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つまらないかどうか…試してみろ。
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王宮からエイブの父親である、ライアン叔父上の屋敷までは馬で駆けて40分程度のところにある。
エイブが、まさかミランダ姫を屋敷に連れて行っているとは思えないが、足取りを掴めるかもしれないとここまでやって来たが…これ以上は馬で行くのはマズいだろう。
馬から降りて、眼の前の森を見つめ、そして…視線を少し右にやった。
右に出れば街道。
だか、この道を行けば、ライアン叔父上の屋敷からは丸見えになる。もし、叔父上までこの誘拐に関与をしていたら…私を友好的に迎えてはくれないだろう。
もう一度、眼の前の森を見つめた。
この森を抜ければ、すぐに屋敷の裏門に出る。
やはり屋敷内に、そっと忍び込んだほうが…いいかもしれない。
馬の鼻面を撫で
「この先は岩だらけのなの。お前の足が心配だからここまで待ってて」
この森一帯は大昔、 噴火に依って流れた溶岩流上に発達した原生林で、樹木が多く深い森であるため、少し道を外れると元の場所に戻ることが難しい。道を外れた場所の地面はむき出しの溶岩で出来ているために、大小さまざまの凹凸があるので、足をとられることもあり、人の往来はほとんどない。まぁ…遠回りといえ、街道があるのだから無理をして、この森に足を入れる必要もないということだ。
「…行きますか。」
幼い頃、この森が怖かった。
絵本で読んだ魔女や怪物が住むと言う森に、似ていたからかも知れない。魔女や怪物は…今でも好きだとは言えないが…怖いとは思わない。それよりも己の欲望の為に、手段を選ばない暗い心に支配された、人と言う生き物のほうが、魔女や怪物より怖いと知ったからだろう。
でも、まさか…身内に暗い心に支配された者が出るとは…思わなかった。
エイブは確かに楽をする事しか考えていない従兄弟だったが、まさかこうなるとは…。いや違う。ここ数年、それは異常とも思える手段を選ぶようになっていたのに、それに気がつきながらも、諌めようとはしなかったのは、お父様が仰る通り、侯爵家の責任だ。
だがエイブ。これ以上、罪を重ねるのなら……私は…この手で決着をつける。
シーンとした森に、私が大きく吐いた息で空気が動いた。
だが、空気の動きはそれだけではなかった。
足を止め、ゆっくりと振り返り、腰の剣に手を添え、空気が動いた場所を睨め付け
「どこの手の者だ。」
クスクスと笑い声をあげて、薄暗い森の中から、ユラリと出て来た影は
「良いなぁ。ようやくお前の殺気を見た。」
「…カルヴィン・アストン。お前がどうしてここに?」
「エイブの屋敷の帰りなのさ。」
「屋敷に出入りする程、いつの間に仲良くなったんだ。」
「別に仲良くなんかないさ、寧ろ嫌いだ。だが、雇い主が一緒なもんで、行動を共にする事が多くてな。」
「やはり…お前もミランダ姫を攫った一味か、いったい雇い主とは、いや黒幕は誰だ!」
「それは言えない。当たり前だろう。」
「アストン!」
叫びながら、剣を抜いた私を面白そうに見ると…笑いながら
「なんだ、お前のその顔は…?はぁ~つまらんな。」
「なんだと!」
「今のお前はつまらん。殺気が全身から溢れているが、冷静さが一欠片もない。眼が血走ってるぞ。あぁ…今のお前なら簡単に殺れる。つまらん。」
「…じゃぁ、つまらないかどうか…試してみろよ?!」
「ほぉ~、一人前に言うじゃないか。後悔するなよ。」
確かに今の私は、冷静さが足りないかも知れない。でも、ここで、アストンを取り逃がせば、ミランダ姫の情報を手に入れるチャンスのひとつを逃してしまう。
負けられない。
手のひらに薄っすらと掻いた汗に、剣が滑らないように、握り直すと、アストンは眼を細め
「…俺に勝てば、ミランダ姫の居場所を教えてやる。だが俺は強いぞ。」
「今まで、強いと思ったのは…父上とルシアン殿下だけだ。さて、お前が私のリストに載れるかな。」
私の言葉にアストンは、薄笑いを浮かべると剣を抜いた。
エイブが、まさかミランダ姫を屋敷に連れて行っているとは思えないが、足取りを掴めるかもしれないとここまでやって来たが…これ以上は馬で行くのはマズいだろう。
馬から降りて、眼の前の森を見つめ、そして…視線を少し右にやった。
右に出れば街道。
だか、この道を行けば、ライアン叔父上の屋敷からは丸見えになる。もし、叔父上までこの誘拐に関与をしていたら…私を友好的に迎えてはくれないだろう。
もう一度、眼の前の森を見つめた。
この森を抜ければ、すぐに屋敷の裏門に出る。
やはり屋敷内に、そっと忍び込んだほうが…いいかもしれない。
馬の鼻面を撫で
「この先は岩だらけのなの。お前の足が心配だからここまで待ってて」
この森一帯は大昔、 噴火に依って流れた溶岩流上に発達した原生林で、樹木が多く深い森であるため、少し道を外れると元の場所に戻ることが難しい。道を外れた場所の地面はむき出しの溶岩で出来ているために、大小さまざまの凹凸があるので、足をとられることもあり、人の往来はほとんどない。まぁ…遠回りといえ、街道があるのだから無理をして、この森に足を入れる必要もないということだ。
「…行きますか。」
幼い頃、この森が怖かった。
絵本で読んだ魔女や怪物が住むと言う森に、似ていたからかも知れない。魔女や怪物は…今でも好きだとは言えないが…怖いとは思わない。それよりも己の欲望の為に、手段を選ばない暗い心に支配された、人と言う生き物のほうが、魔女や怪物より怖いと知ったからだろう。
でも、まさか…身内に暗い心に支配された者が出るとは…思わなかった。
エイブは確かに楽をする事しか考えていない従兄弟だったが、まさかこうなるとは…。いや違う。ここ数年、それは異常とも思える手段を選ぶようになっていたのに、それに気がつきながらも、諌めようとはしなかったのは、お父様が仰る通り、侯爵家の責任だ。
だがエイブ。これ以上、罪を重ねるのなら……私は…この手で決着をつける。
シーンとした森に、私が大きく吐いた息で空気が動いた。
だが、空気の動きはそれだけではなかった。
足を止め、ゆっくりと振り返り、腰の剣に手を添え、空気が動いた場所を睨め付け
「どこの手の者だ。」
クスクスと笑い声をあげて、薄暗い森の中から、ユラリと出て来た影は
「良いなぁ。ようやくお前の殺気を見た。」
「…カルヴィン・アストン。お前がどうしてここに?」
「エイブの屋敷の帰りなのさ。」
「屋敷に出入りする程、いつの間に仲良くなったんだ。」
「別に仲良くなんかないさ、寧ろ嫌いだ。だが、雇い主が一緒なもんで、行動を共にする事が多くてな。」
「やはり…お前もミランダ姫を攫った一味か、いったい雇い主とは、いや黒幕は誰だ!」
「それは言えない。当たり前だろう。」
「アストン!」
叫びながら、剣を抜いた私を面白そうに見ると…笑いながら
「なんだ、お前のその顔は…?はぁ~つまらんな。」
「なんだと!」
「今のお前はつまらん。殺気が全身から溢れているが、冷静さが一欠片もない。眼が血走ってるぞ。あぁ…今のお前なら簡単に殺れる。つまらん。」
「…じゃぁ、つまらないかどうか…試してみろよ?!」
「ほぉ~、一人前に言うじゃないか。後悔するなよ。」
確かに今の私は、冷静さが足りないかも知れない。でも、ここで、アストンを取り逃がせば、ミランダ姫の情報を手に入れるチャンスのひとつを逃してしまう。
負けられない。
手のひらに薄っすらと掻いた汗に、剣が滑らないように、握り直すと、アストンは眼を細め
「…俺に勝てば、ミランダ姫の居場所を教えてやる。だが俺は強いぞ。」
「今まで、強いと思ったのは…父上とルシアン殿下だけだ。さて、お前が私のリストに載れるかな。」
私の言葉にアストンは、薄笑いを浮かべると剣を抜いた。
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