57 / 233
第二話 偽りの玉座
陸章:二 行方1
しおりを挟む
「雪、僕はすぐに兄上の宮へ行くよ」
すぐに席を立とうとすると、雪が困ったように苦笑いをした。
「実は碧宇様がおいでになっています」
「よぅ、可愛い弟」
雪の報告が終わらないうちに、何の遠慮もない様子でやってくる人影があった。
「おまえはいつ見ても可愛い。和む」
兄の碧宇は子犬のように翡翠を抱きしめて、力に任せてぐりぐりと頬ずりをする。翡翠はぎゃーっと奇声を発してじたばたと暴れた。
「碧宇様、翡翠様が可愛らしいのは分かりますが、いい加減になさって下さい」
雪の冷ややかな声で、碧宇が名残惜しそうな顔をしながら翡翠を解放する。
「ったく、兄上は。いつまでその習慣をひきずるつもりだよ。気持ち悪い」
「気持ち悪いとは心外な。この兄の愛情がわからんのか」
「そんな愛情はいらない」
碧宇はがっくりと肩を落とした。
「冷たい。お兄様を癒してやろうという優しさがあってもいいだろうに。あー、何はともあれ、やっと堅苦しい行事が終わった」
ぶはーと息を吐き出して、碧宇は雅な裳衣を物ともせず、どかっと間近の榻牀に腰かけた。座面に足を放り出して、勝手に一人で寛いでいる。
人の宮を訪れて我が物顔している兄の様子は、碧宇の外面を知っている翡翠にとっては可笑しくてたまらない。反面、この王子が間違いなく自分の兄であると、微笑ましくも感じる。
既に兄の正体を知る雪は、驚くこともなく茶器の用意を始めていた。
「とにかくおかえり、兄上。で、どうだった?」
幼い頃からそうであるように、翡翠は気安く声をかける。
外面という仮面を外している碧宇に改まった敬語で語りかけると、容赦なく鉄拳が飛んでくるのだ。碧の王子として気品を漂わせ、品行方正に振る舞う碧宇からは、全てが考えられない行動である。
「俺の真名は、おっさんに捧げてきたぜ」
「ええっ?」
「碧宇様、黄帝に対しておっさんは失礼です」
「おっと、相変わらず玉花の姫君は手厳しいな。その見た目との違いが、翡翠に劣らず可愛いよ」
「お褒め頂き、光栄です」
驚く翡翠を置き去りにして、二人はいつものように馴れ合っている。
「あに、兄上、捧げたって……、真名を捧げたって」
「おぅ、黄帝に忠誠の証を立てた」
「他の国は?」
「どこも同じだよ」
勅命が下ってから、どの国も黄帝への不信感を募らせていた筈である。父王である緑の院も兄の碧宇も、黄帝の思惑を質しに赴いたのではなかったのか。
翡翠は一体金域で何があったのかと、言葉を失ってしまう。唖然とする翡翠の気持ちを察したのか、碧宇はにやりと得意げに笑った。
「あれほど間近で黄帝のご尊顔を拝したのは初めてだったが、噂に聞くとおり美しい方だったよ。金色の長い髪と、金色に輝く瞳。もうそれだけで、俺は度肝を抜かれたな」
「でも、容姿がいくら綺麗だからって……」
「まぁ、待てよ。翡翠、人の話は最後まで聞け」
思い切り顔を顰めながらも、翡翠は頷く。傍らで茶を淹れていた雪は、身振りだけで二人に勧めると、そっと翡翠の隣に腰掛けた。
「黄帝はようやく沈黙を破り、俺達に真実を教えた。黄帝には心を通わせて契りを交わした相手がいる。その女性に真名を捧げたそうだ」
「じゃあ、既に相称の翼は存在しているってこと」
「もちろん、そういうことになるな。しかし、今の世を顧みて判るとおり、天帝の御世は始まっていない」
「どうして?」
「黄后となるはずの相称の翼が、金域にいないからだ」
翡翠は懸命に筋道を辿る。透国で聞いた清香の体験は何の齟齬もなく繋がる。
この世から姿を消すことを望んだ金色の少女。傷つき、絶望に打ちひしがれていた姿。
けれど、黄帝と心を通わせながら、なぜそれほどの絶望に苛まれていたのか。いったい、彼女の身に何が起きたのだろう。
黙りこんでしまった翡翠の変わりに、雪が碧宇の話を促した。
「どうして相称の翼は、黄帝のお傍にいらっしゃらないのですか」
「相称の翼が金域から姿を消した理由は、黄帝にも判らないらしい。ただ――」
「ただ?」
翡翠は食い入るように、吸い込まれそうな兄の緑の双眸を見つめた。
「……奪われたのかもしれない、と」
「誰に?」
問いたださなくても、容易に想像がついた。もしかすると、その名を否定してほしかったのかもしれない。恐れながらも、翡翠はいつのまにか白虹の皇子のように、これまで語られてきた非道であるだけの噂を疑い始めていたのかもしれなかった。
「鬼門の番人、闇呪の仕業ではないかと」
翡翠は鉛を飲み込んだように胸が詰まる。
「それは、彼がこの世を滅ぼす凶兆だから? ただ、それだけが理由で?」
思わず抗議めいた口調になってしまう。碧宇は翡翠の剣幕に目を丸くしながら、くつくつと浅く笑った。
「たしかに、それも理由の一つかもしれんな」
碧宇は面白そうに翡翠の顔を眺めた。どこか下世話にも見える微笑みで、にやりと笑う。
「しかしだ。残念ながら、もっと判りやすい理由が潜んでいる」
「判りやすい理由って?」
「おまえも世の禍となる闇呪の宿命を、聞きかじってはいるだろう。今の黄帝がこの世に生まれた同じ夜、闇呪も誕生した。知っていたか」
「――もちろん」
「じゃあな、それを聞いて何か思うことはないか」
謎かけのように問われても、翡翠には心当たりがない。
闇呪の誕生は、その宿命と同じように語り継がれている。今となっては翡翠にはどこまでが真実であるのか疑わしい。
禍として生まれた赤子は、生まれ落ちた瞬間、無作為に呪を以って鬼を放ったと言われている。誕生の瞬間に立ち会った者は魂魄を奪われ、その累々と横たわる屍の中で、赤子の産声だけが無邪気に響いていたというのだ。
うろ覚えであるが、翡翠はそんな話を聞いた事があった。
碧宇にそれを語ると、彼は「うんうん」と頷いた。
「あー、それ聞いたことがあるな。既に懐かしい昔話だな」
「ということは、これはただの作り話ってこと?」
「いや、それはそれで正しい。だがな、故意に伏せられた事実があったということだ。黄帝が生まれたその同じ夜に生まれる。黄帝と闇呪は、共に滄国に生まれた太子で、双生児だ」
「双子っ?」
思わず声をあげてしまうと、碧宇は満足そうに頷いた。
たしかに、その事実が伏せられていたのも無理はない。いつの世も黄帝の出自は明らかにされないのが掟である。もちろん興味をもって調べれば容易く判明することではあるが、黄帝の威光を掲げて一国が力を誇示することは禁じられているのだ。
それは天意の定めた理であり、破れば麒麟の裁きが下った。史実によると、その制裁によって滅びた王族がある。王の家系が絶えると、その地の守護が新たな王を迎えて、新しい国が築かれる仕組みになっているのだ。
この世には人の手が届かぬ天意が在り、目に見えぬ掟で縛られている。
あるいは、護られているのだろうか。
黄帝は秘すべき出自を明らかにしてまで、闇呪との関係を公にした。翡翠にはそれだけで逼迫した状況であることが想像できる。
「同じ日に、同じ腹から生まれながら、二者の運命は明暗を分けた。一人はこの世の頂に。一人はこの世の禍に。……先守の占いのとおり、闇呪はこの世を滅ぼす運命を歩み始めたのかもしれないぞ」
「だけど。まだ相称の翼が闇呪に奪われたとは限らない」
碧宇は「ここからがドロドロした話なんだよな」と呑気に茶をすする。
「さて、ここで問題だ。黄帝が心を通わせた相称の翼が誰なのかということだ」
「え?」
翡翠には思い当たる女性は浮かんでこない。思わず隣の雪と顔を見合わせてしまう。碧宇は空になった茶碗を卓上に置いて、再びふぅと溜息をついた。
「俺は聞いて呆れたね。いくら黄帝でも、もっと他に誰かいなかったのかと」
皆目、見当がつかない翡翠とは違い、雪は何か閃いたらしい。
「まさか」
難しそうに顔を歪めた雪の様子を見て、碧宇は景気よく指を鳴らした。
「そう、そのまさかなんだよ」
「もしかして、闇呪の主と最後に縁を結んだ姫君ですか。考えてみると、これまで犠牲になった方々のように、その姫君がお亡くなりになったという噂はありません」
「言われてみれば、そうだね」
翡翠も最後に縁を結んだ姫君の訃報を耳にしたことはない。
碧宇は「大正解」と大袈裟な位に深く頷いた。
「緋国の女王、赤の宮はさすがに動揺していたな。まさか厄介払いをした姫君が黄后になろうとは、予想もしていなかっただろう。幸いどんな確執があろうとも、天帝の御世が公平であることは揺るがないけどな」
「兄上、厄介払いをした姫君って?」
「相称の翼は、緋国の六番目の姫宮だ。六の君と言うらしい」
「六の君って、愛称は?」
「だから、緋国ではそれが愛称だったんだよ」
翡翠にはその姫宮の待遇がそれだけで知れた。緋国において六の君というのは、碧国で翡翠のことを第二王子と呼ぶことと同義である。事実上、その姫宮には存在を愛でる意味合いでの愛称が与えられていないということだ。
すぐに席を立とうとすると、雪が困ったように苦笑いをした。
「実は碧宇様がおいでになっています」
「よぅ、可愛い弟」
雪の報告が終わらないうちに、何の遠慮もない様子でやってくる人影があった。
「おまえはいつ見ても可愛い。和む」
兄の碧宇は子犬のように翡翠を抱きしめて、力に任せてぐりぐりと頬ずりをする。翡翠はぎゃーっと奇声を発してじたばたと暴れた。
「碧宇様、翡翠様が可愛らしいのは分かりますが、いい加減になさって下さい」
雪の冷ややかな声で、碧宇が名残惜しそうな顔をしながら翡翠を解放する。
「ったく、兄上は。いつまでその習慣をひきずるつもりだよ。気持ち悪い」
「気持ち悪いとは心外な。この兄の愛情がわからんのか」
「そんな愛情はいらない」
碧宇はがっくりと肩を落とした。
「冷たい。お兄様を癒してやろうという優しさがあってもいいだろうに。あー、何はともあれ、やっと堅苦しい行事が終わった」
ぶはーと息を吐き出して、碧宇は雅な裳衣を物ともせず、どかっと間近の榻牀に腰かけた。座面に足を放り出して、勝手に一人で寛いでいる。
人の宮を訪れて我が物顔している兄の様子は、碧宇の外面を知っている翡翠にとっては可笑しくてたまらない。反面、この王子が間違いなく自分の兄であると、微笑ましくも感じる。
既に兄の正体を知る雪は、驚くこともなく茶器の用意を始めていた。
「とにかくおかえり、兄上。で、どうだった?」
幼い頃からそうであるように、翡翠は気安く声をかける。
外面という仮面を外している碧宇に改まった敬語で語りかけると、容赦なく鉄拳が飛んでくるのだ。碧の王子として気品を漂わせ、品行方正に振る舞う碧宇からは、全てが考えられない行動である。
「俺の真名は、おっさんに捧げてきたぜ」
「ええっ?」
「碧宇様、黄帝に対しておっさんは失礼です」
「おっと、相変わらず玉花の姫君は手厳しいな。その見た目との違いが、翡翠に劣らず可愛いよ」
「お褒め頂き、光栄です」
驚く翡翠を置き去りにして、二人はいつものように馴れ合っている。
「あに、兄上、捧げたって……、真名を捧げたって」
「おぅ、黄帝に忠誠の証を立てた」
「他の国は?」
「どこも同じだよ」
勅命が下ってから、どの国も黄帝への不信感を募らせていた筈である。父王である緑の院も兄の碧宇も、黄帝の思惑を質しに赴いたのではなかったのか。
翡翠は一体金域で何があったのかと、言葉を失ってしまう。唖然とする翡翠の気持ちを察したのか、碧宇はにやりと得意げに笑った。
「あれほど間近で黄帝のご尊顔を拝したのは初めてだったが、噂に聞くとおり美しい方だったよ。金色の長い髪と、金色に輝く瞳。もうそれだけで、俺は度肝を抜かれたな」
「でも、容姿がいくら綺麗だからって……」
「まぁ、待てよ。翡翠、人の話は最後まで聞け」
思い切り顔を顰めながらも、翡翠は頷く。傍らで茶を淹れていた雪は、身振りだけで二人に勧めると、そっと翡翠の隣に腰掛けた。
「黄帝はようやく沈黙を破り、俺達に真実を教えた。黄帝には心を通わせて契りを交わした相手がいる。その女性に真名を捧げたそうだ」
「じゃあ、既に相称の翼は存在しているってこと」
「もちろん、そういうことになるな。しかし、今の世を顧みて判るとおり、天帝の御世は始まっていない」
「どうして?」
「黄后となるはずの相称の翼が、金域にいないからだ」
翡翠は懸命に筋道を辿る。透国で聞いた清香の体験は何の齟齬もなく繋がる。
この世から姿を消すことを望んだ金色の少女。傷つき、絶望に打ちひしがれていた姿。
けれど、黄帝と心を通わせながら、なぜそれほどの絶望に苛まれていたのか。いったい、彼女の身に何が起きたのだろう。
黙りこんでしまった翡翠の変わりに、雪が碧宇の話を促した。
「どうして相称の翼は、黄帝のお傍にいらっしゃらないのですか」
「相称の翼が金域から姿を消した理由は、黄帝にも判らないらしい。ただ――」
「ただ?」
翡翠は食い入るように、吸い込まれそうな兄の緑の双眸を見つめた。
「……奪われたのかもしれない、と」
「誰に?」
問いたださなくても、容易に想像がついた。もしかすると、その名を否定してほしかったのかもしれない。恐れながらも、翡翠はいつのまにか白虹の皇子のように、これまで語られてきた非道であるだけの噂を疑い始めていたのかもしれなかった。
「鬼門の番人、闇呪の仕業ではないかと」
翡翠は鉛を飲み込んだように胸が詰まる。
「それは、彼がこの世を滅ぼす凶兆だから? ただ、それだけが理由で?」
思わず抗議めいた口調になってしまう。碧宇は翡翠の剣幕に目を丸くしながら、くつくつと浅く笑った。
「たしかに、それも理由の一つかもしれんな」
碧宇は面白そうに翡翠の顔を眺めた。どこか下世話にも見える微笑みで、にやりと笑う。
「しかしだ。残念ながら、もっと判りやすい理由が潜んでいる」
「判りやすい理由って?」
「おまえも世の禍となる闇呪の宿命を、聞きかじってはいるだろう。今の黄帝がこの世に生まれた同じ夜、闇呪も誕生した。知っていたか」
「――もちろん」
「じゃあな、それを聞いて何か思うことはないか」
謎かけのように問われても、翡翠には心当たりがない。
闇呪の誕生は、その宿命と同じように語り継がれている。今となっては翡翠にはどこまでが真実であるのか疑わしい。
禍として生まれた赤子は、生まれ落ちた瞬間、無作為に呪を以って鬼を放ったと言われている。誕生の瞬間に立ち会った者は魂魄を奪われ、その累々と横たわる屍の中で、赤子の産声だけが無邪気に響いていたというのだ。
うろ覚えであるが、翡翠はそんな話を聞いた事があった。
碧宇にそれを語ると、彼は「うんうん」と頷いた。
「あー、それ聞いたことがあるな。既に懐かしい昔話だな」
「ということは、これはただの作り話ってこと?」
「いや、それはそれで正しい。だがな、故意に伏せられた事実があったということだ。黄帝が生まれたその同じ夜に生まれる。黄帝と闇呪は、共に滄国に生まれた太子で、双生児だ」
「双子っ?」
思わず声をあげてしまうと、碧宇は満足そうに頷いた。
たしかに、その事実が伏せられていたのも無理はない。いつの世も黄帝の出自は明らかにされないのが掟である。もちろん興味をもって調べれば容易く判明することではあるが、黄帝の威光を掲げて一国が力を誇示することは禁じられているのだ。
それは天意の定めた理であり、破れば麒麟の裁きが下った。史実によると、その制裁によって滅びた王族がある。王の家系が絶えると、その地の守護が新たな王を迎えて、新しい国が築かれる仕組みになっているのだ。
この世には人の手が届かぬ天意が在り、目に見えぬ掟で縛られている。
あるいは、護られているのだろうか。
黄帝は秘すべき出自を明らかにしてまで、闇呪との関係を公にした。翡翠にはそれだけで逼迫した状況であることが想像できる。
「同じ日に、同じ腹から生まれながら、二者の運命は明暗を分けた。一人はこの世の頂に。一人はこの世の禍に。……先守の占いのとおり、闇呪はこの世を滅ぼす運命を歩み始めたのかもしれないぞ」
「だけど。まだ相称の翼が闇呪に奪われたとは限らない」
碧宇は「ここからがドロドロした話なんだよな」と呑気に茶をすする。
「さて、ここで問題だ。黄帝が心を通わせた相称の翼が誰なのかということだ」
「え?」
翡翠には思い当たる女性は浮かんでこない。思わず隣の雪と顔を見合わせてしまう。碧宇は空になった茶碗を卓上に置いて、再びふぅと溜息をついた。
「俺は聞いて呆れたね。いくら黄帝でも、もっと他に誰かいなかったのかと」
皆目、見当がつかない翡翠とは違い、雪は何か閃いたらしい。
「まさか」
難しそうに顔を歪めた雪の様子を見て、碧宇は景気よく指を鳴らした。
「そう、そのまさかなんだよ」
「もしかして、闇呪の主と最後に縁を結んだ姫君ですか。考えてみると、これまで犠牲になった方々のように、その姫君がお亡くなりになったという噂はありません」
「言われてみれば、そうだね」
翡翠も最後に縁を結んだ姫君の訃報を耳にしたことはない。
碧宇は「大正解」と大袈裟な位に深く頷いた。
「緋国の女王、赤の宮はさすがに動揺していたな。まさか厄介払いをした姫君が黄后になろうとは、予想もしていなかっただろう。幸いどんな確執があろうとも、天帝の御世が公平であることは揺るがないけどな」
「兄上、厄介払いをした姫君って?」
「相称の翼は、緋国の六番目の姫宮だ。六の君と言うらしい」
「六の君って、愛称は?」
「だから、緋国ではそれが愛称だったんだよ」
翡翠にはその姫宮の待遇がそれだけで知れた。緋国において六の君というのは、碧国で翡翠のことを第二王子と呼ぶことと同義である。事実上、その姫宮には存在を愛でる意味合いでの愛称が与えられていないということだ。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる