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第1章 幼少期(7歳)
65 お叱りを受ける
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問い:目が覚めた際目の前にイース様の麗しい寝顔があった場合の私の反応と結果を答えよ。
「っっっっきゃぁ、」
「静かに」
答え:悲鳴を上げようとするも起きていたらしいイース様に口を塞がれる。
ど、どういうことですの……?
ここは離宮の私の部屋のようだけれど、いつの間に帰ってきたの?
というか、私は何故、いつ、意識を?
ええと、ええと、そう、お婆様のお屋敷に行って。お婆様の部屋で手紙を見つけて、お婆様の過去を知って。襲撃に遭って。更に帰ろうとしたところで襲撃に遭って。
……そうだわ。思い出した。
馬車の近くで襲撃に遭った際、咄嗟に魔法を使おうとしたところでラックの声が聞こえて、意識を失ったのよ。
あの後一体どうなったのかしら。
魔法は恐らく不発したと思うのだけれど……
「何があったか、ちゃんと覚えてる?」
「は、はい」
「うん。頭が痛いとか体調不良はない?」
「ありません」
これは……状況把握と魔力を使ったことの反動の確認かしら。
魔法を使うことに失敗したり、魔力を使いすぎたりすると体調を崩したりするのよ。
私が意識を失ったのは恐らくラックが原因だけど、他の人から見たらそう考えるのが自然よね。
「ちょっと待って……、あ、アーシャは横になっていていいよ」
「あ、はい」
すぐ傍で横になっていたイース様が起き上がって、ベッドに腰かける形になる。
これって、これってどうなのかしら……?
「魔法の使い方、何かで調べた?」
「え、あ、はい……少しですが。あの、私、魔法を使おうとした後、どうなってしまったのですか?」
「んー……、教える前に、一つだけ約束をしてほしい」
「約束、ですか?」
「そう。魔法を使おうとしないって約束して」
「えっ」
その言葉に、驚いて声を上げてしまう。
だって、魔法を使うな、なんて。
貴族なら魔法が使えて当たり前で、然るべき時に扱えるように修練するのが当然のことなのに。
あの時、魔法を禁じなければならないような何かが起きたというの?
「そんな顔しないで。何もずっと、と言うわけじゃない。きちんと魔法について教師に習って、問題ないという評価が得られるまでは駄目、っていうだけだよ。魔法は扱いを間違えると本当に危険なんだ」
……正論、なのだけれど。
流れとしては何もおかしくはない、のだけれど。
それ以上に、不安が込み上がってくる。
「私、危険なことをしてしまったのですか……?」
あの時、私はいつものように魔法を使おうとして。
17歳の私のいつも、だ。下地もできていない、7歳の身体で。
見たところイース様にお怪我はないようだけれど……もしかして、暴走を起こしてしまったのでは……っ
「危険な事だったのは確かだ。でもアーシャのお陰で誰も怪我をしなかったから、結果的には良かったよ。だけどね、君は無属性で、かつ、魔法を一切習っていない。いつも今回のように上手くいくということはないから。無属性は分からないことが多いから、手探りになる。少し時間はかかるかもしれないけれど、何も問題はないよ」
「…………はい……」
ひとまず不味いということはないのかしら。
無属性……どこまでも足を引っ張ってくるのね。
ラックが原因なのだけれど。でも、ラックのお陰で私は助かったのだし。
……夜になったら、ラックに話を聞かないと。
「それについては、分かりました。なので、お待ちします。……あの、話は変わるのですが、その、あの、何故……イース様はこちらのお部屋でお休みに……?」
そっちの問題が終わったら、こっちよ。
というかわざと言葉にしなかったけれど、同じベッドで寝ていたって大分不味いのではない?いくら婚約者でも。12歳と7歳でも。醜聞とか!
「アーシャが起きるのを待っていたのだけど、私も最近忙しくて疲れていたからつい」
「つ、つい……。あの、それって、大丈夫なのですか?」
「あまり大丈夫じゃないね」
ちょっ!?
そうだろうとは思っていたけどあっさり肯定するのね!?
「まあ、ここでのことなら普通表に出回らない。もし噂が立った場合、掃除をしないとね」
「そ、うですか……」
利用できるものはなんでも利用するのね……。
私もその駒の一つだもの、当然かしら。
「そういえば、アーシャはあの時何の魔法を使おうとしたの?」
「え?ええと、盾の魔法です。あの資料に載っていたので、咄嗟に」
突然話を戻され、驚いたけれど、答える。
例の、老紳士の資料。あれにいくつか、古い魔法が載っていた。
咄嗟の言い訳に使えそうだから覚えていたのよ。
まさか実際に言い訳に使うことになるとは思ってなかったわ。
「あれにそんなことも書かれていたの?……なんとか時間を作らないと駄目か」
「あまり無理をなさらないでくださいね……」
今回みたいなことがまたあっても困るから。
心臓がいくつあっても足りないわ。
「っっっっきゃぁ、」
「静かに」
答え:悲鳴を上げようとするも起きていたらしいイース様に口を塞がれる。
ど、どういうことですの……?
ここは離宮の私の部屋のようだけれど、いつの間に帰ってきたの?
というか、私は何故、いつ、意識を?
ええと、ええと、そう、お婆様のお屋敷に行って。お婆様の部屋で手紙を見つけて、お婆様の過去を知って。襲撃に遭って。更に帰ろうとしたところで襲撃に遭って。
……そうだわ。思い出した。
馬車の近くで襲撃に遭った際、咄嗟に魔法を使おうとしたところでラックの声が聞こえて、意識を失ったのよ。
あの後一体どうなったのかしら。
魔法は恐らく不発したと思うのだけれど……
「何があったか、ちゃんと覚えてる?」
「は、はい」
「うん。頭が痛いとか体調不良はない?」
「ありません」
これは……状況把握と魔力を使ったことの反動の確認かしら。
魔法を使うことに失敗したり、魔力を使いすぎたりすると体調を崩したりするのよ。
私が意識を失ったのは恐らくラックが原因だけど、他の人から見たらそう考えるのが自然よね。
「ちょっと待って……、あ、アーシャは横になっていていいよ」
「あ、はい」
すぐ傍で横になっていたイース様が起き上がって、ベッドに腰かける形になる。
これって、これってどうなのかしら……?
「魔法の使い方、何かで調べた?」
「え、あ、はい……少しですが。あの、私、魔法を使おうとした後、どうなってしまったのですか?」
「んー……、教える前に、一つだけ約束をしてほしい」
「約束、ですか?」
「そう。魔法を使おうとしないって約束して」
「えっ」
その言葉に、驚いて声を上げてしまう。
だって、魔法を使うな、なんて。
貴族なら魔法が使えて当たり前で、然るべき時に扱えるように修練するのが当然のことなのに。
あの時、魔法を禁じなければならないような何かが起きたというの?
「そんな顔しないで。何もずっと、と言うわけじゃない。きちんと魔法について教師に習って、問題ないという評価が得られるまでは駄目、っていうだけだよ。魔法は扱いを間違えると本当に危険なんだ」
……正論、なのだけれど。
流れとしては何もおかしくはない、のだけれど。
それ以上に、不安が込み上がってくる。
「私、危険なことをしてしまったのですか……?」
あの時、私はいつものように魔法を使おうとして。
17歳の私のいつも、だ。下地もできていない、7歳の身体で。
見たところイース様にお怪我はないようだけれど……もしかして、暴走を起こしてしまったのでは……っ
「危険な事だったのは確かだ。でもアーシャのお陰で誰も怪我をしなかったから、結果的には良かったよ。だけどね、君は無属性で、かつ、魔法を一切習っていない。いつも今回のように上手くいくということはないから。無属性は分からないことが多いから、手探りになる。少し時間はかかるかもしれないけれど、何も問題はないよ」
「…………はい……」
ひとまず不味いということはないのかしら。
無属性……どこまでも足を引っ張ってくるのね。
ラックが原因なのだけれど。でも、ラックのお陰で私は助かったのだし。
……夜になったら、ラックに話を聞かないと。
「それについては、分かりました。なので、お待ちします。……あの、話は変わるのですが、その、あの、何故……イース様はこちらのお部屋でお休みに……?」
そっちの問題が終わったら、こっちよ。
というかわざと言葉にしなかったけれど、同じベッドで寝ていたって大分不味いのではない?いくら婚約者でも。12歳と7歳でも。醜聞とか!
「アーシャが起きるのを待っていたのだけど、私も最近忙しくて疲れていたからつい」
「つ、つい……。あの、それって、大丈夫なのですか?」
「あまり大丈夫じゃないね」
ちょっ!?
そうだろうとは思っていたけどあっさり肯定するのね!?
「まあ、ここでのことなら普通表に出回らない。もし噂が立った場合、掃除をしないとね」
「そ、うですか……」
利用できるものはなんでも利用するのね……。
私もその駒の一つだもの、当然かしら。
「そういえば、アーシャはあの時何の魔法を使おうとしたの?」
「え?ええと、盾の魔法です。あの資料に載っていたので、咄嗟に」
突然話を戻され、驚いたけれど、答える。
例の、老紳士の資料。あれにいくつか、古い魔法が載っていた。
咄嗟の言い訳に使えそうだから覚えていたのよ。
まさか実際に言い訳に使うことになるとは思ってなかったわ。
「あれにそんなことも書かれていたの?……なんとか時間を作らないと駄目か」
「あまり無理をなさらないでくださいね……」
今回みたいなことがまたあっても困るから。
心臓がいくつあっても足りないわ。
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