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ちらちらと、その姿が視界に入ってくる。
互いに人目を避けるように行動しているから近くに居ることが多く、どうしても目に付いてしまう。
せめて視界から消えてくれればいずれ忘れるのに。
ここではなくもう一つの図書館に行くという手もあるけど、それはなんか逃げるみたいで癪で。
仕方がないから、あの子を観察することにした。
あの子が俺が幻滅するような行動をとれば、興味も失うだろう、と。
観察してみて分かったのは、あの子に近寄る奴はほぼほぼおらず、あの子から近付く相手は司書含め両手で足りる程度しかいないこと。本当にいつ見てもひとりきりだ。
毎日図書館に居るし、教室には行ってなさそう。どっかの胡散臭い眼鏡の先輩みたいに特殊制度を使ってるのかも。テストで上位に入っていれば授業を受けなくていいってやつ。
…………そういえばあの先輩、最近見ないな。まだどっか行ってるのか。
あの人が居ないと面倒なのが居るからさっさと戻ってくればいいけど。
居たら大人しいんだけど、居ないとあの影の支配者気取りの馬鹿に要らない入れ知恵してんだよね。そして水面下でやばいことを起こす。
今回あの子を狙ってるみたいだし、何考えてんだか。
もう一つ分かったことは、隠密スキルが無駄に高いってこと。
その所為で気配察知スキルと隠密スキルを使い慣れている俺には見つけやすい。
何か違和感を感じるんだよね。気配が空白なところがあって。
隠密スキルにもこんなデメリットがあると知れたことはまあ良かったことかも。
そして今日も、図書館にやって来たあの子を見つけて――――司書に呼ばれて二人で司書室に入っていくのを見た。
馬鹿だろうか。
いくら相手がここの司書だとはいえ、密室に二人で入っていくとか。別人の可能性もあるのに。
折角助けてやったのに、何も理解していなさそうだったから。気晴らしの遊びついでに少し忠告してやろう、と。
隙間に引き摺り込んだまではいい。予定通り。
予想外だったのは瞬時に反撃してきたこと。
こっちもすぐ対応して押さえ付けたけど本気でやらなければ抑えきれなかった。
この子、見た目通りじゃない。
…………かと思えば、俺が相手と気付くなり警戒を緩める。
振り幅が両極端の子だ。
しかも、今襲われてるっていう自覚がないな?だからそういう反応ができる。
丁度人が集まってきてるし、このまま少し遊ぶか。
とりあえずそれらしい理由をつけて状況を維持する。
忠告はあくまでついで。こんなぽやぽやした子じゃ重要に聞こえるかもしれないけど。
そうやって気を許しかけている相手にイタズラされたら、この子はどんな反応をするだろう。
押さえ付けていた手を離し、身体を弄る。
少し抵抗されたけど軽く脅したら大人しくなった。
その隙に遠慮なく気になっていた部分を触る。
やっぱり結構しっかり筋肉ついてるな。腹筋とか。見たままの骨と皮みたいな感じではない。
そうやって好き勝手に触っている間、あの子は混乱しているようで、半分くらい何されてるのか理解していない感じだった。
試しにシャツのボタンをいくつか外してみたけど耐えるように目を閉じてるから気付きもしない。
こういうことに触れたことがないのが確実に分かる反応。
新鮮過ぎる反応に、これ以上進めたらどうなるのかと好奇心のまま太腿に手を伸ばす。
びくりと小さく体を震わせ、ただ耐えようとする様に加虐心が煽られる。
内側に触れたらどうなる?
「せんぱぃ……っ」
か細い声にハッとする。
…………反応が良くてついやり過ぎた。
ひとまず身体から手を離し、様子を伺った、ら。
俯いたまま、控えめに俺の服の端を掴んでいる。
…………なにそれ。
自分を襲った相手に縋るか、普通?
胸がざわつく。
いいようのない感情が沸き上がってくるのが分かった。
その衝動のまま行動を起こそうとして、でもどこかから微かに聞こえたカートが走る音に、ここが図書館であることを思い出す。
――――――今何をしようとした?
いや分かってるけど。頭ではちゃんと理解してるけど。
してるけど……マジか。
無意識に襲いかけた。今もちょっとまずい。
自分のこの状況に思い当たることがある。
いや、でも、本気で?これがアレなの?は?
珍しいくらいに混乱している。仕方ないとは思うけど。
でもそれを、この子に悟られるわけにはいかない。
予想が正しいなら自分が主導権を取らなければ。
壁に押さえ付けていた手を引っ張って、小さな身体を抱き込む。
体格差は結構大きかったようで、すっぽりと腕の中に収まった。
そりゃ、まだ中等部だし。当然か。
にしてもさっきの今なのに抵抗一つしないのか。この子はこの子で混乱してるのかも?
だったら、さっさと優位を取らないとね。
あと素性の調査。面倒な関わりが無ければいいけど。
こんな警戒心の欠片もない子、確実に保護者がいる。ここの司書だと分かりやすくていいけど、それだけじゃない気がする。養護教諭のこともあるし。
ああ、あと、いい加減に名前を聞かないと――――、って、素直に答えるのか。この子本当に緩いんだけど。
ある程度交流を持った相手には誰にでもこうなるわけ?
――――――気に入らない。
その心情を隠し、抱き締めていた身体を離す。
そしたらあからさまに安堵したように、身体の力を抜いた。
それを見計らって再び壁に押し付けて白い首筋に吸い付き、痕を付ける。所謂所有印というやつだ。
ああ、いいな。凄くいい。
白い肌に赤はとてもよく映える。すぐに隠されたけど。
キッと俺を睨みつける、うっすらと涙の滲んだ目も、イイ。
自分が加虐嗜好なのは理解していた。
でもそれは『女』を嫌悪するあまりに出た性質だとばかり思ってたけど、違ったらしい。
媚びて寄ってくる女に対しては単に尊厳も何もかもズタズタにしてやろうと思うだけだけど、この子に対してはどうも雄としての欲ばかりが煽られる。
つまり予想は間違いない。
この子は俺の番いだ。
眉唾話だと思ってたけど授業でやるだけのことはあるってことか。
というか詳しいことをクソどもが隠してそう。
これは色々と動かないと駄目なやつだ。面倒ではあるけど手を抜けることじゃない。
自覚した後に番いを失うと廃人一直線って言うし。
邪魔な奴らも全部潰さないと。
色々と頭の中で算段を立てつつ、顔を真っ赤にしての反撃を軽く避けて、頭を撫でてやる。
これで大人しくなるんだから、この子も少なからず俺に関心を寄せてるよね?
それを利用して、とっとと落とすとするか。
…………ダンジョンの40階層攻略、さっさと終わらせなきゃ。
期限内に攻略なんて、師匠も面倒な条件を出してきたものだよ。
互いに人目を避けるように行動しているから近くに居ることが多く、どうしても目に付いてしまう。
せめて視界から消えてくれればいずれ忘れるのに。
ここではなくもう一つの図書館に行くという手もあるけど、それはなんか逃げるみたいで癪で。
仕方がないから、あの子を観察することにした。
あの子が俺が幻滅するような行動をとれば、興味も失うだろう、と。
観察してみて分かったのは、あの子に近寄る奴はほぼほぼおらず、あの子から近付く相手は司書含め両手で足りる程度しかいないこと。本当にいつ見てもひとりきりだ。
毎日図書館に居るし、教室には行ってなさそう。どっかの胡散臭い眼鏡の先輩みたいに特殊制度を使ってるのかも。テストで上位に入っていれば授業を受けなくていいってやつ。
…………そういえばあの先輩、最近見ないな。まだどっか行ってるのか。
あの人が居ないと面倒なのが居るからさっさと戻ってくればいいけど。
居たら大人しいんだけど、居ないとあの影の支配者気取りの馬鹿に要らない入れ知恵してんだよね。そして水面下でやばいことを起こす。
今回あの子を狙ってるみたいだし、何考えてんだか。
もう一つ分かったことは、隠密スキルが無駄に高いってこと。
その所為で気配察知スキルと隠密スキルを使い慣れている俺には見つけやすい。
何か違和感を感じるんだよね。気配が空白なところがあって。
隠密スキルにもこんなデメリットがあると知れたことはまあ良かったことかも。
そして今日も、図書館にやって来たあの子を見つけて――――司書に呼ばれて二人で司書室に入っていくのを見た。
馬鹿だろうか。
いくら相手がここの司書だとはいえ、密室に二人で入っていくとか。別人の可能性もあるのに。
折角助けてやったのに、何も理解していなさそうだったから。気晴らしの遊びついでに少し忠告してやろう、と。
隙間に引き摺り込んだまではいい。予定通り。
予想外だったのは瞬時に反撃してきたこと。
こっちもすぐ対応して押さえ付けたけど本気でやらなければ抑えきれなかった。
この子、見た目通りじゃない。
…………かと思えば、俺が相手と気付くなり警戒を緩める。
振り幅が両極端の子だ。
しかも、今襲われてるっていう自覚がないな?だからそういう反応ができる。
丁度人が集まってきてるし、このまま少し遊ぶか。
とりあえずそれらしい理由をつけて状況を維持する。
忠告はあくまでついで。こんなぽやぽやした子じゃ重要に聞こえるかもしれないけど。
そうやって気を許しかけている相手にイタズラされたら、この子はどんな反応をするだろう。
押さえ付けていた手を離し、身体を弄る。
少し抵抗されたけど軽く脅したら大人しくなった。
その隙に遠慮なく気になっていた部分を触る。
やっぱり結構しっかり筋肉ついてるな。腹筋とか。見たままの骨と皮みたいな感じではない。
そうやって好き勝手に触っている間、あの子は混乱しているようで、半分くらい何されてるのか理解していない感じだった。
試しにシャツのボタンをいくつか外してみたけど耐えるように目を閉じてるから気付きもしない。
こういうことに触れたことがないのが確実に分かる反応。
新鮮過ぎる反応に、これ以上進めたらどうなるのかと好奇心のまま太腿に手を伸ばす。
びくりと小さく体を震わせ、ただ耐えようとする様に加虐心が煽られる。
内側に触れたらどうなる?
「せんぱぃ……っ」
か細い声にハッとする。
…………反応が良くてついやり過ぎた。
ひとまず身体から手を離し、様子を伺った、ら。
俯いたまま、控えめに俺の服の端を掴んでいる。
…………なにそれ。
自分を襲った相手に縋るか、普通?
胸がざわつく。
いいようのない感情が沸き上がってくるのが分かった。
その衝動のまま行動を起こそうとして、でもどこかから微かに聞こえたカートが走る音に、ここが図書館であることを思い出す。
――――――今何をしようとした?
いや分かってるけど。頭ではちゃんと理解してるけど。
してるけど……マジか。
無意識に襲いかけた。今もちょっとまずい。
自分のこの状況に思い当たることがある。
いや、でも、本気で?これがアレなの?は?
珍しいくらいに混乱している。仕方ないとは思うけど。
でもそれを、この子に悟られるわけにはいかない。
予想が正しいなら自分が主導権を取らなければ。
壁に押さえ付けていた手を引っ張って、小さな身体を抱き込む。
体格差は結構大きかったようで、すっぽりと腕の中に収まった。
そりゃ、まだ中等部だし。当然か。
にしてもさっきの今なのに抵抗一つしないのか。この子はこの子で混乱してるのかも?
だったら、さっさと優位を取らないとね。
あと素性の調査。面倒な関わりが無ければいいけど。
こんな警戒心の欠片もない子、確実に保護者がいる。ここの司書だと分かりやすくていいけど、それだけじゃない気がする。養護教諭のこともあるし。
ああ、あと、いい加減に名前を聞かないと――――、って、素直に答えるのか。この子本当に緩いんだけど。
ある程度交流を持った相手には誰にでもこうなるわけ?
――――――気に入らない。
その心情を隠し、抱き締めていた身体を離す。
そしたらあからさまに安堵したように、身体の力を抜いた。
それを見計らって再び壁に押し付けて白い首筋に吸い付き、痕を付ける。所謂所有印というやつだ。
ああ、いいな。凄くいい。
白い肌に赤はとてもよく映える。すぐに隠されたけど。
キッと俺を睨みつける、うっすらと涙の滲んだ目も、イイ。
自分が加虐嗜好なのは理解していた。
でもそれは『女』を嫌悪するあまりに出た性質だとばかり思ってたけど、違ったらしい。
媚びて寄ってくる女に対しては単に尊厳も何もかもズタズタにしてやろうと思うだけだけど、この子に対してはどうも雄としての欲ばかりが煽られる。
つまり予想は間違いない。
この子は俺の番いだ。
眉唾話だと思ってたけど授業でやるだけのことはあるってことか。
というか詳しいことをクソどもが隠してそう。
これは色々と動かないと駄目なやつだ。面倒ではあるけど手を抜けることじゃない。
自覚した後に番いを失うと廃人一直線って言うし。
邪魔な奴らも全部潰さないと。
色々と頭の中で算段を立てつつ、顔を真っ赤にしての反撃を軽く避けて、頭を撫でてやる。
これで大人しくなるんだから、この子も少なからず俺に関心を寄せてるよね?
それを利用して、とっとと落とすとするか。
…………ダンジョンの40階層攻略、さっさと終わらせなきゃ。
期限内に攻略なんて、師匠も面倒な条件を出してきたものだよ。
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