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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
7日目㉚
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ルシアン殿下の視線がお父様に行った。
いよいよだ…いや…変だ。お父様が青い顔で別のところを見ていらしている。
だが、バージンロードを歩き出したルシアン殿下と私は、立ち止まるわけには行かない。
(お父様)
視線だけをお父様に向けて歩いていたが、嗅覚が異変に気付いた。
(血…の匂い?)
隣を歩くルシアン殿下も、この異変に気付いておられるはずだが、止まられる様子はない。
そう思った瞬間、血の匂いを纏った男が目の端に映った。
(…ナダル?!)
口元に笑みを浮かべ、ゆっくりとお父様に近づくナダルを、お父様は心配ないというように、私とルシアン殿下に向かって頷き、ナダルへと手を伸ばされた。
*****
「くそっ…痛いな。」
ナダルはそう言うと、左手で真っ赤に染まっていく腹を押さえた。
こうでもしないと、自分が自分でなくなりそうで、腹に短剣を刺したナダルだったが、この痛みで気が遠くなる度、違う恐怖が生まれていた。
「気が遠くなる度に…ヒューゴの声が聞こえるとは…。これじゃぁ意識がなくなったら、剣を振り回す狂人になるかもしれないな。参ったぜ、そうなったら自分の腹に短剣を刺した俺が、馬鹿みたいじゃないか。そんな馬鹿な姿は見られたくねぇな。」とナダルはバージンロードを歩くロザリーへと目をやった。
「へぇ~あいつ結構、花嫁姿が似合ってんじゃん。」
そう口にして、クスリと笑ったナダルだったが、口元に笑みを浮かべた途端、膝から崩れ落ちそうになり、ナダルは慌てて木に凭れた。
「…腹は…マズかった。力が入んねぇ。ヒューゴの声を遮断するためには、これしかないと思ったんだがなぁ。やっぱり腹は…マズかったなぁ。痛てぇ…せめて腕にしときゃよかったぜ。」
痛みで意識が遠のく度に聞こえるのは…ヒューゴの声だった。
《偽りの愛を囁くルシアンは、やはりローラン王家の血だな。》
《そんな男に惚れているロザリーが哀れだと思わないか?まるでおまえの母親と同じだ。助けてやれ。》
《抱きたんだろう?それぐらいおまえはあの女が欲しい。俺はこの国が欲しい。その為に邪魔なのはルシアン。なぁ、俺とおまえは腹違いの兄弟なんだぜ、助け合おうじゃないか。ルシアンひとりがいなくなれば、俺達兄弟ふたりは幸せになれるんだ。》
「…魅力的なお誘いありがとな。だが、俺はその気はない。」
だが、ヒューゴの声はまだ頭の中で響いてくる。
「ヒューゴ、おまえはホントにしつこいな。」
そう言って、クスクスと笑うと
「あぁ、認める。その通りさ。俺はロザリーに惹かれている。あいつを母親みたいな女にしたくないと思っている。おまえの言うとおりだ。だが…ルシアンがロザリーを思う気持ちは…あれは偽りの愛なんかじゃないぜ。同じ女を好きになったんだ。それくらいわかる。」
ナダルは招待客の中にいるヒューゴを見つけると、冷ややかな笑みを浮かべ
「おまえは…俺がロザリーを抱きたいだろう…言ったよな。あぁそうさ。抱きたいと思う気持ちはあるさ。だが、おまえが知る恋はそこまでなんだな。本当に惚れていたら、抱きたいと思う気持ちより、その女の幸せな顔を見たいもんなんだよ。」
そう言って、苦しそうに息を吐き、前のめりに倒れそうな体を支えながら
「…くそっ!!意識がもうろうとするぜ。このままだとヤバいな。どうする。もう自分を刺すだけの力が…ない、誰かに斬ってもらうしかないな。」
倒れないように顔を上げると、ウィンスレット侯爵が青い顔でこちらを見ていることに気が付いた。
「…こりゃいいや、惚れた女の父親に斬られるのも一興だぜ。どうやら、侯爵は気が付いてくれたらしいし…とりあえず、無様な死に方は免れそうだ。」
肩で息をして、最後にもう一度、ロザリーとルシアンを見たナダルはニヤリを笑い
「ヒューゴ、見てるか?こんなに離れていても、あのふたりは異変に気付いてるぜ。別格なんだよ。おまえの計画は失敗だ。別格のふたりを殺ろうとするのに、俺を暗殺者にしようとは、おそまつだったなぁ。俺ごときが剣を振り回したって、ルシアンのところまでたどりつけなかったぜ。万が一、剣を振りかざしルシアンに近づくことができたとしても、剣を振り下ろす前にロザリーに殺れる。あいつも…強ぇんだよ。ましてや惚れてる男を斬ろうとしたら、俺なんかみじん切りにされちまう。おまえは甘く見ていたな。あのふたりは簡単に殺れないぜ。もしルシアンを殺れるとしたら、恐らくロザリーぐらいだ、そしてロザリーを殺れるはルシアンだけだ。俺を暗殺者に仕立て上げたその時点で、おまえの計画は失敗だったということさ。」
俺はこの戦いの勝利を確信して、口元に笑みを浮かべウィンスレット侯爵のところへと歩きだした。
まさか…ルシアンを狙う暗殺者が、ロザリーだったとは知らずに。
いよいよだ…いや…変だ。お父様が青い顔で別のところを見ていらしている。
だが、バージンロードを歩き出したルシアン殿下と私は、立ち止まるわけには行かない。
(お父様)
視線だけをお父様に向けて歩いていたが、嗅覚が異変に気付いた。
(血…の匂い?)
隣を歩くルシアン殿下も、この異変に気付いておられるはずだが、止まられる様子はない。
そう思った瞬間、血の匂いを纏った男が目の端に映った。
(…ナダル?!)
口元に笑みを浮かべ、ゆっくりとお父様に近づくナダルを、お父様は心配ないというように、私とルシアン殿下に向かって頷き、ナダルへと手を伸ばされた。
*****
「くそっ…痛いな。」
ナダルはそう言うと、左手で真っ赤に染まっていく腹を押さえた。
こうでもしないと、自分が自分でなくなりそうで、腹に短剣を刺したナダルだったが、この痛みで気が遠くなる度、違う恐怖が生まれていた。
「気が遠くなる度に…ヒューゴの声が聞こえるとは…。これじゃぁ意識がなくなったら、剣を振り回す狂人になるかもしれないな。参ったぜ、そうなったら自分の腹に短剣を刺した俺が、馬鹿みたいじゃないか。そんな馬鹿な姿は見られたくねぇな。」とナダルはバージンロードを歩くロザリーへと目をやった。
「へぇ~あいつ結構、花嫁姿が似合ってんじゃん。」
そう口にして、クスリと笑ったナダルだったが、口元に笑みを浮かべた途端、膝から崩れ落ちそうになり、ナダルは慌てて木に凭れた。
「…腹は…マズかった。力が入んねぇ。ヒューゴの声を遮断するためには、これしかないと思ったんだがなぁ。やっぱり腹は…マズかったなぁ。痛てぇ…せめて腕にしときゃよかったぜ。」
痛みで意識が遠のく度に聞こえるのは…ヒューゴの声だった。
《偽りの愛を囁くルシアンは、やはりローラン王家の血だな。》
《そんな男に惚れているロザリーが哀れだと思わないか?まるでおまえの母親と同じだ。助けてやれ。》
《抱きたんだろう?それぐらいおまえはあの女が欲しい。俺はこの国が欲しい。その為に邪魔なのはルシアン。なぁ、俺とおまえは腹違いの兄弟なんだぜ、助け合おうじゃないか。ルシアンひとりがいなくなれば、俺達兄弟ふたりは幸せになれるんだ。》
「…魅力的なお誘いありがとな。だが、俺はその気はない。」
だが、ヒューゴの声はまだ頭の中で響いてくる。
「ヒューゴ、おまえはホントにしつこいな。」
そう言って、クスクスと笑うと
「あぁ、認める。その通りさ。俺はロザリーに惹かれている。あいつを母親みたいな女にしたくないと思っている。おまえの言うとおりだ。だが…ルシアンがロザリーを思う気持ちは…あれは偽りの愛なんかじゃないぜ。同じ女を好きになったんだ。それくらいわかる。」
ナダルは招待客の中にいるヒューゴを見つけると、冷ややかな笑みを浮かべ
「おまえは…俺がロザリーを抱きたいだろう…言ったよな。あぁそうさ。抱きたいと思う気持ちはあるさ。だが、おまえが知る恋はそこまでなんだな。本当に惚れていたら、抱きたいと思う気持ちより、その女の幸せな顔を見たいもんなんだよ。」
そう言って、苦しそうに息を吐き、前のめりに倒れそうな体を支えながら
「…くそっ!!意識がもうろうとするぜ。このままだとヤバいな。どうする。もう自分を刺すだけの力が…ない、誰かに斬ってもらうしかないな。」
倒れないように顔を上げると、ウィンスレット侯爵が青い顔でこちらを見ていることに気が付いた。
「…こりゃいいや、惚れた女の父親に斬られるのも一興だぜ。どうやら、侯爵は気が付いてくれたらしいし…とりあえず、無様な死に方は免れそうだ。」
肩で息をして、最後にもう一度、ロザリーとルシアンを見たナダルはニヤリを笑い
「ヒューゴ、見てるか?こんなに離れていても、あのふたりは異変に気付いてるぜ。別格なんだよ。おまえの計画は失敗だ。別格のふたりを殺ろうとするのに、俺を暗殺者にしようとは、おそまつだったなぁ。俺ごときが剣を振り回したって、ルシアンのところまでたどりつけなかったぜ。万が一、剣を振りかざしルシアンに近づくことができたとしても、剣を振り下ろす前にロザリーに殺れる。あいつも…強ぇんだよ。ましてや惚れてる男を斬ろうとしたら、俺なんかみじん切りにされちまう。おまえは甘く見ていたな。あのふたりは簡単に殺れないぜ。もしルシアンを殺れるとしたら、恐らくロザリーぐらいだ、そしてロザリーを殺れるはルシアンだけだ。俺を暗殺者に仕立て上げたその時点で、おまえの計画は失敗だったということさ。」
俺はこの戦いの勝利を確信して、口元に笑みを浮かべウィンスレット侯爵のところへと歩きだした。
まさか…ルシアンを狙う暗殺者が、ロザリーだったとは知らずに。
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