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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
7日目㉞
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ロザリーにそこまで言わせてしまうとは…。
だが…
ロザリーには、道がそれしか見えないのだ。
でも、それでも俺は…
ギュッと握りしめた手をゆっくりと開き、ロザリーへと手を伸ばした。
ロザリーが俺を見る。
透き通るような青い瞳で俺を見る。
きっと、この結婚式を取りやめろと言っているのだ。
俺の動き一つが…いや言葉一つが、自分を凶器へと変えることを感じているんだろう。
わかっている。
この暗示が解けない限り、ロザリーは俺を狙い続ける刃だという事は。
だが、わかっていても、俺はロザリーへと伸ばしたこの手を引くことはしない。
ここでこの手を引けば、ロザリーは俺の妻になるどころか、騎士としても俺から身を引く。
そう、ここで暗示を解かない限り、ロザリーは俺から離れて行く。
そんな事は許さない。例えロザリーでも、俺からおまえを奪う事は許さない。
ならば…ひとつだ。
解けないのなら、実行させて暗示の呪縛から切り離す。
離れたくない。このまま離れたくない!だから手を取れ。ロザリー、手を取ってくれ!
だが…
ロザリーは俺の手を取ろうとはしない。
ぞれどころか、次に賛美歌が流れるはずなのに…流れない。
なぜだ?式を取りやめるのか?!
周りの者も結婚式を止めるつもりなのか…?!
伸ばしていた手が微かに震えた瞬間だった。
♪♪~♪~
そのバイオリンの音は、ゆったりとしたテンポで、会場を包んでいった。
これは…
『愛の挨拶っていうこの曲は…弓のストロークとビブラートのバランス、stringの始動し出す位置等、全てを計算済みで演奏しないと本当にあっという間に終わってしまう曲でしょう?だから、かえって苦手。下手さが目立つんだもの。この私に苦手なものがあるなんて、ゆ、許せないからやりたくない~。』
そう言っていたのは…
ハッとして、音のする方向を見ると、俺を見つめながらバイオリンを弾くミランダの姿。
ミランダ。
おまえもロザリーが俺達の側から離れて行くのを許せないんだな。
そう思ったら、口元が綻んだ。
やるか…。
俺に斬りかかってくるロザリーをどこまで、凌げるかわからない。
でも信じている。暗示は本人が望まぬ事はやれない。だったら…必ずロザリーは本来のロザリーに戻れるはず!
キスが引き金かもしれない。
だがキスをしないままで、終わりたくはない。
俺は跪くロザリーの顔を両手で上げ、その唇にそっと唇を重ねると、驚いたように目を見開くロザリーの青い瞳が見えた。
これが引き金ではないのか…。
そうか…。
愛を信じていないヒューゴは、キスよりも引き金にしたいものがあったんだ。
恐らく…それは…。
俺はもう一度、軽くロザリーの唇に触れた。
必ず、その唇にまた触れる!
そう誓い、俺は引き金であろう言葉を言った。
「幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓う。」
目の端にヒューゴの笑った顔が見えた。
引き金は……引いたようだ。
ロザリーは俺を突き飛ばすと、立ち上がった。
その瞬間、ヒューゴは警護をしていた兵士の剣を奪うとロザリーに向かって投げ、ニヤリを笑うと叫んだ
「ロザリー様!!!ローラン王を殺らねば、ブラチフォード国が滅び、大切な方々が殺されます!」
ローラン王…?ブラチフォード国が滅び、大切な方々が殺される?って、まさか!俺を前ローラン王に見立て、あの時に…ロザリーの記憶を戻したのか?!
カチン…。
鞘から剣を抜くその音に、俺は唇を噛んだ。
俺が前ローラン王だと思って斬りかかってくるのか?
俺がルシアンだとわからないのなら…ロザリーは躊躇なく向かってくる。
俺が…わからないのなら、本来のロザリーに戻れる可能性はない。
凌げるだろうか。
ロザリーの殺意を持った剣を俺はどこまで凌げるだろうか。
小さく息を吐きながら、立ち上がった俺に、ロザリーがゆっくりと剣を向けた。
だが…
ロザリーには、道がそれしか見えないのだ。
でも、それでも俺は…
ギュッと握りしめた手をゆっくりと開き、ロザリーへと手を伸ばした。
ロザリーが俺を見る。
透き通るような青い瞳で俺を見る。
きっと、この結婚式を取りやめろと言っているのだ。
俺の動き一つが…いや言葉一つが、自分を凶器へと変えることを感じているんだろう。
わかっている。
この暗示が解けない限り、ロザリーは俺を狙い続ける刃だという事は。
だが、わかっていても、俺はロザリーへと伸ばしたこの手を引くことはしない。
ここでこの手を引けば、ロザリーは俺の妻になるどころか、騎士としても俺から身を引く。
そう、ここで暗示を解かない限り、ロザリーは俺から離れて行く。
そんな事は許さない。例えロザリーでも、俺からおまえを奪う事は許さない。
ならば…ひとつだ。
解けないのなら、実行させて暗示の呪縛から切り離す。
離れたくない。このまま離れたくない!だから手を取れ。ロザリー、手を取ってくれ!
だが…
ロザリーは俺の手を取ろうとはしない。
ぞれどころか、次に賛美歌が流れるはずなのに…流れない。
なぜだ?式を取りやめるのか?!
周りの者も結婚式を止めるつもりなのか…?!
伸ばしていた手が微かに震えた瞬間だった。
♪♪~♪~
そのバイオリンの音は、ゆったりとしたテンポで、会場を包んでいった。
これは…
『愛の挨拶っていうこの曲は…弓のストロークとビブラートのバランス、stringの始動し出す位置等、全てを計算済みで演奏しないと本当にあっという間に終わってしまう曲でしょう?だから、かえって苦手。下手さが目立つんだもの。この私に苦手なものがあるなんて、ゆ、許せないからやりたくない~。』
そう言っていたのは…
ハッとして、音のする方向を見ると、俺を見つめながらバイオリンを弾くミランダの姿。
ミランダ。
おまえもロザリーが俺達の側から離れて行くのを許せないんだな。
そう思ったら、口元が綻んだ。
やるか…。
俺に斬りかかってくるロザリーをどこまで、凌げるかわからない。
でも信じている。暗示は本人が望まぬ事はやれない。だったら…必ずロザリーは本来のロザリーに戻れるはず!
キスが引き金かもしれない。
だがキスをしないままで、終わりたくはない。
俺は跪くロザリーの顔を両手で上げ、その唇にそっと唇を重ねると、驚いたように目を見開くロザリーの青い瞳が見えた。
これが引き金ではないのか…。
そうか…。
愛を信じていないヒューゴは、キスよりも引き金にしたいものがあったんだ。
恐らく…それは…。
俺はもう一度、軽くロザリーの唇に触れた。
必ず、その唇にまた触れる!
そう誓い、俺は引き金であろう言葉を言った。
「幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓う。」
目の端にヒューゴの笑った顔が見えた。
引き金は……引いたようだ。
ロザリーは俺を突き飛ばすと、立ち上がった。
その瞬間、ヒューゴは警護をしていた兵士の剣を奪うとロザリーに向かって投げ、ニヤリを笑うと叫んだ
「ロザリー様!!!ローラン王を殺らねば、ブラチフォード国が滅び、大切な方々が殺されます!」
ローラン王…?ブラチフォード国が滅び、大切な方々が殺される?って、まさか!俺を前ローラン王に見立て、あの時に…ロザリーの記憶を戻したのか?!
カチン…。
鞘から剣を抜くその音に、俺は唇を噛んだ。
俺が前ローラン王だと思って斬りかかってくるのか?
俺がルシアンだとわからないのなら…ロザリーは躊躇なく向かってくる。
俺が…わからないのなら、本来のロザリーに戻れる可能性はない。
凌げるだろうか。
ロザリーの殺意を持った剣を俺はどこまで凌げるだろうか。
小さく息を吐きながら、立ち上がった俺に、ロザリーがゆっくりと剣を向けた。
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