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「付き合いは考えた方がいいんじゃない」
皐月さんが去って行った方を見ながら、フードの上級生が言う。
わざわざそんなことを言う辺り、この人は巻き込まれただけなんだろうか。置いていかれているし。
本当に意味が分からない。
「そもそもここで多少顔を合わせる程度の人です。今後は距離を置きますよ……それで、貴方は?」
「ダンジョンで取れる薬草・毒草の手記を探してる。あることは司書から聞き出せたんだけどアレの騒ぎで場所が分からない」
「…………。それ、見るのに許可が必要な禁帯出図書です」
「何それ」
「貸し出し禁止の閲覧制限図書ですよ。最終的な閲覧の許可を出すのは、司書です」
「………………あの野郎」
僕が言いたいことを察したようで、苛々した様子で唸る。
何せ問題さえ起きなければ、そのまま閲覧許可をもらえた可能性が高いからなぁ。存在を聞き出せたんだから。
なのによく分からないことに巻き込まれた上、状況がとても悪い。彼自身に非は一切ないのに。
…………僕自身にも非は一切ないけど、恐らく僕に何らかのアクションを仕掛けるために起こした騒ぎ、なんだよなぁ。
「一度司書のところに戻りましょう。まず聞いてみないと」
僕にはなんの義理はないんだけど、このまま放っておいて遺恨が残るというのも何か嫌だし、少し付き合うか。
「ごめん。今、そこらの資料は全部閲覧禁止になったんだ、最低でも2週間くらい」
申し訳なさそうに、顔なじみの司書――羽佐間哉さんが言う。
やはりというか、今の騒ぎで貴重なものが全て制限されたようだ。
連帯責任って、酷過ぎないか?
「最近生徒の態度が良くないって報告が多く上がっていてね。丁度いい見せしめと再発防止のために厳しくするそうだよ」
連帯責任じゃなく積み重ねによる揺り戻しだった。
見せしめ、かぁ。
なんというかこの、関係のない所で足を引っ張られる感は物凄くこの学園の生徒だなと思う。
思うけど、どうしたものか。
これ僕が逆恨みされたりしないか??ふざけてるな???
…………まあ、今の先決は。
「確認ですが、内容を知っている者が教えるのは可能ですか」
「ん?んー、……うん。ダンジョン内の薬草と毒草についてだったね?それならまあ、いいよ。ただもしもの場合、夜行君が責任を取ることになるけれど」
「そこは分かってます」
「そっか。ならとやかく言わないけど、よく考えて慎重にね」
「はい」
許可は取った。
あとは後ろの人がどうするか次第だ。
羽佐間さんと別れ、先程とはまた別の、入り口から離れた席へ移動する。
道中薬草・毒草の図鑑も取ってきた。多少違っていても見本があった方が分かりやすい。
「このまま僕が説明するということで良かったですか?」
ここまで着いてきたということはそういうことでいいんだと思うけど一応問い掛ける。
「2週間も待ってられないから仕方ない。ただし何か問題が発生した場合は責任をとってもらうけど」
「その時はその時ですね」
多分、問題はないと思うけど。
手記の中身は全て写してあるし、記されていたものは全て何度も学園に買い取ってもらっているから間違うはずもない。
問題が起きるとしたら、この人側の過失だ。
「メモとか取りますか?」
「ああ。ちょっと待って」
そう言い、小型のウエストポーチに手を伸ばす。
取り出されたのはペンケースとルーズリーフ。
ということは、あれは魔法収納か。
魔法収納とは、見た目よりもずっと収納能力がある空間系のマジックアイテムだ。これも基本的にダンジョン産で貴重品になる。
ただしどういう仕組みなのか分からないけど、初めてダンジョンに入り宝箱を開けると必ず最初の一つはこれになるため、ダンジョンに出入りする者は大抵一つは持っていたりする。形はまちまちだけど。収納能力は大体同じとのこと。
ちなみに。最初に手にした者以外の出し入れは出来ないようになっている。つまり恐らくだけどこの国における唯一のプライベート空間だ。
となると、これに入れておけばダンジョンでの成果はすべて個人のものになる。できてしまう。
しかしそうなると、貴重なものが上に回らなくなる。
昔はまさにその通りで、ダンジョンで得た物は基本個人所有になっていたらしい。でも今はとあるマジックアイテムの登場でそうではなくなった。
とても単純なもので、その名も『嘘発見器』。相手が嘘を吐いているか否かだけを判定するマジックアイテム。
ダンジョンに入った者は必ず出る前にこれを装備したダンジョンの管理人の問いに答えなければならない。貴重なものはありましたか?という問いに。
とても単純だが、だからこそ精度は高いという。
まあ、それでも気付かれず通り抜けられる者は一定数居る。
上もそれを分かっているけど、証拠がないため放っておくしかないそうだ。
今のところは、だけど。
皐月さんが去って行った方を見ながら、フードの上級生が言う。
わざわざそんなことを言う辺り、この人は巻き込まれただけなんだろうか。置いていかれているし。
本当に意味が分からない。
「そもそもここで多少顔を合わせる程度の人です。今後は距離を置きますよ……それで、貴方は?」
「ダンジョンで取れる薬草・毒草の手記を探してる。あることは司書から聞き出せたんだけどアレの騒ぎで場所が分からない」
「…………。それ、見るのに許可が必要な禁帯出図書です」
「何それ」
「貸し出し禁止の閲覧制限図書ですよ。最終的な閲覧の許可を出すのは、司書です」
「………………あの野郎」
僕が言いたいことを察したようで、苛々した様子で唸る。
何せ問題さえ起きなければ、そのまま閲覧許可をもらえた可能性が高いからなぁ。存在を聞き出せたんだから。
なのによく分からないことに巻き込まれた上、状況がとても悪い。彼自身に非は一切ないのに。
…………僕自身にも非は一切ないけど、恐らく僕に何らかのアクションを仕掛けるために起こした騒ぎ、なんだよなぁ。
「一度司書のところに戻りましょう。まず聞いてみないと」
僕にはなんの義理はないんだけど、このまま放っておいて遺恨が残るというのも何か嫌だし、少し付き合うか。
「ごめん。今、そこらの資料は全部閲覧禁止になったんだ、最低でも2週間くらい」
申し訳なさそうに、顔なじみの司書――羽佐間哉さんが言う。
やはりというか、今の騒ぎで貴重なものが全て制限されたようだ。
連帯責任って、酷過ぎないか?
「最近生徒の態度が良くないって報告が多く上がっていてね。丁度いい見せしめと再発防止のために厳しくするそうだよ」
連帯責任じゃなく積み重ねによる揺り戻しだった。
見せしめ、かぁ。
なんというかこの、関係のない所で足を引っ張られる感は物凄くこの学園の生徒だなと思う。
思うけど、どうしたものか。
これ僕が逆恨みされたりしないか??ふざけてるな???
…………まあ、今の先決は。
「確認ですが、内容を知っている者が教えるのは可能ですか」
「ん?んー、……うん。ダンジョン内の薬草と毒草についてだったね?それならまあ、いいよ。ただもしもの場合、夜行君が責任を取ることになるけれど」
「そこは分かってます」
「そっか。ならとやかく言わないけど、よく考えて慎重にね」
「はい」
許可は取った。
あとは後ろの人がどうするか次第だ。
羽佐間さんと別れ、先程とはまた別の、入り口から離れた席へ移動する。
道中薬草・毒草の図鑑も取ってきた。多少違っていても見本があった方が分かりやすい。
「このまま僕が説明するということで良かったですか?」
ここまで着いてきたということはそういうことでいいんだと思うけど一応問い掛ける。
「2週間も待ってられないから仕方ない。ただし何か問題が発生した場合は責任をとってもらうけど」
「その時はその時ですね」
多分、問題はないと思うけど。
手記の中身は全て写してあるし、記されていたものは全て何度も学園に買い取ってもらっているから間違うはずもない。
問題が起きるとしたら、この人側の過失だ。
「メモとか取りますか?」
「ああ。ちょっと待って」
そう言い、小型のウエストポーチに手を伸ばす。
取り出されたのはペンケースとルーズリーフ。
ということは、あれは魔法収納か。
魔法収納とは、見た目よりもずっと収納能力がある空間系のマジックアイテムだ。これも基本的にダンジョン産で貴重品になる。
ただしどういう仕組みなのか分からないけど、初めてダンジョンに入り宝箱を開けると必ず最初の一つはこれになるため、ダンジョンに出入りする者は大抵一つは持っていたりする。形はまちまちだけど。収納能力は大体同じとのこと。
ちなみに。最初に手にした者以外の出し入れは出来ないようになっている。つまり恐らくだけどこの国における唯一のプライベート空間だ。
となると、これに入れておけばダンジョンでの成果はすべて個人のものになる。できてしまう。
しかしそうなると、貴重なものが上に回らなくなる。
昔はまさにその通りで、ダンジョンで得た物は基本個人所有になっていたらしい。でも今はとあるマジックアイテムの登場でそうではなくなった。
とても単純なもので、その名も『嘘発見器』。相手が嘘を吐いているか否かだけを判定するマジックアイテム。
ダンジョンに入った者は必ず出る前にこれを装備したダンジョンの管理人の問いに答えなければならない。貴重なものはありましたか?という問いに。
とても単純だが、だからこそ精度は高いという。
まあ、それでも気付かれず通り抜けられる者は一定数居る。
上もそれを分かっているけど、証拠がないため放っておくしかないそうだ。
今のところは、だけど。
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