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騎士に必要なものは…
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えっ?嘘…もう終わり?
何度、眼を擦って見ても…
私に喧嘩を吹っ掛けたエイブと、あとの2人は転がっていた。
いや…まだでしょう?!
私は欅の根元で、倒れているエイブを爪先で、ぽんぽんと蹴って見た…。
真っ赤な顔で睨みながら
「お、俺は、いずれお前の兄になるんだぞ。ちびでやせっぽちのお前の代わりに、俺があのブスのロザリーを嫁にして、侯爵家を継ぐ男なんだぞ。」
…まだ言ってる。
もう一回、蹴っておこうかな。
私のただならぬ雰囲気に、ようやく気が付いたのかエイブは、慌てて
「おまえ…騎士のくせに、恥ずかしくないのか!すでに戦闘不能の俺をいたぶって!」
いやいや…3人でひとりを襲うあんたらのほうが、恥ずかしくないの?
…と言いたかったが、バカバカしくて…でも取り合えず言った。
「バカ」
「なんだと!」
エイブの怒鳴る声を背中に聞きながら、歩き出すと…感じた。エイブの殺気を…
そうこなくちゃ!
後ろから、私の心臓でも狙ってきたのか、短剣を突き刺そうとしたエイブの右手を脇で挟み、手首を捻り、短剣を落とし、左肘でエイブの顔面を弾き飛ばすと、エイブはヒィ~と叫びながら座り込んだ。
ほんと…バカ。
・
・
えっ?
・
・
これは…
・
・
「エイブ!伏せろ!」そう言って、私はエイブを突き飛ばすと、短剣が私の左腕を掠って、欅に突き刺さった。
起き上がろうとするエイブを踏みつけ、
「いいか…動くな。」
と言って、私だけゆっくり立ち上がると、ナイフが飛んできた方向に向かって、
「…どういうつもりだ!」
私の問う声に、答える声はなかった。
だが…まだいる。まだ殺気がある。
「殺気立った気配を漂わせて…知らん振りはないだろう?!」
小さな笑い声が聞こえ、男が現れた。
栗色の髪を撫で付けたその男は、
「お前が止めを刺さないから、俺が変わりにやろうとしたまでだ。そう、いきり立つな。」
「ふざけるな!」
「いや…ふざけてなどいない。後ろから短剣で襲ってきたんだ、そんな卑怯者、死んで当たり前だ。」
「あんただって、わかっていたはずだ。エイブの腕で、私がやられるはずがないことを…」
「あぁ、お前のほうが、上だってことはわかったさ。だが…」
「だが…なんだ。」
「お前は、人を殺ったことはないだろう?。」
「えっ…?」
「俺は、何度も見た。躊躇した為に反対に殺られたところをな。」
わかっている。でも…私は…
俯いた私にその男は、クスクスと笑うと
「確かに良い腕をしているが…人を殺す事ができない騎士では、主は守れないぞ。」
と言って、大声で笑いだし
「あぁ…そうだったな。お前が仕えるルシアン王子も甘いお方だったよな。命を狙われているとわかっているのに…姪の姫様からの酒を簡単に飲み干すところなんざ、お前と同じだ。せいぜい…気をつけることだ。」
そう言って、けだるそうに欠伸をすると、その男は歩き出した。
いざと言う時、私は人を殺めることが出来るか、まだ…答えをだせない。
甘い…そう言われても、しょうがない。
でも…
ひとつだけ、あの男が言ったことは違うと思う。
「ルシアン王子は…」
私の声に…男が振り返った。
「騎士はあなたの言われるとおりだろう。主の為に、国の為に、剣を使い、立ちふさがる者を切る。だが、上に立つ方はそれだけでは…人の心を掌握し、国をまとめ、導く事などできない。優しい心がないと……人は付いては来ない。」
「ルシアン王子が…そうだと言うのか?」
「あの方は、上に立つ方が持たねばならない、冷静さ、厳しさ、そして優しさを持っていらっしゃる。」
「フッ…やっぱり甘いな。だが…聞いておこう。名を何と言う。」
「シリル…。シリル・クラレンス・ウィンスレット」
「侯爵の…嫡男殿か…俺はカルヴィン・アストン。」
じっと見られ、恐かった。でも、その視線を外す事はしたくなかった。
「侯爵の坊ちゃんにしちゃ、いい目だ。気に入った。だが…俺はやれねばならないときは、お前でも切る。」
そう言って、歩き出した男の背中を見ながら、私は…
「カルヴィン・アストン…。」
と、その名を口にし、唇を噛んだ。
何度、眼を擦って見ても…
私に喧嘩を吹っ掛けたエイブと、あとの2人は転がっていた。
いや…まだでしょう?!
私は欅の根元で、倒れているエイブを爪先で、ぽんぽんと蹴って見た…。
真っ赤な顔で睨みながら
「お、俺は、いずれお前の兄になるんだぞ。ちびでやせっぽちのお前の代わりに、俺があのブスのロザリーを嫁にして、侯爵家を継ぐ男なんだぞ。」
…まだ言ってる。
もう一回、蹴っておこうかな。
私のただならぬ雰囲気に、ようやく気が付いたのかエイブは、慌てて
「おまえ…騎士のくせに、恥ずかしくないのか!すでに戦闘不能の俺をいたぶって!」
いやいや…3人でひとりを襲うあんたらのほうが、恥ずかしくないの?
…と言いたかったが、バカバカしくて…でも取り合えず言った。
「バカ」
「なんだと!」
エイブの怒鳴る声を背中に聞きながら、歩き出すと…感じた。エイブの殺気を…
そうこなくちゃ!
後ろから、私の心臓でも狙ってきたのか、短剣を突き刺そうとしたエイブの右手を脇で挟み、手首を捻り、短剣を落とし、左肘でエイブの顔面を弾き飛ばすと、エイブはヒィ~と叫びながら座り込んだ。
ほんと…バカ。
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えっ?
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これは…
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「エイブ!伏せろ!」そう言って、私はエイブを突き飛ばすと、短剣が私の左腕を掠って、欅に突き刺さった。
起き上がろうとするエイブを踏みつけ、
「いいか…動くな。」
と言って、私だけゆっくり立ち上がると、ナイフが飛んできた方向に向かって、
「…どういうつもりだ!」
私の問う声に、答える声はなかった。
だが…まだいる。まだ殺気がある。
「殺気立った気配を漂わせて…知らん振りはないだろう?!」
小さな笑い声が聞こえ、男が現れた。
栗色の髪を撫で付けたその男は、
「お前が止めを刺さないから、俺が変わりにやろうとしたまでだ。そう、いきり立つな。」
「ふざけるな!」
「いや…ふざけてなどいない。後ろから短剣で襲ってきたんだ、そんな卑怯者、死んで当たり前だ。」
「あんただって、わかっていたはずだ。エイブの腕で、私がやられるはずがないことを…」
「あぁ、お前のほうが、上だってことはわかったさ。だが…」
「だが…なんだ。」
「お前は、人を殺ったことはないだろう?。」
「えっ…?」
「俺は、何度も見た。躊躇した為に反対に殺られたところをな。」
わかっている。でも…私は…
俯いた私にその男は、クスクスと笑うと
「確かに良い腕をしているが…人を殺す事ができない騎士では、主は守れないぞ。」
と言って、大声で笑いだし
「あぁ…そうだったな。お前が仕えるルシアン王子も甘いお方だったよな。命を狙われているとわかっているのに…姪の姫様からの酒を簡単に飲み干すところなんざ、お前と同じだ。せいぜい…気をつけることだ。」
そう言って、けだるそうに欠伸をすると、その男は歩き出した。
いざと言う時、私は人を殺めることが出来るか、まだ…答えをだせない。
甘い…そう言われても、しょうがない。
でも…
ひとつだけ、あの男が言ったことは違うと思う。
「ルシアン王子は…」
私の声に…男が振り返った。
「騎士はあなたの言われるとおりだろう。主の為に、国の為に、剣を使い、立ちふさがる者を切る。だが、上に立つ方はそれだけでは…人の心を掌握し、国をまとめ、導く事などできない。優しい心がないと……人は付いては来ない。」
「ルシアン王子が…そうだと言うのか?」
「あの方は、上に立つ方が持たねばならない、冷静さ、厳しさ、そして優しさを持っていらっしゃる。」
「フッ…やっぱり甘いな。だが…聞いておこう。名を何と言う。」
「シリル…。シリル・クラレンス・ウィンスレット」
「侯爵の…嫡男殿か…俺はカルヴィン・アストン。」
じっと見られ、恐かった。でも、その視線を外す事はしたくなかった。
「侯爵の坊ちゃんにしちゃ、いい目だ。気に入った。だが…俺はやれねばならないときは、お前でも切る。」
そう言って、歩き出した男の背中を見ながら、私は…
「カルヴィン・アストン…。」
と、その名を口にし、唇を噛んだ。
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