執着から始まる

一色ほのか

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 自分が眠っていたのだと気付くまで、暫く時間が掛かった。

 
「…………っ!」

 跳ね起きて辺りを見回す。
 時計は午後10時過ぎを指していて、肝心の彼女はいつかのようにテーブルに突っ伏して眠っていた。
 恐らくあの後、酔いに負けてしまったのだろう。目論見通りに。
 最後に飲ませた酒。あれは日本酒だから。
 それはいいんだがまさか自分も寝入ってしまうとは。…………彼女が来る前から飲み始めていたから当然の結果だろうが。
 久々に頭のイカれた連中と接する羽目になった憂さ晴らしに飲み過ぎてしまった。
 
「有栖川さん、」
 
 名を呼び肩を揺すってみる。
 が、目覚める様子はない。
 あの時と同じ。
 ただあれは完全に偶然だったが、今回は違う。あの時と同じ状況を作るために故意にした。
 前回を踏まえて、酔った状態の彼女なら丸め込んで合意に持っていけると思ったからだ。

 酒の勢いで一線を越える、なんてよくあること。
 だがそれで酔いが醒めた後も問題がないかは、相手がこちらに好意を持っていることが大前提になる。

 …………無いだろうな。
 何せあの話の流れで完全に他人事で、それが自分だと少しも思わない――――『意中の相手』なんて言葉が出てくるくらいだ――――ということは、俺をそういう対象として一切見ていないということ。
 一人暮らしの男の部屋に単身でのこのこ来た上疑いもせずに自然体でいるくらいだしな……。
 ついでに彼女のこれまでの言動から俺に必要以上に関わりたくないと思っていて、一定の距離を保とうとしているのも薄々分かっている。

 まあ、分からない訳ではない。彼女は一般人だ。
 俺とは生きてきた環境も常識も価値観も違う。
 だからこそ彼女が自分から――――酔っているとはいえ――――頷いたという事実が必要だった。
 合意の上でなければ、彼女は確実に俺から逃げる。
 そんなこと、許せるわけがないだろう?

 

「…………起きる気配が一切ないな」
 
 場所を変え、ベッドルーム。
 どう動くにしろあのままテーブルに突っ伏した状態で放置はできないため連れてきたが、本当に全く起きない。運んでいる最中も身動ぎ一つしなかった。
 元々疲れていたんだろうか。今日は金曜日、平日だしな。
 …………尚のこと現状・・に一切疑問を持っていないありえないレベルの無警戒さが際立つ。
 少しでも考える頭があるなら、そんな状態で男と2人きりで酒を飲むなんてしないだろう。
 こんなので、よく無事でいられたな。ここまでだと心配になってくる。
 本人の言動からその手の被害・・・・・・に遭ったことはないようだが……本当に今まで一体どうやって生きてきたんだ?他人と酒を飲む機会がゼロということはないだろうに。いや、十中八九誰かに守られてきたんだろうが。
 …………それが、前の男なんだろう。
 今付き合っている相手はいない、と言っていたからにはそいつとはもう別れている。それがどれくらい前の話なのかは知らないが、こんな危険な状態にしておいて無責任に手放すとは。
 好都合な部分もあるが、どうも気に入らない。
 だからと言ってどうせもう居ない相手だ。考えるだけ無駄というもの。
 しかし……さて。
 
「どうしたものかな」
 
 もう起こしてしまおうか。
 別に自然に目が覚めるのを待つ必要はない。運んでる最中に起こしてしまった体でいけば大丈夫な気がする。
 する、が。少し自身の酒の回りが強い気もする。
 いっそのこと何もせずこのまま一緒に寝て翌朝意識させるのも手か?
 いや、怖気づいて逃げそうだな……。
 
 …………正直考えるのが面倒になってきたから、前みたいに少し悪戯して俺も寝るか……。言質も取ってあるし。
 次までは長いだろうが、急いては事を仕損じるともいうから今は警戒されず関係を保つことを第一にするとしよう。
 
 
 ****
 
 
 不意に意識が浮上する、
 なんとなく、変?妙?な違和感を覚えて。
 
 なんだろう。何か、落ち着かない。
 ここはどこだろう?暗くて、何も見えない。それに……、
 
「ん、ぅ……?」
 
 誰かの気配がする。と思ったところで、何かが身体に触れた。
 それは身体を這うように動き、服の中に潜り込んできて、やわやわと胸を揉むように動いている。
 これは、手?………………誰の?
 
「っや……!だ、れ?やだ……っ」 
 
 誰のものかも分からないその手から逃れようと身を捩らせようとする。
 でも、身体を覆うように押さえ付けられていて、上手く動けない。
 どうしよう、怖い、逃げなきゃ、なんとか、早く、はやく……っ!
 
「大人しくしてろ」
 
「ぇ、……?」
 
 こえ。

 知ってる声、だ。聞き慣れた、ともいう。
 なんで?どうして?
 あれ?
 
「ぜ、ろ……?」
「ん?どうした、マスター・・・・
 
 恐る恐ると問いかけると、いつもみたいに返ってくる。
 ええと、ええと、…………あれ?
 ログイン、したんだっけ?覚えてない……頭がぼぉっとする。ゲームの中で寝落ちしちゃった、の?
 いや、でも、だとして、状況がなんか、
 
「ひ、あッ」
 
 訳が分からなくて混乱する頭でなんとか考えようとするけれど、手が、服の下で蠢いて、肌を、胸を撫でていく。
 へん、変だ、でも、何が変なのかが分からない。
 確実に、絶対に、何かおかしい、のに。
 
「ぁ、やぁ……ッ!ぬがしちゃ、だめ、っ」

 状況が分からな過ぎて碌な抵抗をできずにいると、ブラごと・・・・服を捲り上げられた。
 何も隠すもののない無駄に豊満な胸を、彼の、零の手が遠慮もなく揉んでいる。
 
「いつものことだろう?」
「そ、だけど、なんか、ンッ」
 
 あ、キス、
 
「ん、ふ……ッ、ん、ぜろ、まっ、んぅ……っ」
 
 舌を吸われて、口内を舌先でなぞられる。
 苦しくて逃れようとしても、逆に深く絡め取られる。
 頭、くらくらする、抵抗も、考える力も奪っていく。
 何かおかしい、視界がずっと暗くて何も見えない・・・・・・・・・・・・・・・のも、変なのに、分かるのに。
 
「は、ぁ……っ、や、んん……っ!」
 
 指が、胸の先端を刺激する。
 押し潰したり捏ねたり、抓んだり。
 その感覚がなんだかいやにリアルに感じられて。
 触れているのは零なんだから・・・・・・・・・・・・・ゲームLOFの中なのに。 
 嫌なことを、思い出す。
 
「むね、ばっか、やだぁ……ッ!」
「うん?嫌なのか」
「だっ、て、痴漢とか思い出して、やだ……」
「…………そうか。ならこっちも脱がすぞ」
「ひぅッ、あっ、……!」
 
 耳元でそう言われ、ぞわっとした感覚に気を取られて、あっさりとズボンも下着も脱がされてしまった。
 そして、脚を開かせられる。
 
「シーツでも掴んでおけ」
「? …………や!?ぁッ!!」
 
 湿った何かが、陰核を撫でた。
 指、じゃない、柔らかくて、熱くて……これって。
 それが何か思い至って、慌てて脚を閉じようとする。
 でも。
 
「開いてろ」
「っ、だめ!零、待っ、んあッ!」
 
 零の身体に阻まれて脚を閉じることはできず、それどころか太腿を押さえられ動けなくされる。
 手は、動かせるけど。何も見えないし……っ

「っ!んッやだ、や、きゃあんッッ!」
 
 れろ、ちゅう、と舌と唇で陰核を弄られる。
 知識では知っているけどこんなことされるのは初めてで、羞恥でどうにかなってしまいそう。
 シーツを掴んで耐えようとするものの、一番感じる所をしつこく弄られ、その強い刺激にどうすることもできず、されるがまま嬌声を上げるしかできない。
 …………抵抗したところで、きっといつも通りやめてくれない。
 それを多分零も分かっているから、行為はエスカレートしていく。
 
「ッーーーーーーッッ!!」
 
 悲鳴を上げそうになって、反射的に口を塞いだ。
 だって。舌が。
 陰核を離れたと思ったら、ぬぷりとソコに押し入ってきた。
 
「ゃ、っめ、やだ、やだぁッ!」
 
 腰を引いて逃げようとする、けどすぐに押さえ付けられて逃げられないようにされて。
 咄嗟に手が出そうになったけど、手を取られてベッドに押し付けられた。
 
 ぐにゅぐにゅと、ナカで舌が蠢く。
 押し込まれる。
 逃げられない、耐えられない、こんな、こんなの――――、
 
「あっ、あっ、あ、や、ん――――――ッ!」
 
 身体の力が一気に抜ける。
 甘い痺れが身体中を支配する。
 抑える腕が離れたのに脚を閉じることもできず、快楽を逃がそうと肩で息を繰り返す。
 
「本当に感じやすい身体だな」
「んぇ、っ!?」
 
 唐突に身体をひっくり返され、四つん這いになるようにベッドに押し付けられた。
 覆い被さる零の身体、脚の間に宛がわれる熱くて硬いモノ。
 びくりと身体が跳ねる。
 
「脚を閉じろ。そう、良い子だ」
「んッ!あっ、ひ、っ!」
 
 首の後ろにキスをして、それから、腰を前後に動かす。
 さんざん弄られ零の唾液と私の愛液で濡れそぼったソコは、零のペニスに擦られてぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる。
 同時に胸も揉まれ、その先端を弄られて。
 イッたばかりなのに容赦なく攻められ、辛いのに、気持ち良くて、頭、ぐらぐらして、
 
「やぁっ!も、やだ、んぁあ……ッ!」
「やだ?気持ちいい、だろ?」
「ンぅ!っだめ、や、あぁっ」
「ははっ、可愛いな。…………もっと啼け」
「ッ待、って、やっあぁああッ!」
 
 また、イカされて。
 お腹に熱いモノが、飛び散った。

 零も、イッたんだ……。
 
 疲れてぼぉっとする頭で思う。
 いつも中で出されてたから、身体にかけられたのって初めて……?

 なんて、どうでもいいことを考えていたら。

「挿れはしないからもう少し付き合え」
「ふぇ……?んっ、あうぅっ!」
 
 再び硬く熱いモノを押し当てられて。
 私の反応など見もせずに、零はまた動き出した。
 
 
 
 
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