121 / 233
第三話 失われた真実
第十二章:4 異世界の掟 2
しおりを挟む
「それは……」
朱里は気づいたことを、口にせず呑み込んだ。彼方はすぐに察したのか、まるで代弁するように言葉にする。
「黄帝が道を閉ざしたのは、副担任を警戒して防衛策を強化したということ?」
奏はゆっくりと首を横に振る。
「判りません」
朱里は落胆を隠せないが、手掛かりを得るために気持ちを奮い起こす。
「現黄帝ということは、黄帝は不死身ではないんですか。世界を育む神様みたいな力をもっているのに、代がわりする?」
朱里の疑問には、奏が微笑みながら答えてくれた。
「私達にとっての神は、天意ということになるでしょうか。我々の世界を目に見えない掟で縛っているもの、あるいは守っているもの、それが天意であり、お嬢さんの言葉を借りれば神の意志です。神の意志は、私達には決してはかり知ることができません。たとえ黄帝でも同じです。神の意志は窺い知ることも操ることもできません」
「黄帝にも寿命があるんですね」
もっともな結論に達した朱里に、奏は再び首を振る。
「私達の寿命は天意――神の意志が握っています。こちらの世界と同じには語れません。私達には老いて滅びるという、肉体の限界は与えられない。これは天籍にあり、真実の名を持って生まれてきた者の定めです」
「不死身ではないけれど、不老だということですか」
「はい。私達は致命傷を受ければ死にますし、真名によって破滅することもあります」
「破滅……」
小さく呟きながら、朱里は考え込む。教えられた異世界の事実は数え切れない。
こちらの世界では考えられない、各々の魂魄に刻まれているという真実の名。真名を以って結ばれた絆は、決して破られることはない。許されない。
魂魄を賭けるに等しい行為。
朱里は再び息苦しさを感じて、深く呼吸する。
夢の中で、朱桜が闇呪に与えられていたもの。とても大切なものを託されたという思いだけを感じていたが、今ならもう辿ることができる。
彼に与えられたのは、真実の名。
闇呪は、愛を以って朱桜に捧げたのだ。忠誠を誓ったに違いない。
それが何を意味するのか。朱里は描き出された道筋を想像して、たまらない気持ちになる。
人々が語る希望と違わず、彼は自身が破滅する手段を形にしてしまった。
いずれ自分を滅ぼす相称の翼。文字通り破滅へと導く運命が巡り始めている。
闇呪――遥は、その事実をどのように受け止めているのだろう。
朱里は組み合わせた手に力を入れた。遥の想いが沁みる。
自身が傷つくことを厭わず、朱里を守り続けくれる。彼の答えは聞かなくても判る。
これまでの経緯が全てを明らかにしているのだ。
彼の揺ぎ無い想い。変わることのない愛。
考え込む朱里に何かを問いかけることもせず、奏が静寂を守るかのように、冷めた紅茶を口にした。
朱里は込み上げた激情をやりすごしてから、再び質問する。
「神の意志が握っている寿命は、要するに何かの成り行きで致命傷を受けたり、真名によって破滅したりすることを差しているわけですか。黄帝や天界の人が死ぬのは、誰かに殺される時だけ?」
「いいえ、もちろんそれだけではありません。黄帝を含め、私達の寿命は神の意志――天意によって、緩やかに終わりを迎える場合と、また唐突に終わりを告げることがあります。それが天意の定める寿命です。緩やかな終焉は、――こちらの世界の病に似ているかもしれませんが、私達はそれを享受すると云います。また、天意に著しく反した場合に与えられる、唐突な終焉があります。それは失落すると言います」
「――失落?」
「ええ、今の黄帝が生まれる前に御世を築いていた黄帝が失落しています。一人身を貫き、天帝の御世こそ果たされませんでしたが、黄帝の礼神である天帝の加護だけで世の安定を築いていました。王達が慕う人柄で、地界に渡り様子を眺めることもあったと聞きます。在位は短いですが、賢帝であったと言っても良いでしょう」
「そんな人でも、唐突に死んでしまうんですか」
「たしかに死因は唐突ですが、失落に至る場合、全く前触れがないわけではありません」
いつのまにか、雪と彼方も朱里の傍らで熱心に耳を傾けている。
「先帝はその治世の後半、女性への想いに溺れていたと噂されています」
「それ、聞いたことはあるけど詳しい経緯は知らないな。奏は誰が相手だったとか、知っているの」
彼方が興味津々の輝いた目をして口を挟む。奏が雪に視線を映すと、彼女は溜息をついてから答えた。
「私は聞いたことがあります。――先帝が熱をあげていたのが、先守の最高位である華艶の美女だったと」
「華艶の美女っ?」
彼方が心底驚いたと言いたげに、声をあげた。朱里は思わず一緒に叫ぶところだったと、口元を手で押さえる。素朴な疑問が浮かんだので、さりげなく聞いてみた。
「あの、華艶の美女って、先生や麟華に少しだけ聞いたことがあるんですけど。――そんな頃から生きているなんて、一体、何歳なんですか」
この問いには、奏も少し考える素振りをする。
「私にも詳しいことは言えませんが、彼女が先守の最高位についたのが、先帝の御世だったはずです。先守は真名を持ちませんが、自身の占いを偽らなければ寿命が訪れることはありません。もちろん外的要因で魂魄を落とすことは同じですが」
「そうなんですか」
ひたすら寿命の長さに驚嘆していると、彼方が意味不明な慰め方をしてくれる。
「そうだよ、委員長。僕達の寿命からすれば、こっちの世界の人なんてものすごく短命なんだよ。だから委員長は自分の気持ちを副担任にどかんとぶつけてみればいいんだ。伴侶がいようが、どうしようが、きっと副担任にとっても一瞬の綺麗な思い出になるって」
「そうよ、朱里さん。さっきの様子を見る限り、黒沢先生も朱里さんのことは気にかけていると思うの」
雪と彼方があらぬ方向へと盛り上げてくれるが、朱里にはただ苦笑することしかできない。好き勝手に朱里を煽っている二人に、奏もやれやれと吐息をついてから話を戻した。
「さて。先帝の失落についてですが、もちろん誰かを愛するだけでは、そんな事態にはなりません。先帝が華艶と想いを通わせていたのかどうかは判りませんが、悲劇は華艶が先守であったということです。先守は真名を与えらず、同時に真名を受け入れることも出来ません。先帝がどれほど望んでも、相称の翼には成りえない。天帝の御世を築くことはできません」
「もし愛し合っていたのなら、可哀想だわ」
雪がぽつりと呟いた。朱里は胸の奥でちりちりと何かが焦げているのが判る。
夢の中で、闇呪が想い続けた美しい女性。
彼の想いが遂げられなかったのも、同じ理由だろうか。それとも、華艶の美女が先帝を想い続けていたからだろうか。
「天帝の御世は、いつの世も人々の希望です。華艶の美女が先帝の心を奪っている限り、実現は有り得ない。そのためか、華艶は先帝の元を去り紺の地に引きこもったと言われています。それが彼女の意志であったのか、四国の意志によるものかは定かではありませんが。ただ、先帝の目には四国の思惑であると映ったようです。本来、世を育むためにある自身の力を、先帝は華艶を取り戻す駆け引きのために利用しました。四国の説得にも応じず、その暴君ぶりは別人のようであったと言われています。風聞がどこまで事実であるのかは判りませんが、当時の地界の被害は甚大なものであったようです」
「先帝は、それで天意の逆鱗に触れたんだ」
彼方の声に、奏が頷いた。
「先帝はそれにより失落し、その御世は唐突に終わりを告げました。そんなふうに著しく道を外れると、私達の寿命は終わりを告げます。それが真実であるのかどうかは判りません。ただ、過去を振り返れば、信じるに値するほどの類例が数多く記録されています。天意――神の意志はあり、目に見えない掟で世界を守っている。私達の世界では、誰もがそう信じています」
朱里は気づいたことを、口にせず呑み込んだ。彼方はすぐに察したのか、まるで代弁するように言葉にする。
「黄帝が道を閉ざしたのは、副担任を警戒して防衛策を強化したということ?」
奏はゆっくりと首を横に振る。
「判りません」
朱里は落胆を隠せないが、手掛かりを得るために気持ちを奮い起こす。
「現黄帝ということは、黄帝は不死身ではないんですか。世界を育む神様みたいな力をもっているのに、代がわりする?」
朱里の疑問には、奏が微笑みながら答えてくれた。
「私達にとっての神は、天意ということになるでしょうか。我々の世界を目に見えない掟で縛っているもの、あるいは守っているもの、それが天意であり、お嬢さんの言葉を借りれば神の意志です。神の意志は、私達には決してはかり知ることができません。たとえ黄帝でも同じです。神の意志は窺い知ることも操ることもできません」
「黄帝にも寿命があるんですね」
もっともな結論に達した朱里に、奏は再び首を振る。
「私達の寿命は天意――神の意志が握っています。こちらの世界と同じには語れません。私達には老いて滅びるという、肉体の限界は与えられない。これは天籍にあり、真実の名を持って生まれてきた者の定めです」
「不死身ではないけれど、不老だということですか」
「はい。私達は致命傷を受ければ死にますし、真名によって破滅することもあります」
「破滅……」
小さく呟きながら、朱里は考え込む。教えられた異世界の事実は数え切れない。
こちらの世界では考えられない、各々の魂魄に刻まれているという真実の名。真名を以って結ばれた絆は、決して破られることはない。許されない。
魂魄を賭けるに等しい行為。
朱里は再び息苦しさを感じて、深く呼吸する。
夢の中で、朱桜が闇呪に与えられていたもの。とても大切なものを託されたという思いだけを感じていたが、今ならもう辿ることができる。
彼に与えられたのは、真実の名。
闇呪は、愛を以って朱桜に捧げたのだ。忠誠を誓ったに違いない。
それが何を意味するのか。朱里は描き出された道筋を想像して、たまらない気持ちになる。
人々が語る希望と違わず、彼は自身が破滅する手段を形にしてしまった。
いずれ自分を滅ぼす相称の翼。文字通り破滅へと導く運命が巡り始めている。
闇呪――遥は、その事実をどのように受け止めているのだろう。
朱里は組み合わせた手に力を入れた。遥の想いが沁みる。
自身が傷つくことを厭わず、朱里を守り続けくれる。彼の答えは聞かなくても判る。
これまでの経緯が全てを明らかにしているのだ。
彼の揺ぎ無い想い。変わることのない愛。
考え込む朱里に何かを問いかけることもせず、奏が静寂を守るかのように、冷めた紅茶を口にした。
朱里は込み上げた激情をやりすごしてから、再び質問する。
「神の意志が握っている寿命は、要するに何かの成り行きで致命傷を受けたり、真名によって破滅したりすることを差しているわけですか。黄帝や天界の人が死ぬのは、誰かに殺される時だけ?」
「いいえ、もちろんそれだけではありません。黄帝を含め、私達の寿命は神の意志――天意によって、緩やかに終わりを迎える場合と、また唐突に終わりを告げることがあります。それが天意の定める寿命です。緩やかな終焉は、――こちらの世界の病に似ているかもしれませんが、私達はそれを享受すると云います。また、天意に著しく反した場合に与えられる、唐突な終焉があります。それは失落すると言います」
「――失落?」
「ええ、今の黄帝が生まれる前に御世を築いていた黄帝が失落しています。一人身を貫き、天帝の御世こそ果たされませんでしたが、黄帝の礼神である天帝の加護だけで世の安定を築いていました。王達が慕う人柄で、地界に渡り様子を眺めることもあったと聞きます。在位は短いですが、賢帝であったと言っても良いでしょう」
「そんな人でも、唐突に死んでしまうんですか」
「たしかに死因は唐突ですが、失落に至る場合、全く前触れがないわけではありません」
いつのまにか、雪と彼方も朱里の傍らで熱心に耳を傾けている。
「先帝はその治世の後半、女性への想いに溺れていたと噂されています」
「それ、聞いたことはあるけど詳しい経緯は知らないな。奏は誰が相手だったとか、知っているの」
彼方が興味津々の輝いた目をして口を挟む。奏が雪に視線を映すと、彼女は溜息をついてから答えた。
「私は聞いたことがあります。――先帝が熱をあげていたのが、先守の最高位である華艶の美女だったと」
「華艶の美女っ?」
彼方が心底驚いたと言いたげに、声をあげた。朱里は思わず一緒に叫ぶところだったと、口元を手で押さえる。素朴な疑問が浮かんだので、さりげなく聞いてみた。
「あの、華艶の美女って、先生や麟華に少しだけ聞いたことがあるんですけど。――そんな頃から生きているなんて、一体、何歳なんですか」
この問いには、奏も少し考える素振りをする。
「私にも詳しいことは言えませんが、彼女が先守の最高位についたのが、先帝の御世だったはずです。先守は真名を持ちませんが、自身の占いを偽らなければ寿命が訪れることはありません。もちろん外的要因で魂魄を落とすことは同じですが」
「そうなんですか」
ひたすら寿命の長さに驚嘆していると、彼方が意味不明な慰め方をしてくれる。
「そうだよ、委員長。僕達の寿命からすれば、こっちの世界の人なんてものすごく短命なんだよ。だから委員長は自分の気持ちを副担任にどかんとぶつけてみればいいんだ。伴侶がいようが、どうしようが、きっと副担任にとっても一瞬の綺麗な思い出になるって」
「そうよ、朱里さん。さっきの様子を見る限り、黒沢先生も朱里さんのことは気にかけていると思うの」
雪と彼方があらぬ方向へと盛り上げてくれるが、朱里にはただ苦笑することしかできない。好き勝手に朱里を煽っている二人に、奏もやれやれと吐息をついてから話を戻した。
「さて。先帝の失落についてですが、もちろん誰かを愛するだけでは、そんな事態にはなりません。先帝が華艶と想いを通わせていたのかどうかは判りませんが、悲劇は華艶が先守であったということです。先守は真名を与えらず、同時に真名を受け入れることも出来ません。先帝がどれほど望んでも、相称の翼には成りえない。天帝の御世を築くことはできません」
「もし愛し合っていたのなら、可哀想だわ」
雪がぽつりと呟いた。朱里は胸の奥でちりちりと何かが焦げているのが判る。
夢の中で、闇呪が想い続けた美しい女性。
彼の想いが遂げられなかったのも、同じ理由だろうか。それとも、華艶の美女が先帝を想い続けていたからだろうか。
「天帝の御世は、いつの世も人々の希望です。華艶の美女が先帝の心を奪っている限り、実現は有り得ない。そのためか、華艶は先帝の元を去り紺の地に引きこもったと言われています。それが彼女の意志であったのか、四国の意志によるものかは定かではありませんが。ただ、先帝の目には四国の思惑であると映ったようです。本来、世を育むためにある自身の力を、先帝は華艶を取り戻す駆け引きのために利用しました。四国の説得にも応じず、その暴君ぶりは別人のようであったと言われています。風聞がどこまで事実であるのかは判りませんが、当時の地界の被害は甚大なものであったようです」
「先帝は、それで天意の逆鱗に触れたんだ」
彼方の声に、奏が頷いた。
「先帝はそれにより失落し、その御世は唐突に終わりを告げました。そんなふうに著しく道を外れると、私達の寿命は終わりを告げます。それが真実であるのかどうかは判りません。ただ、過去を振り返れば、信じるに値するほどの類例が数多く記録されています。天意――神の意志はあり、目に見えない掟で世界を守っている。私達の世界では、誰もがそう信じています」
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる