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先輩と別れ、隠密スキルを使ってこっそりと図書館に移動してきた。
既に授業時間だから生徒は少ないけれど、今はなんとなく見られたくなかったし。
問題があったとしたら、出入り口の受付に羽佐間さんがいなかったこと。
居ないんじゃ顔を見せるも何もできないし、そのまま隠れて自習することに。
それからしばらくして。
「あ、夜行君。戻ってくる時ここ通ったかい?」
受付に戻ってきていた羽佐間さんを見つけて、遅くはなったけど顔を見せておこうと寄って行ったら、開口一番にそう問われた。
約束通り顔を見せていかなかったから仕方ないか。
「いえ、来た時に不在だったので……」
「丁度離れた時だったんだね。そうか」
ふむ、と顎の下に手をやり、考える仕草をする羽佐間さん。
「だけど、うん。できるだけ出入りの時は顔を見せていってくれるかな?」
「え、あ、はい」
まるで今思いついた、みたいに言う羽佐間さん。
同じ内容を、数日前にも自分から言っていたのに。
『 ――――他人の姿を映したり、他人に見せかけるスキルはいくつかある 』
先輩が言っていたことを思い出す。
これは、まさか。そういうこと?
僕に身を守れと言ってきたあの羽佐間さんは、羽佐間さんではなく別の誰かだった?
でもあれは……助言だったし、本当に僕を心配しているように見えたし、あのことだって。あの叫びは、嘘には。
だとしたら恐らく、あれは僕と関わりのある人で、且つ、何かを知ることができる立場に居る人、だと思う。
心当たりは……正直分からないけれどスキルだけで判断するなら一人、いるな……?
「気を付けるんだよ?色々と物騒だから」
「はい」
それでは、と挨拶をして自習に戻るため、踵を返して歩き出す。
あの人が敵なのか味方なのかは分からない。
分からない以上、警戒しておいて損はないはず。
…………あの人の、片割れも。
****
千里の知識には相当の偏りがある。
詳しすぎるぐらいによく知っていることもあれば全く知らない、或いはかなり古い知識しか知らない、とか。
それを伊坂サンが知らないわけないし。
つまりわざと。
どう考えてもあの人、最終的に千里を自分の物にする気だったんじゃ?
人から遠ざけて、親しい誰かを作り辛い環境にして。
関わる人間を減らせば問題には巻き込まれにくくなるけど、それは庇護者がいることが大前提で、ついでに庇護者の力が強ければ強いほどヘイトが向く。
それでも、庇護者が傍に居る限りは問題ない。
だから今問題が表面化しているわけだ。
俺が千里に関わらなかったら。…………アレらのことも考えると、碌なことになってないだろ。
一体何を考えてたんだあの人。ここまで長く留守にすることになるとは思ってなかった?
そんなわけないんだよな。
あの人は自分の有用性も価値もしっかり理解している。
…………嫌な想像が頭を過る。
伊坂サンが自分が居ないと行動を起こす奴がいることを知らない訳がない。
千里がなんらかの被害に遭うのを想定した上で置いて行ったんだとしたら――――?
「あんまり考えたいことじゃないな……」
伊坂サンと真正面からやり合うのはあまりにも面倒くさい。
戦闘面は苦手としても、それ以外がね。周りへの影響力が大き過ぎる。
最高峰と言われるだけの力はあるのだ。
ま、でも。
上からの依頼じゃ余計なのを連れて行けるわけがないし、注意しなければいけない相手も教えているようだし。予想の大半は外れているだろう。
事実として残るのは、伊坂サンとやり合うのは面倒ってことくらいか。
…………あの人が何を考えてるかはさっぱり分からないけど。千里を大切にしているのもまた事実。
そうじゃなきゃここまで手を尽くしていない。
っていうか千里と関わってる状態があの人を以前から知ってる身からするとおかし過ぎるんだよね。
千里が俺の物になった時、素直に引いてくれるかな?
既に授業時間だから生徒は少ないけれど、今はなんとなく見られたくなかったし。
問題があったとしたら、出入り口の受付に羽佐間さんがいなかったこと。
居ないんじゃ顔を見せるも何もできないし、そのまま隠れて自習することに。
それからしばらくして。
「あ、夜行君。戻ってくる時ここ通ったかい?」
受付に戻ってきていた羽佐間さんを見つけて、遅くはなったけど顔を見せておこうと寄って行ったら、開口一番にそう問われた。
約束通り顔を見せていかなかったから仕方ないか。
「いえ、来た時に不在だったので……」
「丁度離れた時だったんだね。そうか」
ふむ、と顎の下に手をやり、考える仕草をする羽佐間さん。
「だけど、うん。できるだけ出入りの時は顔を見せていってくれるかな?」
「え、あ、はい」
まるで今思いついた、みたいに言う羽佐間さん。
同じ内容を、数日前にも自分から言っていたのに。
『 ――――他人の姿を映したり、他人に見せかけるスキルはいくつかある 』
先輩が言っていたことを思い出す。
これは、まさか。そういうこと?
僕に身を守れと言ってきたあの羽佐間さんは、羽佐間さんではなく別の誰かだった?
でもあれは……助言だったし、本当に僕を心配しているように見えたし、あのことだって。あの叫びは、嘘には。
だとしたら恐らく、あれは僕と関わりのある人で、且つ、何かを知ることができる立場に居る人、だと思う。
心当たりは……正直分からないけれどスキルだけで判断するなら一人、いるな……?
「気を付けるんだよ?色々と物騒だから」
「はい」
それでは、と挨拶をして自習に戻るため、踵を返して歩き出す。
あの人が敵なのか味方なのかは分からない。
分からない以上、警戒しておいて損はないはず。
…………あの人の、片割れも。
****
千里の知識には相当の偏りがある。
詳しすぎるぐらいによく知っていることもあれば全く知らない、或いはかなり古い知識しか知らない、とか。
それを伊坂サンが知らないわけないし。
つまりわざと。
どう考えてもあの人、最終的に千里を自分の物にする気だったんじゃ?
人から遠ざけて、親しい誰かを作り辛い環境にして。
関わる人間を減らせば問題には巻き込まれにくくなるけど、それは庇護者がいることが大前提で、ついでに庇護者の力が強ければ強いほどヘイトが向く。
それでも、庇護者が傍に居る限りは問題ない。
だから今問題が表面化しているわけだ。
俺が千里に関わらなかったら。…………アレらのことも考えると、碌なことになってないだろ。
一体何を考えてたんだあの人。ここまで長く留守にすることになるとは思ってなかった?
そんなわけないんだよな。
あの人は自分の有用性も価値もしっかり理解している。
…………嫌な想像が頭を過る。
伊坂サンが自分が居ないと行動を起こす奴がいることを知らない訳がない。
千里がなんらかの被害に遭うのを想定した上で置いて行ったんだとしたら――――?
「あんまり考えたいことじゃないな……」
伊坂サンと真正面からやり合うのはあまりにも面倒くさい。
戦闘面は苦手としても、それ以外がね。周りへの影響力が大き過ぎる。
最高峰と言われるだけの力はあるのだ。
ま、でも。
上からの依頼じゃ余計なのを連れて行けるわけがないし、注意しなければいけない相手も教えているようだし。予想の大半は外れているだろう。
事実として残るのは、伊坂サンとやり合うのは面倒ってことくらいか。
…………あの人が何を考えてるかはさっぱり分からないけど。千里を大切にしているのもまた事実。
そうじゃなきゃここまで手を尽くしていない。
っていうか千里と関わってる状態があの人を以前から知ってる身からするとおかし過ぎるんだよね。
千里が俺の物になった時、素直に引いてくれるかな?
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