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王子様の心《ミランダとシリル》
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ミランダは、父上が心臓を刻むだけの日々を過ごすようになってから、より人に対する警戒心が大きくなった。
自分だけしか見る事ができない物が恐い。でも、それを誰も理解して貰えない。
恐くて、そして堪らなく寂しかったんだと思う。
その恐怖や寂しさから逃げる手段が、自分以外の何かになって、一時的にも離れる事だったのだろう。
だが、人の心を色という形で見るという事自体が、人に理解して貰えないのだ、だから今のミランダの何かを演じる行動に、理解する者がいるはずもなく、ますますミランダは孤立し、孤立する事によって、また人に対して警戒心が強くなる…そんな悪循環の繰り返しだった。
そういう俺も、人の心を色と言う形で見えると言うことが、まだピンと来ない。
そんな俺が、果たしてミランダを理解してやっているのだろうか、慕ってくれるミランダを見る度に思ってしまう。
「叔父様!」
「…えっ?」
・
・
・
ミランダ?さっき聞こえた気がしたのは…気のせいではなかった?!
手に持っていたシャツを羽織ると、ベットから飛び降り、声の聞こえてくる窓を開けた。
春にはまだ遠いせいか、冬を忘れていない冷たい風が飛び込んできて、思わずその冷たさに肩をすぼめ、そして眼を細めたら
また声が…
「叔父様!お・じ・さ・ま!!」
風に逆らうように開いた眼の先に、薄いピンクのドレスのミランダが手を振りながら走ってくるのが見える。
緩みそうになった口元が…一瞬、そのまま固まり、視線が固まってしまった。
あれは…ロザリー?
いや、違う。彼女は金色の髪ではない。栗色だった。
なにより……あの服装は男だ。
あれは…あの金色の髪は…
「シリル…。」
シリルとロザリーが双子だと聞いたが、男と女と大きな違いが有るのに…見間違えるとは…
まだ、花影草の毒が抜け切れないのだろうか。
「ロザリー!」
えっ?今…ミランダは何と言った?
シリルが慌てて、ミランダに近づき
「姫、私は弟のシリルです!さっきも言ったじゃないですか~!」
泣きそうな声で叫ぶシリルに、ミランダはキャッキャッと声を立てて笑うと、シリルの体に抱きついていった。
どうして…?
人への警戒心が強いミランダが、あんなにシリルに懐いているのだ?
そもそも、なぜ一緒にいるのだ?
ウィンスレット侯爵の息子とはいえ、ミランダが以前からシリルを知っていたはずはない。
俺はミランダがシリルに懐く姿に…呆然と見ていたら…
ミランダとシリルを追いかけてきたのだろう。侍女ふたりがシリルやミランダを囲み、なにやら話し出し、侍女のひとりが言った言葉に、困ったように笑うシリルに、侍女達が頬を染めている。だが、それが面白くないのか、ミランダがムスッとして、シリルに両手を伸ばし、抱っこをせがんでいるようだ。
ミランダが…シリルに甘えている…。あのミランダが…。
来月4歳になるミランダは、あの力のせいか、子供らしからぬところがあったが…今のあの様子はただの4歳の子供だ。あんな姿を…、あんな姿で生きてゆける人生を…、ミランダに与えてあげたいと思っていたが、それをシリルは簡単にミランダに…。
シリルはミランダを抱き上げ、侍女達に頭を下げ、俺のところに向かって歩き出した。
ミランダが、なにやらシリルに話しかけているようだ。
シリルが顔を赤くし、ミランダの頬を指で突くと、ミランダは突かれた指を口で追い、その指をパクンと咥え、シリルが「ギャッ~!」と言う悲鳴を上げたことを、満足したかのようにミランダは口からシリルの指を離すと、今度はシリルの頬にその唇を寄せキスをした。
幸せそうなミランダの姿に…
シリルがミランダを見る姿に…
俺の心は、しばらく忘れていたなにかを、ようやく思い出したように…
ゆっくりと唇に笑みを浮かばせた。
自分だけしか見る事ができない物が恐い。でも、それを誰も理解して貰えない。
恐くて、そして堪らなく寂しかったんだと思う。
その恐怖や寂しさから逃げる手段が、自分以外の何かになって、一時的にも離れる事だったのだろう。
だが、人の心を色という形で見るという事自体が、人に理解して貰えないのだ、だから今のミランダの何かを演じる行動に、理解する者がいるはずもなく、ますますミランダは孤立し、孤立する事によって、また人に対して警戒心が強くなる…そんな悪循環の繰り返しだった。
そういう俺も、人の心を色と言う形で見えると言うことが、まだピンと来ない。
そんな俺が、果たしてミランダを理解してやっているのだろうか、慕ってくれるミランダを見る度に思ってしまう。
「叔父様!」
「…えっ?」
・
・
・
ミランダ?さっき聞こえた気がしたのは…気のせいではなかった?!
手に持っていたシャツを羽織ると、ベットから飛び降り、声の聞こえてくる窓を開けた。
春にはまだ遠いせいか、冬を忘れていない冷たい風が飛び込んできて、思わずその冷たさに肩をすぼめ、そして眼を細めたら
また声が…
「叔父様!お・じ・さ・ま!!」
風に逆らうように開いた眼の先に、薄いピンクのドレスのミランダが手を振りながら走ってくるのが見える。
緩みそうになった口元が…一瞬、そのまま固まり、視線が固まってしまった。
あれは…ロザリー?
いや、違う。彼女は金色の髪ではない。栗色だった。
なにより……あの服装は男だ。
あれは…あの金色の髪は…
「シリル…。」
シリルとロザリーが双子だと聞いたが、男と女と大きな違いが有るのに…見間違えるとは…
まだ、花影草の毒が抜け切れないのだろうか。
「ロザリー!」
えっ?今…ミランダは何と言った?
シリルが慌てて、ミランダに近づき
「姫、私は弟のシリルです!さっきも言ったじゃないですか~!」
泣きそうな声で叫ぶシリルに、ミランダはキャッキャッと声を立てて笑うと、シリルの体に抱きついていった。
どうして…?
人への警戒心が強いミランダが、あんなにシリルに懐いているのだ?
そもそも、なぜ一緒にいるのだ?
ウィンスレット侯爵の息子とはいえ、ミランダが以前からシリルを知っていたはずはない。
俺はミランダがシリルに懐く姿に…呆然と見ていたら…
ミランダとシリルを追いかけてきたのだろう。侍女ふたりがシリルやミランダを囲み、なにやら話し出し、侍女のひとりが言った言葉に、困ったように笑うシリルに、侍女達が頬を染めている。だが、それが面白くないのか、ミランダがムスッとして、シリルに両手を伸ばし、抱っこをせがんでいるようだ。
ミランダが…シリルに甘えている…。あのミランダが…。
来月4歳になるミランダは、あの力のせいか、子供らしからぬところがあったが…今のあの様子はただの4歳の子供だ。あんな姿を…、あんな姿で生きてゆける人生を…、ミランダに与えてあげたいと思っていたが、それをシリルは簡単にミランダに…。
シリルはミランダを抱き上げ、侍女達に頭を下げ、俺のところに向かって歩き出した。
ミランダが、なにやらシリルに話しかけているようだ。
シリルが顔を赤くし、ミランダの頬を指で突くと、ミランダは突かれた指を口で追い、その指をパクンと咥え、シリルが「ギャッ~!」と言う悲鳴を上げたことを、満足したかのようにミランダは口からシリルの指を離すと、今度はシリルの頬にその唇を寄せキスをした。
幸せそうなミランダの姿に…
シリルがミランダを見る姿に…
俺の心は、しばらく忘れていたなにかを、ようやく思い出したように…
ゆっくりと唇に笑みを浮かばせた。
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