よくある異世界転移モノ、と思いきや?

一色ほのか

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一章

16 予想外の再会

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 黒い馬である。鬣も体躯も瞳も真っ黒。唯一違うのは額に生えた白い一角。
 視界に入れてしまうと眼が逸らせなくなるこの存在感と威圧感。
 ものすっっっごく、覚えがあるんですけれど。
 
「ナイトメアホース……ですね」
「そう……ですわね」
 
 あんまりにも唐突な状況に茫然とするライラと私。
 黒い馬、もといナイトメアホースはといえばマイペースにもそもそ地面の草をはんでいる。お前の主食は他生命体の夢じゃなかったの?
 え、何これ本気でどういう状況?ステータス異常:混乱になってる気がする。ツッコむ余裕はあるらしいけど。
 その時である。
 まだ思考がぐるぐる迷走する私の横で、がしゃんという機械音がした。
 隣を見ればライラが戦闘態勢に移っている。
 えっ。
 ナイトメアホースも敵意に気付いたらしくこちらをじっと見ている。
 漆黒の眼だ。何度これと相対したことだろう。
 メカニックの付き合いでドロップが手に入るまで6回イベント回して、それから解放された後は一人で遊ぶ時は大体呼び出していた。だってレスタペルラの外見とイメージに合うんだもん。周りに人が居ると騒がしかったけど。

 …………あれ?そういえば確か、ナイトメアホースからドロップする材料って機械人形の精神・感情回路に関係あるよく分からないものだったはず。
 メカニックが何か熱く語ってた気がするけど、つまりココロに該当する部分なんですわねハイハイ分かったですわーとかってスルーしたんだよねぇ興味なかったから。
 そういうことって、つまり?

「キョウダイ喧嘩ですの?」
 
「馬と兄妹なんて冗談じゃありません」
[ 人形とキョウダイなんて笑えない冗談だよ、レスタ ]
 
 どっちも反応はっや。そんなに嫌ですか。
 っていうか、名前呼んだ(発声じゃなくてテレパシーっぽいけど)ねこの馬。
 つまり。
 
「色々言いたいですけども、アナタ、アタクシと契約したコですのね?」
[ そうだね。後にも先にも、ボクと契約を交わしたのはキミしかいなかった。この世界が生まれて、終わって、産まれてからも ]
「……? 意味が分からないですわ」
 
 目の前の馬が私の従魔であることはとりあえず確定した。でも、後半言ってる意味が解らない。
 生まれて終わって生まれたとは、どういう意味か。
 
[ そう?うーん、そうだなぁ。この世界はある日世界として生まれて、キミやキミと同じモノ達を迎え入れた。でも、キミ達が消えて世界は終わった。ここまではいい? ]
「ええ、いいですわ」
[ うん。それで、ある日消滅したはずの世界が世界樹を中心に再生されたんだ。キミ達全てが居なくなったその瞬間あたりからね。これを知ってるのは【世界樹の夢】であるボクだけなんだけど ]
 
 消滅してから、再生された。
 つまり『生』まれたじゃなくて『産』まれた。
 うん、そこは把握できた。そこは。あくまで、そこは。

 何か重要な話が出た気がするけどそこは置いといて、えーと。
 つまり?
 ECOは小城春菜の世界では終わったけど、そこから何かが起きて一つの世界として発生した、ってこと?
 …………駄目だ頭良くないからよく分からない。

 っていうか、ちょっと待ってくれ。変だ。
 なんで今まで変だと思わなかったの?何度も出てきた情報なのに。
 ……この世界はECOが終わったことが前提になってるけど、私はそうじゃない。
 この世界に召喚される前は、ECOは終わる素振りすら見せていなかった。大型アップデートが目前だったし。

 これは、私が召喚される前後のことを覚えていないことと関係してるんだろうか。
 私に一体何があって、現在に至っている?
 
 今初めて、自分が置かれている状況に明確な形のない恐怖を覚えた。
 


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