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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
7日目⑪スイッチ
しおりを挟む「ロザリー!」
「ロザリー様!」
ロザリーを呼ぶ、その悲鳴のような声を聞いた瞬間、ルシアンの体はもう王妃の間に飛び込んでいた。
まるで部屋の外で待っていたかのように現れたルシアンに、驚いたミランダだったが、複数の足音にゆっくりと振り返り、ウィスレット侯爵とアストンの姿を確認すると……目を細めた。
何かあったんだ。
侯爵、アストン、叔父様の三人でしか共有できない…出来事が。
「ロザリー!」
ルシアンの声に、ロザリーはハッとしたように、目を開け
「…えっと、私…どうしたんでしょうか?」
「キャロルの背中に刺し傷があると、私が言った途端に倒れたのよ。大丈夫?」
「は、はい。寝不足だったんでしょうね。ちょっとクラッとしちゃって…」
そう言って、ロザリーは微笑むと、キャロルに向かって
「キャロルさんの傷は…大丈夫ですか?」
ロザリーが倒れたのが自分のせいのような気がしたキャロルはべそをかきながら
「す。すみません…私…」
「キャロルさん!泣かないでください。私が勝手に倒れたわけで…私こそ、す、すみません。」
ロザリーとキャロルの話をクスリと笑いながら見ていたミランダだったが、侯爵とアストンがロイを複雑な表情で見ていることに気が付き、今度は視線をロイに移しその様子を見た、だが、纏う色も特に不審なところは見当たらず…ミランダはまた侯爵とアストンへと視線を移し「なるほどね。」と呟くと
「ロイ、あなたはすぐに私がブラチフォード国から連れてきた、マクドナルド医師にここに来るように言って。それからそのままリドリー伯爵に、私がお願いしていた件がどうなったか聞いてきて頂戴。」
ミランダのその命に、ロイは「わかりました。」と言うとすぐに、部屋を飛び出した。
その後ろ姿を見ながら、ミランダはキャロルとロザリーに
「なにふたりで謝ってんのよ。はい!もうここで終わり。それよりキャロル、その背中の刺し傷はどうしたの?」
「刺し傷…?」
ルシアンの声に、ミランダは頷くと
「えぇ、キャロルの刺し傷を聞いて、まぁ偶然だと思うけど…ロザリーは倒れたの。」
アストンがキャロルの背中にまわるとその傷を見て、眉を顰め侯爵に何か言った。
ミランダは黙ってその様子を見ていたが、キャロルに向かって
「どこで、怪我をしたの?」
キャロルは青い顔で、涙を零しながら
「…わ、わかりません。いつケガしたのか、さっぱり…」
「痛くはない?」
「…痛くないです。」
「でもちゃんとマクドナルド先生に、あなたも見てもらうのよ。」
「…はい。」
ミランダは侯爵とアストンに
「キャロルの背中の傷をみたいでしょうけど、嫁入り前のキャロルの背中を見せるわけにはいかないわよ。でも…」
ミランダはキャロルに微笑むと
「キャロル、ごめんね。今日は大事な日だから、男の方々は少しでも気になる事は挙式前に片付けておきたいらしわ。面倒だけど着替えたら、そのドレスを男性陣に見せてあげて欲しいのだけどいいかしら?」
「はい。」
ミランダはそう言って、まだグズグズと鼻を鳴らすキャロルの手を握り
「さぁ、着替えていらっしゃい。着替えたら…ロザリーの側についていてあげて」
「そして、ロザリー。」
「は、はい!」
「あなたは少しでも休んでおきなさい。」
「ミランダ姫、私はもう大丈夫です!それに、もう時間が…」
「ロザリー。キャロルのこの涙はどうしてだかわかるでしょう?」
ロザリーの瞳が大きく見開いた。その様子を見てミランダは
「キャロルはあなたが倒れたのは、心配をかけた自分のせいじゃないかと思っているのよ。ロザリー、お願い。これ以上…キャロルを泣かせないで」
ロザリーは目を瞑ると頷き
「…はい。少し横になっておきます。」
そしてキャロルに向かって
「キャロルさん、ついて来てくれますか?」
「はい!ロザリー様。」
「ミランダ姫、ルシアン殿下…ご心配をおかけしてすみません。少し休んでまいります。」
ロザリーはそう言って、何も言わないルシアンを見て唇を噛むと頭を下げ、キャロルと一緒に部屋を後にした。
ミランダはルシアンが何も言わず、ただロザリーの背中を見ている姿に確信を持ったように
「ここにいるのは、ウィンスレット侯爵、アストン、叔父様の三人よ。さぁ話して。」
そう言うとウィンスレット侯爵とアストンを見て、ルシアンの上着を握り
「ロザリーとロイのふたりに、声を掛けるのを躊躇っているのはどうして?!何を三人で隠しているの?」
だが、ルシアンは黙ってミランダを見ただけだった。
その様子にミランダは語気を荒げ
「この部屋に入ってから、倒れたロザリーに叔父様の口から出た言葉は、ロザリーの名前だけ。大丈夫の一言さえなかった。見たでしょう?この部屋を出て行くときのロザリーの顔を?!叔父様がロザリーを心配しているのはわかっているわ。でもこんな時に、いたわりの言葉さえなかった事に、ロザリーはショックを受けたはずよ。きっとロザリーは思っているわ。いざというときに倒れるなんて…情けない。叔父様が何にも言ってくださらないのは、きっと呆れているからだとね。」
「…ミランダ。」
ルシアンが苦しそうにミランダの名を呼んだが、それから後の言葉が出てこないことに、ミランダは顔を歪め
「叔父様が言えないのなら…アストン。あなたに聞くわ。」
アストンの視線がルシアンに行った。
ミランダはアストンの視線の動きを見ながら
「アストン!あなたは私の臣下、叔父様の臣下ではないわ。命令します。私にすべてを話しなさい。」
その声は纏う雰囲気は、百戦練磨のアストンでさえ息を呑む姿だった。
「ロザリー様!」
ロザリーを呼ぶ、その悲鳴のような声を聞いた瞬間、ルシアンの体はもう王妃の間に飛び込んでいた。
まるで部屋の外で待っていたかのように現れたルシアンに、驚いたミランダだったが、複数の足音にゆっくりと振り返り、ウィスレット侯爵とアストンの姿を確認すると……目を細めた。
何かあったんだ。
侯爵、アストン、叔父様の三人でしか共有できない…出来事が。
「ロザリー!」
ルシアンの声に、ロザリーはハッとしたように、目を開け
「…えっと、私…どうしたんでしょうか?」
「キャロルの背中に刺し傷があると、私が言った途端に倒れたのよ。大丈夫?」
「は、はい。寝不足だったんでしょうね。ちょっとクラッとしちゃって…」
そう言って、ロザリーは微笑むと、キャロルに向かって
「キャロルさんの傷は…大丈夫ですか?」
ロザリーが倒れたのが自分のせいのような気がしたキャロルはべそをかきながら
「す。すみません…私…」
「キャロルさん!泣かないでください。私が勝手に倒れたわけで…私こそ、す、すみません。」
ロザリーとキャロルの話をクスリと笑いながら見ていたミランダだったが、侯爵とアストンがロイを複雑な表情で見ていることに気が付き、今度は視線をロイに移しその様子を見た、だが、纏う色も特に不審なところは見当たらず…ミランダはまた侯爵とアストンへと視線を移し「なるほどね。」と呟くと
「ロイ、あなたはすぐに私がブラチフォード国から連れてきた、マクドナルド医師にここに来るように言って。それからそのままリドリー伯爵に、私がお願いしていた件がどうなったか聞いてきて頂戴。」
ミランダのその命に、ロイは「わかりました。」と言うとすぐに、部屋を飛び出した。
その後ろ姿を見ながら、ミランダはキャロルとロザリーに
「なにふたりで謝ってんのよ。はい!もうここで終わり。それよりキャロル、その背中の刺し傷はどうしたの?」
「刺し傷…?」
ルシアンの声に、ミランダは頷くと
「えぇ、キャロルの刺し傷を聞いて、まぁ偶然だと思うけど…ロザリーは倒れたの。」
アストンがキャロルの背中にまわるとその傷を見て、眉を顰め侯爵に何か言った。
ミランダは黙ってその様子を見ていたが、キャロルに向かって
「どこで、怪我をしたの?」
キャロルは青い顔で、涙を零しながら
「…わ、わかりません。いつケガしたのか、さっぱり…」
「痛くはない?」
「…痛くないです。」
「でもちゃんとマクドナルド先生に、あなたも見てもらうのよ。」
「…はい。」
ミランダは侯爵とアストンに
「キャロルの背中の傷をみたいでしょうけど、嫁入り前のキャロルの背中を見せるわけにはいかないわよ。でも…」
ミランダはキャロルに微笑むと
「キャロル、ごめんね。今日は大事な日だから、男の方々は少しでも気になる事は挙式前に片付けておきたいらしわ。面倒だけど着替えたら、そのドレスを男性陣に見せてあげて欲しいのだけどいいかしら?」
「はい。」
ミランダはそう言って、まだグズグズと鼻を鳴らすキャロルの手を握り
「さぁ、着替えていらっしゃい。着替えたら…ロザリーの側についていてあげて」
「そして、ロザリー。」
「は、はい!」
「あなたは少しでも休んでおきなさい。」
「ミランダ姫、私はもう大丈夫です!それに、もう時間が…」
「ロザリー。キャロルのこの涙はどうしてだかわかるでしょう?」
ロザリーの瞳が大きく見開いた。その様子を見てミランダは
「キャロルはあなたが倒れたのは、心配をかけた自分のせいじゃないかと思っているのよ。ロザリー、お願い。これ以上…キャロルを泣かせないで」
ロザリーは目を瞑ると頷き
「…はい。少し横になっておきます。」
そしてキャロルに向かって
「キャロルさん、ついて来てくれますか?」
「はい!ロザリー様。」
「ミランダ姫、ルシアン殿下…ご心配をおかけしてすみません。少し休んでまいります。」
ロザリーはそう言って、何も言わないルシアンを見て唇を噛むと頭を下げ、キャロルと一緒に部屋を後にした。
ミランダはルシアンが何も言わず、ただロザリーの背中を見ている姿に確信を持ったように
「ここにいるのは、ウィンスレット侯爵、アストン、叔父様の三人よ。さぁ話して。」
そう言うとウィンスレット侯爵とアストンを見て、ルシアンの上着を握り
「ロザリーとロイのふたりに、声を掛けるのを躊躇っているのはどうして?!何を三人で隠しているの?」
だが、ルシアンは黙ってミランダを見ただけだった。
その様子にミランダは語気を荒げ
「この部屋に入ってから、倒れたロザリーに叔父様の口から出た言葉は、ロザリーの名前だけ。大丈夫の一言さえなかった。見たでしょう?この部屋を出て行くときのロザリーの顔を?!叔父様がロザリーを心配しているのはわかっているわ。でもこんな時に、いたわりの言葉さえなかった事に、ロザリーはショックを受けたはずよ。きっとロザリーは思っているわ。いざというときに倒れるなんて…情けない。叔父様が何にも言ってくださらないのは、きっと呆れているからだとね。」
「…ミランダ。」
ルシアンが苦しそうにミランダの名を呼んだが、それから後の言葉が出てこないことに、ミランダは顔を歪め
「叔父様が言えないのなら…アストン。あなたに聞くわ。」
アストンの視線がルシアンに行った。
ミランダはアストンの視線の動きを見ながら
「アストン!あなたは私の臣下、叔父様の臣下ではないわ。命令します。私にすべてを話しなさい。」
その声は纏う雰囲気は、百戦練磨のアストンでさえ息を呑む姿だった。
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