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一章
13 これからのこと
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どんなに精神が擦り減っていようとストレスが溜まっていようと、朝は来る。
無情である。
「あー……」
眠る時いつもこれが夢で、目が覚めたら日本だったら……と考えている。けれど何度眠りに就き目覚めても、眠る前と変わらない天井があるだけで。
夢オチなんてまずないだろうとは思う。
だけどその考えを捨てきれないのは恐らく、召喚される前後のことを一切覚えていないからだ。
それに気付いたのは【レスタペルラ】になりホームにやってきてから。
厳密には彼女の存在を知りひとまず一人きりではないと安心してからだった。
(なんとまあ酷い話だ)
(それでも一番大事なのは、やっぱり自分自身であって)
「おはようございます、レスタペルラ様。本日のご予定はどうなさいますか?」
「特に決めてないですわ。遠出する気分でもないですもの。それにしても、ライラ。アタクシに敬意を払う必要はないですわよ?」
「いいえ、レスタペルラ様は今ではただ一人の【ぜんまい仕掛けの道化師】のメンバーです。マスターの命令にはありませんが、マスター不在の今貴方様が私のマスターとなります」
「初耳ですわ」
「今、言いました」
この子さりげなくイイ性格だわ。
……そう、まるで人間そのもの。本当に機械人形らしくない。
あの後彼女――ライラは静かに目を閉じて沈黙した。
しばらくして目を開いたライラは穏やかに微笑み、一言、おかえりなさいませ、と言った。
ライラが一体何をどう判断したのかは分からない。けれど私が帰ってきたということはとりあえず受け入れてくれたようだ。
良かった、ここから追い出されでもしたら行く宛てもないし。バットエンドまっしぐら?
ゲームじゃないけど。現実だけど。
色々考えて、ライラには私は『1200年前から飛ばされてきた』と説明した。
ここが私達プレイヤーにとってはゲームの仮想空間だったとか召喚されたとか一度死んでるとかの本当のことを話すわけにはいかないし。時間経過については適当にふらふらして知ったということにして。
案の定ライラは今世界がどうなっているか、なんていう外の情報を一切知らず、私が話して聞かせると驚いたような顔をしていた。1200年引き籠ってたようなものだし、当然といえば当然か。アップデートされることだってもうないし。
一度外に出て情報を得たいとは言っていたけど、彼女は言うなれば【栄光時代】の遺産そのもの。少なくともグランユグードにバレたら速攻分解されるね間違いない。そして再構築出来なくて終わるんですね分かります。
お前らの程度を知れ。
「どうかなさいましたか?折角の美しいお顔が台無しです」
「……。えぇ、ちょっと。外で出くわした愚か者達を思い出しただけですわ。外はあんな蛮人だけかと思うと気が重いですわね」
「レスタペルラ様はその者達が言う【栄光時代】の術の使い手。遅れをとるなどはないかと思われますが?」
「戦闘面ではそうですわね。でも、アタクシが1200年前の者と知れば間違いなく多方面から狙われることになるですわ。この知識はアレラにとって喉から手が出るほど欲しいモノですもの」
そういえばルフィスさん、今頃どうしてるだろう?
私を殺したことで立場がまずくなってたりしない……よね?ないよね?王族だし。大丈夫だよね。
そこらへん考えてなかったよ、時間も余裕もなかったし。
正直外には出たくないけど、やっぱりそれらも含めて情報を得るためには外に出るしかない。でもそれをするにも情報が足りなすぎる。
となればやっぱり危険を承知の上でグランユグード以外の三国へ行くしかない、と。
どちらにしろ結論は『外に出る』だ。
無情である。
「あー……」
眠る時いつもこれが夢で、目が覚めたら日本だったら……と考えている。けれど何度眠りに就き目覚めても、眠る前と変わらない天井があるだけで。
夢オチなんてまずないだろうとは思う。
だけどその考えを捨てきれないのは恐らく、召喚される前後のことを一切覚えていないからだ。
それに気付いたのは【レスタペルラ】になりホームにやってきてから。
厳密には彼女の存在を知りひとまず一人きりではないと安心してからだった。
(なんとまあ酷い話だ)
(それでも一番大事なのは、やっぱり自分自身であって)
「おはようございます、レスタペルラ様。本日のご予定はどうなさいますか?」
「特に決めてないですわ。遠出する気分でもないですもの。それにしても、ライラ。アタクシに敬意を払う必要はないですわよ?」
「いいえ、レスタペルラ様は今ではただ一人の【ぜんまい仕掛けの道化師】のメンバーです。マスターの命令にはありませんが、マスター不在の今貴方様が私のマスターとなります」
「初耳ですわ」
「今、言いました」
この子さりげなくイイ性格だわ。
……そう、まるで人間そのもの。本当に機械人形らしくない。
あの後彼女――ライラは静かに目を閉じて沈黙した。
しばらくして目を開いたライラは穏やかに微笑み、一言、おかえりなさいませ、と言った。
ライラが一体何をどう判断したのかは分からない。けれど私が帰ってきたということはとりあえず受け入れてくれたようだ。
良かった、ここから追い出されでもしたら行く宛てもないし。バットエンドまっしぐら?
ゲームじゃないけど。現実だけど。
色々考えて、ライラには私は『1200年前から飛ばされてきた』と説明した。
ここが私達プレイヤーにとってはゲームの仮想空間だったとか召喚されたとか一度死んでるとかの本当のことを話すわけにはいかないし。時間経過については適当にふらふらして知ったということにして。
案の定ライラは今世界がどうなっているか、なんていう外の情報を一切知らず、私が話して聞かせると驚いたような顔をしていた。1200年引き籠ってたようなものだし、当然といえば当然か。アップデートされることだってもうないし。
一度外に出て情報を得たいとは言っていたけど、彼女は言うなれば【栄光時代】の遺産そのもの。少なくともグランユグードにバレたら速攻分解されるね間違いない。そして再構築出来なくて終わるんですね分かります。
お前らの程度を知れ。
「どうかなさいましたか?折角の美しいお顔が台無しです」
「……。えぇ、ちょっと。外で出くわした愚か者達を思い出しただけですわ。外はあんな蛮人だけかと思うと気が重いですわね」
「レスタペルラ様はその者達が言う【栄光時代】の術の使い手。遅れをとるなどはないかと思われますが?」
「戦闘面ではそうですわね。でも、アタクシが1200年前の者と知れば間違いなく多方面から狙われることになるですわ。この知識はアレラにとって喉から手が出るほど欲しいモノですもの」
そういえばルフィスさん、今頃どうしてるだろう?
私を殺したことで立場がまずくなってたりしない……よね?ないよね?王族だし。大丈夫だよね。
そこらへん考えてなかったよ、時間も余裕もなかったし。
正直外には出たくないけど、やっぱりそれらも含めて情報を得るためには外に出るしかない。でもそれをするにも情報が足りなすぎる。
となればやっぱり危険を承知の上でグランユグード以外の三国へ行くしかない、と。
どちらにしろ結論は『外に出る』だ。
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