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「……」
「どうかした?」
「いえ……、身長が伸びないな、と」
健康診断を終え、今分かる結果を確認して一言。
『記憶』ではこの年の頃は170cm超えていたはずだけど、今の僕はそれより10cmは低い。
「それは君の食生活が悪いからよ?あと睡眠時間の短さ」
「うっ」
「自覚はあるのにね」
物凄く含みのある言い方をされる。
それでもそれ以上を言わないのは、僕が今の生活を改めるつもりがないと知っているから。
止めるわけにはいかないことを、知っているから。
生きるということは何故こんなに面倒臭いのか。
「交友関係が謎過ぎる」
「ぴっ?!」
……。
変な声出た。
…………。
って、そうじゃない!
「ぴ、だって」
「あ、貴方が突然声を掛けてきたからでしょう!?」
からかうように言うその人に、声が大きくならないように、でも怒りは伝わるように返す。
もう図書館内だからな。
その人――――あの先輩は、何が面白いのかくつくつと笑っている。
もう関わってくることはないと思っていたのに。
「何か用でも」
「別に何も」
「っ、なら失礼します!」
相手をしないよう、視界に入らないように足早に歩く。
親しいわけでもない、たった数度話しただけ、しかもなんらかのスキルまで使われている。
こっちはもう関わりたくないのに、なんで近付いてくるんだ。
今も何か着いて来ているし!
一体何なんだこの人!!
「あっ!あれ!」
「いたか!」
苛々しながら歩く中駆け寄ってきたのは――――前に絡んできて罰則をくらったクラスメイト達だった。
「よおガリ勉ヤロー。担任から伝言だぜ」
「昼休みに特別教室棟の音楽室に来るようにだってよ」
「確かに伝えたからな!」
「ちゃんと行けよ!」
口々にそう言い、こちらの返事も聞かず嵐のように去って行った。
あまりの展開の速さにちょっと思考が止まってしまったが、これは……
「あれ、なに?」
すぐ後ろまで追いついた先輩が問うてくる。
「一応、クラスメイトです」
「行くの」
「職員室に行きます」
まず間違いなく今の伝言が担任からというのは嘘だろう。
あの人は大事なことは対面でしか話さない。何か事情があったとして、生徒に言伝を頼むなんて方法はとらないはずだ。
まあそれも100%ではないから、職員室にこちらから出向く。
本当に用があるならその時聞けばいい、そうじゃないなら報告した方がいいだろう。
何者かに利用されかけていましたよ、と。
あいつらはまた罰則をくらうことになるだろうな。
どこまでも馬鹿な連中だ。
しかし……、もしかして。
でも……そうなの、か?
メリットなんて何もないだろうに、でも、タイミング的にそうとしか思えない。
「あの、もしかして、だからですか?」
「なんのこと?」
そう、言って。
今まで着いて来ていたのは一体何だったのかと言いたいほどあっさりと、先輩は去って行った。
それもう答えじゃないか?
「…………なんなんだ」
気まぐれ、だとは思う。
あいつらが話している間、視線はちらちらと背後に向かっていた。
明らかに僕に着いて来ている先輩を見て、大急ぎで話して去って行った、という感じだった。
考えられるのは、『なにか』僕にあった場合自分達が何らかの役割を担ったことを証言されると困るから顔を覚えられたくなかった、とか?
だったら先輩がいないタイミングで来るべきだったと思う。
それができないくらい焦っていたとか?
いやあいつらの事情なんてどうでもいいけど。
問題は先輩の方だ。
最初話しかけてきた時、交友関係が謎、と言っていた。
謎と言える交友関係。となると小南さんしか思いつかない。
つまり僕が小南さんといたのを目撃していた、ということになる。
健康診断のために保健室に居たのは1時間ほど。
あいつらがいつから図書館で僕を探していたのかは分からない。でも、その間ずっと図書館に居たということで、いつ戻るかも分からない僕を待っていたということになる、から。
「いや、本当に、なに……」
助けられる理由なんてないのに。
何の見返りも求めず去って行くって、なんなんだ。
情報の礼……をするような人には思えない。だってスキルを無断で人に使用するような人だ。
本当に、本当に、意味が分からない。
…………。
何か……ざわつく。落ち着かない。この感覚は、何か、嫌だ。
とにかく、もう関わりたくない。
当面は隠れながら過ごそう。
周囲が何か不穏だし。
――――――その後職員室に向かい、担任が居たので事の次第を報告すると、静かに怒っていた。
やっぱりあれは僕を誘い出すための嘘だったんだろう。
改めて、何か報せがある時は直接こちらから行くか放送で呼ぶかの二択になるから伝言を頼むことはない、と言われた。
それに頷いて返すと、担任も重々しく頷き、立ち上がった。これから件の二人を呼び出して『お話』をするそうだ。
未遂で何も起きていないから厳重注意が関の山だろうけど、これで僕に絡んでくることがなくなればいい。
そうして担任と別れ図書館に戻りいつも通りの生活をした、三日後。
件の二人に何かがあって、学園を辞めることになったと担任から教えられた。
怒りを何とか隠そうとした無表情が恐ろしく、詳細は聞けなかった。
気を付けるように、と。言うその念の入れようが、事の重大さを告げているようだった。
「どうかした?」
「いえ……、身長が伸びないな、と」
健康診断を終え、今分かる結果を確認して一言。
『記憶』ではこの年の頃は170cm超えていたはずだけど、今の僕はそれより10cmは低い。
「それは君の食生活が悪いからよ?あと睡眠時間の短さ」
「うっ」
「自覚はあるのにね」
物凄く含みのある言い方をされる。
それでもそれ以上を言わないのは、僕が今の生活を改めるつもりがないと知っているから。
止めるわけにはいかないことを、知っているから。
生きるということは何故こんなに面倒臭いのか。
「交友関係が謎過ぎる」
「ぴっ?!」
……。
変な声出た。
…………。
って、そうじゃない!
「ぴ、だって」
「あ、貴方が突然声を掛けてきたからでしょう!?」
からかうように言うその人に、声が大きくならないように、でも怒りは伝わるように返す。
もう図書館内だからな。
その人――――あの先輩は、何が面白いのかくつくつと笑っている。
もう関わってくることはないと思っていたのに。
「何か用でも」
「別に何も」
「っ、なら失礼します!」
相手をしないよう、視界に入らないように足早に歩く。
親しいわけでもない、たった数度話しただけ、しかもなんらかのスキルまで使われている。
こっちはもう関わりたくないのに、なんで近付いてくるんだ。
今も何か着いて来ているし!
一体何なんだこの人!!
「あっ!あれ!」
「いたか!」
苛々しながら歩く中駆け寄ってきたのは――――前に絡んできて罰則をくらったクラスメイト達だった。
「よおガリ勉ヤロー。担任から伝言だぜ」
「昼休みに特別教室棟の音楽室に来るようにだってよ」
「確かに伝えたからな!」
「ちゃんと行けよ!」
口々にそう言い、こちらの返事も聞かず嵐のように去って行った。
あまりの展開の速さにちょっと思考が止まってしまったが、これは……
「あれ、なに?」
すぐ後ろまで追いついた先輩が問うてくる。
「一応、クラスメイトです」
「行くの」
「職員室に行きます」
まず間違いなく今の伝言が担任からというのは嘘だろう。
あの人は大事なことは対面でしか話さない。何か事情があったとして、生徒に言伝を頼むなんて方法はとらないはずだ。
まあそれも100%ではないから、職員室にこちらから出向く。
本当に用があるならその時聞けばいい、そうじゃないなら報告した方がいいだろう。
何者かに利用されかけていましたよ、と。
あいつらはまた罰則をくらうことになるだろうな。
どこまでも馬鹿な連中だ。
しかし……、もしかして。
でも……そうなの、か?
メリットなんて何もないだろうに、でも、タイミング的にそうとしか思えない。
「あの、もしかして、だからですか?」
「なんのこと?」
そう、言って。
今まで着いて来ていたのは一体何だったのかと言いたいほどあっさりと、先輩は去って行った。
それもう答えじゃないか?
「…………なんなんだ」
気まぐれ、だとは思う。
あいつらが話している間、視線はちらちらと背後に向かっていた。
明らかに僕に着いて来ている先輩を見て、大急ぎで話して去って行った、という感じだった。
考えられるのは、『なにか』僕にあった場合自分達が何らかの役割を担ったことを証言されると困るから顔を覚えられたくなかった、とか?
だったら先輩がいないタイミングで来るべきだったと思う。
それができないくらい焦っていたとか?
いやあいつらの事情なんてどうでもいいけど。
問題は先輩の方だ。
最初話しかけてきた時、交友関係が謎、と言っていた。
謎と言える交友関係。となると小南さんしか思いつかない。
つまり僕が小南さんといたのを目撃していた、ということになる。
健康診断のために保健室に居たのは1時間ほど。
あいつらがいつから図書館で僕を探していたのかは分からない。でも、その間ずっと図書館に居たということで、いつ戻るかも分からない僕を待っていたということになる、から。
「いや、本当に、なに……」
助けられる理由なんてないのに。
何の見返りも求めず去って行くって、なんなんだ。
情報の礼……をするような人には思えない。だってスキルを無断で人に使用するような人だ。
本当に、本当に、意味が分からない。
…………。
何か……ざわつく。落ち着かない。この感覚は、何か、嫌だ。
とにかく、もう関わりたくない。
当面は隠れながら過ごそう。
周囲が何か不穏だし。
――――――その後職員室に向かい、担任が居たので事の次第を報告すると、静かに怒っていた。
やっぱりあれは僕を誘い出すための嘘だったんだろう。
改めて、何か報せがある時は直接こちらから行くか放送で呼ぶかの二択になるから伝言を頼むことはない、と言われた。
それに頷いて返すと、担任も重々しく頷き、立ち上がった。これから件の二人を呼び出して『お話』をするそうだ。
未遂で何も起きていないから厳重注意が関の山だろうけど、これで僕に絡んでくることがなくなればいい。
そうして担任と別れ図書館に戻りいつも通りの生活をした、三日後。
件の二人に何かがあって、学園を辞めることになったと担任から教えられた。
怒りを何とか隠そうとした無表情が恐ろしく、詳細は聞けなかった。
気を付けるように、と。言うその念の入れようが、事の重大さを告げているようだった。
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