よくある異世界転移モノ、と思いきや?

一色ほのか

文字の大きさ
上 下
4 / 20
序章

4 まさかの事実

しおりを挟む
「恐らく貴方は、危険ではないと判断されればミーアノームに放逐されることになるでしょう。あちらは基本的に中立ですからね。冒険者も多いと聞きますから、運が良ければ冒険者として生きていけるはずですよ」
 
 あくまで『運が良ければ』なんだね。

 困ったような表情の割に声は随分とあっさりしてるし、なんか読めてきたわ。
 この人つまり、『私が可哀想だと思った』とか『同情した』とかではなく、単に自分の好きに使える相手が欲しかったのでは。
 この惨状を見るにそういう使用人的な人は居なかったか、長続きしなかったんだろう。なんらかの理由で。

 こいつ多分腹黒い。が、第二印象になった。

「あの、だったらこの世界について簡単に教えてもらえませんか?この世界は私のいた世界と全然違うので」
「ええ、構いませんよ。貴方の世話ということでしばらく大体の仕事をお休みさせてもらいましたから。溜まっている仕事を片付けている時以外でしたらお教えしますよ」
「じゃあとりあえず、それぞれの国について教えて下さい。それから、召喚の術式が存在した時代について。その時代から生きている方がいたらなお良いです」
「生きている方は恐らくいません。では、そうですね。歴史の勉強でもしましょうか。貴方は随分と頭の回転が良いようですのですぐ理解出来ますよ、きっと」
 
 嫌味ですね分かります。
 でも教えると言ったのはそっちだし形振り構ってられないし。
 無害ぶってなんの予備知識もないまま放逐されても困る。
 開き直ってあがくと決めたんだから、出来る限り空気読んでないふりして情報収集だろうが何だろうがやってやる。今までのたった数時間でこの国の印象は最悪なんだから。
 それが全部じゃあないんだろうけどさ。事情もあるだろうし。
 ただ私が知ったことじゃないんだよ。
 むしろ知るかっていうかね。

「さて、まずはこれを見て下さい。この世界の大体の地図です」
 
 そう、ルフィスさんはテーブルの上に古びた紙を広げた。

 それを視界に入れた瞬間、正直言って頭を抱えたくなった。
 多分目も見開いていただろうけれど、ルフィスさんはというとマイペースに大量の本を重ねている最中で、とりあえず見られてはいなかったようだ。とてつもない幸いだった。

 …………その地図には見覚えがあった。
 ものすごーく、見覚えがあった。
 そしてこの世界に来てから何度も感じていた感覚に、答えが出た。
 出てしまった。

 はっきり言おう。
 私はこの世界を知っている・・・・・・・・・・・・

 いや、正確にはちょっと違うかな。
 なんて言おうか……えっと。

 ここは、この世界は――――私がプレイしてたVRのMMORPG、【エンドレスカオスオンライン】の世界観を持ってる世界、っぽいんだ。

 だって国の名前や数は違うけど大陸の形はほとんど同じだし。四つの国がある位置も、確かにその位置に国はあった。
 【聖樹】、もとい【世界樹】の位置も変わらない。

 つまりここは、【エンドレスカオスオンライン】――以降長いから【ECO】と呼ぶ――でいう【エルフの隠れ里】なんだね。
 そして美形に見覚えがあると感じたのは、NPCのエルフ族長に似てたからだ。
 …………現王族ってまさかの自称ハイエルフ?
 いやでもエルフの王族がハイエルフなんだから間違いでもない……?
 うーん、分かんないや。
 
「地図上の文字は読めますか?どういった仕組みかは分かりませんが、召喚された存在は例外なくこちらの言語も扱えるはずですが」
「ああ、はい。読めます。」
「では進めますね。まずは国の位置から始めましょう」
 
 まあ今は、この世界の勉強をしながら、ECOとの相違点でも探すとしよう。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。 何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。 本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。 何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉ 何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼ ※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。 #更新は不定期になりそう #一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……) #感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?) #頑張るので、暖かく見守ってください笑 #誤字脱字があれば指摘お願いします! #いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃) #チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

残念ですが、生贄になりたくないので逃げますね?

gacchi
恋愛
名ばかり公爵令嬢のアリーは生贄になるために王宮で育てられていた。そのことはアリーには秘密で。ずっと周りに従順になるように育てられていたアリーだが、魔術で誓わされそうになり初めて反発した。「この国に心も身体もすべて捧げると誓いますね?」「いいえ、誓いません!」 たまたまそれを見ていた竜王の側近ラディに助けられ、竜王国に働きに行くことに。 アリーは名前をリディに変え、竜王国で魔術師として働く予定だったが、どうやら普通の人ではなかったようで?

処理中です...