは…。わかるよな。老騎士と言えば、あの御仁しかおらんからな。あの歳であの強さはバケモンだな。だが…それ以上が…」

「…ルシアン殿下ということ…。」

「あぁ、最強だろう。」



息がつまりそうだ。



「どうだ?強いぞ。あの男らは…」

「…どうやってやるんですか?」

「計画は…仲間に入ってからだ。どうだ…ルチアーノ?」

そう言って、小さな声でジャスミンに聞こえないように
「本当に見たい。おまえのような育ちの良いガキが、綺麗な顔を血で汚すのを…」

男は私の顔を覗き込み
「な~んてな。」と笑った。

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