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すべてを消し飛ばした。
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もし…本当にルシアン王子と戦う事があったら…そう思っただけで、背中に汗が流れていった。
強い。
そのひとことだ。
まったく攻め入る隙がないルシアン王子に、私は心底震えが止まらなかった。
体は相手を正面に見たとき、構えにより左右どちらかにねじれる。だから相手に対して前進するときは必ず相手の左右に回り込む。だがこれをやると突きの場合たいていは相打ちになってしまう。
それはルシアン王子より、早く剣を突き出せる自信がないとできない。
…きっと無理だろう。
剣には強い方向がありそれは自分の正面からやや右だ。ならばこの方向をさけ、弱い方向から攻撃する方法もあるのだが…。
…ルシアン王子の動きに、そんな死角は見られない。
膝を蹴り込むことも考えたが…それはできないだろう。いくつかの条件が必要だから…。
例えば甲冑着用のときだったら、相手の横に回りこみ膝を横から蹴ると、甲冑の重みで膝を骨折して、動けなくなる。
だが…ここは甲冑を着た戦場ではない。
ならば…これしかない。
私は、日頃持っているサーベルを捨て、右手にシングル・レイピア、左手にタガーナイフにした。
とくに、レイピアは…シングル・レイピアを選んだ。それは剣の中で最も間合いの長い部類に入るからだ。
もし私がルシアン王子に勝つ方法があるとしたら…
「さすがだな…俺の間合いには絶対入ってこないな。」
「殿下の間合いに入った途端、殺られるのは…想像できます。」
「なら…どこから来る。」
「それは…」
そう言って、私はルシアン王子に袈裟切りに切りつけていった。だが切りつける寸前で腕を内転させ、剣先を下に向けた、そうすることで、通常の斬りつけよりも早く相手に剣を届かせる。
それしか、ルシアン王子の懐には入れないと思ったからだったが…やっぱり読まれていた。
左手に持ったタガーで、ロングソードの剣を受けたが、バランスを崩しそうになり、踏みとどまろうとしたが、重く大きなロングソードの剣に片膝を付いてしまった。だが、すぐにルシアン王子の足を払い、ルシアン王子の体勢を崩した。どちらかというと逃げに近いものだったが、次の攻撃を遅れされるためにはこれしかない。レイピアを捨て、タガーで先に攻撃するためには…。
だが…剣先をルシアン王子に向けた瞬間、私のタガーはルシアン王子の手で跳ね飛ばされた。
本当はこれを待っていた。
ロングソードも長い剣だ、接近戦では動かしにくい。
私は両手で、ルシアン王子のログソードを持つ手を捻りながら、ルシアン王子の上に馬乗りになるように体を回した。
剣のスピードも、重さも、ルシアン王子に勝てるとは思えない、なら…古武道だ。
体が柔らかく、小柄な私なら、ロングソードをルシアン王子の手から外し、接近戦に持ち込めば…勝機はある。
でも…ルシアン王子の手を捻りながら、体を回す瞬間、赤い瞳と眼があった。
赤い瞳が…そして…口元が笑みを作っていたのだ。
えっ?と思った瞬間…
逆に私の上に、ルシアン王子が馬乗りになっていた。
組み敷かれた私は…もう身動きひとつできない。
やられた…。
「参りました!」
そう叫んだ私だったが、組み敷かれた手はいつまでたっても…そのままだった。
「殿下?」
覆いかぶさるルシアン王子を呼ぶと、黙って私を見つめて、
「……お前は…」
「ルシアン殿下?」
「いや…なんでもない。」
そう言われたが、動かれないルシアン王子にどうしたらいいのかわからず、もう一度、「殿下」と呼ぼうとした時…走ってくる男性の足音に気がつき、視線をその方向に動かすと、人が来る気配にルシアン王子も気がつかれたのだろう。
ゆっくりと立ち上がり、手を伸ばし私を起こすと
「…すまない。まだ本調子ではないのかな。感覚が…」と言って、俯かれた。
「感覚?」
「一瞬、ほんの一瞬…」と言われ、顔をあげ私を見られ、なにか言われたが…その声に被さるように、走ってくる男性から飛び出した言葉が…すべてを消し飛ばした。
「殿下!ウィンスレット侯爵が負傷し、ミランダ姫が攫われました!」
強い。
そのひとことだ。
まったく攻め入る隙がないルシアン王子に、私は心底震えが止まらなかった。
体は相手を正面に見たとき、構えにより左右どちらかにねじれる。だから相手に対して前進するときは必ず相手の左右に回り込む。だがこれをやると突きの場合たいていは相打ちになってしまう。
それはルシアン王子より、早く剣を突き出せる自信がないとできない。
…きっと無理だろう。
剣には強い方向がありそれは自分の正面からやや右だ。ならばこの方向をさけ、弱い方向から攻撃する方法もあるのだが…。
…ルシアン王子の動きに、そんな死角は見られない。
膝を蹴り込むことも考えたが…それはできないだろう。いくつかの条件が必要だから…。
例えば甲冑着用のときだったら、相手の横に回りこみ膝を横から蹴ると、甲冑の重みで膝を骨折して、動けなくなる。
だが…ここは甲冑を着た戦場ではない。
ならば…これしかない。
私は、日頃持っているサーベルを捨て、右手にシングル・レイピア、左手にタガーナイフにした。
とくに、レイピアは…シングル・レイピアを選んだ。それは剣の中で最も間合いの長い部類に入るからだ。
もし私がルシアン王子に勝つ方法があるとしたら…
「さすがだな…俺の間合いには絶対入ってこないな。」
「殿下の間合いに入った途端、殺られるのは…想像できます。」
「なら…どこから来る。」
「それは…」
そう言って、私はルシアン王子に袈裟切りに切りつけていった。だが切りつける寸前で腕を内転させ、剣先を下に向けた、そうすることで、通常の斬りつけよりも早く相手に剣を届かせる。
それしか、ルシアン王子の懐には入れないと思ったからだったが…やっぱり読まれていた。
左手に持ったタガーで、ロングソードの剣を受けたが、バランスを崩しそうになり、踏みとどまろうとしたが、重く大きなロングソードの剣に片膝を付いてしまった。だが、すぐにルシアン王子の足を払い、ルシアン王子の体勢を崩した。どちらかというと逃げに近いものだったが、次の攻撃を遅れされるためにはこれしかない。レイピアを捨て、タガーで先に攻撃するためには…。
だが…剣先をルシアン王子に向けた瞬間、私のタガーはルシアン王子の手で跳ね飛ばされた。
本当はこれを待っていた。
ロングソードも長い剣だ、接近戦では動かしにくい。
私は両手で、ルシアン王子のログソードを持つ手を捻りながら、ルシアン王子の上に馬乗りになるように体を回した。
剣のスピードも、重さも、ルシアン王子に勝てるとは思えない、なら…古武道だ。
体が柔らかく、小柄な私なら、ロングソードをルシアン王子の手から外し、接近戦に持ち込めば…勝機はある。
でも…ルシアン王子の手を捻りながら、体を回す瞬間、赤い瞳と眼があった。
赤い瞳が…そして…口元が笑みを作っていたのだ。
えっ?と思った瞬間…
逆に私の上に、ルシアン王子が馬乗りになっていた。
組み敷かれた私は…もう身動きひとつできない。
やられた…。
「参りました!」
そう叫んだ私だったが、組み敷かれた手はいつまでたっても…そのままだった。
「殿下?」
覆いかぶさるルシアン王子を呼ぶと、黙って私を見つめて、
「……お前は…」
「ルシアン殿下?」
「いや…なんでもない。」
そう言われたが、動かれないルシアン王子にどうしたらいいのかわからず、もう一度、「殿下」と呼ぼうとした時…走ってくる男性の足音に気がつき、視線をその方向に動かすと、人が来る気配にルシアン王子も気がつかれたのだろう。
ゆっくりと立ち上がり、手を伸ばし私を起こすと
「…すまない。まだ本調子ではないのかな。感覚が…」と言って、俯かれた。
「感覚?」
「一瞬、ほんの一瞬…」と言われ、顔をあげ私を見られ、なにか言われたが…その声に被さるように、走ってくる男性から飛び出した言葉が…すべてを消し飛ばした。
「殿下!ウィンスレット侯爵が負傷し、ミランダ姫が攫われました!」
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