173 / 214
結婚までの7日間 Lucian & Rosalie
時限爆弾
しおりを挟む
「…ロザリー様。これ…ルシアンではなくてルチアーノになってますよ。」
「えっ?」
「Lucian(ルシアン)様のnの次に…oが入って…Luciano(ルチアーノ)に…)
声さえも出ない…。
完成…。
それは遙に遠い気がする。はぁ~
「ぁ…あ…、とにかく一息いれましょう。まだ7日あります!7日もです!」
そう言いながら、慌てて部屋を出て行くキャロルさんの姿に、思わず手を合わせてしまった。
「ごめんなさい。…ぶ、不器用で…。はぁ~」
右の手の中にあるい白い手袋を見ると、また大きなため息がでてしまいそう。
でも、ルシアン殿下になにか差し上げたかった。
上手く言えないこの思いを形として、差し上げたかった。
だから…
『ローラン国では、好きな方の持ち物に、その方の名前と自分の名前を刺繍すると、【ふたりはどんな困難に当たっても、その愛と絆は切れることがない】と言われているそうなんですよ。』
と言ったキャロルさんの言葉に、飛びついちゃったんだ。
しかし、これはかなり厳しいミッションだった。
一応私だって、レディだし…。一応…針と糸は持ったことがあるわけだし…。
剣だって、乗馬だって、あっという間に上達して、年上の男の子を追い抜かした私だもの。
結構器用だから大丈夫!なんて思っていた。
その考えは甘かったな。
もう一度、キャロルさんに教えを乞うてやり直そう。あと一週間ぐらいあるんだもの。死ぬ気で頑張れば…!
私は立ち上がりながら、お茶を入れに2つ向こうの部屋へと行ったキャロルさんに聞こえるように、大きな声で
「キャロルさん!もう一度私にチャンスを!」
だが、物音一つしない。
…ぁ…なんだろう。
嫌な…そうだ、嫌な感じがする。
でも、ここはローラン国の宮殿、ルシアン殿下の命で警備は厳重だ。
そんな宮殿内をましてや宮殿の奥にある王妃の間に、警備を掻い潜って侵入できる輩はいないはず
気のせいだろうか?
このところ、剣から遠ざかっていたから……感が鈍った?
いや…違う。間違いない誰かいる。
「キャロルさん。」
キャロルさんの名をまた呼んだ時だった。キャロルさんの大きな声が聞こえた!
「…ダメ!ロザリー様、こちらに来てはダメです!!!」
ヒールを脱ぎ、一気に走った。
レイピアは…今、手元にはないが、ドレスの中には短剣を忍ばせている。
一つ目の扉に張り付き、中の音を聞く。
…ここじゃない。
扉を開け、二つ目の扉に手をかけ、勢い良く開けた。
……いた。
「病弱だと言う噂でしたが、さすが武神と言われるウィンスレット侯爵のご息女。なかなかのじゃじゃ馬ですね。」
この男は…ぁ…見た事がある。
確か…そう、そうだ。前ローラン王の護衛をしていた男だ。
ならば…この男、ローラン国の軍人。
どうする?
男は背丈はあるが、線は細い。
体の動き、足の運びから見て、剣の腕は私の方が上。
だが、どうやってキャロルさんを助け出そうか。
男の片手はキャロルさんの首に回っている、もう片方の手は背中にあるところをみると、おそらく短剣をキャロルさんの背中に当てていると思われる。
さすがに剣を持って、この宮殿の奥までは来れなかったようだが…。
「私の分析は終わりましたか?」
この場には合わない笑顔で、男は言った。
この男…なにか、おかしい。
軍人ならわかっているはずだ。
ひとりでふたりの人間を短剣ひとつでは殺せないし、その行動を押さえることはできないことは…。
落ち着け、私。
きっと、隠し玉をもっているはず。
「短剣を持って、忍び込まれるところを見ると、私に急用でしょうか?」
男は目を細め
「シリルという双子の弟君はかなりの使い手だと、ローラン国でも有名でしたが、ロザリー様のその度胸…いやはや、姉のロザリー様もかなり腕に自信がおありのようでこれは困りました。」
この男はどうしてそんなに落ち着いている?
ひとりでふたりの人間を短剣ひとつで押さえることはできない、寧ろ動けば、この男の方が不利になる。だから今が、男にとってはこの状態が一番だ。
でもそれでは、ここに侵入した意味がわからない。
なら、この男は何が…したいんだ。
男は笑みを浮かべ
「私が殺意がないのをお見通しのようですね。えぇ、殺すつもりはないです。」
何を言っているの?
「私はほんとうに殺すつもりはないんです…。でもこの侍女殿は、死を望んでいるようなんでいるようなんですが…。」
「何を!何を言っているの?!」
男はキャロルさんの耳元で、何かを囁くと、キャロルさんの首から手を離し、自分の持っていた短剣をキャロルさんに持たせ
「ロザリー様、それ以上近寄られませんように、近づけば、彼女は自害しますよ。」
「えっ?…自害?…待って…キャロルさん…キャロルさん!!!」
男はまたキャロルさんに囁くと、キャロルさんは頷き、その短剣を高く掲げた。
「う、うそ…ま、待って!!やめて!!お願い…やめて…」
男は笑いながら、私に一歩近づき
「では、目を瞑って、私の話を聞いてください。」
「…話を…聞く?それだけの為に、ここに来たというの?」
「はい。私が作った話をただ聞いてもらいたくて、ここに来たんです。」
そう言って、男は笑いながら私に近づき、私の目に手をあて視界を遮ると囁くように
「あなたには私が作った話のヒロインをやって頂きたいのです。体内に忍ばせた時限爆弾で愛する男を殺す悲劇のヒロインを…。」
「えっ?」
「Lucian(ルシアン)様のnの次に…oが入って…Luciano(ルチアーノ)に…)
声さえも出ない…。
完成…。
それは遙に遠い気がする。はぁ~
「ぁ…あ…、とにかく一息いれましょう。まだ7日あります!7日もです!」
そう言いながら、慌てて部屋を出て行くキャロルさんの姿に、思わず手を合わせてしまった。
「ごめんなさい。…ぶ、不器用で…。はぁ~」
右の手の中にあるい白い手袋を見ると、また大きなため息がでてしまいそう。
でも、ルシアン殿下になにか差し上げたかった。
上手く言えないこの思いを形として、差し上げたかった。
だから…
『ローラン国では、好きな方の持ち物に、その方の名前と自分の名前を刺繍すると、【ふたりはどんな困難に当たっても、その愛と絆は切れることがない】と言われているそうなんですよ。』
と言ったキャロルさんの言葉に、飛びついちゃったんだ。
しかし、これはかなり厳しいミッションだった。
一応私だって、レディだし…。一応…針と糸は持ったことがあるわけだし…。
剣だって、乗馬だって、あっという間に上達して、年上の男の子を追い抜かした私だもの。
結構器用だから大丈夫!なんて思っていた。
その考えは甘かったな。
もう一度、キャロルさんに教えを乞うてやり直そう。あと一週間ぐらいあるんだもの。死ぬ気で頑張れば…!
私は立ち上がりながら、お茶を入れに2つ向こうの部屋へと行ったキャロルさんに聞こえるように、大きな声で
「キャロルさん!もう一度私にチャンスを!」
だが、物音一つしない。
…ぁ…なんだろう。
嫌な…そうだ、嫌な感じがする。
でも、ここはローラン国の宮殿、ルシアン殿下の命で警備は厳重だ。
そんな宮殿内をましてや宮殿の奥にある王妃の間に、警備を掻い潜って侵入できる輩はいないはず
気のせいだろうか?
このところ、剣から遠ざかっていたから……感が鈍った?
いや…違う。間違いない誰かいる。
「キャロルさん。」
キャロルさんの名をまた呼んだ時だった。キャロルさんの大きな声が聞こえた!
「…ダメ!ロザリー様、こちらに来てはダメです!!!」
ヒールを脱ぎ、一気に走った。
レイピアは…今、手元にはないが、ドレスの中には短剣を忍ばせている。
一つ目の扉に張り付き、中の音を聞く。
…ここじゃない。
扉を開け、二つ目の扉に手をかけ、勢い良く開けた。
……いた。
「病弱だと言う噂でしたが、さすが武神と言われるウィンスレット侯爵のご息女。なかなかのじゃじゃ馬ですね。」
この男は…ぁ…見た事がある。
確か…そう、そうだ。前ローラン王の護衛をしていた男だ。
ならば…この男、ローラン国の軍人。
どうする?
男は背丈はあるが、線は細い。
体の動き、足の運びから見て、剣の腕は私の方が上。
だが、どうやってキャロルさんを助け出そうか。
男の片手はキャロルさんの首に回っている、もう片方の手は背中にあるところをみると、おそらく短剣をキャロルさんの背中に当てていると思われる。
さすがに剣を持って、この宮殿の奥までは来れなかったようだが…。
「私の分析は終わりましたか?」
この場には合わない笑顔で、男は言った。
この男…なにか、おかしい。
軍人ならわかっているはずだ。
ひとりでふたりの人間を短剣ひとつでは殺せないし、その行動を押さえることはできないことは…。
落ち着け、私。
きっと、隠し玉をもっているはず。
「短剣を持って、忍び込まれるところを見ると、私に急用でしょうか?」
男は目を細め
「シリルという双子の弟君はかなりの使い手だと、ローラン国でも有名でしたが、ロザリー様のその度胸…いやはや、姉のロザリー様もかなり腕に自信がおありのようでこれは困りました。」
この男はどうしてそんなに落ち着いている?
ひとりでふたりの人間を短剣ひとつで押さえることはできない、寧ろ動けば、この男の方が不利になる。だから今が、男にとってはこの状態が一番だ。
でもそれでは、ここに侵入した意味がわからない。
なら、この男は何が…したいんだ。
男は笑みを浮かべ
「私が殺意がないのをお見通しのようですね。えぇ、殺すつもりはないです。」
何を言っているの?
「私はほんとうに殺すつもりはないんです…。でもこの侍女殿は、死を望んでいるようなんでいるようなんですが…。」
「何を!何を言っているの?!」
男はキャロルさんの耳元で、何かを囁くと、キャロルさんの首から手を離し、自分の持っていた短剣をキャロルさんに持たせ
「ロザリー様、それ以上近寄られませんように、近づけば、彼女は自害しますよ。」
「えっ?…自害?…待って…キャロルさん…キャロルさん!!!」
男はまたキャロルさんに囁くと、キャロルさんは頷き、その短剣を高く掲げた。
「う、うそ…ま、待って!!やめて!!お願い…やめて…」
男は笑いながら、私に一歩近づき
「では、目を瞑って、私の話を聞いてください。」
「…話を…聞く?それだけの為に、ここに来たというの?」
「はい。私が作った話をただ聞いてもらいたくて、ここに来たんです。」
そう言って、男は笑いながら私に近づき、私の目に手をあて視界を遮ると囁くように
「あなたには私が作った話のヒロインをやって頂きたいのです。体内に忍ばせた時限爆弾で愛する男を殺す悲劇のヒロインを…。」
0
お気に入りに追加
1,378
あなたにおすすめの小説
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる