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結婚までの7日間 Lucian & Rosalie

4日目⑥

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部屋に入ってきたルシアンを見て、アストンはポツリと言った。

「…すげぇ、機嫌が悪そうだな。」

その声に、ルシアンはムッとした顔を片手で隠すように覆い
「そんなことはない。」

アストンはため息をつくと、
「俺達に話があって来たんだろうが…それじゃ…」と言ったが、その先の言葉を飲み込み

扉の向こうで、待たされているロザリーに向かって
「どうせ、またあんたが男前な事を言ったもんだから、このルシアンは拗ねてんだろうけど…たまには顔を立ててやれよ。」

そう言って、アストンはニヤリと笑うと…小さな声でルシアンに
「俺はいつだって、あいつならもらい受けるぜ。」

「…誰がやるか。」

「そう思っているなら、早く仲直りしろよ。正念場に来て、上の者がもめ事を起こされちゃ堪らないぜ。」

黙って頷くルシアンに、アストンは笑ったが…別の声が戸惑うように

「…アストン。おまえ…ルシアンを知っているのか?」

「あぁ…恋敵だったんだ。」

「恋敵?」

アストンはそう言って、扉を指さした。

ナダルは扉へと目をやり…頭を横に振りながら…
「そうだった…あいつは、ルチアーノは女だったんだ。」

「まぁ…細い体に、あの綺麗な顔。容姿だけ見れば女だが…、あの剣の腕、あの体術を見たら、女とは思えないよな。おまえが戸惑うのはわかる。」

そう言って、ルシアンの肩に手を置き
「女なのに…あの腕前。そしてあの男前の気性。まったく…ゾクゾクするほどイイ女だぜ。でも…このルシアンにベタ惚れ。そしてあいつもベタ惚れ。」

と言ってルシアンを見たアストンは、口元に微かな笑みを浮かべると、その視線をナダルを向け
「あの…前ローラン王と同様に、化け物になったアデリーナと言う女をおまえは知っているか?」

ナダルは頭を横に振ると、アストンは薄っすらと笑みをうかべ
「…思い出すだけでも背筋に冷たいものが走るほど…不気味な女だった。
その女から、ロザリーは、このルシアンと、国を守るために、体を盾としたんだ。」

「えっ?!」

「…血だらけだったよ。ロザリーは…。なのに、このルシアンは自分の為に、血を流し倒れたロザリーを人に預けて、前ローラン王の下に行ったんだ。」

そう言って…息を吐くと

「俺は言ってやったよ。
『見捨てるのか?!あの女を!見捨てるのか!』ってな。そうしたら、このルシアン様、なんて言ったと思う?

『…お前には聞こえなかったのか?ロザリーの思いが…』

はぁ~と思ったよ。そうしたら…

『俺には聞こえた。この国を守って欲しいと…』

だから俺は、騎士としてのロザリーの声しか聞こえないとは…都合が言いように聞こえる耳だ。でも、女としてのあいつの声はどうなんだよ。それには耳を塞ぐのか!と言ってやったら

ルシアンは…笑みを浮かべやがって
『それもお前には聞こえなかったのか?いや…見えなかったのか?』


そうして、自信に満ちた顔で、俺に止めを刺す言葉を言ったんだぜ。

『体を張って、俺を、そして国を守ろうとしたあの姿は…言っていた。
好きだとな。命をかけても良いと思うほど、俺を好きだと……言っていた。だから、俺は行く。』

『ロザリーが好きなのは、民を愛し、国を守る、そういう俺だと思う。だから、ここでとまっていたら、ロザリーに愛想をつかれる。』

やってられねぇ…と思ったよ。そんなに信頼し合える仲に、どうやったって入れやしない。」


アストンは大きな声で笑いだしたが、急に真面目な顔になり
「なぁ、ナダル。おまえは…人は裏切ると思っているだろう。どんなに愛し、信頼しても、人と言う者は、善人面で笑うその顔の下には…赤い舌を出す奴らばかりだとな。

俺もそう思っていた。だが…見たんだよ。
このルシアンとロザリーに流れる、確かな信頼と愛情をな。

そんなふたりにこの国を預けたいと思わないか?きっと面白いぜ。」

息を呑んだナダルを横目で見て、クスリと笑うと、アストンはルシアンに向かって言った。

「ルシアン。俺はあの時のあんたを信じて、ここに来たんだ。」


「アストン…。」


「あの女は根っからの騎士だ。そこにも惚れたんだろうあんたは…。だったら、あきらめな。
カッコイイ女に惚れた男の運命だと思って……あきらめな。」


そして扉の向こうで、声を押し殺して泣くロザリーにアストンは
「バカ…。こんな時にしおらしい声で泣くなよ。また惚れるぞ!」


「…うるさい。」
と、扉の向こうから小さな声が聞こえたかと思ったら、扉はロザリーに蹴られて、大きな音を立てた。







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昨日更新しました。4日目⑤を一行増やしております。ごめんなさい。(抜けておりました。)
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