よくある異世界転移モノ、と思いきや?

一色ほのか

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序章

4 まさかの事実

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「恐らく貴方は、危険ではないと判断されればミーアノームに放逐されることになるでしょう。あちらは基本的に中立ですからね。冒険者も多いと聞きますから、運が良ければ冒険者として生きていけるはずですよ」
 
 あくまで『運が良ければ』なんだね。

 困ったような表情の割に声は随分とあっさりしてるし、なんか読めてきたわ。
 この人つまり、『私が可哀想だと思った』とか『同情した』とかではなく、単に自分の好きに使える相手が欲しかったのでは。
 この惨状を見るにそういう使用人的な人は居なかったか、長続きしなかったんだろう。なんらかの理由で。

 こいつ多分腹黒い。が、第二印象になった。

「あの、だったらこの世界について簡単に教えてもらえませんか?この世界は私のいた世界と全然違うので」
「ええ、構いませんよ。貴方の世話ということでしばらく大体の仕事をお休みさせてもらいましたから。溜まっている仕事を片付けている時以外でしたらお教えしますよ」
「じゃあとりあえず、それぞれの国について教えて下さい。それから、召喚の術式が存在した時代について。その時代から生きている方がいたらなお良いです」
「生きている方は恐らくいません。では、そうですね。歴史の勉強でもしましょうか。貴方は随分と頭の回転が良いようですのですぐ理解出来ますよ、きっと」
 
 嫌味ですね分かります。
 でも教えると言ったのはそっちだし形振り構ってられないし。
 無害ぶってなんの予備知識もないまま放逐されても困る。
 開き直ってあがくと決めたんだから、出来る限り空気読んでないふりして情報収集だろうが何だろうがやってやる。今までのたった数時間でこの国の印象は最悪なんだから。
 それが全部じゃあないんだろうけどさ。事情もあるだろうし。
 ただ私が知ったことじゃないんだよ。
 むしろ知るかっていうかね。

「さて、まずはこれを見て下さい。この世界の大体の地図です」
 
 そう、ルフィスさんはテーブルの上に古びた紙を広げた。

 それを視界に入れた瞬間、正直言って頭を抱えたくなった。
 多分目も見開いていただろうけれど、ルフィスさんはというとマイペースに大量の本を重ねている最中で、とりあえず見られてはいなかったようだ。とてつもない幸いだった。

 …………その地図には見覚えがあった。
 ものすごーく、見覚えがあった。
 そしてこの世界に来てから何度も感じていた感覚に、答えが出た。
 出てしまった。

 はっきり言おう。
 私はこの世界を知っている・・・・・・・・・・・・

 いや、正確にはちょっと違うかな。
 なんて言おうか……えっと。

 ここは、この世界は――――私がプレイしてたVRのMMORPG、【エンドレスカオスオンライン】の世界観を持ってる世界、っぽいんだ。

 だって国の名前や数は違うけど大陸の形はほとんど同じだし。四つの国がある位置も、確かにその位置に国はあった。
 【聖樹】、もとい【世界樹】の位置も変わらない。

 つまりここは、【エンドレスカオスオンライン】――以降長いから【ECO】と呼ぶ――でいう【エルフの隠れ里】なんだね。
 そして美形に見覚えがあると感じたのは、NPCのエルフ族長に似てたからだ。
 …………現王族ってまさかの自称ハイエルフ?
 いやでもエルフの王族がハイエルフなんだから間違いでもない……?
 うーん、分かんないや。
 
「地図上の文字は読めますか?どういった仕組みかは分かりませんが、召喚された存在は例外なくこちらの言語も扱えるはずですが」
「ああ、はい。読めます。」
「では進めますね。まずは国の位置から始めましょう」
 
 まあ今は、この世界の勉強をしながら、ECOとの相違点でも探すとしよう。
 
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