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【閑話】暗躍する者たち②
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広い寝室のベットで横になっていた男は、シーツを体に巻きつけ、窓ガラスの向こうの景色を睨むように見ている女に声をかけた。
「今宵はご機嫌斜めだな。」
男の声に女は爪を噛み、振り向くと
「あのカルヴィン・アストンにやらせるおつもりなのですか?あの男は信用できません。あの男にミランダ姫を殺させるより、私の力を持ってやれば確実ですのに、どうして…あの男なんですの。」
「死人に…仮の命を授ける術でやるのは…そろそろ限界なんだろう。」
「でも!ミランダ姫に、心を読まれないためには、そういう輩が適任だと仰ったではないですか?!」
「確かにお前の言う通り、始めの計画では、あのふたりの女にやらせるつもりだった、だが人の心が見える力を持つ人間を特定するのに、いささか時間が掛かりすぎて、その間に状況は変わったんだ。」
「ですが…」
「功を焦るな…。あのふたりの女には、生と死の狭間で、まだもがいているあの男を殺らせる。」
「…王を、ブラチフォード国王をですか?」
「あぁ、ただ心臓だけを動かしているだけの人間だ。いやもうすでに物だな。人の心が見えるという力を持つ者らを始末すれば…フッフッフッ…いよいよ私も動ける。」
男はそう言って、口元だけを上げ笑みを作ると…
「それより、大丈夫なのか?そろそろ腐敗してきているんじゃないか?」
「…まだ、大丈夫です。まだ…」
「なんだ、その言い方は?おいおい…あの二人はいつまで持つのかわからんのか?昔からの知り合いだったから、腐る前に土に返してやるつもりだったが…気の毒な王大后と王妃だな。腐った体になっても、俺に遣われるとは…」
「そんな慈悲の御心が、あなた様にあるのでございますか?地獄にあの二人を落とした…あなた様に?」
「お前に言われたくはないな。」
「王大后様と王妃様の心の闇に、付け入ったあなた様は……恐ろしいお方…。」
「男を手玉にとり、その生き血を吸って、美貌を保つお前に比べれば…俺なんか可愛いいものだ。」
「生き血など吸ってなんかおりません。」
「ルシアンが欲しいのは、生き血を吸うためじゃないのか?」
「…違いますわ。でも下さるのでしょう?お約束しましたわよね。ルシアン王子を私にやると…。」
「あぁ、焼くなり煮るなりすれば良い。」
「ひどい。私は化け物ではありませんわ。」
「死人に仮の命を授ける術を持つものが、まともな人だとは思えんが。」
「それを言うのなら…ミランダ姫やブラチフォード国王の力も化け物ですわ。」
「そうだな。あはは…」
「でも…」
「なんだ?」
女は撒きつけていたシーツをその体から、ゆっくりと剥ぐと
「そんな化け物を抱くあなた様が、一番の化け物かと…」
「俺に媚びても、お前の為に動くつもりはないぞ。」
「そんなこと…」
「ルシアンがいいんだろう?」
「あの方は…私を見てはくれないでしょう。」
「では俺はルシアンの身代わりか?」
女はクスリと笑うと…
「身代わりなどとんでもない。私はただ…あなた様に楽園に連れて行って欲しいだけ。」
「俺に…どれだけ奉仕しろというんだ?無茶を言うな。」
男はそう言って笑いながら、女の腰を抱くと
「悪いな。ルシアンではなくて…だがあの堅物より…」
「?」
「俺の方が数倍も、男としては上だと思うが…」
女は小さな声で笑うと…
「ではこの体に教えてくださいます?ルシアン王子より上だと…」
「今夜一晩かけて、教えてやろう。」
「…嬉しい。」
暗躍する者達がルシアンに…、ミランダに…、牙を剥こうとしていた。
「今宵はご機嫌斜めだな。」
男の声に女は爪を噛み、振り向くと
「あのカルヴィン・アストンにやらせるおつもりなのですか?あの男は信用できません。あの男にミランダ姫を殺させるより、私の力を持ってやれば確実ですのに、どうして…あの男なんですの。」
「死人に…仮の命を授ける術でやるのは…そろそろ限界なんだろう。」
「でも!ミランダ姫に、心を読まれないためには、そういう輩が適任だと仰ったではないですか?!」
「確かにお前の言う通り、始めの計画では、あのふたりの女にやらせるつもりだった、だが人の心が見える力を持つ人間を特定するのに、いささか時間が掛かりすぎて、その間に状況は変わったんだ。」
「ですが…」
「功を焦るな…。あのふたりの女には、生と死の狭間で、まだもがいているあの男を殺らせる。」
「…王を、ブラチフォード国王をですか?」
「あぁ、ただ心臓だけを動かしているだけの人間だ。いやもうすでに物だな。人の心が見えるという力を持つ者らを始末すれば…フッフッフッ…いよいよ私も動ける。」
男はそう言って、口元だけを上げ笑みを作ると…
「それより、大丈夫なのか?そろそろ腐敗してきているんじゃないか?」
「…まだ、大丈夫です。まだ…」
「なんだ、その言い方は?おいおい…あの二人はいつまで持つのかわからんのか?昔からの知り合いだったから、腐る前に土に返してやるつもりだったが…気の毒な王大后と王妃だな。腐った体になっても、俺に遣われるとは…」
「そんな慈悲の御心が、あなた様にあるのでございますか?地獄にあの二人を落とした…あなた様に?」
「お前に言われたくはないな。」
「王大后様と王妃様の心の闇に、付け入ったあなた様は……恐ろしいお方…。」
「男を手玉にとり、その生き血を吸って、美貌を保つお前に比べれば…俺なんか可愛いいものだ。」
「生き血など吸ってなんかおりません。」
「ルシアンが欲しいのは、生き血を吸うためじゃないのか?」
「…違いますわ。でも下さるのでしょう?お約束しましたわよね。ルシアン王子を私にやると…。」
「あぁ、焼くなり煮るなりすれば良い。」
「ひどい。私は化け物ではありませんわ。」
「死人に仮の命を授ける術を持つものが、まともな人だとは思えんが。」
「それを言うのなら…ミランダ姫やブラチフォード国王の力も化け物ですわ。」
「そうだな。あはは…」
「でも…」
「なんだ?」
女は撒きつけていたシーツをその体から、ゆっくりと剥ぐと
「そんな化け物を抱くあなた様が、一番の化け物かと…」
「俺に媚びても、お前の為に動くつもりはないぞ。」
「そんなこと…」
「ルシアンがいいんだろう?」
「あの方は…私を見てはくれないでしょう。」
「では俺はルシアンの身代わりか?」
女はクスリと笑うと…
「身代わりなどとんでもない。私はただ…あなた様に楽園に連れて行って欲しいだけ。」
「俺に…どれだけ奉仕しろというんだ?無茶を言うな。」
男はそう言って笑いながら、女の腰を抱くと
「悪いな。ルシアンではなくて…だがあの堅物より…」
「?」
「俺の方が数倍も、男としては上だと思うが…」
女は小さな声で笑うと…
「ではこの体に教えてくださいます?ルシアン王子より上だと…」
「今夜一晩かけて、教えてやろう。」
「…嬉しい。」
暗躍する者達がルシアンに…、ミランダに…、牙を剥こうとしていた。
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