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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie

7日目⑤

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アストンはフッと鼻で笑うと
「前ローラン王、そしてアデリーナは悪魔に魂を売り渡し、ブラチフォード国を地獄へと陥れようとしたが、ローラン国で、それは知っているのは貴族のそれも、かなり上位の貴族のみだ。あんたを王を担ぎ上げた貴族らも、そして王になりたいバウマンも…クッツツ…そりゃぁ、バウマンも言えねぇよな。
魂を悪魔に売ったのは前ローラン王個人の話だが、そうはいかない。それは前ローラン王のみならず、ローラン王家自体のイメージが悪くなる。

だから、あのバウマンも口を閉ざした。
なんたって、バウマンのあの赤い瞳は、ローラン王家の血が入ってますと言ってるようなもんだからな。


だが一番は…

前ローラン王は、国を豊かな国へと導いたおかげで、ローラン王家は嫌いだが、前ローラン王だけは違うと言って慕う国民が多かったからだ。

前ローラン王の人気を取り込もうと考えていた輩には、そこは大事な事だったんだろう?
だからローラン王が悪魔に魂を売り渡した事は言えなかった。

でも大変だったろうな。つじつまを合わせるのは…
なんたって、ローラン王がブラチフォード国に入国した途端、あの化け物騒ぎだ。
そこで考えられたのは、前ローラン王、アデリーナのふたりはブラチフォード国に入国した直後に、悪魔に魅入られた者達に襲われ、果敢に戦ったが、相手は化け物、残念なことに亡くなった。

…と、こんな感じにしたんだろう?

だが笑えるぜ。
まぁ…前ローラン王の手先のひとりだった俺が言うのもおこがましいが、張本人の前ローラン王を被害者にして、いや英雄のように祭り上げたことで、その勇敢さを自国ローラン国に示すことになり、ブラチフォード国では、甥であるあんたの人気をあげることになった、そしてなにより…あんたがローラン王となる布石にもなった訳だ。まぁ、そこだけはバウマンの誤算だったろうがな。」


そう言って、アストンは俺を見ると
「もちろん、この経緯は知ってるよな。ローラン国からの申し出を認めたひとりが…あんただからな。だがそれを批判する気はない。それも戦略のひとつだからな。」


確かにそうだった。

俺が何れ、ローラン国を纏めるためには、その事実を隠すのが得策だと、父上や、ミランダ、ウィンスレット侯爵、そしてロザリーとで、そう判断したからだ。

いくら慕われていた前ローラン王だったとしても、悪魔に魂を売り渡したことが民に知られれば…ローラン王家を拒絶するだろう。そして王家の拒絶は…新たな王となる俺へと向けられ、国は乱れると判断したから、だから…ローラン国の申し出に頷いた。

アストンは口元に苦笑を浮かべ
「でも、あんたら高貴な方々が考えた話より、ローラン国の国民の間には、違う話のほうが盛り上がっていたんだ。」

アストンはそう言って、苦笑すると
「王子様の悲恋の話が…。」

「悲恋?…どういう意味だ?」

「あんたがアデリーナに一目ぼれをして、ブラチフォード国を捨て、ローラン国に行きたいと前ローラン王に頼み込んだ、だが結ばれることなく、愛したアデリーナ嬢は化け物に殺された…と言う話さ。」

「えっ?…俺がローラン国に行きたいと言ったのは…!!」

「知ってるさ。当時のあんたの事情を知ってる。ブラチフォード国に自分がいない方が、国が纏まると思ったんだろう。だが王家の人間が他国に行くとなると、相当な理由が必要だ。まぁ犬や猫じゃないからな。そのひとつが婚姻だ。

でも、国民の大半は王家に対して夢を抱く。ましてや裏事情なんぞしらねぇんだ。だからロマンティックな話にだんだんと国民の間で変わって行くのが常だぜ。確かに一目惚れをして国を捨ててくる色男の王子様のほうがうけるよな。それが今やその話が、ローラン国では事実となっている。

そんな話は、ロザリーとあんたのふたりを見たら何れ消えるだろうよ。

だがなぁ…

それを…ヒューゴに利用された。それも少し…話をドロドロにしてな。」

顔を歪めたアストンは吐き捨てるように言った。


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