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わ、私は…今シリルバージョンです。
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急いでお父様の執務室へ戻り、シリルバージョンで戻って来たけれど…
私は今、ミランダ姫の部屋の前に立ったまま、動けないでいる。
それは扉の向こうから聞こえる、ふたりの侍女の言葉に、またもや木霊のように私の頭の中で鳴り響いて、心が揺れ動き、考えがまとまらなかったせいだった。
「ねぇ…ロザリーさんがこの部屋を出るときに、あとで弟シリルが参りますので…と言ってあったじゃない?もしかして…あのウィンスレット侯爵家の?」
「そうよ。あぁ…あの金色の髪に、あの透き通るような青い瞳。おまけに剣の腕は…」
「うんうん、すごいの。見たことある?もうほんとにカッコいいのよ。細身で、身長も男性にしてはそれほどでもないけれど…まだ少年ですものね、五年後…ううん二年後はもっと逞しくなられて…」
・
・
・
扉を叩こうとした手が、力をなくし…そして顔が…微妙に引きつっていく気がした。
「たとえ、五年後であろうが、二年後であろうが…逞しくなりません。いえ…これ以上逞しくにはぜっ~たいなりたくないです。」
「絶対。」と呟き…鼻を啜りながら、扉を叩いた。
ほんと…マジ絶対!!
*****
結構、厳しい顔で、扉を開けたと思うんだけど…
先ほど会ったふたりの侍女は、にこやかに
「わ、わたし…スザンヌです。」
「あ、あ…私は、キャロルです。」
「シリルと申します。姫にお会いできるでしょうか?」
侍女のお二方はじっと私を見て…動かれない。
「あ、あの…スザンヌさん?キャロルさん?」
「「きゃぁ~!」」
はっ?【きゃぁ!】…何を驚かれたんだろう?
ま、まさか…バレた?
慌てて、視線を下にして服を確認した。
だ、大丈夫…服は騎士の服だ。ド、ドレスじゃない。ない。
まさか、ウィッグを外し忘れた?!!
慌てて…手を頭にやって…
だ、大丈夫…ウィッグじゃない。
「きゃぁ~」
「きゃぁ~、可愛いい!」
か…わ…いい?
「ほんと…私たちを見て俯いて、恥ずかしそうに頭を掻く姿は…もうたまらない。」
はぁ?!俯いたんじゃなくて…服を確認しただけなんですが。
恥ずかしそうに頭を掻く姿ってなんだ?
……あっ?!ウィッグを確認したときだ。
あはは…なんなの、この状況は?
えっ…まさか…その眼はハート?!じゃないですよね。
まさか…ないですよね。
「あ、あのシリル様は…休日はなにをされてありますの?」
「えっ…えぇぇーと…?」
ナンパ?まさかナンパ?初のナンパ?!
あはは…なに…この状況は?
きっと騎士の服を着ているから、2割増しでカッコ良く見えるんだ。
そうだ…
そういえば…
お父様は…その制服2割増しを利用して、お母様を射止めたと、得意げに仰っていた。
あぁぁあ!!まったくためにならない記憶だ。
はぁ~、どうやってこの場を逃げればいいんだろう!
……?
えっ?今…
それは小さな声だった。
「あなたが…シリル?」
そう、小さな声は言うと、小さな手をそっと私へと伸ばし、震えながら、ぎゅっと私の服を握ってきた。それは、離れないでと言っているのに思えたが、ミランダ姫はそこに立ち尽くしたまま、不安に震えている。
『いや!知らない人は嫌。みんな…お父様もお母様も…私を嫌っているから…嫌。』
あぁそうだ、そう言っておいでだった。
ルシアン殿下の下に連れて行って欲しいから、嫌われたくない。でも、どうしていいのかわからない…だから、私が離れて行かないように、服をしっかりと握っているんだ。
私は姫の横に跪き、その小さな手にキスを落し、
「ミランダ姫」と呼ぶと…
ミランダ姫は顔を上げ…私の顔をしばらく見つめていたが、満面の笑みを私に見せて、私の腕の中へ飛び込んで来られた。
・
・
・
「ロザリー!!」と叫びながら…。
えっ?…えええええぇっ!!
私は今、ミランダ姫の部屋の前に立ったまま、動けないでいる。
それは扉の向こうから聞こえる、ふたりの侍女の言葉に、またもや木霊のように私の頭の中で鳴り響いて、心が揺れ動き、考えがまとまらなかったせいだった。
「ねぇ…ロザリーさんがこの部屋を出るときに、あとで弟シリルが参りますので…と言ってあったじゃない?もしかして…あのウィンスレット侯爵家の?」
「そうよ。あぁ…あの金色の髪に、あの透き通るような青い瞳。おまけに剣の腕は…」
「うんうん、すごいの。見たことある?もうほんとにカッコいいのよ。細身で、身長も男性にしてはそれほどでもないけれど…まだ少年ですものね、五年後…ううん二年後はもっと逞しくなられて…」
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扉を叩こうとした手が、力をなくし…そして顔が…微妙に引きつっていく気がした。
「たとえ、五年後であろうが、二年後であろうが…逞しくなりません。いえ…これ以上逞しくにはぜっ~たいなりたくないです。」
「絶対。」と呟き…鼻を啜りながら、扉を叩いた。
ほんと…マジ絶対!!
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結構、厳しい顔で、扉を開けたと思うんだけど…
先ほど会ったふたりの侍女は、にこやかに
「わ、わたし…スザンヌです。」
「あ、あ…私は、キャロルです。」
「シリルと申します。姫にお会いできるでしょうか?」
侍女のお二方はじっと私を見て…動かれない。
「あ、あの…スザンヌさん?キャロルさん?」
「「きゃぁ~!」」
はっ?【きゃぁ!】…何を驚かれたんだろう?
ま、まさか…バレた?
慌てて、視線を下にして服を確認した。
だ、大丈夫…服は騎士の服だ。ド、ドレスじゃない。ない。
まさか、ウィッグを外し忘れた?!!
慌てて…手を頭にやって…
だ、大丈夫…ウィッグじゃない。
「きゃぁ~」
「きゃぁ~、可愛いい!」
か…わ…いい?
「ほんと…私たちを見て俯いて、恥ずかしそうに頭を掻く姿は…もうたまらない。」
はぁ?!俯いたんじゃなくて…服を確認しただけなんですが。
恥ずかしそうに頭を掻く姿ってなんだ?
……あっ?!ウィッグを確認したときだ。
あはは…なんなの、この状況は?
えっ…まさか…その眼はハート?!じゃないですよね。
まさか…ないですよね。
「あ、あのシリル様は…休日はなにをされてありますの?」
「えっ…えぇぇーと…?」
ナンパ?まさかナンパ?初のナンパ?!
あはは…なに…この状況は?
きっと騎士の服を着ているから、2割増しでカッコ良く見えるんだ。
そうだ…
そういえば…
お父様は…その制服2割増しを利用して、お母様を射止めたと、得意げに仰っていた。
あぁぁあ!!まったくためにならない記憶だ。
はぁ~、どうやってこの場を逃げればいいんだろう!
……?
えっ?今…
それは小さな声だった。
「あなたが…シリル?」
そう、小さな声は言うと、小さな手をそっと私へと伸ばし、震えながら、ぎゅっと私の服を握ってきた。それは、離れないでと言っているのに思えたが、ミランダ姫はそこに立ち尽くしたまま、不安に震えている。
『いや!知らない人は嫌。みんな…お父様もお母様も…私を嫌っているから…嫌。』
あぁそうだ、そう言っておいでだった。
ルシアン殿下の下に連れて行って欲しいから、嫌われたくない。でも、どうしていいのかわからない…だから、私が離れて行かないように、服をしっかりと握っているんだ。
私は姫の横に跪き、その小さな手にキスを落し、
「ミランダ姫」と呼ぶと…
ミランダ姫は顔を上げ…私の顔をしばらく見つめていたが、満面の笑みを私に見せて、私の腕の中へ飛び込んで来られた。
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「ロザリー!!」と叫びながら…。
えっ?…えええええぇっ!!
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