103 / 214
ミランダと侯爵とそして…
しおりを挟む
「ふっふふ…」
不気味とも言える笑い声は…ミランダ。
「あ…ぁ…あ・は・は」
笑いを無理強いをされた事が一目瞭然なのは…ウィンスレット侯爵。
「ねぇ、侯爵。もう少し自然にできないの?」
「…笑いたい気分ではないので…無理です。」
「えっ?!!どうして!計画は順調なのに…」
ムスッとしたミランダに、侯爵は苦笑しながら
「確かに、殿下一行を襲う曲者は揃いましたが…。」と言って、溜め息を吐くと
「姫が集められた者は…剣を握ったこともない。いや、それどころか…馬にも乗れない。いくらなんでも…これではルシアン殿下の一行にも追いつけません。いったいどうやって集めた者なのですか?」
ミランダは手に大事そうに持っていた物を侯爵に差し出しながら
「だって、表立ってルシアン王子を襲う者を求む。とは言えないじゃない。だから…」
差し出された紙を見て、侯爵はなんとも言えない顔をした。
*****
来たれ!若人達よ!
あの歴戦の勇士ウィンスレット侯爵が教える騎士への道!
模擬戦闘にて、その腕を披露するウィンスレット侯爵と一緒に、剣を握ってみないか!
*****
「…なんですか…これは…」
「宣伝ポスター。」
頭を抱えた侯爵にミランダは…
「やっぱり馬には乗れなくてはダメか…う~ん、こうなったらお爺様に頼むしかないわ。」
「えっ?!へ、陛下に!!」
「だって、それが一番手っ取りばやいもの。」
「し…しかし…」
「大丈夫!だって私より人の心の色が見える方なんだもの。いちいち説明しなくても私や侯爵に二心はないとわかるわ。」
「ですが…私の娘のために…」
「それなら、お爺様にとっては、息子のために一肌脱いでもらうわ。」
頭を抱えるどころか、座り込んだ侯爵の手をひっぱると…ミランダは笑った。
「この私に任せなさい!」
ブラチフォード王にロザリーを息子と偽っていたことを告白し、死を覚悟してブラチフォード王の前に、跪いてからわずか数日だと言うのに、引きずられるように連れてこられたとはいえ、トンでもない計画の一端を担ぐことに、さすがにウィンスレト侯爵の大きな体も、小さく見えるほどうな垂れていた。
もちろん芝居なのだが、ルシアン王子を襲うから、その襲う者達を紹介して欲しいなどど…有り得ない話を願うのだ。侯爵が小さくなるのは当たり前の話。
ミランダはそんな侯爵の手を引っ張り、そしてブラチフォード王にキッパリ言った。
「叔父様を襲いたいの。だからなるべく人相の悪い者を紹介してくださらない。」
「ひ、ひ、姫~!!」
一瞬驚いた顔のブラチフォード王だったが、ゆっくりとその顔に笑みを浮かべ
「ロザリーとルシアンの為か?良かろう。」
ミランダは満面の笑顔で
「お爺様とのお話は早くて助かるわ。」
ブラチフォード王は大きな声で笑うと
「だが、5人だ。」
「えっ?」
「このたびのローラン国訪問は、ルシアンを押すジョーダン伯爵らとの会談ために行くのだ、だから少人数での訪問にしておる、それはあまり大げさにすると、他の貴族らを刺激するからだ。だが、ルシアン以外の王を望むものにとっては、少人数であろうが、なんであろうが、面白くはないだろうな。そうなると…バカなことを考えるものが出てくる。」
そう言って、ブラチフォード王は侯爵を見た。
「もちろん、邪まな心を持つ者を選びはしないが、万が一その者達が裏切ったとしても5人なら、一度に襲ってきても、ルシアンなら大丈夫だと私は思ったのだが、どうだろう…侯爵。」
ウィンスレット侯爵の背筋が伸びた。
…上に立つ方は違う。
ルシアン殿下は大事なお方、ましてや揺れに揺れているローラン国へ、王になるべく乗り込もうとされているのだ、いかなる場合でも、その御身の安全を考えねばならないのに…私としたことが…
「陛下…大事な事に気が付かず、申し訳ありません。」
ブラチフォード王はクスリと笑うと
「侯爵がその曲者の頭になるのだろう?まぁ…それなら安心だがな。」
「陛下…。」
ブラチフォード王の言葉は…侯爵には万が一など有り得ない。信じていると言ったのだ。侯爵の胸が熱く震えた。
「私は…18年の間、ロザリーを男だと偽ってきたのに…私は…」
涙もろい侯爵が鼻を啜りながら、熱く震える胸に手をおき、あらためブラチフォード王に騎士の誓いを口にしようとしたが、ミランダのテンションの高い声に掻き消されてしまった。
「やった~!これで準備は整ったわ。あとは…ドレスよ!ロザリーのドレス!あっ!!お爺様、ありがとう!」
そう叫んで、部屋を飛び出していったミランダに、侯爵は呆然としていたが…ブラチフォード王は大きな声で笑いながら侯爵に
「似ているであろう?」
「はぁ?あの…陛下?」
先程の騎士の誓いを言えず、中途半端な状況に戸惑っている侯爵に、ブラチフォード王は微笑むと、懐かしむようにポツリと
「色が…同じなのだ。」
「えっ?」
侯爵の間の抜けた声に、また大きな声で笑うと
「いや、なんでもない。」
ブラチフォード王は、走って行くミランダの後姿に、優しい笑みを浮かべていた。
不気味とも言える笑い声は…ミランダ。
「あ…ぁ…あ・は・は」
笑いを無理強いをされた事が一目瞭然なのは…ウィンスレット侯爵。
「ねぇ、侯爵。もう少し自然にできないの?」
「…笑いたい気分ではないので…無理です。」
「えっ?!!どうして!計画は順調なのに…」
ムスッとしたミランダに、侯爵は苦笑しながら
「確かに、殿下一行を襲う曲者は揃いましたが…。」と言って、溜め息を吐くと
「姫が集められた者は…剣を握ったこともない。いや、それどころか…馬にも乗れない。いくらなんでも…これではルシアン殿下の一行にも追いつけません。いったいどうやって集めた者なのですか?」
ミランダは手に大事そうに持っていた物を侯爵に差し出しながら
「だって、表立ってルシアン王子を襲う者を求む。とは言えないじゃない。だから…」
差し出された紙を見て、侯爵はなんとも言えない顔をした。
*****
来たれ!若人達よ!
あの歴戦の勇士ウィンスレット侯爵が教える騎士への道!
模擬戦闘にて、その腕を披露するウィンスレット侯爵と一緒に、剣を握ってみないか!
*****
「…なんですか…これは…」
「宣伝ポスター。」
頭を抱えた侯爵にミランダは…
「やっぱり馬には乗れなくてはダメか…う~ん、こうなったらお爺様に頼むしかないわ。」
「えっ?!へ、陛下に!!」
「だって、それが一番手っ取りばやいもの。」
「し…しかし…」
「大丈夫!だって私より人の心の色が見える方なんだもの。いちいち説明しなくても私や侯爵に二心はないとわかるわ。」
「ですが…私の娘のために…」
「それなら、お爺様にとっては、息子のために一肌脱いでもらうわ。」
頭を抱えるどころか、座り込んだ侯爵の手をひっぱると…ミランダは笑った。
「この私に任せなさい!」
ブラチフォード王にロザリーを息子と偽っていたことを告白し、死を覚悟してブラチフォード王の前に、跪いてからわずか数日だと言うのに、引きずられるように連れてこられたとはいえ、トンでもない計画の一端を担ぐことに、さすがにウィンスレト侯爵の大きな体も、小さく見えるほどうな垂れていた。
もちろん芝居なのだが、ルシアン王子を襲うから、その襲う者達を紹介して欲しいなどど…有り得ない話を願うのだ。侯爵が小さくなるのは当たり前の話。
ミランダはそんな侯爵の手を引っ張り、そしてブラチフォード王にキッパリ言った。
「叔父様を襲いたいの。だからなるべく人相の悪い者を紹介してくださらない。」
「ひ、ひ、姫~!!」
一瞬驚いた顔のブラチフォード王だったが、ゆっくりとその顔に笑みを浮かべ
「ロザリーとルシアンの為か?良かろう。」
ミランダは満面の笑顔で
「お爺様とのお話は早くて助かるわ。」
ブラチフォード王は大きな声で笑うと
「だが、5人だ。」
「えっ?」
「このたびのローラン国訪問は、ルシアンを押すジョーダン伯爵らとの会談ために行くのだ、だから少人数での訪問にしておる、それはあまり大げさにすると、他の貴族らを刺激するからだ。だが、ルシアン以外の王を望むものにとっては、少人数であろうが、なんであろうが、面白くはないだろうな。そうなると…バカなことを考えるものが出てくる。」
そう言って、ブラチフォード王は侯爵を見た。
「もちろん、邪まな心を持つ者を選びはしないが、万が一その者達が裏切ったとしても5人なら、一度に襲ってきても、ルシアンなら大丈夫だと私は思ったのだが、どうだろう…侯爵。」
ウィンスレット侯爵の背筋が伸びた。
…上に立つ方は違う。
ルシアン殿下は大事なお方、ましてや揺れに揺れているローラン国へ、王になるべく乗り込もうとされているのだ、いかなる場合でも、その御身の安全を考えねばならないのに…私としたことが…
「陛下…大事な事に気が付かず、申し訳ありません。」
ブラチフォード王はクスリと笑うと
「侯爵がその曲者の頭になるのだろう?まぁ…それなら安心だがな。」
「陛下…。」
ブラチフォード王の言葉は…侯爵には万が一など有り得ない。信じていると言ったのだ。侯爵の胸が熱く震えた。
「私は…18年の間、ロザリーを男だと偽ってきたのに…私は…」
涙もろい侯爵が鼻を啜りながら、熱く震える胸に手をおき、あらためブラチフォード王に騎士の誓いを口にしようとしたが、ミランダのテンションの高い声に掻き消されてしまった。
「やった~!これで準備は整ったわ。あとは…ドレスよ!ロザリーのドレス!あっ!!お爺様、ありがとう!」
そう叫んで、部屋を飛び出していったミランダに、侯爵は呆然としていたが…ブラチフォード王は大きな声で笑いながら侯爵に
「似ているであろう?」
「はぁ?あの…陛下?」
先程の騎士の誓いを言えず、中途半端な状況に戸惑っている侯爵に、ブラチフォード王は微笑むと、懐かしむようにポツリと
「色が…同じなのだ。」
「えっ?」
侯爵の間の抜けた声に、また大きな声で笑うと
「いや、なんでもない。」
ブラチフォード王は、走って行くミランダの後姿に、優しい笑みを浮かべていた。
0
お気に入りに追加
1,378
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる