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突然だけどピンチです。
「ど、けってば!何のつもりだよ!」
「は?分かるだろそれくらい」
ギルドマスター、或いはギルドマスターに許可を得た状態のメンバー以外入れないマスタールームにて、ギルド内で一番仲が悪い相手、零にベッドに押し倒されてます。
ベッドに、押し倒されてます。
なんで?!!!?
「抵抗するだけ無駄だから諦めたらどうだ?」
「出来るか阿保!馬鹿力!」
「種族差だな」
ほんとそれ!!
相手はレア種族の原龍人(顔が人間じゃなくて龍そのものっていうタイプの種族)、こっちは一応レアだけど人間系種族。初期ステータス値の問題でどう足掻いても力では勝てない。
体格差も大人と子供レベルではないけど頭2つ分はある。
今はなんとか耐えてるけど、スタミナ値の減少で私が全ステータス低下状態=抵抗できなくなるのは時間の問題。
どうしよう。
いくらゲームだからって、レイプとかゴメンなんだけど?!!
―――――――――― LIFE OF FANTASY。 通称『LOF』。
現在、私――有栖川天音がプレイしている、稼働から2年ほど経ったVRMMOだ。
『異世界での自由な生活』をコンセプトにした、メインストーリーが無いっていう珍しいタイプのゲーム。
公式イベントとか、マップごとのサイドストーリー的なものはあるんだけどね。
決められた道筋が一切無いから、行動の全てをプレイヤーが決める。
どんな職業に就くか。戦うか、物を作るか。旅をするか、定住するか。何もかも。
それがメリハリがなくて嫌だって止めていくプレイヤーも多かったかな。
最初は楽しかったけど慣れてきて簡単になるとつまらない、って。
そういう気持ちも分からないでもない。
なんていうかこのゲームは、そう。『ゲームのクリア後の世界』みたいな感じなんだよね。
何でもできるしどこにでも行けるけど、刺激が少ない。
最初はそれでも十分に楽しいんだけど、色んなところに行ったりやりたいことをやっていって、少しでも満足してしまうと物足りなく感じるんだ。
最初は最新作で自由度が高いのが売りだったからプレイヤーも沢山いたんだよ。
でも時間が経つにつれて、人数は減っていった。今は多分、最初のログイン人数の6~7割くらい?
それでもサービスが終了したり、今に至るまで大きな梃入れが入らないのにはもちろん理由がある。
それは、このゲームが20禁でありフィルターの設定次第では著しく倫理に外れた行為以外は可能だからだ。
つまりエロ系は勿論、グロ系、特殊性癖なんかも実現できる。
ファンタジー系のゲームでそういうのが可能なのって、少ないんだよ。だからなのか、需要はそれなりにあったらしい。
ぶっちゃけこのゲームを続けてるプレイヤーの半分以上はそっちの需要でプレイしてるっぽいよ。
ていうか多分その辺りの層を狙って下手に宣伝とか梃入れとかしないんだろうね。
私の場合は、一応そういうのを理解した上でそっち関連のフィルター設定を全て『拒否』にして始めて、今は作ったギルドのことがあってずるずる続けてる感じなんだけど。
まあとりあえず。
そういうゲームだから、プレイヤーは個人で膨大なフィルターを設定して自衛しなきゃならない。
それがされていなかった場合、なんらかの被害に遭ったとして、それは自業自得か――――――
「フィルターが掛かっていない以上合意だぞマスター?」
「う、ぐ……っ!せ、設定に見落としがあっただけだし!俺がそういうの全部不可にしてんの知ってるだろ!?」
「ああ。何度かそう言ってたし、試したからな」
「た、………………は?試し、た?」
「街中、建物内、フィールド、ダンジョン。一緒に行動した時に一通り試した」
何やってんのコイツ!!?
プレイヤーやモンスター、NPCに襲われる可能性があるところは全部しっかり不可設定してるに決まってるでしょ!なんならログインして毎回確認してるし!今日はログインしてすぐに零から声を掛けられたからできなかったけど!
「建物内が無理だった時点で除外してたんだが、マスタールームが別枠でかつマスターが見落としていたとはなぁ」
私もそう思ってるとこだよ!別枠だったなんて思いもしなかった!!
というか別枠だったっけ!?違った気がするよ!?
今日何かアップデート入ってたけど、零に声を掛けられたせいで内容はまだ確認できてなくて……もしかしなくてもそれで何かあった感じよね?
「っ、設定、直すから、退けってば!」
「退くわけない。このために散々試したんだ、諦めて大人しくヤらせろ」
「~~~~っの、最っっっ低!!」
言うに事欠いてそれ!!?!
しかも今の状態じゃ設定直せないしログアウトもできないっぽいし!
ヘルプに『フィルター無しの状態でプレイヤー、NPC、モンスターに襲われた場合、途中変更はできません』ってあったから、多分そっち系に判定が入っているせいだ。
自力で逃げて距離を取れれば判定から外れられるみたいだけど……あと緊急ログアウト設定をしていたら。でもフィルターで拒否設定きっちりしてるつもりだったから、そこまではしてなくて……要は強制シャットダウンみたいなものだから極力避けるようにってあったし。だから使えない。
そして、自力での脱出は無理。
完全に詰んでいる。
それでも意地で抵抗してるけど、もう、スタミナ値が、
「はは。『このゲームは設定のミスが致命傷に繋がる』、だったか?自分がミスしてたらざまあないな」
「ッ阿保みたいな粗探ししてた奴に言われたくない!」
「だから2年もかかったんだろ?正直に言って無理だと思ってたんだぞ。今日だってたまたまだし、こんなに都合が良い状態に持ち込めるとは思いもしなかった。…………なあ、スタミナ値。もうないよなぁ?」
心底愉しそうに、哂う。
忌々しいけど、零の言う通りだ。
スタミナ値はもう底を尽く。回復もできない。
なにせこのゲーム、スタミナ値は食事でしか回復できないのだから。
零に私を逃がす気がない以上、もう、何もできない。
力の抜けた腕が、ベッドに押し付けられた。
「や、」
「諦めろ」
言葉で拒絶しようとして、けど、顔を覗き込んできた零がとあるスキルを使ってきたせいで止まる。
スキル、威圧。効果は硬直。
そこまで、するの。
今までそんな様子は一切なかったのに。
どうして?
「ど、けってば!何のつもりだよ!」
「は?分かるだろそれくらい」
ギルドマスター、或いはギルドマスターに許可を得た状態のメンバー以外入れないマスタールームにて、ギルド内で一番仲が悪い相手、零にベッドに押し倒されてます。
ベッドに、押し倒されてます。
なんで?!!!?
「抵抗するだけ無駄だから諦めたらどうだ?」
「出来るか阿保!馬鹿力!」
「種族差だな」
ほんとそれ!!
相手はレア種族の原龍人(顔が人間じゃなくて龍そのものっていうタイプの種族)、こっちは一応レアだけど人間系種族。初期ステータス値の問題でどう足掻いても力では勝てない。
体格差も大人と子供レベルではないけど頭2つ分はある。
今はなんとか耐えてるけど、スタミナ値の減少で私が全ステータス低下状態=抵抗できなくなるのは時間の問題。
どうしよう。
いくらゲームだからって、レイプとかゴメンなんだけど?!!
―――――――――― LIFE OF FANTASY。 通称『LOF』。
現在、私――有栖川天音がプレイしている、稼働から2年ほど経ったVRMMOだ。
『異世界での自由な生活』をコンセプトにした、メインストーリーが無いっていう珍しいタイプのゲーム。
公式イベントとか、マップごとのサイドストーリー的なものはあるんだけどね。
決められた道筋が一切無いから、行動の全てをプレイヤーが決める。
どんな職業に就くか。戦うか、物を作るか。旅をするか、定住するか。何もかも。
それがメリハリがなくて嫌だって止めていくプレイヤーも多かったかな。
最初は楽しかったけど慣れてきて簡単になるとつまらない、って。
そういう気持ちも分からないでもない。
なんていうかこのゲームは、そう。『ゲームのクリア後の世界』みたいな感じなんだよね。
何でもできるしどこにでも行けるけど、刺激が少ない。
最初はそれでも十分に楽しいんだけど、色んなところに行ったりやりたいことをやっていって、少しでも満足してしまうと物足りなく感じるんだ。
最初は最新作で自由度が高いのが売りだったからプレイヤーも沢山いたんだよ。
でも時間が経つにつれて、人数は減っていった。今は多分、最初のログイン人数の6~7割くらい?
それでもサービスが終了したり、今に至るまで大きな梃入れが入らないのにはもちろん理由がある。
それは、このゲームが20禁でありフィルターの設定次第では著しく倫理に外れた行為以外は可能だからだ。
つまりエロ系は勿論、グロ系、特殊性癖なんかも実現できる。
ファンタジー系のゲームでそういうのが可能なのって、少ないんだよ。だからなのか、需要はそれなりにあったらしい。
ぶっちゃけこのゲームを続けてるプレイヤーの半分以上はそっちの需要でプレイしてるっぽいよ。
ていうか多分その辺りの層を狙って下手に宣伝とか梃入れとかしないんだろうね。
私の場合は、一応そういうのを理解した上でそっち関連のフィルター設定を全て『拒否』にして始めて、今は作ったギルドのことがあってずるずる続けてる感じなんだけど。
まあとりあえず。
そういうゲームだから、プレイヤーは個人で膨大なフィルターを設定して自衛しなきゃならない。
それがされていなかった場合、なんらかの被害に遭ったとして、それは自業自得か――――――
「フィルターが掛かっていない以上合意だぞマスター?」
「う、ぐ……っ!せ、設定に見落としがあっただけだし!俺がそういうの全部不可にしてんの知ってるだろ!?」
「ああ。何度かそう言ってたし、試したからな」
「た、………………は?試し、た?」
「街中、建物内、フィールド、ダンジョン。一緒に行動した時に一通り試した」
何やってんのコイツ!!?
プレイヤーやモンスター、NPCに襲われる可能性があるところは全部しっかり不可設定してるに決まってるでしょ!なんならログインして毎回確認してるし!今日はログインしてすぐに零から声を掛けられたからできなかったけど!
「建物内が無理だった時点で除外してたんだが、マスタールームが別枠でかつマスターが見落としていたとはなぁ」
私もそう思ってるとこだよ!別枠だったなんて思いもしなかった!!
というか別枠だったっけ!?違った気がするよ!?
今日何かアップデート入ってたけど、零に声を掛けられたせいで内容はまだ確認できてなくて……もしかしなくてもそれで何かあった感じよね?
「っ、設定、直すから、退けってば!」
「退くわけない。このために散々試したんだ、諦めて大人しくヤらせろ」
「~~~~っの、最っっっ低!!」
言うに事欠いてそれ!!?!
しかも今の状態じゃ設定直せないしログアウトもできないっぽいし!
ヘルプに『フィルター無しの状態でプレイヤー、NPC、モンスターに襲われた場合、途中変更はできません』ってあったから、多分そっち系に判定が入っているせいだ。
自力で逃げて距離を取れれば判定から外れられるみたいだけど……あと緊急ログアウト設定をしていたら。でもフィルターで拒否設定きっちりしてるつもりだったから、そこまではしてなくて……要は強制シャットダウンみたいなものだから極力避けるようにってあったし。だから使えない。
そして、自力での脱出は無理。
完全に詰んでいる。
それでも意地で抵抗してるけど、もう、スタミナ値が、
「はは。『このゲームは設定のミスが致命傷に繋がる』、だったか?自分がミスしてたらざまあないな」
「ッ阿保みたいな粗探ししてた奴に言われたくない!」
「だから2年もかかったんだろ?正直に言って無理だと思ってたんだぞ。今日だってたまたまだし、こんなに都合が良い状態に持ち込めるとは思いもしなかった。…………なあ、スタミナ値。もうないよなぁ?」
心底愉しそうに、哂う。
忌々しいけど、零の言う通りだ。
スタミナ値はもう底を尽く。回復もできない。
なにせこのゲーム、スタミナ値は食事でしか回復できないのだから。
零に私を逃がす気がない以上、もう、何もできない。
力の抜けた腕が、ベッドに押し付けられた。
「や、」
「諦めろ」
言葉で拒絶しようとして、けど、顔を覗き込んできた零がとあるスキルを使ってきたせいで止まる。
スキル、威圧。効果は硬直。
そこまで、するの。
今までそんな様子は一切なかったのに。
どうして?
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