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第四話 闇の在処(ありか)
八章:一 闇の地:案じる思い
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朱桜の巨木についた蕾が、ちらほらと花開き始めた。内庭を飾るように満開を迎える日も近い。
「朱桜の姫君はこの巨木が満開になるまでに戻ってくるのかしら?――できれば一緒にお花見したいのに」
何となく麟華の声を聞きながら、闇呪は多くの蕾を抱いた巨木をぼんやりと眺めていた。色づき始めた内庭を見ても気分は重い。
どうして、これほど不安な思いに囚われているのか。朱桜はいつものように金域の使者と発っただけであるのに。
闇呪は寝殿の敷地を息苦しいほど広く感じていた。どこにも朱桜の気配を感じることができない。
「主上、どうされたのですか?」
傍らの麟華から明るい声を投げられる。暗い思考の渦がわずかに緩んだ。
闇呪が視線を動かすと、麟華が珍しいものを眺めるような顔をして首を傾げている。
「物憂い表情をされておられますが……、あっ、ひょっとして姫君がいなくてお寂しいのですか?」
「――さびしい?」
問い返すと、麟華がわざとらしくがっかりと肩を落とした。闇呪《あんじゅ》は改めて辺りを見回す。美しい緋色の欠けた光景。たしかに何かがひどく物足りない感じがした。
「そうだな、寂しいのかもしれない」
寂しい。物足りない。この渦巻く不安がなければ、朱桜の帰りを待ちながら、きっとそんな思いに浸っていられた。
「本当に、どうなさったのですか?」
麟華の顔からゆっくりと笑顔が消える。まるで闇呪の内に在る不安が伝染したのかのような変化だった。
「何でもない。少し考え事をしていただけだ」
かき消すことのできない不安。
(……朱桜は本当に戻ってくるのだろうか)
考えすぎだとわかっている。きっと何事もなく朱桜は帰ってくる。使者と共に行く道程には、密やかに麒一を護りとしてつけた。
金域は悪意とは程遠い輝かしい聖地。黄帝の御前へたどり着けば何も案じることはない。
わかっているのに。
消えない。
きっかけはわかっている。あの時、朱桜がなぜ鬼の坩堝に近づいたのか。その経緯を知ってしまったからだ。
数日前。
朱桜との他愛ない会話の中。闇呪はずっと腑に落ちずにいることを訊いた。
それが得体の知れない焦燥のはじまりだった。
「あの時、君はどうして鬼の坩堝へ行こうと思ったんだ?」
闇呪の問いに、朱桜は少し困ったように黙り込んだ後、小さな声でこう答えた。
「この地のことをよく知っておきたいと思ったからです。あの時は自分がこの地に在ることで、闇呪の君にご迷惑をおかけているような気がして。とにかく何かできることはないかと思いつめてしまって。それで……、本当にごめんなさい」
ためらいがちな言葉。朱桜の戸惑いが伝わってきた。闇呪の内にゆっくりと嫌な予感がもたげてくる。その予感を見逃すことはできなかった。
「私は君を責めているわけではないんだ。君がそんなふうに思いつめてしまった理由が知りたい」
「それは、今お話したとおりで……」
いつも真っ直ぐに向けられる緋色の瞳が、戸惑いを映している。闇呪はそれだけで予感が的中してしまったことを悟った。受け入れたくない現実だが、目を逸らすことはできない。的確に言葉にする。
「朱桜。思いつめていた君に、鬼の坩堝へ行くことを勧めた者がいたのではないか」
「それは……」
朱桜はごまかすことや嘘をつくことに慣れていないのだろう。動揺を見抜くのはたやすい。
「君にそんなことを助言できたのは、ただ一人。――彼女だけだ、華艶の美女」
「ち、違います。闇呪の君。わたしがいけなかったんです。どうしたら良いかわからなくて、華艶様に答えを求めてしまったから。きっと、華艶様は何も恐れるなと、それだけの意味だったのだと思います。闇呪の君のお傍にあるための心の在り方を例えられたのだと。だから、私が何も判っていなかっただけです」
朱桜と華艶の間に何らかのやりとりがあった。ひやりと胸の芯を貫く事実だった。
「私が幼くて、弱かったから……」
朱桜には華艶の悪意を感じた気配がない。むしろ華艶に対して感謝の気持ちを抱いている。
それでも闇呪はやはり仕掛けられていたのだと感じた。桔梗を亡くした時と同じように、華艶は朱桜にも破滅を求めたのだろう。そう思えて仕方がなかった。
黙りこんでしまった自分に、朱桜はあたふたと取り繕うように続けた。
「あの、本当に華艶様は悪くありません。悪いのは私です。それに華艶様がお優しい方であるのは、闇呪の君の方がよく知っておられると思うし……」
朱桜は一瞬何かを迷った後で、緋色の瞳を真っ直ぐこちらへ向けた。
「華艶様は美しくてお優しい方です。だから闇呪の君もお慕いしていて、――きっと特別な方なのでしょう?」
朱桜に自分達の関係がどう映っているのか。闇呪は思わず言い訳しそうになる自分に驚く。今更、朱桜に隠すことなどできない事実であるのに。
ひどく心が揺れた。そして改めて思い知る。朱桜が与えてくれた世界に満たされるほど、華艶の悪意が恐ろしくなるということ。
「華艶様は素敵な方です」
疑うことを知らない輝きが朱桜にはある。羨ましいくらい無垢な心。自分も同じように華艶を敬愛していた時期があった。手の届かない美しい理想。今もそれは変っていないはずなのに、どうしてもあの頃のようには慕えない。
「朱桜」
華艶との関係を今更言い訳はできない。けれど、朱桜には本心を伝えておきたかった。
「たしかに華艶の美女は慈悲深く美しい。――そして、恐ろしい」
言葉にすると、想像以上に華艶から心が離れていたことを自覚する。
手の届かない理想だからではなく、今となっては手を伸ばすことをためらう恐れを感じているのだ。
朱桜は驚いたように瞬きをしただけで、何も云わなかった。闇呪はただ自嘲的に微笑むことしか出来ず、華艶のことから話を逸らした。
朱桜が鬼の坩堝へ向かうまでの経緯に、華艶が関わっていたという事実。
助言にたしかな悪意があったとは限らない。朱桜が感じている華艶の慈愛が正しいのかもしれない。それでも桔梗の最期を思い出すと、どうしても疑わずにはいられなかった。
華艶の悪意の矛先が、どこに向かっているのか。
競りあがってくる不安を拭おうとして考えるほど、まるで闇呪を責め立てるように焦燥が増す。
朱桜を見送ってからの数日間、考えてもどうしようもないことを、繰り返し考えてしまうのだ。どうにもならない。
自分でもどうかしていると思う。
こんな思いは初めてだった。
気持ちが晴れないまま、内庭の朱桜の巨木は満開を迎えていた。花が散るまでに、朱桜は戻るだろうか。
「主上!」
訊き慣れた甲高い声で闇呪ははっと我にかえる。麟華の声はまだ遠いが、闇呪はようやく敷地内にある気配の変化に気がついた。
麟華と麒一が現れる前に、闇呪は既に居室を出ていた。渡殿から西対屋へ渡ると、幹廊からこちらへやってくる人影が視界に入ってくる。
麟華と麒一に護られるように、真ん中を歩んでくる緋色の姫君。
「朱桜」
思わず呼びかけると、金域から戻ったばかりの朱桜は驚いたように顔を上げてぴたりと立ち止まった。結い上げた緋色の髪が、髪飾りと共にはらりと翻る。参堂のために着飾った姿は、満開を迎えた朱桜の花よりも眩い。
闇呪がそのまま歩み寄ると、朱桜はあたふたとその場に平伏しそうになる。思わず手を伸ばして制止した。
「そのままで良い。――無事で良かった」
思わずほっと吐息を漏らすと、朱桜は困惑を隠せない様子で答える。
「はい。あの……ただいま戻りました」
いつもと変わらない朱桜の声を聞いて、闇呪はわだかまっていた不安が拭われていくのを感じる。
「おかえり、朱桜の姫君。金域からの帰路で疲れただろう。ゆっくりするといい」
無事に戻ってきてくれたのなら、もう何も気に病むことはない。後のことを守護に託して、闇呪は自身の寝殿まで戻ろうと踵を返した。
「闇呪の君」
すぐに朱桜の声が追いかけてくる。振り返ると、彼女が恥ずかしそうに口を開く。
「あの、着替えを済ませたら、ご一緒にお花見をしませんか?――朱桜の花がとても綺麗に咲いています」
参堂の疲れを感じさせない声だった。闇呪がわかったと頷くと、朱桜は更に嬉しそうに顔を綻ばせる。
「良かった。実はずっと闇呪の君と見られたらいいなと思っていたんです。朱桜の花が満開の頃に間に合って、本当に良かった」
声からも彼女の素直な喜びが伝わってくる。傍らの麒一と麟華も朱桜の無邪気な発言に顔を見合わせて頷いていた。
「朱桜の姫君はこの巨木が満開になるまでに戻ってくるのかしら?――できれば一緒にお花見したいのに」
何となく麟華の声を聞きながら、闇呪は多くの蕾を抱いた巨木をぼんやりと眺めていた。色づき始めた内庭を見ても気分は重い。
どうして、これほど不安な思いに囚われているのか。朱桜はいつものように金域の使者と発っただけであるのに。
闇呪は寝殿の敷地を息苦しいほど広く感じていた。どこにも朱桜の気配を感じることができない。
「主上、どうされたのですか?」
傍らの麟華から明るい声を投げられる。暗い思考の渦がわずかに緩んだ。
闇呪が視線を動かすと、麟華が珍しいものを眺めるような顔をして首を傾げている。
「物憂い表情をされておられますが……、あっ、ひょっとして姫君がいなくてお寂しいのですか?」
「――さびしい?」
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「そうだな、寂しいのかもしれない」
寂しい。物足りない。この渦巻く不安がなければ、朱桜の帰りを待ちながら、きっとそんな思いに浸っていられた。
「本当に、どうなさったのですか?」
麟華の顔からゆっくりと笑顔が消える。まるで闇呪の内に在る不安が伝染したのかのような変化だった。
「何でもない。少し考え事をしていただけだ」
かき消すことのできない不安。
(……朱桜は本当に戻ってくるのだろうか)
考えすぎだとわかっている。きっと何事もなく朱桜は帰ってくる。使者と共に行く道程には、密やかに麒一を護りとしてつけた。
金域は悪意とは程遠い輝かしい聖地。黄帝の御前へたどり着けば何も案じることはない。
わかっているのに。
消えない。
きっかけはわかっている。あの時、朱桜がなぜ鬼の坩堝に近づいたのか。その経緯を知ってしまったからだ。
数日前。
朱桜との他愛ない会話の中。闇呪はずっと腑に落ちずにいることを訊いた。
それが得体の知れない焦燥のはじまりだった。
「あの時、君はどうして鬼の坩堝へ行こうと思ったんだ?」
闇呪の問いに、朱桜は少し困ったように黙り込んだ後、小さな声でこう答えた。
「この地のことをよく知っておきたいと思ったからです。あの時は自分がこの地に在ることで、闇呪の君にご迷惑をおかけているような気がして。とにかく何かできることはないかと思いつめてしまって。それで……、本当にごめんなさい」
ためらいがちな言葉。朱桜の戸惑いが伝わってきた。闇呪の内にゆっくりと嫌な予感がもたげてくる。その予感を見逃すことはできなかった。
「私は君を責めているわけではないんだ。君がそんなふうに思いつめてしまった理由が知りたい」
「それは、今お話したとおりで……」
いつも真っ直ぐに向けられる緋色の瞳が、戸惑いを映している。闇呪はそれだけで予感が的中してしまったことを悟った。受け入れたくない現実だが、目を逸らすことはできない。的確に言葉にする。
「朱桜。思いつめていた君に、鬼の坩堝へ行くことを勧めた者がいたのではないか」
「それは……」
朱桜はごまかすことや嘘をつくことに慣れていないのだろう。動揺を見抜くのはたやすい。
「君にそんなことを助言できたのは、ただ一人。――彼女だけだ、華艶の美女」
「ち、違います。闇呪の君。わたしがいけなかったんです。どうしたら良いかわからなくて、華艶様に答えを求めてしまったから。きっと、華艶様は何も恐れるなと、それだけの意味だったのだと思います。闇呪の君のお傍にあるための心の在り方を例えられたのだと。だから、私が何も判っていなかっただけです」
朱桜と華艶の間に何らかのやりとりがあった。ひやりと胸の芯を貫く事実だった。
「私が幼くて、弱かったから……」
朱桜には華艶の悪意を感じた気配がない。むしろ華艶に対して感謝の気持ちを抱いている。
それでも闇呪はやはり仕掛けられていたのだと感じた。桔梗を亡くした時と同じように、華艶は朱桜にも破滅を求めたのだろう。そう思えて仕方がなかった。
黙りこんでしまった自分に、朱桜はあたふたと取り繕うように続けた。
「あの、本当に華艶様は悪くありません。悪いのは私です。それに華艶様がお優しい方であるのは、闇呪の君の方がよく知っておられると思うし……」
朱桜は一瞬何かを迷った後で、緋色の瞳を真っ直ぐこちらへ向けた。
「華艶様は美しくてお優しい方です。だから闇呪の君もお慕いしていて、――きっと特別な方なのでしょう?」
朱桜に自分達の関係がどう映っているのか。闇呪は思わず言い訳しそうになる自分に驚く。今更、朱桜に隠すことなどできない事実であるのに。
ひどく心が揺れた。そして改めて思い知る。朱桜が与えてくれた世界に満たされるほど、華艶の悪意が恐ろしくなるということ。
「華艶様は素敵な方です」
疑うことを知らない輝きが朱桜にはある。羨ましいくらい無垢な心。自分も同じように華艶を敬愛していた時期があった。手の届かない美しい理想。今もそれは変っていないはずなのに、どうしてもあの頃のようには慕えない。
「朱桜」
華艶との関係を今更言い訳はできない。けれど、朱桜には本心を伝えておきたかった。
「たしかに華艶の美女は慈悲深く美しい。――そして、恐ろしい」
言葉にすると、想像以上に華艶から心が離れていたことを自覚する。
手の届かない理想だからではなく、今となっては手を伸ばすことをためらう恐れを感じているのだ。
朱桜は驚いたように瞬きをしただけで、何も云わなかった。闇呪はただ自嘲的に微笑むことしか出来ず、華艶のことから話を逸らした。
朱桜が鬼の坩堝へ向かうまでの経緯に、華艶が関わっていたという事実。
助言にたしかな悪意があったとは限らない。朱桜が感じている華艶の慈愛が正しいのかもしれない。それでも桔梗の最期を思い出すと、どうしても疑わずにはいられなかった。
華艶の悪意の矛先が、どこに向かっているのか。
競りあがってくる不安を拭おうとして考えるほど、まるで闇呪を責め立てるように焦燥が増す。
朱桜を見送ってからの数日間、考えてもどうしようもないことを、繰り返し考えてしまうのだ。どうにもならない。
自分でもどうかしていると思う。
こんな思いは初めてだった。
気持ちが晴れないまま、内庭の朱桜の巨木は満開を迎えていた。花が散るまでに、朱桜は戻るだろうか。
「主上!」
訊き慣れた甲高い声で闇呪ははっと我にかえる。麟華の声はまだ遠いが、闇呪はようやく敷地内にある気配の変化に気がついた。
麟華と麒一が現れる前に、闇呪は既に居室を出ていた。渡殿から西対屋へ渡ると、幹廊からこちらへやってくる人影が視界に入ってくる。
麟華と麒一に護られるように、真ん中を歩んでくる緋色の姫君。
「朱桜」
思わず呼びかけると、金域から戻ったばかりの朱桜は驚いたように顔を上げてぴたりと立ち止まった。結い上げた緋色の髪が、髪飾りと共にはらりと翻る。参堂のために着飾った姿は、満開を迎えた朱桜の花よりも眩い。
闇呪がそのまま歩み寄ると、朱桜はあたふたとその場に平伏しそうになる。思わず手を伸ばして制止した。
「そのままで良い。――無事で良かった」
思わずほっと吐息を漏らすと、朱桜は困惑を隠せない様子で答える。
「はい。あの……ただいま戻りました」
いつもと変わらない朱桜の声を聞いて、闇呪はわだかまっていた不安が拭われていくのを感じる。
「おかえり、朱桜の姫君。金域からの帰路で疲れただろう。ゆっくりするといい」
無事に戻ってきてくれたのなら、もう何も気に病むことはない。後のことを守護に託して、闇呪は自身の寝殿まで戻ろうと踵を返した。
「闇呪の君」
すぐに朱桜の声が追いかけてくる。振り返ると、彼女が恥ずかしそうに口を開く。
「あの、着替えを済ませたら、ご一緒にお花見をしませんか?――朱桜の花がとても綺麗に咲いています」
参堂の疲れを感じさせない声だった。闇呪がわかったと頷くと、朱桜は更に嬉しそうに顔を綻ばせる。
「良かった。実はずっと闇呪の君と見られたらいいなと思っていたんです。朱桜の花が満開の頃に間に合って、本当に良かった」
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