王子様と過ごした90日間。

秋野 林檎 

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ミランダは言った…「マジで?」

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鼻を啜るとミランダは、ルシアンの胸から抜け出し、小さな手をルシアンの前に出すと、親指を曲げ
「4日よ!」

キョトンとしたルシアンにミランダは
「いろいろと、忙しかったのはわかったわ。でも!4日も…ひどいわ!」

だが、ルシアンにはその意味がわからなかったのだろう、キョトンとした顔でミランダを見ていた、ミランダはムッとして、親指を折った小さな手をブラチフォード王と、王太子に見せながら

「4日も好きな女性を、ほったらしは有り得な~い!」

と、叫んだが…ブラチフォード王と王太子の反応も…ルシアンと同じでキョトンとして、ミランダを見ている。
ミランダは「マ、マジでわからないの?!」と、言うと親指を折った手を、ルシアンの顔に押し付け

「王家の男性達が、まったく女心がわからないなんて…それで民の心がわかるの!まったく!」

だんだんといつもミランダらしい口調に、ルシアンがクスリと笑うと、ミランダはルシアンの両頬を引っ張り

「あのね。好きだと言われたのに、その後…顔も見せない男を女はどう思うか、わ.か.る!」

ルシアンの瞳が見開いた。

「そう!好きだと言われた言葉を信じられないと思うわ!」

そう言って、ブラチフォード王と王太子を見て
「お爺様もお父様もこんなニブイとは…。」

と言って大きな溜め息をついたが、ルシアンのバツが悪そうな顔を見て、可愛い顔に不釣合いなニヤリとした笑みを浮かべ
「早くロザリーと会ってよね。女心は繊細なのよ。下手をしたら、この4日間で【あの夜の出来事は夢だった。】とロザリーは自己完結して、また騎士に戻ってるかもよ。だから早くロザリーのもとへ行きましょう。」




…と言ったが、まさか…そんなことにはならないと思っていた。

だから…。

横を歩くルシアンを見ながら
(叔父様がここまで覚悟を決めたのなら、もう、ふたりの間には壁はないわ。

ローラン国にロザリーと叔父様のふたりが行ってしまうことは寂しいけど、大好きなふたりが結ばれるほうが嬉しい。叔父様が時折見せる寂しい横顔も、ロザリーが女である事を隠しながら、生きてゆく事も…もう終わりだと思うと嬉しい。)


ミランダは、また隣を歩くルシアンを見た。

(うん、うん、叔父様の口元に笑みが浮かんでる。良かった…幸せそうで…。)

だが、ルシアンの口元を見てハッとした。

(あっ?!ひょっとしたら…私はお邪魔じゃないかしら…。私が側にいたら、奥手のふたりはキスのひとつもできないんじゃなかしら…。う~ん、でもこのふたりだけじゃ…話が進みそうもないような気がするのよね。)


ミランダの頭に先程、自分が言った言葉が浮かんだ。

『女心は繊細なのよ。下手をしたら、この4日間で【あの夜の出来事は夢だった。】とロザリーは自己完結して、また騎士に戻ってるかもよ。』

(なんてこと…ないわよね。でもロザリーは根っからの騎士だから、国の為とか、主君の為とか、この4日の間…考えちゃったりして…はぁ~それって有り得そう。やっぱり…先に侯爵と動いておくべきだったかしら)



部屋を出たときは、ロザリーの元へと行く足は軽かったが…だんだんとロザリーの部屋へ近づいて来ると、嫌な予感がして…歩みはだんだんと遅くなっていった。

「どうしたんだ、ミランダ?」

訝しげなルシアンに、
「ねぇ、叔父様。ほんとにうまくやってよね。ロザリーも叔父様も恋愛に疎いし、鈍感だし、私は心配なの。すれ違ってばかりで、いい加減に決めてよ。ちゃんと捕まえてよ。」

ミランダの心配げな顔に、ルシアンは大丈夫だと言うように微笑んだが…ミランダはやっぱりその不安を拭えなかった。


コンコン


ロザリーの部屋の扉を叩き、ミランダは大きく息を吐くと
「ロザリー、私よ。」

中から…
「ぁ…は、はい!」と、すぐに返事をする声が聞こえたが、その声にミランダの眉が上がった。

なぜなら返事をしたのは…ロザリーではなく、侯爵の声だったからだ。
ミランダの嫌な予感は増したが、扉はゆっくりと開き…

困惑した侯爵の顔が見え…そして…部屋の全体が見え…ミランダは…頭を抱えた。


(…マジで?!)


そこには…ロザリーは白い騎士服を着て、跪いていたからだった。

ミランダは隣に立つルシアンを慌ててみると、厳しい顔でいる。

二人を交互に見ながら…ミランダは心の中で叫んだ



(この状況って…なに?誰か嘘だと言って~!なんでこうなるのよ!)

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