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第1章 幼少期(7歳)
50 新しい先生
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イース様から、王妃殿下の話し相手になってもらえないか、とのお話が来た。
場所は王城。王妃殿下の居住スペースで、とのこと。
裏で色々進んでいるのかしら。
分からないけれど……そこの辺りは教えてくれないのかしら?
ひとまず、受けない理由がないから了承のお返事をし、王妃殿下のスケジュールの関係で、3日後にお会いすることになった。
その間、最低限の礼儀を、と二人ほど礼儀作法の先生がお見えになったわ。
一日目の時点で問題はない、と片方の先生には評価され、もう片方の先生には僅かに引き攣った顔で年齢の割にお上手です(意訳)と言われたわね。
すぐさま、後者の先生はお暇を出されていたわ。
「では、テレーゼ先生が正式な家庭教師になられるのね」
「その通りでございます、お嬢様」
「もう一方はなんのために?テレーゼ先生やマーサ先生に比べて少々問題があるように見えたのだけれど」
明らかに私を見下した目付きをしていたもの、あの女性。
髪色から察するに、オードスルス家関係の方のようだったけれど。
「あの方はオードスルス夫人が性懲りもなくねじ込んできた方です」
「まあ。だからあんなに質が悪いような方だったのね」
「そのようです」
容赦なく言い放つスージー。
まあすぐさまイース様に報告して返事も待たずに追い出すくらいだし、最初から想定された扱いだったのでしょうね。
私も役に立たない・利用もできそうにない者は要らないわ。
というかねじ込んできたってなんなの。
「少々よろしいでしょうか?」
「はい。なんでしょうか」
今まで黙っていたテレーゼ先生が口を開く。
新緑の色の髪に濃い褐色の瞳の、セルヴァ家関連の出身と思われる女性。
年の頃はマーサ先生と同じくらいかしら。
「可能でしたら、お聞きしたいことがあります。以前、家庭教師として招かれた者は何故追い返されたのでしょう」
「そのことでしたら……私は詳しいことを聞いておりませんけれど、この離宮にレイオス殿下の許可も得ず押しかけてきたオードスルス夫人に追い返されたと聞いています。私は一目ともお会いしておりません」
「事実です。お嬢様はメロディス・ベルジュ様とお会いしておりません」
「えっ、ベルジュ?」
「はい。あの日、レイオス殿下が家庭教師としてお呼びになられたのは、ベルジュ家の方です」
ベルジュ……カトリーナの生家。
こことは前も含めて本当に関わりがなかったから、話を聞いてみたいと思っていたのよね。
カトリーナの本当の娘が今どうしているのかも気になっていたし……。
折角の機会を潰されていたとは。本当にあの人、碌なことをしないのね。
「そう、ですか。……まずは謝罪をさせてください。ご令嬢側の事情をよく知らず、外部に流れる話を鵜呑みにしておりました。申し訳ございません」
「まあ。言わなければ分からないことですのに。構いませんわ。私の情報が表に出ないことが原因ですもの」
淑女らしく、嫋やかに微笑む。
現状私は外の噂を正しく知らない。又聞きばかりだ。
だから、どう対応すれば一番効果的か分からない。
なら今の私にできることは、正しく淑女でいることだ。
あとは勝手に相手が解釈してくれるでしょう。
彼女の人となりが分からないからどうなるかは分からないけれど。
イース様が選んだ方だし、少なくともイース様の顔に泥を塗るような真似はしないはず。
「では、改めて。私はアリルシェーラ・シュベーフェルと申しますの。今後はアリルシェーラ、とお呼びくださいませ」
「はい。私はセルヴァ家の分家頭であるドレアード家の長子、テレーゼと申します。第一王子殿下の命により、本日よりアリルシェーラ様の淑女教育を担当させていただきます。よろしくお願いいたします」
やはりセルヴァ家関係者。そして分家頭の長子ということは身分は上の方ね。
でも彼女の前に選ばれた方がベルジュ本家の女性であったことを考えると、確実にそこであったわね。
もう一方のことも合わせて、本当に害悪な人。なんとか排除できないのかしら。
……できていたら、ここまでなっていないわよね。
本当に、とてもつもなく、面倒な人。
周りはどう見ているのかしら?
「ねえスージー、時間は大丈夫かしら」
「多少ならば問題はないかと」
「分かったわ。テレーゼ先生、少しお話をしませんか」
「……はい。こちらからも質問など、よろしいでしょうか」
「答えられることでしたら構いませんわ」
そちらからの質問で分かることもあるでしょうし。
乗ってきてくれて助かったわ。
彼女も知りたいことがあるようだし。
さて、どんな情報が手に入るかしら。
場所は王城。王妃殿下の居住スペースで、とのこと。
裏で色々進んでいるのかしら。
分からないけれど……そこの辺りは教えてくれないのかしら?
ひとまず、受けない理由がないから了承のお返事をし、王妃殿下のスケジュールの関係で、3日後にお会いすることになった。
その間、最低限の礼儀を、と二人ほど礼儀作法の先生がお見えになったわ。
一日目の時点で問題はない、と片方の先生には評価され、もう片方の先生には僅かに引き攣った顔で年齢の割にお上手です(意訳)と言われたわね。
すぐさま、後者の先生はお暇を出されていたわ。
「では、テレーゼ先生が正式な家庭教師になられるのね」
「その通りでございます、お嬢様」
「もう一方はなんのために?テレーゼ先生やマーサ先生に比べて少々問題があるように見えたのだけれど」
明らかに私を見下した目付きをしていたもの、あの女性。
髪色から察するに、オードスルス家関係の方のようだったけれど。
「あの方はオードスルス夫人が性懲りもなくねじ込んできた方です」
「まあ。だからあんなに質が悪いような方だったのね」
「そのようです」
容赦なく言い放つスージー。
まあすぐさまイース様に報告して返事も待たずに追い出すくらいだし、最初から想定された扱いだったのでしょうね。
私も役に立たない・利用もできそうにない者は要らないわ。
というかねじ込んできたってなんなの。
「少々よろしいでしょうか?」
「はい。なんでしょうか」
今まで黙っていたテレーゼ先生が口を開く。
新緑の色の髪に濃い褐色の瞳の、セルヴァ家関連の出身と思われる女性。
年の頃はマーサ先生と同じくらいかしら。
「可能でしたら、お聞きしたいことがあります。以前、家庭教師として招かれた者は何故追い返されたのでしょう」
「そのことでしたら……私は詳しいことを聞いておりませんけれど、この離宮にレイオス殿下の許可も得ず押しかけてきたオードスルス夫人に追い返されたと聞いています。私は一目ともお会いしておりません」
「事実です。お嬢様はメロディス・ベルジュ様とお会いしておりません」
「えっ、ベルジュ?」
「はい。あの日、レイオス殿下が家庭教師としてお呼びになられたのは、ベルジュ家の方です」
ベルジュ……カトリーナの生家。
こことは前も含めて本当に関わりがなかったから、話を聞いてみたいと思っていたのよね。
カトリーナの本当の娘が今どうしているのかも気になっていたし……。
折角の機会を潰されていたとは。本当にあの人、碌なことをしないのね。
「そう、ですか。……まずは謝罪をさせてください。ご令嬢側の事情をよく知らず、外部に流れる話を鵜呑みにしておりました。申し訳ございません」
「まあ。言わなければ分からないことですのに。構いませんわ。私の情報が表に出ないことが原因ですもの」
淑女らしく、嫋やかに微笑む。
現状私は外の噂を正しく知らない。又聞きばかりだ。
だから、どう対応すれば一番効果的か分からない。
なら今の私にできることは、正しく淑女でいることだ。
あとは勝手に相手が解釈してくれるでしょう。
彼女の人となりが分からないからどうなるかは分からないけれど。
イース様が選んだ方だし、少なくともイース様の顔に泥を塗るような真似はしないはず。
「では、改めて。私はアリルシェーラ・シュベーフェルと申しますの。今後はアリルシェーラ、とお呼びくださいませ」
「はい。私はセルヴァ家の分家頭であるドレアード家の長子、テレーゼと申します。第一王子殿下の命により、本日よりアリルシェーラ様の淑女教育を担当させていただきます。よろしくお願いいたします」
やはりセルヴァ家関係者。そして分家頭の長子ということは身分は上の方ね。
でも彼女の前に選ばれた方がベルジュ本家の女性であったことを考えると、確実にそこであったわね。
もう一方のことも合わせて、本当に害悪な人。なんとか排除できないのかしら。
……できていたら、ここまでなっていないわよね。
本当に、とてもつもなく、面倒な人。
周りはどう見ているのかしら?
「ねえスージー、時間は大丈夫かしら」
「多少ならば問題はないかと」
「分かったわ。テレーゼ先生、少しお話をしませんか」
「……はい。こちらからも質問など、よろしいでしょうか」
「答えられることでしたら構いませんわ」
そちらからの質問で分かることもあるでしょうし。
乗ってきてくれて助かったわ。
彼女も知りたいことがあるようだし。
さて、どんな情報が手に入るかしら。
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