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第四話 闇の在処(ありか)
五章:二 闇の地:華艶の美女
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花の盛りを迎えた内庭は、変わらず夢のように美しい。緋国(ひのくに)で見られた朱桜の花こそないが、いつまで眺めていても飽きない。六の君ははしたない行いであると判っていたが、簀子まで出て勾欄に寄りかかるようにして内庭に魅入っていた。あまりにも麗らかで、心地良さにうとうとと頭が船を漕ぎだす。
起きているのか眠っているのか、微妙な意識の中で、六の君はふいに花の香りが変化したことに気付く。これまでよりもいっそうに甘い芳香。酔いそうなほどの濃度で、辺りに充満している。
直後、六の君は人の気配を感じてはっと面を上げた。
「これは申し訳ないことをいたしました。花を愛でていたのですが、愛らしい姫君を起こしてしまいましたか」
すぐ近くから謳うような美しい声がする。ぼんやりと視線を動かすと、闇色と見間違いそうな深い紫紺の法衣を纏った女性が勾欄に手を添えて立っていた。
六の君は呼吸をすることも忘れて、その圧倒的な美貌を見つめる。全身が総毛立ちそうなほどの美女。幼い六の君にはその妖艶さが恐ろしく感じられるほどだった。
突然現れた美女は、内庭から六の君に微笑みかける。女が動くと辺りに満ちた濃い香りがふわりと流れた。
六の君が言葉を失っていると、女は微笑んだまま名乗る。
「妾は先守の華艶と申します」
「――華艶の美女」
知っていたはずなのに、六の君は名乗られるまで彼女の正体にたどり着かなかった。夢でも見ているのではないかと云うくらい、現実感が乏しい。それほど圧倒的に、華艶は美しく艶麗だった。何の屈託もない様子で華艶はこちらを見つめている。「妾をご存知ですか」と打ち解けた笑みを浮かべた。
六の君にはこくりと頷くことが精一杯だった。
先守の最高位をつとめる、絶世の美女。
華艶の話は六の君でも幾度となく耳にしたことがある。まさかこれほど唐突に見えるとは想像もしていなかった。噂に違うことのない美貌に圧倒されて、六の君は挨拶もできない。
けれど、華艶が内庭から現れた事実は六の君に現実を突きつけた。六の君の在る奥の対は、軒廊以外にも内庭を通じて闇呪の寝殿へ続いている。
内庭を自由に散策できる華艶の立場が導き出すことは一つだけである。
華艶が闇呪の認める恋人であるということ。
想いも寄らない華艶の登場で、改めて思い知らされた現実。六の君は自分でも驚くほどの動揺を自覚する。ずんと重たい何かが胸の底に沈でいく。
「花を愛でるためとはいえ、このような処にまで分け入ったのは無礼でした。姫君、どうかお許しください」
「そんな、決して無礼などということは……」
ないとは言えないが、華艶がこの地の主である闇呪の寵愛を受けていることは確かなのだ。それで全てが許されてしまうのだろう。六の君には何もいえない。
ただ俯いて小さくなっていると、華艶の優しい声に包まれる。
「姫君、本当のことを申しますと、妾はあなたの様子を伺いに参りました」
「え?」
どうしてと問うのがなぜか憚られた。華艶がただの興味本位で軽はずみな行動を取るとは思えない。
「あなたがこちらと縁を結んだことは、陛下も案じておられます」
「――陛下……?」
黄帝の存在を示されてもすぐにぴんと来ない。自分の存在を知っていることすら信じがたい気がする。
「姫君は、こちらでお幸せなのですか」
華艶の優しい問いかけ。六の君は即座に答えようとしたが、なぜか言葉にできなかった。満たされているはずなのに、何かが足りない日々。理由が明らかにならないまま、けれど、ごまかしようもなく何かが欠けていることを強く感じている。日が経つにつれていっそう深く刻まれていく気持ち。
答えられない六の君を、華艶は哀しそうに見つめる。それで当然だと言いたげな労わりが宿っていた。
「どうやら妾は酷なことをお尋ねしたようです。陛下が憂慮なさるのも当然です。姫君、これは妾の提案ですが、時折金域に参られると良いと思います。陛下も安心なさるでしょうし、姫君にも良い気分転換になるでしょう」
「そ、そんな恐れ多いこと、私にはもったいないお話です。それに私はこちらで何不自由なく過ごしていますし、陛下にご心配頂くようなことは何もありません」
「ですが、姫君はお幸せではありません」
「いいえ。私は幸せです。ただ、このままで良いのかとふと考えてしまうだけで――」
自分の心を掴みきれていない六の君には、心の底にあるわだかまりをうまく表現できない。何かが足りない。
日々は穏やかで満たされているのに、何かが欠けている。
このままではいけないという、呵責にも似た気持ちがあるのだ。
六の君は美しい華艶の顔を見つめた。闇呪の恋人。愛する人。美しい声も仕草も、優しい心根も、全てが完璧な女性。
胸が痛くなる。六の君はようやく得体の知れないわだかまりが形になるのを感じた。
本当はずっとごまかしていたのかもしれない。
華艶の存在を思う度に、心の裏に痛みを感じていた。
どうして華艶が闇呪の妃ではないのだろうかと考えてしまうのだ。
自分が闇呪の妃である理由が見出せない。それはこれから培っていかねばならないことなのだろう。わかっていても、どうにもならない。
六の君の中で、刻印のように暁の言葉が焼け付いている。
自分の居場所を決めるのは、誰でもない自分の心であるということ。
今なら痛いくらいに分かる。
妃としてこれ以上はない待遇で迎えられても、自分が納得していないのだ。闇呪に相応しいとは思えない。闇呪も自分を必要としていない。
妃として自分がここに在る理由がない。意味を見つけることが出来ない。
だから苦しい。
そんな理由を欲しがる自分が愚かだと判っているのに、消えない。
消えてくれない。
「姫君」
六の君が明らかになった心の内に苛まれていると、華艶はそれ以上問うことはせず、柔らかな微笑みでただ頷いて見せた。
「姫君が幸せであると仰るなら、妾からは何も申し上げません。ですが、妾はいつでもお話を伺います。姫君は決してお独りではありません」
包み込むような柔らかな声。涙が出そうになるくらい優しく響く。闇呪の妃である自分を追い詰めることもせず、華艶は手を差し伸べてくれる。
理想を描いたように、全てが美しい。嫉妬することもできない。
華艶の美女。美しく慈悲深い先守。この世で誰よりも、天意に愛されている女性。六の君には噂を疑う理由がない。差し出された助けに、何のためらいもなく手を伸ばしてしまう。
「華艶様。私は、――私がここに在る理由が見つけられません。それが……」
「それが?」
「それが、苦しいのだと思います」
隠さず打ち明けると、華艶はじっと六の君を見つめた。何かを探しているような眼差しだった。やがて慰めるように、白い手が六の君の頬を撫でた。
「ここに在る理由。誰でもそれを見つけるのは難しいものです。――姫君、もしこの闇の地でご自身の理由を探すのであれば、鬼の坩堝を理解する必要があるでしょう」
「鬼の坩堝を?――ですが、私は決して近づいてはならないと聞いています」
「恐ろしいですか」
「……はい」
素直に頷くと、華艶は「そうでしょうね」と微笑んだ。
「では、姫君は闇呪の君を恐れておいでですか」
「それは――」
六の君はすぐに答えられなかった。何かを語れるほど彼を知っているわけではない。
「闇呪の君のことは、私にはよくわかりません。でも、恐いと感じたことはありません」
言葉にすると、自分はもっと彼のことを知りたいのかもしれないと思えた。華艶は意味ありげに眼差しを細める。
「姫君、鬼の坩堝も同じことです。闇呪の君を知る良い手がかりともなるでしょう」
甘い微笑みのまま華艶が示唆する。六の君は自分の我儘な想いを見透かされたのではないかと、思わず視線を逸らした。
同時によく通る声が中庭を貫いた。
「――華艶」
凛とした発音。六の君は中庭を渡す軒廊に信じられない人影を見つけた。考えるよりも先に体が動く。すぐに広廂に上がり居住まいを正した。
闇呪が迷いのない足取りでこちらへやってくる。六の君が深く頭を垂れていると、衣擦れの音が近づき止んだ。
「このような処で、何をなさっている」
闇呪は穏やかな声で華艶に問うた。六の君のことは気にも留めていない様子で、中庭に立つ華艶と向き合っている。六の君はゆっくりと面をあげて、闇呪の背中を仰いだ。
緩やかな癖をもつ闇色の頭髪が、中庭からの輝きをうけて艶やかさを増した。
「その愛らしい姫君と花を愛でていたのです」
何でもないことのように華艶が答えた。闇呪がゆっくりとこちらを見返る。六の君は視線が交わる前に慌ててその場に平伏した。幾許かの沈黙。緊張のあまり汗が滲む。
「姫君、君が華艶と接することを禁じる。何をしようと自由だがご自分の立場はわきまえてほしい」
声は優しいが、容赦のない命令だった。六の君は泣きたくなるのを堪えて更に深く頭を下げた。
「申し訳ございませんでした」
二人が立ち去るまで、六の君は動くことができなかった。
起きているのか眠っているのか、微妙な意識の中で、六の君はふいに花の香りが変化したことに気付く。これまでよりもいっそうに甘い芳香。酔いそうなほどの濃度で、辺りに充満している。
直後、六の君は人の気配を感じてはっと面を上げた。
「これは申し訳ないことをいたしました。花を愛でていたのですが、愛らしい姫君を起こしてしまいましたか」
すぐ近くから謳うような美しい声がする。ぼんやりと視線を動かすと、闇色と見間違いそうな深い紫紺の法衣を纏った女性が勾欄に手を添えて立っていた。
六の君は呼吸をすることも忘れて、その圧倒的な美貌を見つめる。全身が総毛立ちそうなほどの美女。幼い六の君にはその妖艶さが恐ろしく感じられるほどだった。
突然現れた美女は、内庭から六の君に微笑みかける。女が動くと辺りに満ちた濃い香りがふわりと流れた。
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「妾は先守の華艶と申します」
「――華艶の美女」
知っていたはずなのに、六の君は名乗られるまで彼女の正体にたどり着かなかった。夢でも見ているのではないかと云うくらい、現実感が乏しい。それほど圧倒的に、華艶は美しく艶麗だった。何の屈託もない様子で華艶はこちらを見つめている。「妾をご存知ですか」と打ち解けた笑みを浮かべた。
六の君にはこくりと頷くことが精一杯だった。
先守の最高位をつとめる、絶世の美女。
華艶の話は六の君でも幾度となく耳にしたことがある。まさかこれほど唐突に見えるとは想像もしていなかった。噂に違うことのない美貌に圧倒されて、六の君は挨拶もできない。
けれど、華艶が内庭から現れた事実は六の君に現実を突きつけた。六の君の在る奥の対は、軒廊以外にも内庭を通じて闇呪の寝殿へ続いている。
内庭を自由に散策できる華艶の立場が導き出すことは一つだけである。
華艶が闇呪の認める恋人であるということ。
想いも寄らない華艶の登場で、改めて思い知らされた現実。六の君は自分でも驚くほどの動揺を自覚する。ずんと重たい何かが胸の底に沈でいく。
「花を愛でるためとはいえ、このような処にまで分け入ったのは無礼でした。姫君、どうかお許しください」
「そんな、決して無礼などということは……」
ないとは言えないが、華艶がこの地の主である闇呪の寵愛を受けていることは確かなのだ。それで全てが許されてしまうのだろう。六の君には何もいえない。
ただ俯いて小さくなっていると、華艶の優しい声に包まれる。
「姫君、本当のことを申しますと、妾はあなたの様子を伺いに参りました」
「え?」
どうしてと問うのがなぜか憚られた。華艶がただの興味本位で軽はずみな行動を取るとは思えない。
「あなたがこちらと縁を結んだことは、陛下も案じておられます」
「――陛下……?」
黄帝の存在を示されてもすぐにぴんと来ない。自分の存在を知っていることすら信じがたい気がする。
「姫君は、こちらでお幸せなのですか」
華艶の優しい問いかけ。六の君は即座に答えようとしたが、なぜか言葉にできなかった。満たされているはずなのに、何かが足りない日々。理由が明らかにならないまま、けれど、ごまかしようもなく何かが欠けていることを強く感じている。日が経つにつれていっそう深く刻まれていく気持ち。
答えられない六の君を、華艶は哀しそうに見つめる。それで当然だと言いたげな労わりが宿っていた。
「どうやら妾は酷なことをお尋ねしたようです。陛下が憂慮なさるのも当然です。姫君、これは妾の提案ですが、時折金域に参られると良いと思います。陛下も安心なさるでしょうし、姫君にも良い気分転換になるでしょう」
「そ、そんな恐れ多いこと、私にはもったいないお話です。それに私はこちらで何不自由なく過ごしていますし、陛下にご心配頂くようなことは何もありません」
「ですが、姫君はお幸せではありません」
「いいえ。私は幸せです。ただ、このままで良いのかとふと考えてしまうだけで――」
自分の心を掴みきれていない六の君には、心の底にあるわだかまりをうまく表現できない。何かが足りない。
日々は穏やかで満たされているのに、何かが欠けている。
このままではいけないという、呵責にも似た気持ちがあるのだ。
六の君は美しい華艶の顔を見つめた。闇呪の恋人。愛する人。美しい声も仕草も、優しい心根も、全てが完璧な女性。
胸が痛くなる。六の君はようやく得体の知れないわだかまりが形になるのを感じた。
本当はずっとごまかしていたのかもしれない。
華艶の存在を思う度に、心の裏に痛みを感じていた。
どうして華艶が闇呪の妃ではないのだろうかと考えてしまうのだ。
自分が闇呪の妃である理由が見出せない。それはこれから培っていかねばならないことなのだろう。わかっていても、どうにもならない。
六の君の中で、刻印のように暁の言葉が焼け付いている。
自分の居場所を決めるのは、誰でもない自分の心であるということ。
今なら痛いくらいに分かる。
妃としてこれ以上はない待遇で迎えられても、自分が納得していないのだ。闇呪に相応しいとは思えない。闇呪も自分を必要としていない。
妃として自分がここに在る理由がない。意味を見つけることが出来ない。
だから苦しい。
そんな理由を欲しがる自分が愚かだと判っているのに、消えない。
消えてくれない。
「姫君」
六の君が明らかになった心の内に苛まれていると、華艶はそれ以上問うことはせず、柔らかな微笑みでただ頷いて見せた。
「姫君が幸せであると仰るなら、妾からは何も申し上げません。ですが、妾はいつでもお話を伺います。姫君は決してお独りではありません」
包み込むような柔らかな声。涙が出そうになるくらい優しく響く。闇呪の妃である自分を追い詰めることもせず、華艶は手を差し伸べてくれる。
理想を描いたように、全てが美しい。嫉妬することもできない。
華艶の美女。美しく慈悲深い先守。この世で誰よりも、天意に愛されている女性。六の君には噂を疑う理由がない。差し出された助けに、何のためらいもなく手を伸ばしてしまう。
「華艶様。私は、――私がここに在る理由が見つけられません。それが……」
「それが?」
「それが、苦しいのだと思います」
隠さず打ち明けると、華艶はじっと六の君を見つめた。何かを探しているような眼差しだった。やがて慰めるように、白い手が六の君の頬を撫でた。
「ここに在る理由。誰でもそれを見つけるのは難しいものです。――姫君、もしこの闇の地でご自身の理由を探すのであれば、鬼の坩堝を理解する必要があるでしょう」
「鬼の坩堝を?――ですが、私は決して近づいてはならないと聞いています」
「恐ろしいですか」
「……はい」
素直に頷くと、華艶は「そうでしょうね」と微笑んだ。
「では、姫君は闇呪の君を恐れておいでですか」
「それは――」
六の君はすぐに答えられなかった。何かを語れるほど彼を知っているわけではない。
「闇呪の君のことは、私にはよくわかりません。でも、恐いと感じたことはありません」
言葉にすると、自分はもっと彼のことを知りたいのかもしれないと思えた。華艶は意味ありげに眼差しを細める。
「姫君、鬼の坩堝も同じことです。闇呪の君を知る良い手がかりともなるでしょう」
甘い微笑みのまま華艶が示唆する。六の君は自分の我儘な想いを見透かされたのではないかと、思わず視線を逸らした。
同時によく通る声が中庭を貫いた。
「――華艶」
凛とした発音。六の君は中庭を渡す軒廊に信じられない人影を見つけた。考えるよりも先に体が動く。すぐに広廂に上がり居住まいを正した。
闇呪が迷いのない足取りでこちらへやってくる。六の君が深く頭を垂れていると、衣擦れの音が近づき止んだ。
「このような処で、何をなさっている」
闇呪は穏やかな声で華艶に問うた。六の君のことは気にも留めていない様子で、中庭に立つ華艶と向き合っている。六の君はゆっくりと面をあげて、闇呪の背中を仰いだ。
緩やかな癖をもつ闇色の頭髪が、中庭からの輝きをうけて艶やかさを増した。
「その愛らしい姫君と花を愛でていたのです」
何でもないことのように華艶が答えた。闇呪がゆっくりとこちらを見返る。六の君は視線が交わる前に慌ててその場に平伏した。幾許かの沈黙。緊張のあまり汗が滲む。
「姫君、君が華艶と接することを禁じる。何をしようと自由だがご自分の立場はわきまえてほしい」
声は優しいが、容赦のない命令だった。六の君は泣きたくなるのを堪えて更に深く頭を下げた。
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