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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
7日目㊲
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地面に倒れたルシアンは、ロザリーの目を見た瞬間…思った。
――よけきれない…。
だがここで死ぬわけにはいかない!ロザリーの剣で死ぬわけにはいかない!
体を捻り、胸へと向かってきた剣を避けたが、剣はルシアンの左の二の腕を切り裂いていった。
その傷は深手ではなかったが、体を捻り剣を避けようとしたルシアンを追うように、ロザリーが剣を振り切ったからだろうか、血しぶきが飛んだ。
顔を歪めルシアンだったが、次に来るであろうロザリーの剣を避けるために体を動かした時、ルシアンの目に映ったのはロザリーのウエディングドレス。
――こんな時に俺は…。
そう思った瞬間、口元に笑みが浮かんだ。
それは、どこかこの状況が夢であって欲しいと願うルシアンの思いからだろうか、ロザリーのウェディングドレスへと点々と飛んだ血が、まるで小さな赤い花がドレスを彩っているように見えたからだった。
――血しぶきが花に見えるとは…。
だが、口元に浮かんだ笑みは一瞬だった。
それはロザリーの剣が、ルシアンの思いを切り裂くように、喉元へと向かって来たからだ。
ルシアンは喉元に向かってきた剣を、両手の手のひらに阻み、ゆっくりとロザリーを見た。
――喉元か…まさか喉元とは…それは確実に俺を仕留めようとしているという事か。
小さく息を吐いたルシアンの心には、悲しみとそして苛立つような思いが溢れ、それが言葉となって溢れた。
「…本気なのだな。本気で俺を殺すつもりなのだな。だが俺は死ぬわけには行かない!」
ロザリーの剣を止めたルシアンの白い手袋が、だんだんと赤く染まってゆく。
「約束したんだ。おまえと…」
「約束?」
「ロザリーおまえが男の姿になって、戦わなければならない世を変えるとおまえに誓った。」
ほんの少し、ロザリーの瞳が揺れた。
「そう言った俺に、おまえは…そんな世になったら、今度こそ刺繍を一から、キャロルにならうと。俺の名を…ルシアンと…刺繍してくれると言ってくれた。だからここで死ぬわけにはいかない。俺の横で刺繍をするおまえを見たいから、そんな世を作りたいから、死ぬわけにはいかない。ロザリー!思い出せ!俺を思い出せ!…思い出して…くれ。」
ルシアンの声は、溢れるロザリーへの思いが突き動かすように出てきたが、だんだんと…そう、だんだんと、心のどこかで【諦め】という言葉が、沁みのようにルシアンの心を覆って行き、言葉は力を無くしていった。
そんなルシアンの心が見えたのだろうか。
ヒューゴはニヤリと笑うと、親指で首を掻っ切るような仕草をしたあと、その親指を下にゆっくりと下し
「ロザリー様!とどめを!憎きローラン王からどうぞ我々をお守りください!」
――よけきれない…。
だがここで死ぬわけにはいかない!ロザリーの剣で死ぬわけにはいかない!
体を捻り、胸へと向かってきた剣を避けたが、剣はルシアンの左の二の腕を切り裂いていった。
その傷は深手ではなかったが、体を捻り剣を避けようとしたルシアンを追うように、ロザリーが剣を振り切ったからだろうか、血しぶきが飛んだ。
顔を歪めルシアンだったが、次に来るであろうロザリーの剣を避けるために体を動かした時、ルシアンの目に映ったのはロザリーのウエディングドレス。
――こんな時に俺は…。
そう思った瞬間、口元に笑みが浮かんだ。
それは、どこかこの状況が夢であって欲しいと願うルシアンの思いからだろうか、ロザリーのウェディングドレスへと点々と飛んだ血が、まるで小さな赤い花がドレスを彩っているように見えたからだった。
――血しぶきが花に見えるとは…。
だが、口元に浮かんだ笑みは一瞬だった。
それはロザリーの剣が、ルシアンの思いを切り裂くように、喉元へと向かって来たからだ。
ルシアンは喉元に向かってきた剣を、両手の手のひらに阻み、ゆっくりとロザリーを見た。
――喉元か…まさか喉元とは…それは確実に俺を仕留めようとしているという事か。
小さく息を吐いたルシアンの心には、悲しみとそして苛立つような思いが溢れ、それが言葉となって溢れた。
「…本気なのだな。本気で俺を殺すつもりなのだな。だが俺は死ぬわけには行かない!」
ロザリーの剣を止めたルシアンの白い手袋が、だんだんと赤く染まってゆく。
「約束したんだ。おまえと…」
「約束?」
「ロザリーおまえが男の姿になって、戦わなければならない世を変えるとおまえに誓った。」
ほんの少し、ロザリーの瞳が揺れた。
「そう言った俺に、おまえは…そんな世になったら、今度こそ刺繍を一から、キャロルにならうと。俺の名を…ルシアンと…刺繍してくれると言ってくれた。だからここで死ぬわけにはいかない。俺の横で刺繍をするおまえを見たいから、そんな世を作りたいから、死ぬわけにはいかない。ロザリー!思い出せ!俺を思い出せ!…思い出して…くれ。」
ルシアンの声は、溢れるロザリーへの思いが突き動かすように出てきたが、だんだんと…そう、だんだんと、心のどこかで【諦め】という言葉が、沁みのようにルシアンの心を覆って行き、言葉は力を無くしていった。
そんなルシアンの心が見えたのだろうか。
ヒューゴはニヤリと笑うと、親指で首を掻っ切るような仕草をしたあと、その親指を下にゆっくりと下し
「ロザリー様!とどめを!憎きローラン王からどうぞ我々をお守りください!」
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