よくある異世界転移モノ、と思いきや?

一色ほのか

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序章

7 早過ぎる緊急事態

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 この世界に召喚されてから早くも三日。
 その間私はといえば、ルフィスさんの屋敷から一歩も出ることなく本と紙と綿ゴミの掃除に追われていた。
 まるっきりお手伝いさんでしかない。
 ちなみにルフィスさんの仕事仲間とは出会してないよ。
 情報は着々と得られていると思う。栄光時代と現在を比べるような書き方をしているおかげで違いがよく分かるのだ。
 でもなんか自虐的な言い回しだったり妬みっぽいのがちらほらしてるけど。
 
 イケメンと美少女は、今朝になってどちらも勇者の資格ありとして二人とも正式に王城で迎え入れられたらしい。
 ルフィスさん曰くどちらが求めた勇者か分からないけど『どうせ戦力として喚んだのだから二人とも縛り付けてしまえ』という考えなのだろう、とのこと。
 私の扱いはといえば、このままルフィスさんの所有物・・・・・・・・・・ということでいいだろう、となったそうだ。

 おいまて。

 思わずキッチンのテーブルに突っ伏した。
 
「私としても想定外でした。放逐されるとばかり思っていましたから……まあ居てくれると便利ではあるんですけれど」
「遠慮ってものがなくなりましたね。私としては元の世界に還りたいのでこのままというのはちょっと困ります」
「そうでしょうね。こうなると直接ミーアノームへ行き置いてくるのが一番でしょうが私も軽々しく国外に出られる立場ではありませんし」
「そうみたいですね……」
 
 ルフィスさんが上位の地位にいるだろうことは気付いていた。
 なんせ異世界から召喚された存在を、危険は少ないとはいえ調べもせずその場で引き受けることができるくらいなんだから。
 ルフィスさん、あの美形の腹違いのお兄さんだそうで……。
 研究者になるという理由で王位継承権を放棄したそうな。それでも王籍には残ったままのため、ルフィスさんに子供が生まれた場合その子供には王位継承権が発生するらしいけど。
 まあそれはどうでもいい。
 
 これからどうしたものかと考えていると、ルフィスさんがいつも貼りつけている柔和な笑みを消し、真顔になった。
 …………何?もしかしてやばいの?
 
「もう時間はないと考えた方が良いでしょう。保留から所有に変わってしまっては、私よりも地位が上の者に命じられた場合差し出さざるを得なくなります。そして……確実に来るでしょうね。この国は研究者が多いですから。故に狙われていますので」
「魔力はなくとも、研究の価値はあるってことですか。…………これもう詰んだかな」
 
 最終手段発動がこんなに早いとは。そして、出来るならば最終手段は……見も知らない研究者連中よりだったら、目の前の多少なりと恩のある相手の方が良い。
 でもこれって頼むには躊躇するし相手も引き受けるとは限らないよなぁ。
 言うしかないけど。
 だってまだマシだもの。
 
「諦めるのですか?」
「え、まさか。諦めてないですよ?……だからこそ、頼みがあります。」
「頼み?頼みとは」
 
 なんですか、と続いただろう言葉は、玄関のドアノックを叩く荒々しい音に掻き消えた。
 


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