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俺の後ろを任せるのには…お前には無理のようだな。
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人は、驚くと声が出ない。
今私はその状況。
「・・・」
・
・
・
「よぉ!シリル。」
「……よぉ…エイブ。」
私は、数時間前の会話をまたやっている。
でも…エイブ、よく来れたよね。私を短剣で襲ったくせに…
その毛の生えた心臓がうらやましいわ。
事の起こりは、その日の昼過ぎ。
ルシアン王子の警護を預かる騎士の顔合わせがあったん…だけど…
その瞬間、私はお父様を見た。
お父様も唖然とした顔で…これは、知らなかったんだと、慌ててルシアン王子を見たら…
ニヤリ…
あぁ…ですか、殿下のお考えですか?
いいですよ。自分の警護だもん、そりゃぁ、お好きにされていいですよ。
でも、でも、なにかをやる前にせめて、せめてお父様には言って戴きたい。
まだ、唖然としているお父様は、しばらく使い物にはならないじゃないですか。
特に今回は言って欲しかったです…。
見てたんでしょう?窓から見てたんでしょう?!なんで…?!
恨めしそうにルシアン王子を見たら…にっこりと笑ってる。
「バートだ。」
「シリルです。よろしくお願いします。」
「カールです。よろしく。」
「よろしく。カール」
・
・
・
「よぉ!シリル。」
「……よぉ…エイブ。」
背中に、ルシアン王子の笑いを堪えた気配がする。
朝、あの時点では、決まっていなかったはず、だって、エイブは私にルシアン王子の騎士を譲れと言っていたもの。
いつ?いつ、思い立ったんだろう。
何のために…エイブを?
私はルシアン王子をまた見た。どうして…と思って見たら、その問いに答えようとするかのように
「侯爵とシリルには、まだ話があるから残ってくれ、後の者は持ち場に戻っていい。」
ヘラヘラと笑って出て行くエイブの背中を…マジ、蹴ってやろうかと睨みつけていたら、
「そんな顔で睨むな。」
その声に、振り向きざま私は叫んだ。
「なぜ?ですか!いつ決められたのですか?エイブは、あいつはダメです!!」
そう、エイブの腕は役に立たないし、エイブとライアン叔父は…王大后と王妃に繋がっている。
私の心の声を、変わりにお父様が
「殿下、恥ずかしながら、エイブと私の弟ライアンは、王大后様と王妃様に近いところにおります。」
「あぁ…気づいてはいた。だがエイブが俺を殺れると思うか?」
確かに…エイブが剣を抜く前に、ルシアン王子のほうが剣を抜いているだろうな。
私は、頭を横に振った。
ルシアン王子は、ムスッとして頭を振る私に、クスッと笑い
「悪いと思ったが、エイブを俺の側に置く事で寧ろ、相手方の動きがわかるかもしれないし、なにより、お前たちに相談する前に打診があった。」
「でも、いつ?…あぁ…まさか…あの医師から…私を追い出した、あの医師も相手方だったとは…」
お父様は愕然とした様子だった。
あの医師は、お父様が親しくしていた者だったからだ。
ルシアン王子はお父様の肩に手を置き
「そうだ。その医者からだ。昨夜、私を守ってくれていたふたりの騎士は、私と違って毒の耐性がない為に、昨日の花影草で、しばらくは動けないから、新しい騎士を入れたほうがいいと言って、紹介してきたのが、エイブとカルヴィン・アストンと言う男だ。まだ、カルヴィン・アストンは北の砦からまだ帰国していないそうだが…。」
カルヴィン・アストン……。
あの男だ。
あの男が、ルシアン王子の警護に加わる?!
「殿下!その男はダメです!危険です!」
「知っているのか?」
「その男はもう帰国しています。今朝、会いました。殿下、男の腕は一流です。そして人を殺す事を……迷わない剣です。」
私のその言葉に、ルシアン王子は……クスリと笑われた。
「そうか…ならば思い切り、俺も剣を振るうことができるな。」
「殿下!」
「俺とてお前と同じ、このブラチフォード王国、随一の騎士と謳われるウィンスレット侯爵から、教えを乞うたんだ。まさか…自信がないと言うのか?」
「わ、私は…」
その問いに、はっきりと答えない私に、殿下は赤い瞳を細め、じっと私を見ていた。
その視線に耐え切れず、俯くと
「……俺の後ろを任せるのには…お前には無理のようだな。」
その言葉は…まだ信用できないと言うことだ。
『俺は…はぁはぁ…信用していない者は、男でも…女でも…自分の後ろには…やらん。』
あの時、ルシアン王子はそう言って女性の姿だった私でも、自分の後ろには、やらなかった。後ろを任せると言うことは、信用していないとできない。
戦うという意志を見せなかった私にどうして無防備な背中を任せられるだろうか…
『……俺の後ろを任せるのには…お前には無理のようだな。』
そう言われても仕方ない。
耳に嘲笑うカルヴィン・アストンの声が聞こえる
『確かに良い腕をしているが…人を殺す事ができない騎士では、主は守れないぞ。』
人を殺める覚悟がないと…騎士の務めが果たせない。
人を殺めることを恐れる騎士は、ルシアン王子の剣となり、盾にはなれない。
私は俯き唇を噛んだ。
今私はその状況。
「・・・」
・
・
・
「よぉ!シリル。」
「……よぉ…エイブ。」
私は、数時間前の会話をまたやっている。
でも…エイブ、よく来れたよね。私を短剣で襲ったくせに…
その毛の生えた心臓がうらやましいわ。
事の起こりは、その日の昼過ぎ。
ルシアン王子の警護を預かる騎士の顔合わせがあったん…だけど…
その瞬間、私はお父様を見た。
お父様も唖然とした顔で…これは、知らなかったんだと、慌ててルシアン王子を見たら…
ニヤリ…
あぁ…ですか、殿下のお考えですか?
いいですよ。自分の警護だもん、そりゃぁ、お好きにされていいですよ。
でも、でも、なにかをやる前にせめて、せめてお父様には言って戴きたい。
まだ、唖然としているお父様は、しばらく使い物にはならないじゃないですか。
特に今回は言って欲しかったです…。
見てたんでしょう?窓から見てたんでしょう?!なんで…?!
恨めしそうにルシアン王子を見たら…にっこりと笑ってる。
「バートだ。」
「シリルです。よろしくお願いします。」
「カールです。よろしく。」
「よろしく。カール」
・
・
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「よぉ!シリル。」
「……よぉ…エイブ。」
背中に、ルシアン王子の笑いを堪えた気配がする。
朝、あの時点では、決まっていなかったはず、だって、エイブは私にルシアン王子の騎士を譲れと言っていたもの。
いつ?いつ、思い立ったんだろう。
何のために…エイブを?
私はルシアン王子をまた見た。どうして…と思って見たら、その問いに答えようとするかのように
「侯爵とシリルには、まだ話があるから残ってくれ、後の者は持ち場に戻っていい。」
ヘラヘラと笑って出て行くエイブの背中を…マジ、蹴ってやろうかと睨みつけていたら、
「そんな顔で睨むな。」
その声に、振り向きざま私は叫んだ。
「なぜ?ですか!いつ決められたのですか?エイブは、あいつはダメです!!」
そう、エイブの腕は役に立たないし、エイブとライアン叔父は…王大后と王妃に繋がっている。
私の心の声を、変わりにお父様が
「殿下、恥ずかしながら、エイブと私の弟ライアンは、王大后様と王妃様に近いところにおります。」
「あぁ…気づいてはいた。だがエイブが俺を殺れると思うか?」
確かに…エイブが剣を抜く前に、ルシアン王子のほうが剣を抜いているだろうな。
私は、頭を横に振った。
ルシアン王子は、ムスッとして頭を振る私に、クスッと笑い
「悪いと思ったが、エイブを俺の側に置く事で寧ろ、相手方の動きがわかるかもしれないし、なにより、お前たちに相談する前に打診があった。」
「でも、いつ?…あぁ…まさか…あの医師から…私を追い出した、あの医師も相手方だったとは…」
お父様は愕然とした様子だった。
あの医師は、お父様が親しくしていた者だったからだ。
ルシアン王子はお父様の肩に手を置き
「そうだ。その医者からだ。昨夜、私を守ってくれていたふたりの騎士は、私と違って毒の耐性がない為に、昨日の花影草で、しばらくは動けないから、新しい騎士を入れたほうがいいと言って、紹介してきたのが、エイブとカルヴィン・アストンと言う男だ。まだ、カルヴィン・アストンは北の砦からまだ帰国していないそうだが…。」
カルヴィン・アストン……。
あの男だ。
あの男が、ルシアン王子の警護に加わる?!
「殿下!その男はダメです!危険です!」
「知っているのか?」
「その男はもう帰国しています。今朝、会いました。殿下、男の腕は一流です。そして人を殺す事を……迷わない剣です。」
私のその言葉に、ルシアン王子は……クスリと笑われた。
「そうか…ならば思い切り、俺も剣を振るうことができるな。」
「殿下!」
「俺とてお前と同じ、このブラチフォード王国、随一の騎士と謳われるウィンスレット侯爵から、教えを乞うたんだ。まさか…自信がないと言うのか?」
「わ、私は…」
その問いに、はっきりと答えない私に、殿下は赤い瞳を細め、じっと私を見ていた。
その視線に耐え切れず、俯くと
「……俺の後ろを任せるのには…お前には無理のようだな。」
その言葉は…まだ信用できないと言うことだ。
『俺は…はぁはぁ…信用していない者は、男でも…女でも…自分の後ろには…やらん。』
あの時、ルシアン王子はそう言って女性の姿だった私でも、自分の後ろには、やらなかった。後ろを任せると言うことは、信用していないとできない。
戦うという意志を見せなかった私にどうして無防備な背中を任せられるだろうか…
『……俺の後ろを任せるのには…お前には無理のようだな。』
そう言われても仕方ない。
耳に嘲笑うカルヴィン・アストンの声が聞こえる
『確かに良い腕をしているが…人を殺す事ができない騎士では、主は守れないぞ。』
人を殺める覚悟がないと…騎士の務めが果たせない。
人を殺めることを恐れる騎士は、ルシアン王子の剣となり、盾にはなれない。
私は俯き唇を噛んだ。
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